リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章69

『帝都より来たる』

跳ね橋が下りる。渡ってきた馬車の屋根の上に立っていたのは――。

🗓️ 三日

三日、死合いが一度も組まれていない

二回目の『スパルカ』と大宴会があった日から、三日が過ぎた。

三回目の『スパルカ』も、通常の死合いも、一度も組まれていない。

ヒアイン「看守たちもやけにピリピリしてやがる。ま、兄弟と俺たちにビビッてんじゃねえか?」

先に兄弟と呼んだのはスバルだが、あちらからも兄弟分扱いだ。

スバル

(´ー`)

「まぁ、全然悪い気はしないけど」

ヴァイツはどっしりとした信頼を、イドラはどことなく敬意を。

そして、その変化は島の剣奴たちにも広がっていた。

「よお、シュバルツ、今日もいい目つきしてるな!」

「看守たちが嘆いてるぞ。このままじゃ剣闘獣がいなくなっちまうってよ!」

🔑 鍵の在処

島と外を繋ぐ、唯一の手段を調べる

島と外を繋ぐ唯一の手段。その操作方法と、制御塔への入り方。

スバル「――跳ね橋の制御塔」

塔は跳ね橋の袂にででんと立っている。見張りはいないが、立派な鍵つき。

跳ね橋はグスタフが自分で操作しているようで、鍵は本人が持ち歩いている公算が大。

スバル

(・・・・・・)

「うーん、グスタフさんとやり合うのは分が悪い」

あの見た目で腕が四本。荒くれ揃いの剣奴を支配する立場だ。弱いはずがない。

スバル

「そもそも、グスタフさんと事を荒立てたくない……」

一度も声を荒げず、ちゃんと話せている貴重な人。理想は、こっそり盗み取ること。

看守たちへの探りも空振り続き。どこにいても厳しい視線が向けられる。

スバル

「そう、ナンパは数だって偉い人が言ってた。ナンパじゃないけども」

🤜 借りがある

なぜ地下まで来たのか、を明かされる

ヴァイツ

「落ち着きかん奴だな、シュバルツ……」

スバル

(・∀・)

「こんなところで何してるの? かくれんぼ?」

ヴァイツ

「それがなんだかは知らんが、たぶん違うぞ……少し、地下の様子を見にきた……」

地下は湖に直接繋がっているだけ。目的は、死体を捨てること。

ヴァイツ

「オレたちも、負けていたら同じように魚の餌にされていた……」

ヴァイツ

「オレたちは……剣奴の立場に、支配される立場に甘んじるべきか……?」

スバル

(¬_¬)

「ヴァイツ、あんまり迂闊なことは言わない方がいいと思うよ」

ヴァイツ「どうしてオレが地下にきたと思う……お前に手を貸すためだ……」

ヴァイツ

「お前が何者かはわかっている……」

スバル

( ゚д゚ )

「え」

ヴァイツ

「だが、それは関係ない……オレは、お前の被る冠に興味はない……」

ヴァイツ

「ただ力を貸す。それを覚えておけ……」

スバル

( •̀_•́ )

「……心強いぜ、ヴァイツ」

🌉 揺れ

地の底が揺れるような、低い音がする

ぐらぐらと、地の底が揺れるような震動と低い音。

スバル「――っ、この揺れ!」

ヴァイツ

「跳ね橋か……」

島全体を揺らす仕掛けは、剣闘場と跳ね橋しかない。

――そして今、剣闘場に繋がる通路は二人で塞いでいる。

タンザ

「シュバルツ様、こちらです」

タンザ

「……塔の方を窺っておりました。やはり、鍵はグスタフ様が所持されているようです」

スバル

(;´Д`)

「う、やっぱりそうか」

ヴァイツ

「鍵を奪えばいいなら……数で仕掛けるか……?」

スバル

(>﹏<)

「短気すぎる作戦だなぁ! 大体、そんな無謀な真似しても呪則でやられるよ」

――呪則がないという話は、まだタンザ以外に打ち明けていない。

もし広まれば、剣奴サイドと管理サイドの全面戦争が始まってしまう。

スバル

「看守はみんな、角を折った魔獣を飼ってるから、とんでもない被害になる」

😨 最悪のタイミング

馬車の屋根の上に、誰かが立っている

鎧を着た黒い疾風馬が引く馬車。だが、前回とはひとつ違うところがあった。

――馬車の、屋根の上に誰かが立っている。

揺れる屋根の上に、褐色の肌で、細い体をした、女の人が。

その顔を目にした途端、スバルは喉の奥で悲鳴を押し殺してしゃがみ込んだ。

タンザ

(´・ω・`)

