リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第六章4

『君を連れ出す理由』

出発の準備が進む。屋敷に残していく者たちと、連れていく者に、それぞれ話をつけていく。

🎭 あっさり

ロズワールは、止めなかった

プレアデス監視塔到達のための、アウグリア砂丘の攻略。

魔獣の巣窟でもある砂の迷宮を抜けるため、『魔獣使い』メィリィが加わった。

とはいえ、一年もの長い期間、座敷牢に縛り続けてきたのはロズワールの協力あってこそだ。

『腸狩り』と共謀して屋敷を襲った経緯もある。

軟禁を解くには、それなりの言い合いが発生するものと思ったのだが。

ロズワール

(´∀`)

「別にいーぃんじゃない? スバルくんとエミリア様が外に出すって決めたんなら、出してあげても問題ないでしょ。仮に判断違いでその子が悪さ働いたとしても、それで狙われるのは君たちだろーぉしね」

あっさりと、許可。

答えの内容も、実にロズワールらしいと言わざるを得ない。

🌬️ 一年ぶり

メィリィが、外に出る

メィリィ

(*゚▽゚*)

「んん~っ! やあっぱり、お外の空気は違うわあ。ずうっとあのお部屋の中にいると窮屈で、息が詰まっちゃいそうだったもん」

スバル

「つっても、お前にあんまりそう思わせないために色々と手は尽くしたんだけどな。言うほど、悪い生活ってわけでもなかったろ?」

メィリィ

(¬_¬)

「そおかしら? 気遣いは嬉しいけど、やあっぱり自由に出歩ける身とは全然違っちゃうわよお。お兄さん、そういう細かなところに気付けないと、今にお姉さんとお嬢ちゃんに嫌われちゃうんだからあ」

『お姉さん』がエミリア。

『お嬢ちゃん』がベアトリス。

ペトラだとペトラちゃん。

ガーフィールだと『牙のお兄さん』。

オットーは『弱そうな人』。

🚪 使用人階の一室

客分でも、使用人でもない

メィリィ

「お部屋、ここでいいのお?」

スバル

「聞いた限りじゃ問題なし。一応、使ってない部屋でも掃除の手は入ってるから、汚い場所とか不自由する問題とかはないはずだぜ」

西棟の、使用人用の私室が並ぶ一角。

その中の一部屋だ。

座敷牢から解放されたメィリィだが、その立場は複雑を極めた。

放り出すわけにはいかないため、屋敷で面倒を見る必要がある。

だが彼女の役割は客分なのか、使用人なのか。

客分というほど遠くには置けない。

使用人というほど内側に潜らせるのもいただけない。

結局、どっちともつかない半端な『協力者』という立ち位置に落ち着いた。

半身内のような形で、使用人階の一室が宛がわれた。

🕊️ いつか逃げるかも

長居するかは、わからない

メィリィ

「せっかくこんな風にしてもらってもお、長居するかどうかなんてわかんないけどね。無事に生きていけそうな目処が立ったら、すぐに逃げちゃうかもだしい」

スバル

「その目処が他人に迷惑かけないこと前提で、おっかない母親のところに帰るとかじゃない限り、お前の好きにしたらいいさ。あ、ただし、ちゃんと今回の仕事は終わらせてもらうぞ。その後でなら、好きにしろ」

メィリィ

(・_・)

「後腐れなくなくなったら、どこで死んでもいいってことお?」

スバル

「俺の耳にさえ入らなきゃ、誰がどこで死んでようが構うかよ。……って、昔のシニカル気取りの俺なら言っただろうけど、そうは言わねぇよ」

✉️ 手紙の一つでも

まともな生き死にをしてほしい

窓際に佇む少女の頭を撫でる。

撫でられたまま、目を瞬かせる。

スバル

「関わっちまった連中は、どうあれまともな生き死にしてほしいと思うもんだ。お前が出てくのも自由にしたらいいけど、どうせなら手紙の一つでも出せよ。それができる程度には真っ当に、過ごしてくれりゃそれでいいから」

ぽんぽん、と最後に軽く頭を叩いて、手を引っ込める。

メィリィ

(¬_¬)

「……お兄さん、そおやってお嬢ちゃんやペトラちゃんを手懐けたのかしら。まあったく、油断も隙もないったらないわあ」

スバル

(・∀・;)

