リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章94

『誰がための決心』

後方の陣幕で待つ者たち。そして、戦場で交わされる「何のために戦うのか」。

⛺ 遠雷

四百年前も、眼下の戦いはうるさかった

ベアトリス「……嫌な音かしら」

今は遠き四百年前、戦乱の絶えない『魔女』の時代。

生まれ育ったのは母の館であり、それは人間たちの諍いと無縁の地にあった。

――それでも、はるか眼下の戦いはうるさく感じられたものだ。

シュルト

(´・ω・`)

「う~、心配であります。不安であります」

ウタカタ

(・_・)

「シューの気持ちわかル。やっぱリ、ウーたちも出ル?」

シュルト

(>﹏<)

「そ、それはダメであります! 僕たちのお仕事は待機! 待機であります!」

『小競り合いならまだしも、大舞台となれば遠ざける方が不憫であろう』

『戦場、狩り場に背を向ける臆病者ハ、シュドラクの民に相応しくなイ』

――どちらも異なる倫理観や信念からの発言だが、当事者が納得している以上は。

👀 爆弾

置き去りにする選択肢だけが、なかった

シュルトたちと違い、ルイだけは置き去りにする選択肢がなかった。

オットー「現状、一番動きの見えない爆弾が彼女です」

オットー

「ベアトリスちゃん、あまり負担はかけたくありませんが、目を光らせていてください」

オットー

「このことはエミリア様やガーフィールには話せませんから」

――あの面構えで冷静のつもりでいるのが不安だ。

同じ懸念はペトラやフレデリカも抱いていたので、彼女たちがどうにかしてくれたと思うが。

ベアトリス

(¬_¬)

「あんまりソワソワするんじゃないのよ。落ち着いているかしら」

ウタカタ

「ベー、起きタ?」

ベアトリス

(╬¬_¬)

「あと、その呼ばれ方は不愉快かしら。あっかんべーってされてる気分になるのよ」

😖 憎たらしい

何のつもりなのか、と問いかけてみる

ルイ

「うー?」

ベアトリス

「……お前、何のつもりなのよ」

『暴食』が権能を振るうには相手の『名前』を呼び、食べる必要があるはず。

――だが、彼女の口から意味の正しい音が発話されたことはなかった。

ウタカタ

「ベー、顔怖イ。ルーのこト、まだ嫌ってル?」

ベアトリス

「ベティーはこの娘のことを嫌ってるんじゃないのよ。……憎たらしく思ってるかしら」

ベアトリス「痛恨なのよ」

もしもベアトリスがもっと早く胸襟を開いて、協力する姿勢を見せていたなら。

眠り続けるレムの傍で、スバルが悲しい顔をし続けることにならずに済んだのだと。

スバルと離れ離れになった挙句、満足に力を貸すこともできない。

――存在意義は、ボロボロだった。

シュルト

「べ、ベアトリスちゃん、そんな言い方はルイ様が……」

ベアトリス

(╬゚д゚)

「なんで他の奴は様付けなのに、ベティーのことはちゃん付けかしら。敬いが足らんのよ」

🚪 陣を動かす

出番だ、と声が弾む

ズィクル「――どうやら、私が口を挟むまでもなかったようですな」

ウタカタ

(≧▽≦)

「ズー! 忙しいのにここにきタ! ウーたちの出番ダ!」

ズィクル

「頂点が開けば帝都の水晶宮へ乗り込むことになる」

ズィクル

「その際、指揮官も前線へ出なくてはなりません」

ベアトリス

「アベルは戦えるように見えんのよ。後ろで指示に集中している方が安泰かしら」

ズィクル

「仰る通り……ですが、それでは兵がついてきません」

ズィクル

「仮に皇帝閣下をどかせられても、玉座に座ることを誰も認めない」

ベアトリス

(;´Д`)