「し、シュバルツ様? どうされましたか、突然そんな風に……」

スバル

(;゚Д゚)

「あの、女の人は、ヤバい」

スバル「――名前はパッと出てこないけど、『九神将』だ」

前に、グァラルで大暴れした、銀髪に眼帯をした強すぎる女の人だった。

📜 使者

今回の来訪者は、剣奴ではないらしい

イドラ

「今回の来訪者は剣奴ではなく、どうやら帝都からの使者らしい」

ヴァイツ

「あの女、オレに気付いてこっちを見たぞ……」

百メートルは離れていた。それで視線を感じるなんて怪物だ。

タンザ「犬人の半獣で、『九神将』……おそらく、アラキア一将で間違いないかと」

タンザ

「以前、カオスフレームのヨルナ様を狙った方のお一人です」

タンザ

「私はこの目では見ておりませんが、都市をひと区画、丸々炎で包んだとか」

ヒアイン

(;´Д`)

「い、いくら何でも冗談きついぜ。なぁ?」

スバル

「ただ普通に強い奴が、俺は一番困るんだ」

工夫でどうにかできる相手なら勝ち目はある。実力差が離れすぎていると、途端に消える。

タンザ

「敵、と決めつけるのは」

スバル

(・・・・・・)

「まだ早い、か。うん、うん、それはそうだ。それはそうなんだけど……」

🎪 興行

この時期に来ること自体が、おかしい

イドラ

「ヒアイン、わからないのか? 今、帝国は二分されているんだぞ」

ヒアイン

(╬゚д゚)

「え? あ、ああ! クソ、そういうことかよ……!」

スバル

「じゃあ、帝都から何の目的で使者が島に?」

ヴァイツ

「考えられるとしたら……島の興行、か……?」

タンザ

「興行……この、剣奴孤島の本来のお役目ですね」

ヒアイン

「反乱が起こっててあちこちが慌ただしいってのに、こんなときにやるか!?」

イドラ

「こんなときだからこそ、という考えもある」

イドラ

「帝国民は精強たれという考えを引き締める目的が……」

帝都で指示を出している皇帝が偽物なのを、スバルは知っている。

――アベルとほとんど同じだけのことを考えられる相手が、無駄足を踏むとは思えない。

スバル「絶対、何か理由があるはずだ」

🚪 出ていく

使者の馬車に隠れる、という案が出る

ヴァイツ

「逆に考えれば、どうだ……使者の乗ってきた馬車に隠れ、島を出る……」

スバル

(¬_¬)

「馬車に隠れる流れ、カオスフレームのときにもうやったと思ったんだけど」

タンザ

「同じ方法でも、何度でも通用するなら構わないと存じますが……」

ヒアイン「島を出るって正気か!? 死ぬぞ!?」

ヴァイツ

「このまま居残っても、いずれ何かと戦わされて死ぬぞ、ヘタレ……」

タンザ

「シュバルツ様と同じく、私もここに長居していられない理由がございます」

イドラ

「わ、私は……出られるものなら出たい、と考えているが」

スバル

「困らせてごめん、ヒアイン。だけど、お前も考えてほしい」

スバル

「ここに、ずっといるべきなのかどうかってことは」

ヒアイン

「……出ていくったって、呪則はどうすんだよ」

スバル

「呪則のことも、どうにかする。実は、その方法もヒントは掴めてるんだ」

スバル

( •̀_•́ )

「きっと、俺が島から出る方法を見つけてみせる。だから――」

💥 なんで?

――ヒアインが、目を血走らせて倒れた

そのときは、力を貸してほしい。――そう、続けるつもりだった。

でも、スバルの言葉は続けられなかった。

――ヒアインが、目を血走らせて倒れた。

重々しい音を立てて、大きな体が床にぐったりと倒れる。

びくびくと、手足が痙攣するだけだ。真夏の道路でひっくり返っている蝉みたいに。

――ヒアインだけじゃなかった。

イドラとヴァイツと、タンザがその場に倒れて、おんなじように震えていた。

スバル

(・_・)

