リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章36

『混沌たる魔都』

魔都カオスフレーム、到着。紅瑠璃城の広間で待っていたのは、あり得ない先客だった。

🕸️ 蜘蛛の巣の街

御者台の指差す先に、目的地が見えた

ルイ

(ノ≧∀≦)ノ

「あー! うー!」

御者台のルイが、正面の街並みを指差して尻を弾ませる。

ナツミ

「あれが、魔都カオスフレーム……」

都市とは、統一された様式やルールの上に建つもの。

――そのはずだった。

・煌びやかな建物の隣に、古びた廃墟

・背の低い通りに、突如そびえる倍以上の尖塔

・緑の公園に隣接する、荒廃した砂地

・街並みの上を覆う、勝手に継ぎ接ぎされた梁と足場

遠目には、都市全体が蜘蛛の巣で覆われているようだ。

規律も整頓も、総じて『まともさ』と無縁の都市。

⛓️ 湖に浮かぶ闘技場

アルの、ヴォラキア暮らしの話が出る

アル

「――『巨人の一突き』であっさり崩れそうな街並みに見えるよな」

アル

「オレもヴォラキア暮らしは長かったが、東側にくんのは初めてで新鮮だわ」

ナツミ

(・_・)

「じゃあ、ずっとヴォラキアの西側に?」

アル「剣奴孤島って、湖の真ん中に浮いてるコロシアムがあんだよ」

アル

「オレ、そこでずっと剣奴やってたから」

重たいものだからこそ、気軽に話す。

――こちらの精神的な負担は、まるで軽減されていないのだが。

ナツミ

「……そういや、『巨人の一突き』って?」

アル

(・∀・)

「あれ? 兄弟の地元じゃ言わなかった? 地震とか、そういうもんのことだけど」

ナツミ

(´ー`)

「もしかして、野球の球団とかかってたりする?」

アル

( ̄ー ̄)

「野球が特別好きだった覚えはねぇけども」

👁️ 単眼の門兵

勝負所のはずが、あっさり通される

グァラルの検問を思えば、ここが勝負所――のはずだった。

🛡️ 門兵

「――入れ」

ミディアム

(´▽`)

「りょーかい! ありがとね」

馬車の中をぐるりと見回しただけで、許可が下りた。

拍子抜けである。

ナツミ

「あの単眼には、何か特別なものを見る力が宿っているのでは……?」

アベル

「深読みしているようだが、単眼族にそのような力はないぞ」

アベル

「多少、二つ目よりも遠くが見られるとは聞くが、概ね、目の働きに違いはない」

ナツミ

(#^ω^)

「でしょうね! だって、こんな怪しい馬車を素通りさせてますもの!」

アベルは魔都に着くなり、赤い鬼の面を被り直していた。

怪しまれると散々訴えたのに、門兵の反応は彼の予見した通り。

――二重の意味で、苦い。

タリッタ

「私モ、ナツミと同意見でス。袖のある服を着ているのニ、何も言われないなんテ」

ナツミ

(・_・;)

「んん……その驚き、わたくしの驚きとちょっと質が違うものですわね……」

🧬 種族の坩堝

誰もが堂々と、己の種を主張している

都市に入って、まず目につくのは人種の多さだ。

・猫人、犬人、兎人、獅子人――大小さまざまな獣人

・爬虫類めいた蜥蜴人の一団が店を開き

・多くの腕を持つ多腕族が行き交い

・石塊そのものが歩いているような種族もいる

この世界の亜人の環境は、決して恵まれていない。

ハーフエルフというだけで排斥されたエミリアがそうだったように。

外見に特徴の出る亜人の多くは、人里を離れて小さくなって暮らす。

――だが、カオスフレームは違う。

獣人が爪や牙を丸めない。

蜥蜴人が鱗を磨かない。

異形異様とされるものたちが、顔や体を布で覆わない。

ピンと背筋を伸ばし、誰もが堂々と己の種を主張している。

⚖️ 同じであること

無法の都市が、崩壊しないでいる根拠

アベル

「見ての通り、ここにあるものは無法だ」

アベル

「秩序の本質を嘲笑う、悪徳の都市と言えような」

アル

「無秩序そのものが秩序っぽくなってるってのが、この街のコンセプトなんじゃねぇの?」

アベル

「――貴様は、そも秩序の本質がどこにあると考える?」

アル

( ̄▽ ̄;)

「禅問答みてぇなこと聞かれた……兄弟、パス!」

ナツミ

(>﹏<)