「――。厄介なお国柄なのよ」

ズィクル

「ええ、厄介です。ですが、それが我らの祖国です故に」

💐 声援

なぜ自分で来たのか、と尋ねられる

ベアトリス

「どうして、わざわざお前がきたのよ。お前の立場なら部下に命じればいいかしら」

ズィクル

「ああ、そのことですか」

ズィクル「出陣前の声援をいただくなら、やはり女性の方が心が躍りますので」

ベアトリス

( ゚д゚ )

「……は?」

シュルト

「なるほどであります! 確かに、ここにはウタカタ様もルイ様も……」

ウタカタ

「諦めル。ズー、最初からこんな感ジ」

ベアトリス

「ゆ、唯一まともな奴だと思ったのが大間違いだったかしら……」

ズィクル

「それに、自分の背後に何があるか心得ておけば、迷わずに済むだろうという目算も」

ベアトリス

「――。お前、家族はいるのよ?」

ズィクル

(´ー`)

「母や多数の姉妹が。……とんだ家族不幸者です」

🗡️ 祝福

何のために戦うのか、と問いを向ける

ベアトリス

「お前は、何のために戦うのかしら」

ベアトリス

「戦うために戦うような、そんな奴らとは違うはずなのよ。どうしてかしら」

ズィクル

「無論、私が信を置き、忠を捧げるヴォラキア帝国の明日のために」

ズィクル

「もっとも、所詮は『臆病者』ですから、どこまで抗せたものか怪しいものです」

ズィクル

「ですから、いただけませんか、ベアトリス嬢」

ベアトリス

「……何をなのよ」

ズィクル

(・∀・)

「決まっています。――麗しの乙女の祝福を」

ベアトリス

「言っておくけど、作法なんてよく知らないかしら」

ズィクル

「与える側と受け取る側と、その心が通じていれば作法は重要ではありません」

スバルが、エミリアの手で騎士叙勲を受けたときのことを思い出し、それに倣った。

ベアトリス「しっかりやってくるかしら。他ならぬ、お前自身の願いのために」

ズィクル

( •̀_•́ )

「御意に」

🩸 強くあレ

戦士の流儀で、送り出す

ウタカタ

「ウーはシュドラクの戦士、だからベーみたいなことはしなイ。戦士の流儀で送ル」

獣の牙で作られたナイフで薄く肌を切り、血で濡れた掌を鎧に押し当てる。

ウタカタ「シュドラクの血、強い戦士の血ダ。ズーも強くあレ」

ズィクル

「ありがたく」

シュルト

(≧▽≦)

「僕は思いつかないので、応援するであります! ふれー! ふれー! ズィクル様!」

ズィクル

「おっと」

ルイ

「あう、うーう」

するりとベアトリスの手を抜け、ルイがズィクルの腰に抱きつく。

――とっさに制せなかったのも、不穏な気配がなかったから。

ズィクル

「ズィクル・オスマン、出陣してまいります。――どうぞ、達者で」

シュルト

「ご武運を! であります!」

母の助言に未来を見て、多くのものが館に背を向け、自分の未来へ向かった。

――ズィクルの背は、そのときの彼らと同じに思えた。

ベアトリス

(¬_¬)

「お前は、本当にどっちの立場なのよ」

🧊 七体の味方

監視塔で編み出した戦法を、ここで使う

監視塔で『試験』を受けたとき、苦肉の策で生み出した戦法だった。

――「スバルのことならよく見てる!」という自信が結び付いた結果。

エミリア「だから、今はただの兵隊さんで頑張りましょう!」

正式な名前は、ちゃんとスバルに披露したときに付けてもらうつもりだ。

マデリン

「がぁぁぁ!!」

指を引っかけただけで、鉄ほどでなくても頑丈な氷が簡単に壊される。

エミリア

(´・ω・`)

「ごめんね」

スバルに似せた兵隊が壊され、頭の中でベアトリスの悲鳴が聞こえる。

🦵 足の方が力持ち

回転が速すぎて、円盤にしか見えない

マデリン

(╬゚Д゚)