「タンザ?」

ひっくり返した彼女の目から、血の涙が流れた。目と、鼻と、耳からも。

ずきりと、強い痛みが頭を打って、スバルの鼻からボタボタと血が流れる。

順番が、違う。タンザたちよりも遅いけれど、スバルもおんなじ痛みがある。

スバル

「おか、しい……」

🩸 みんな死んでた

島の中を見て回って、わかったこと

隣の共同部屋も、あちこちの通路も、大広間も、跳ね橋の袂も、みんなダメだった。

足を引きずって、チカチカする目で、服を血塗れにして、島の中を見て回った。

みんな、死んでた。みんなみんな、死んでた。

みんな目から、鼻から、耳から血を流して、死んでる。死んでた。

スバル「なんで?」

剣奴も、看守も、みんな区別されない風に。いきなり、突然に。

信じられなくて、受け入れられなくて、たどたどしく聞くしかない。

――誰にって、空に。空じゃなかったら、水に。

「――なぁ」

答えをくれそうな誰かの声に、スバルは振り向いて、そして。

🪓 トッド

人懐っこい顔は、とんでもない誤解だ

トッド「――お前さん、こんなところで何してるんだ?」

明るい橙色の髪を、赤いラインの入った黒いバンダナでまとめた帝国兵。

パッと見は人懐っこい顔。でも、それはとんでもない誤解だ。騙されちゃダメだ。

スバル

(╬゚Д゚)

「――トッド」

記憶の引き出しが開けづらくなっているはずのスバルが、あっさり引き出せる名前。

トッド

「――。お前さん、なんだって俺の名前を知ってる?」

呼びかけ一つでガラッと態度が変わり、乱暴に壁へ押し付けられる。

トッド

「見覚えないな。一度見た顔は忘れないんだが、知らない顔だ。――いや」

トッド

「お前さん、俺の知ってる怖い奴と似た臭いがするな」

アラキアを連れて逃げたトッド。――気付くべきだった。

スバル

「なんで、みんなを……」

トッド

(´ー`)

「殺したのかって? 答えんよ、そんなこと」

トッド

「俺からすれば、お前さんが生き残ってる方が誤算だ」

トッド

「時間だの偶然だの、そういうモノに丸投げするのは嫌いでな」

🔪 選べ

奥歯を探った次の瞬間、指がねじ込まれる

首に当てられた、大振りなナイフの冷たい刃。

――万一の可能性があった。ここで殺さないで、後回しにされる可能性。

何かを聞き出そうとされる可能性。それをされたら、取り返しがつかなくなる。

奥歯を舌で探った、次の瞬間。トッドの指が口の中にねじ込まれた。

トッド

「……なんだこれ。まさか、毒か?」

トッド

「わざわざ毒を口の中に仕込んでたってことは、いざってときの自殺用だろ?」

トッド

「命を粗末にするなんてどうかしてるぞ」

トッド

「そうだな。別に苦しめたいわけじゃない。使ってもいいぞ」

トッド

「ああ、死んでくれるなら自殺でもいい。俺もナイフを汚さないで済む」

強く噛めば包みが破れる位置に、ご丁寧に『薬』を戻される。

トッド

「俺はどっちでもいい。お前さんが死ぬんならな」

トッド「時間切れ、自殺、ナイフ」

トッド

「選べ」

☠️ 猛毒

なぜこの男だけ生きているのか

タンザも、ヒアインも、ヴァイツも、イドラも、死んだ。

オーソンたちも、ヌル爺さんも、看守の人たちも、みんな死んだ。

――なんで、トッドは生きているのか。

強く奥歯を噛む。包みが破れて、『薬』が漏れ出す。

口の中に溢れ返った血を、目の前のトッドに思いっきり吐き出した。

――道連れじゃない。一矢報いる気持ちで、服を汚してやろうと。

でも、トッドは勘がよかった。身構えた瞬間、横に飛ばれた。

血が燃えるみたいに熱い。煮えた鍋に突っ込まれたみたいに、熱い。

痛い、痛い、痛い、痛い。痛いのだけで、死んでしまいたくなる。

トッド

( ゚д゚ )

「お前さん、どうかしてるぞ」

トッド「――普通、自殺するための毒なら苦しまないのを用意するだろ」

🔁 冷たい空気

楽な死に方などない、と思い知らされる

ヴァイツ

「お前が何者かはわかっている……」

ヴァイツ

「だが、それは関係ない……ただ力を貸す。それを覚えておけ……」

焼ける、燃える、全身が削られる痛み。それが突然途切れて、冷たい空気の中にいた。

スバル

(×Д×)

「あ、ぁ……」

ヴァイツ

「シュバルツ……?」

スバル「あああああ――ッ!!」

自分の中から毒を追い出そうとする。もう、体の中にいないはずの毒を。

――あの薬がもたらす『死』は、スバルに楽な死に方などないことを思い起こさせる。

絶対に逃げてはいけない、最後の砦の番人なのだった。

第七章69『帝都より来たる』終了。