「そういうつもりはねぇんだけどなぁ」

🧸 自分の部屋

足取りが、少し弾んでいる

荷物の運び込みが終われば、飾り付けまでは手伝うつもりはない。

少女の模様替えセンスとスバルのセンスとの間には、おそらく絶望的な壁がある。

メィリィ

「まあ、お兄さんの言い分は話半分に聞いておくわあ。それにどうせすぐ、アウグリア砂丘に命を捨てにいくんだしい」

スバル

「捨てにいくんじゃなく、拾いにいくんだよ。そこんとこ、お前の力にかなりかかってるんでヨロシク」

メィリィ

「はいはあい」

長居するかどうかも、戻ってくるかどうかもわからない部屋ではある。

ただ。

スバル

(*´ω`*)

「楽しそうにしちゃってまぁ」

年頃の少女が、初めて自分の部屋をもらった。

そんな弾んだ調子が見え隠れしていて、微笑ましいのだった。

🗺️ 片道二十日

参加者は七名、往復で四十日

『ドキドキ、賢者に質問ツアー』の参加者はこれで七名。

・身内枠 ―― スバル、エミリア、ベアトリス

・外部協力者枠 ―― ユリウス、アナスタシア、メィリィ

・そして、連れ出されるもう一人 ―― レム

屋敷から東へ一直線。

ただしその旅路は、プリステラへ向かう道筋よりも長い。

片道だけで、二十日近くかかることは確定している。

行き帰りだけで四十日。

監視塔に滞在する日数を考えれば、二ヶ月以上になる可能性のある大遠征だ。

それだけに、何が問題になるのかというと。

🧵 二ヶ月の放置

ペトラが、へそを曲げている

スバル

(´・ω・`)

「なぁ、ペトラ。ほったらかしにしてて悪いけどさ、機嫌直してくれって」

ペトラ

( ̄^ ̄)

「別に~。わたし、怒ってなんてないもん。スバル様はどーぞ、これまでみたいにどこか遠くで危ないこととかいっぱいしたらいいんじゃないですかっ」

すでに一ヶ月、プリステラ関係で放置された。

加えて二ヶ月の放置が確定している。

激しく、へそを曲げてしまっているのだ。

つんと澄まし顔を作りながら、せかせかと屋敷の廊下を歩いていく。

スバルはその後ろを平謝りしながら、とにかく機嫌を直そうと言葉を尽くしている。

💥 水月

子どもじゃない、と頭突きが飛ぶ

スバル

「そりゃ一ヶ月もロズっちと屋敷に取り残されてたら息が詰まっただろうけど、一応はこれもお仕事なわけだから選り好みは……ぐえ!」

ペトラ

(#`ω´)

「そんなことで怒ったりなんてしません! わたし、子どもじゃないんだから! フレデリカ姉様やラム姉様もいるのに、変なこと言わないで」

スバル

(´;ω;`)

「男の胸に飛びついて、水月に頭突き入れるような子が子どもでなくてなんと……」

人体急所を打ち抜かれて、悶絶する。

両手を腰に当てて、薄い胸を張る姿のどこに『子どもらしさ』以外を感じろという話だ。

だが淑女は、精神に肉体が追いつく前に出来上がっているものである。

📏 一ヶ月で

ペトラも、成長している

スバル

「でもペトラ、前よりちょっと頭突きの位置が上がったか? 前は懐に飛び込んでから一拍、伸び上がるタイミングがあったと思ったのに」

ペトラ

( ̄ω ̄)

「……呆れた。ベアトリスちゃんにも言ったでしょ? ほら! ちゃんと見て。わたしも一ヶ月で成長するの。背も伸びたし、足も伸びたし、顔も可愛くなったでしょ」

スバル

「あー、確かにちょっと伸びたか? 背も髪も。顔は元々可愛かったけど」

元々、ペトラはアーラム村一の器量よしだった。

村の男児の憧れにして、お嫁さんにしたい女子不動の一位。

屋敷のメイドとして引き抜く際には、すったもんだがあったものだ。

泣きじゃくる子どもたちを相手に、村の広場のど真ん中で繰り広げられる大相撲大会。

最後には大人も乱入し、何故かボロボロにされたスバルが胴上げされて終わった。

謎の通過儀礼だった。

😟 心配です

ペトラは、本気で案じている

よしよしと、拗ねる少女を慰めるように両手を開いてみせる。

ペトラは少しだけ躊躇う仕草を見せてから、腕の中に飛び込んできた。

ペトラ

(´・ω・`)