「いい加減! ふざけるんじゃないっちゃ!!」

凄まじい速度で回転する飛翼刃は、あまりの回転速度に円盤にしか見えない。

エミリア

「お願い!」

ずらりと縦に並んだ氷兵が、全員が手にした氷の武器で飛翼刃に立ち向かう。

――結果、氷兵が全滅する。しかし、どのスバルも砕かれる寸前に一発を与えた。

回転がほんのわずかに、気持ちだけ、ちょっぴり、弱まった気がする。

エミリア

「ううん! 弱まった!!」

――エミリアは知っている。足の方が腕より少しだけ力持ちなのだと。

エミリア「えい、やぁ――っ!!」

掴んで投げ返した飛翼刃は、見当違いな方向にすごい飛んでいってしまった。

マデリン

「……お前は、何の、つもりだっちゃ」

エミリア

(´;ω;`)

「失敗しちゃった……」

🧱 氷の壁

あの武器は、取り戻させない

エミリア

「悪いけど、あの武器は取り戻させない。続けるなら、あれなしでやりましょう」

エミリア「もしも降参するなら、それはちゃんと受け入れます」

エミリア

「ううん、そうしてくれた方がすごーく助かる。どうする? 続ける?」

マデリン

(╬゚д゚)

「――どうして、竜がやめると思うっちゃ」

ぴしりと甲高い音が鳴り、巨大な氷の壁の全体に蜘蛛の巣状の罅が入る。

マデリン

「お前らニンゲンと話してると、竜の頭がおかしくなるっちゃ」

マデリン

「お前も、あの癒者も、老いぼれも竜の邪魔ばかり……ッ」

まるでマデリン自身、自分の感情の一番強いものがわからないでいるみたいに。

💗 大事な騎士様

何のために戦うのか、を先に自分から答える

エミリア

「マデリン、あなたは何のために戦うの?」

マデリン

「……お前に、なんで」

マデリン

「お前こそ、なんで逆らう。竜に逆らって、勝ち目なんてないっちゃ」

マデリン

「なんで、お前は、お前たちは抗うっちゃ」

何も言い返せないと思った。だが、そうではなかった。

――語らせられないなら、自分の方が先に胸襟を開くべきだった。

エミリア「私の、大事な騎士様を迎えにきたの。……ううん、みんなの大事な騎士様」

髪型や『じゃあじ』もかなり上手に再現できた。

――でも、どれだけうまく似せても、スバルの頼もしさは再現できない。

思い浮かべるだけで胸をポカポカと温かくしてくれるらしさは、本人しか持ち得ないから。

エミリア

「たくさんの人が帰りを待ってるから、私はここにいる」

エミリア

( •̀_•́ )

「私が戦うのは、それが理由。マデリン、あなたの方は?」

🖤 良人になるはずだった

握りしめた手から、氷壁全体が砕けていく

マデリン「――バルロイ・テメグリフ」

エミリア

「……その、名前は?」

マデリン

(・・・・・・)

「竜の、良人になるはずだった男の名前。――竜の戦う理由の、全部だっちゃ」

――すでに失われたもののために戦うマデリンに、期待と願いは裏切られる。

マデリン

「――バルロイを殺した男を殺す。それが、竜の宿願」

壁に当てた手が握りしめられ、そこから発生した破砕が氷壁全体に行き渡る。

☁️ 雲龍

その響きに、聞き覚えがあった

マデリン「メゾレイアぁぁぁぁ――!!」

そのマデリンの響きには、聞き覚えがあった。

エミリア

「あのときは、すごーく大きな攻撃が」

降り注いだ白い光が、ほんの一息で城郭都市を薙ぎ払い、地形を変えてしまった。

――あのときはプリシラが一緒にいたから、二人でどうにか防げた。

その頭上、同じことは起こらなかった。

――でも、同じことが起こらなかったことを、大喜びすることもできなかった。

メゾレイア

『――我、メゾレイア。我が愛し子の声に従い、天空よりの風とならん』

白い両翼を羽ばたかせ、その大きな体に雲を纏った巨体が、帝都の空へ舞い降りた。

第七章94『誰がための決心』終了。