第七章93
『石塊の軍勢』
第三頂点。押し寄せるのは、顔も声も持たない石の人形の大軍だった。
🗿 数千体
人間らしい部位がないから、急所もない
目や鼻、耳のない頭部を矢が穿ち、石で造られた人形が大きくのけ反る。
――だが、人間らしい部位のない頭部は人間らしい急所にもなり得ない。
( •̀_•́ )
「頭潰すだけじゃ足りねーんなラ……ホーリィ!」
(・∀・)
「わかってるノー!」
(>﹏<)
「まるで木の蜜に集まるありんこなノー! こんなのとても倒し切れないノー!」
(╬゚д゚)
「泣き言ほざいてる場合かヨ! 撃て撃て撃ちまくレ! いくらでも当たル!」
――石人形の数は数百体から数千体、数え切れないほどいるからだ。
(;゚Д゚)
「みんなみんな、生きてるっぽくないノー!」
( ゚д゚ )
「アタイもおんなじ意見ダ! こいつラ、どういう仕掛けになってやがル!?」
💪 返り討ち
二人を唖然とさせたのは、そのどちらでもない
両腕に握った棍棒を振り回し、飛びかかってきた石人形を打ち砕いていく。
(╬゚Д゚)
「邪魔だ邪魔だ邪魔だぁ!」
(╬゚д゚)
「仰ぐべき皇帝閣下の威光もわからねえ帝国の恥共が、オレに立ちはだかってんじゃねえ!」
だが、真にクーナとホーリィを唖然とさせたのは、そのどちらでもなかった。
🍷 悪夢のように
戦線を支えているのに、倒れてほしいと思う
鮮やかとは言い難く、荒々しく暴力的な斬撃。
――だがそれは、破壊を必要とする石人形を相手する上で、理に適った剣技だった。
亡霊のような風貌の男が石人形を斬り捨てていく光景は、悪夢のように現実味がない。
同じものを見たホーリィの呟きに、クーナは賛同できなかった。
――クーナの目にはもっと直接的な、死にたがっている顔に見えた。
死にたがっていながら死を恐れ、死に猛然と抗っている姿。
彼の存在が戦線を支えているとわかっているのに、今すぐ倒れ、死んでほしかった。
🎯 心臓を狙う
姉の背中に隠れることを、やめている
「足を止めるのは危険でス。姉上やジャマルが作った道ヲ」
(´・ω・`)
「言われなくてもわかってんダ、族長。……ちっト、目を奪われてただけデ」
「ハインケルですカ」
「族長は不気味に思わないノー?」
( •̀_•́ )
「必死なのモ、戦力になるのも事実なラ、彼と戦うことに私は異存ありませン」
「一発で落とすのはコツがありまス。心臓を狙うんでス。――こうしテ」
素早く三射。三体の背を、頭部を、腿を矢が貫き、射殺してみせた。
( ゚д゚ )
「待て待て待テ! なんで一発で死ぬんダ!? 心臓?」
(´・ω・`)
「石のお人形なのに、心臓なんてどこにあるのかわかんないノー」
(・∀・)
「ソ、そうですカ? しっかり見れバ、重要そうな場所がわかると思いますガ……」
そのタリッタの判断と発言に、クーナは本気で驚き、感じ入る。
――本当にタリッタは、姉の背中に隠れ続けることをやめたのだと。
🤝 盟約の先
盟約のための戦いが、自分たちの戦いになる
「マリウリのことがあったときなんテ、見ちゃらんなかったガ……」
(≧▽≦)
「タリッタが立派になって、私たちも嬉しいノー」
かつてのヴォラキア皇帝とシュドラクの民との間で交わされた、古い盟約。
――もはや現代を生きる彼女たちにとって、忘れたとて責められる謂れのない約束。
それを果たすために始まった戦いは、しかし今確かに、
シュドラクの民として、勝ち取らなくてはならない戦いとなったのだ。
❓ 重たい枷
――剣はいつだって自分にとって、見た目以上に重たい枷でしかありえなかった
何故、帝国の大地で自分は剣を振るっているのか。
何故、あれだけの恥を晒したあとで、まだ剣を握っていられるのか。
――何故、見せなくてはいけない相手が不在の地で、自分は。
剣を振るのが楽しかったことなんて、思い出せない。
――剣はいつだって自分にとって、見た目以上に重たい枷でしかありえなかった。
(╬¬_¬)
「クソ」
🌀 思考は尽きない
考えるな、を実践しようとすると考えてしまう
無心になれと、剣の修練ではよく教えられた。
――何度言われても、何を言われてるのかわからない教えだった。
考えるなと言われ、それを実践しようとすれば、「考えない」ということを考えている。
生きていれば腹が減る。呼吸だってする。心配事は尽きない。
明日の不安どころか十秒後の不安も尽きず、昨日の失敗をくよくよと気にしている。
――積み重なり、延々と、思考は尽きない。
無心になれる剣士とは人間ではないのか。――だから自分は、剣士ではないのか。
「クソがぁ!」
🐯 挽回だぜ
追い払っても、少年はたびたび顔を出した
『生憎と、俺様にゃァ、オッサンが抱えてるッもんはわかりゃしねェ』
『しくじったッてのも、どのぐれェやらかしッたのか知りもしねェ』
『ッけどなァ、やらかした経験なら俺様にもあんだ』
一度、適当なことを言って追い払ったあとも、少年はたびたび顔を出した。
――ひどく幼稚で安っぽい、鼻で笑いたくなる青臭い理想論を。
(╬゚Д゚)
「うるせえんだよ、クソガキがぁ!!」
欲しいモノはない。与えてほしい人がいるだけだ。
――その相手からもらえるもの以外は全部、引きずって歩くだけの重石なのだ。
「クソったれが……っ」
🏃 明らかに低い
――他の四つの頂点と比べて、明らかにこの頂点だけ防衛力が低い
――他の四つの頂点と比べて、明らかにこの頂点だけ防衛力が低い。
誰か一人でも本物の強者が居座っていれば、こんな風に先頭を走ることはありえない。
「あの背を追え――!」
「赤毛の男に手柄を取らせるな! 我々も続くぞ!」
「悪くない剣技ダ。髭を剃れバ、もっと見られる顔になル」
(;´Д`)
「クソが……こい、もっとこい! こんなんじゃ、点数稼ぎにも」
そのまま城壁に取りついて、壁上の敵を一掃すれば第三頂点の攻略――
🗿 モグロ・ハガネ
攻略すべき城壁そのものが、動き出す
「――お前、一番私、殺した」
攻撃されたわけでもなく、ただ声をかけられただけ。それだけで全身が竦み上がった。
――手も足も出ない、脅威に出くわしてしまった。
(・_・)
「一番、私、殺した。だから、私も、お前、殺す」
城壁に生まれた無数の『光』。拳大の、明るく光り輝く緑色の球体。
それは元々城壁になかったのだ。何もなかった壁に、突如として。
――まるで生き物の目のように見えた。その全部と、一斉に目が合ったように思えた。
(×Д×)
「ひ」
「吹き飛ぶ」
巨大な石製の拳が、跳躍しているハインケルを捉え、打ち上げた。
攻略すべき星型の城壁、第三頂点そのものが動く。
――それこそが『九神将』の一人、モグロ・ハガネを名乗った強大な存在であった。
第七章93『石塊の軍勢』終了。
クーナ
ホーリィ
「――石でできた人形ガ、邪魔をするナ!!」
ジャマル
タリッタ
ハインケル
モグロ