「スバル……じゃなくて、スバル様。また、危ないことしにいくの?」

スバル

「危ないことって決まったわけじゃないぜ? いや、危ないかもしんないなぁぐらいの話が出てるけど、実はものすごい格安安全ツアーの可能性もある」

ペトラ

「どっちがどのぐらいの可能性?」

スバル

「八・二で、安全の方が分が悪いかな?」

ペトラ

(-_-)

「それ、だいぶ危ないと思うよ、わたし」

突っ込んだ話に持ち込まれると、嘘をつけないのもスバルの悪い癖だ。

ペトラ

「わたし、心配です。スバル様っていっつもそう。初めてお屋敷にきて、村で会ったときからずっと。あんなにたくさん大変そうなのに、また休みもしないであちこち駆け回って……何もしない旦那様を見習ったらいいのに」

🙋 誰か他の人に

もっと強い人に任せたらいい

ペトラ

「魔獣のときも、魔女教のときも、土蜘蛛とか女神像とか、エリオール大森林のときもお墓掃除のときも大変で、それなのにプリステラでも魔女教とぶつかって、オットーさんたちまで死んじゃ……いかけたのに」

スバル

「危うく、またオットーが殺されてしまうところだった」

オットー死に過ぎ。

ペトラ

「別にスバル様じゃなくてもいいじゃない。誰か他の人に……もっと、強い人とかに任せたらいいのに。旦那様とか、暇じゃない」

スバル

(・∀・;)

「わかった、わかったよ。ペトラがどんだけ、日頃、うだうだ過ごしてるロズワールに対してフラストレーション溜まってるのかはわかったから。何かにつけてロズワールを死地に追いやろうとするのはやめよう。陣営内の不和すぎるから」

おざなりな誤魔化しでは、少女を納得させられそうにない。

何よりペトラは本気でスバルの身を案じてくれている。

ここで余計な軽口を挟むのは、その気持ちに対して失礼というものだろう。

🤔 適任は他にいる

ラインハルトに投げた方が、確実だ

スバル

「まぁ、ペトラの言い分もわかるよ。ちゃんとな。そりゃ、賢者の塔に向かうまでには魔獣もいるらしいし、砂漠の迷宮ぶりは半端ないって話だし、そもそも塔に近付くと癇癪起こした賢者に狙われるってとんでもなこったけど……それでも、誰かに任せようって気にはならねぇんだよな」

ペトラ

(¬_¬)

「……どうして? スバル様、まさか自分が強いって勘違いしてるの? そんな恥ずかしい勘違い、ガーフさんだけで十分だよ」

スバル

(ノ゚Д゚)ノ

「ペトラの採点の厳しさマジ半端ねぇな! ガーフィールに聞かせらんねぇや!」

スバル

「別に俺だって、俺より適任がいないと思ってるわけじゃねぇ。っていうか、砂漠の迷宮抜ける準備があるんなら、ラインハルトに全部ぶん投げた方が色々安全なはずだしさ」

ペトラ

「なら、なんでそうしないの?」

スバル

「なんでだろな。ちやほやされるのは好きでも、名誉欲がある方じゃなかったと自分では思ってんだけど」

👁️ 目が覚めたとき

最初に見るのが、俺であってほしい

自分がどうしてそうしたがるのか、実際のところはよくわかっていない。

ただ、あえて言葉にするとしたら。

スバル

「――いや、やっぱり、これは俺がやりたいことなんだろうな。もっと適任がいるのかもしれなくて、そっちの方が可能性が高いってわかってても、俺がやりたい」

ペトラ

「どうして?」

スバル

「恥ずかしい話……目が覚めたとき、最初に見るのが俺であってほしいからだ」

誰が、とは言わなかった。

言わなくても、ペトラにも伝わっただろう。

🫀 感情をぶっ込んだら

俺の全部で、全部を救ってやりたい

スバル

「感情抜きで、理屈だけの話をするならさ……目覚めさせるのは、誰でもいいと思うんだよ。決して目の覚めない、とんでもない病気みたいなもんが蔓延してて、それから救い出すだけの話ならワクチンやら特効薬やらなんて、誰が開発してくれてもいいとは思う。救われてくれるなら、過程なんてどうでもって思う」

