第七章99
『空を統べるモノ』
雄叫びが、失われた技術を蘇らせる。そして龍は、地上へ舞い降りた。
📣 魔法の言葉
ただの雄叫びが、この世界では魔法になる
『ウォークライ』という言葉がある。端的に言えば、それはただの雄叫びに過ぎない。
――それはこの世界において、正しく『魔法』の言葉であった。
( ゚д゚ )
「……信じられないかしら」
数百年前から言葉としては存在しながらも、実用化なんて程遠いとされた幻の技術。
――『魔女』エキドナですら、個人では再現しようのない技術として放置した『空想』。
体内を巡るマナを身体強化へ利用する『流法』を強引に実現する手法。
――火事場の馬鹿力。人間のリミッターを強引に解除する手法だ。
🔥 理想的な環境
――適当に集めた集団では効果は生まれず、数が増えすぎれば効果は定着しない
過去に立ち会ったのは戦場でのことであり、効果を発動していたのは少数の部族だった。
――彼らは戦いの前も、最中も、決着後も声を上げ続けた。
その雄叫びには部族全体の力を底上げする効果が付随し、飛び抜けた戦果を挙げていた。
――適当に集めた集団では効果は生まれず、数が増えすぎれば効果は定着しない。
実力者一人では再現性もない。故に、『魔装励起』は日の目を見ずに廃れた。
「「「最強! 最強!! 最強――ッ!!」」」
スバルを中心に強固な信頼で結ばれ、一軍として数えるだけの戦力となり、
迂闊な陽魔法で調子を崩すだけの実力者もいない、まさしく理想的な環境。
――一人一人が文字通り、一騎当千の戦士となった。
🛡️ ぶっ飛ばしても
敵の隊列が、先端から溶けるように失われる
まるで熱した鉄を当てられた氷のように、敵の隊列は先端から失われていく。
「「「おお――!!」」」
「「「オレたちが、あんたに救われたのと一緒だ!!」」」
戦場を知るものであれば、子どもの戯言だと笑い飛ばすような話。
――量産されるのは死者ではなく、心身共に戦意をへし折られた負傷者の山だ。
戦術的判断ではない。ただ単に、ナツキ・スバルが死者を出す勇気がないだけの話。
――その勇気がないだけの希望が、この圧倒的な戦力に叶えられていく。
🤯 馬鹿げてる
どこまで考えてやっているのか、と問われる
(>﹏<)
「スバル、どこまで考えてやっているのよ!?」
(╬゚д゚)
「~~っ、馬鹿げてるかしら!」
――スバルも周りの連中も、誰も『魔装励起』のことなんて知らないし、理解もしていない。
思いっ切り声を上げて戦ったら自分たちが強い、というわけのわからない理屈を武器に、
『魔女』さえ手放した理論を完全再現して戦っているだけなのだ。
――そしてそれが可能となるのは、『小さな王』の権能を有する彼だけなのだ。
(≧▽≦)
「それでこそ、ベティーのパートナーなのよ!」
「――エル・シャマク」
――参戦してものの数分で、最小の被害に留まっていた第四頂点は崩壊した。
🔥 見せ場を奪われた
切り札として来たのに、出番がない
(・∀・)
「実に痛快だ」
「貴様の援軍の肝は飛竜隊であると、そうこちらは認識していたが?」
(´ー`)
「安心しろ。今、戦場の目を奪っているあれらは予想外の代物だ」
「生憎とあのものたちが仰いでいるのは一人だけのようでな」
(¬_¬)
「よもや、顔を隠したものとは手を組めぬとでも?」
(・_・)
「理由は語らぬが、この面は手傷が理由ではない。必要あってのものだ」
「必要でないことはしない主義だと、文からもそう読み取れた」
🐉 冷や飯
隣にいるのが誰か、微塵も思っていない
「貴様を選んだ最大の理由は、引き入れることで戦の勝算を上げるためだ」
(´ー`)
「帝都からは冷や飯を食わされている、我が飛竜隊をそこまで評価してくれるとは」
飛竜隊は、ドラクロイ領が畏れ敬われる理由の最も中核たる部分。
――最も傷付けてはならない矜持の源泉だ。
( •̀_•́ )
「制空圏を奪えるな」
「仰せつかろう。――私の飛竜隊が」
「あの突発的な援軍に、見せ場を奪われ続けるのも癪だからな」
――そう、件の皇帝の本物が隣にいると微塵も思わずに。
💡 己の力
玉座の偽者にとっても、これは想定外のはず
「この戦場に間に合わせるために昼夜を問わず走り続けたそうだぞ」
(・・・・・・)
「――。理屈は理解できても、現実味のない行動だ」
「挙句、間に合わせても離脱者が多すぎて戦えるはずがない」
(¬_¬)
「では、鬼面の総大将、お前にはあれが士気の低いものたちの戦いに見えるのか?」
あれを指して士気が低いと嘯くのは、現実の見えていない愚か者の妄言だ。
「率いているのは、各地で話題になっている『黒髪の皇太子』の一人だそうだ」
( ゚д゚ )
「――。そういうことか」
そしてそれがおそらく、帝都の玉座にいる偽りの皇帝にとっても想定外のはずと。
❄️ 一人で戦う
発魔期のときみたい、と思い出す
『――我、メゾレイア。我が愛し子の声に従い、天空よりの風とならん』
( •̀_•́ )
「――アイシクルライン!!」
寸前までいた大地を凄まじい速度で尾が薙ぎ払い、一瞬で地面が剥がされる。
(´・ω・`)
「プリシラみたいに合わせてくれる子ならいいけど……」
エミリアはあまり、周りの人と息を合わせて戦うのが得意ではない。
――考え事をしながら戦うのが苦手なのだ。
「どんどんどんどん、冷たくしてるから」
ほとんどの地竜は寒さに弱い、というのはペトラからの提案だった。
――実際は耐性はまちまちだが、その勘違いを埋め尽くすほど冷えれば無関係だ。
(;゚Д゚)
「――パックの発魔期のときみたい」
💃 舞うように
塔で戦った経験が、ここで活きる
広げられた翼が翻り、頑張って硬くした氷壁が容易く切り裂かれる。
相手と視線を切らないのは、監視塔で『神龍』と直接戦った経験が活きている。
――攻撃に見えないような些細な動きさえも、とんでもなく危ないことになりかねない。
(;´Д`)
「ボルカニカのときは、鼻息で吹き飛びそうになっちゃったもの」
そのときのことが思い出され、ここにいたのが自分でよかったと再認識。
――龍との戦い方を知らないと、うっかり最初の何かで転んでおじゃんになりかねない。
🌀 聞く耳を持たない
話を聞いて、と呼びかけても届かない
(>﹏<)
「メゾレイア! お願いだから話を聞いて! マデリンとも、戦いたく……」
『――我、メゾレイア。我が愛し子の声に従い、天空よりの風とならん』
(´;ω;`)
「うう、やっぱり……」
『――我、メゾレイア。我が愛し子の声に従い、天空よりの風とならん』
空を統べる『雲龍』も、塔で出くわした『神龍』と同じように――
――ボケてしまっている、ということだった。
第七章99『空を統べるモノ』終了。
ベアトリス

アベル
メゾレイア
エミリア