ペトラ

「……うん」

スバル

「でも、そこに感情をぶっ込んだら、過程も俺の手でやりたい。俺が助けてやりたい。俺が起こしてやりたい。俺の全部で、全部を救ってやりたい」

もっと強い人間なら、いくらでもいる。

もっと頼れる人間なら、いくらでもいる。

もっと賢い人間なら、いくらでもいる。

もっと素晴らしい人格者なら、いくらでもいる。

だけど、その全部を自分のエゴで蔑ろにして、ナツキ・スバルがいくのだ。

😭 二発目

ペトラは、泣いてから頭突きした

スバル

「自分勝手で、がっかりさせてごめんな」

ペトラ

「――ホントに、がっかりしちゃった。今のでなんにも変わらない、わたしに」

スバル

「んん?」

顔を上げたその丸く大きな瞳は、大粒の涙で潤んでいた。

ペトラ

「えいっ」

スバル

(ノ゚Д゚)ノ

「また鳩尾――!?」

――ゴッ。

無防備な急所狙いに膝が落ちる。

腕をするりと逃れたペトラは大きく飛びずさり、あっかんべーと舌を出した。

ペトラ

(≧д≦)

「スバル様のバーカ! 自分勝手! もう好きにしたらいいじゃないっ」

🤜 おかえりの特権

拳を合わせて、約束する

ペトラ

「二ヶ月して戻ってきたとき、わたしがすごい美人になってビックリさせてあげますからっ。その成長を、間近で見られなかったことを後悔したらいいよ!」

スバル

(-ω-)

「む、それは素直に残念な気持ちがあるぞ」

ペトラも華の十三歳。

二ヶ月も離れていれば、実際に印象が大きく変わってしまいかねない。

ペトラ

(*`ω´)

「とにかくっ! スバル様はそーやって好きに危ないところにいって、いっぱい人に心配とか迷惑かけながら、いつもみたいにしらーっと帰ってきたらいいのっ」

スバル

「そう言われると、俺ってかなり傍迷惑な奴だな……」

スバル

「んじゃ、毎度のことでペトラには悪いけど、いつものように危ないところにへらへら出向いて、んでもって色々なんやかんやしてしらっと帰ってくるのを待っててくれや。出かけた俺らに、おかえりって言うのだけはペトラの特権だ」

ペトラ

「……フレデリカ姉様とかラム姉様にも先に言わせない?」

スバル

「ああ、約束する」

ペトラ

「旦那様にも?」

スバル

「そこは心配しないでも、屋敷戻って最初に顔見せるのがロズワールだったら俺の方が殴り掛かるよ」

ペトラ

(´ω`)

「……ん、わかりました。じゃあ、それで納得してあげます」

🛏️ 最後の一室

足音を、忍ばせてしまう

屋敷に残した問題を解消して回っていると、最後に足を運んだのがその一室だった。

この部屋に上がり込むときだけは、自然と息を詰め、足音を忍ばせる。

おそらくは大声で歌いながら入室しても、室内の様子は変わらない。

それでも無意識に静寂を守ろうとするのは。

寝台に横たわる少女の眠る姿が、あまりにも儚げな疼痛をもたらすからかもしれない。

今すぐにでも、目覚めるものなら目覚めて欲しい深い眠り。

しかし、その眠りを妨げることに、ひどく冒涜的な何かすら感じてしまう。

🤝 一ヶ月ぶり

レムに、話しかける

スバル

「帰ってたのに、顔出すのが遅れてごめんな。ちょっと色々と片付けてて……それで気後れしてるうちに、最後の最後になっちまった」

当たり前だが、眠るレムからの返事はない。

そのことがわかっていながら声をかける表情は、穏やかだ。

エミリアにしか見せられない、何かをなげうつような懸命な表情。

ベアトリスにしか見せられない、命を預けるような信頼の表情。

そしてレムにしか見せられない、押し隠す弱さの表情。

しなやかな指先に、細く白い腕。

柔らかさと生命の温かさがそこにあるのに、不思議と血の通う感覚がない。

――否、命の通う感覚が。

生命を維持する、何がしかの力は働いている。

だが、生命を持続し、全うさせるための力は働いていない。

🦊 聞けなかった相手

あのとき、魔女には聞けなかった

スバル

「やっと、届くかもしれない」

スバル

「期待、煽るだけ煽って駄目だったって可能性ももちろんある。賢者が名前負けのがらんどうで、知識が当てになりませんでしたごめんなさいって可能性も、ある」

スバル

「だけど」

スバル

「エキドナには、ビビッて聞けなかったから」

『聖域』で、魔女の墓所で、夢の茶会へ招かれた際。

スバルは魔女を拒絶することで、その支配の手を逃れた。

それは同時に、レムを救う手段を知る『かもしれない』相手を遠ざける選択でもあった。

断固として撥ね退けた直後は、あの決断で良かったのだと自信が持てた。

しかし時間が経過し、流れる季節がレムを置き去りにするのを感じるたびに。

あのときの選択が正しかったのかどうか、不安になる。

🔥 誓い

俺は、お前を取り戻す

都市プリステラで、レムと同じ被害に苦しむ大勢の人々。

彼らを救うための、プレアデス監視塔への旅路。

しかし本音だけを語るなら、スバルを進ませるのはレムの存在、それだけに他ならない。

不順で不適切、そうわかっていて、それでも。

スバル

「俺は、お前を取り戻すよ、レム。――それは、俺の誓いだ」

あの、最も弱かった日々に、時間に、彼女がいてくれたように。

レムが最も誰かの手を必要とする今こそ、自分がそこにいてやりたいのだ。

🌸 入口から

ラムが、見ていた

❓ 声

「――痛い」

スバル

Σ(゚д゚)

「――ッ!?」

驚いて見れば、レムは静かに瞼を閉じたまま。

ならば今の声は。

ラム

(¬_¬)

「放しなさい、バルス。手、見ていて痛々しいわ」

スバル

「……なんだ、ラムか」

自分の掌に、思った以上の力が入っていたことに気付き、慌てて手をほどく。

ラム

「白魚のようなレムの指が、バルスの情欲に蹂躙されるのは見るに堪えるわ」

スバル

( ̄д ̄)

「その言い方やめてくれる? なんか、俺のさっきまでの決意が一転してこう、汚らわしい感じになるから」

👭 記憶にない妹

ラムには、実感がまだない

ラム

「自分の決意が純粋で清廉なものとでも思っているの? もう少し、自分を丁寧に顧みてから発言なさいな。……瓜二つの容姿のレムに欲情されると、ラムの方も背筋に怖気が走るわね」

スバル

「安心しろ。姉様は外見はそっくりでも、その内面の輝きの違いによって俺の食指が全く動かねぇ。外面だけで判断するような、半端な男心じゃねぇぜ」

スバル

「そろそろ、レムが自分の妹だって実感は芽生えたかよ?」

ラムの中に、半身であるレムの記憶は残っていない。

自分と瓜二つの、おそらく無関係ではないだろう少女。

実感だけで見れば、関係性はそんな希薄なものだ。

ラム

「実感なんて、そうそう芽生えるものじゃないわ。記憶にいないだけならまだしも、ラムはこの子が起きているところに出くわしたこともない。きっとラムに似て、優秀で凛とした子だったと想像はできるけど」

スバル

「優秀には違いないけど、凛としてた記憶はあんまりないな。意外と抜けてて、わりとあたふたするし、暴走気味なとこに困ったことも、結構ある」

ラム

「ない思い出を語るのは、慰みにしても後ろ向きが過ぎるわね。そういうの、ラムの好みではないわ、バルス」

ラム

「……目覚めたら、それで思い出せたなら、いくらでも話ができるわ。仮に思い出せなかったとしても、目覚めてくれさえすれば、いくらでも」

眠る妹の前髪を、指でくすぐる。

その横顔がスバルにはひどく、優しげに見えて。

記憶がなくても、思い出が失われても、絆までもが消えるわけではない。

仮に消えたとしても、また紡げないわけでもない。そう思った。

🌸 初耳

ラムも、ついてくる

スバル

(・∀・)

「まぁ、そこんとこは任せておけよ。『賢者』の監視塔、バッチリ攻略して、きっとレムを起こしてきてやらぁ。そしたら、姉妹感動のご対面ってやつだ」

神妙な空気は、少なくともスバルとラムの間には似合わない。

ただ、ラムはその発言に、やけに不思議そうな顔で振り返る。

ラム

(・_・?)

「何を言っているの、バルス」

スバル

「あん?」

ラム

( ̄ω ̄)

「今回の旅、ラムも同行するんだから、その言い方は恩着せがましすぎるでしょう。感動の対面になるなら、ラムの方で勝手にやるわ」

スバル

(ノ゚□゚)ノ

「初耳なんですけど!?」

問い詰めるスバルに、ラムは耳を塞いで拒絶の態度。

結局、まともな話し合いにならないままに、この準備日も過ぎていく。

――ラムとレム、姉妹揃っての同行確定。

参加者は合計八名の大所帯。

そういう塩梅になりそうであった。

第六章4『君を連れ出す理由』終了。