「秩序の本質は、あれじゃありませんの。その、みんな仲良く! 平和!」

アベル「――秩序の本質とは、同じであることだ」

アベル

「多くが同じ価値観を共有すること。教義や信念、目的や欲得でもいい」

アベル

「個ではなく集団において、それら互いに逸脱せぬ同一性こそが秩序と呼ばれる」

アベル

「その秩序という土台の上に築かれるのが、貴様の語った絵空事だ」

ナツミ

(╬¬_¬)

「絵空事……へ、平和がそんなに馬鹿げていると?」

アベル

「闘争は避けられぬ人の本能だ」

アベル

「だが、秩序は崩壊から縁遠い環境を形作る絶好の仕組みだ。――見よ」

顎がしゃくられる。示されたのは、魔都の象徴たる赤い城。

アベル

「多くの種族の坩堝と化しながら、都市が崩壊に陥らぬ根拠があれだ」

アベル「――ヨルナ・ミシグレ」

🏯 紅瑠璃城

事前に知らされている情報は、ごく少ない

ヨルナ・ミシグレについて、事前に知らされた情報は少ない。

・『九神将』の一人、『漆』の位を与えられた女性

・皇帝の剣の一振りに数えられながら、幾度も謀反を起こした危険人物

・ズィクルが人間性について言葉を濁したのは、彼女とセシルスの二人だけ

ナツミ

(´Д`;)

「帝国で一番頭のおかしい男女の、女性の方という認識では……?」

アベルの秩序トークは、マウント取りではなかった。

混沌を煮詰めた鍋が溢れないのは、鍋を抑えているものがいるからだ。

その秩序こそが、ヨルナ・ミシグレなのだと彼は言った。

だからこそ、幾度も反乱されながら除籍も処刑もしなかったのだろう。

✉️ 証のない封蝋

家紋の押印がない封筒を、託される

アベル

「これを城主、ヨルナ・ミシグレへと届けよ。奴からの反応があるはずだ」

蜜蝋で閉じられた封筒。だが、家紋の押印はない。

アベル

「俺が持ち出した皇帝の証は、すでにどちらも砕け散った」

アベル

「片方は貴様が、もう片方はグァラルの都市庁舎でだ」

ナツミ

「出所を示すものがなくて、読んでもらえますかしら」

アベル

「余計な懸念は不要だ。手紙を読めば俺からとわかるようにしてある」

ナツミ

「ちなみに、あなたが直接赴くのが確実ではありませんの?」

アベル

「言われずとも、ヨルナ・ミシグレとは直接言葉を交わす」

アベル

「だが、早々に俺が顔を見せるのは都合が悪い。貴様も察しろ」

――幾度も謀反を起こしている相手だ。

アベルの統治に不満があるからこその反乱だったはず。

両者の関係は、火種の燻った火薬庫のようなもの。

アベル

「ただし、それが皇帝からの親書であることは伏せておけ」

ナツミ

(゚д゚)

「え、どうして? それ言わないと、門前払い喰らわない?」

アベル

「手紙を渡す前の変心までは俺にも読めん。故に、工夫しろ」

アベル「貴様の持てる悪知恵の粋を働かせ、あれの興味を引くがいい」

ナツミ

(;´Д`)

「言い方に悪意がありますわよ!」

🚪 無防備な城

見張りもおらず、武器も取り上げられない

城へ上がったのは三人。アベル、タリッタ、ルイは宿で待機。

見張りはおらず、武器も取り上げられなかった。

ナツミ

「この調子で訪問者を城に入れていたら、暗殺のし放題ではありませんの?」

アル

「実際、オレらの武器も取り上げられてねぇしな」

ミディアム

(´▽`)

「そりゃ、あたしたちは暴れるつもりとかないもん。怒られないって」

アベルの名前を出せない。それでも入城は許された。

スバルの思いつきが、うまく働いたのだ。

スバル「攻略のヒントは、『アベルムカつく』ですわ」

ミディアム

「あはは、ナツミちゃん、アベルちんに噛みつくよね~。すごいと思う」

ナツミ

「すごい? わたくしが? アベルの性格の悪さが?」

ミディアム

(・∀・)

「どっちも!」

アル

「兄弟以外になんて呼んだらいいんだ? 姉妹って書いて兄弟?」

ナツミ

「それ、漢字が伝わらないと伝わらないのでは?」

アル

(;´Д`)

「そしたら、ナツミちゃんか? うお、サブイボ!」

ナツミ

「堪えてくださいまし!」

🍁 キモノの案内役

角を生やした少女に、先導される

現れたのは、頭に大きな鹿の角を生やした少女。

細身の体をキモノのような衣装に包み、長い裾を床に擦って先導する。

その仕草に、スバルの知識が何かを想起して疼いた。

紅瑠璃城の造りは、見慣れた西洋風の城とは違う。

広く外へ開かれた階層、その内装。

――古風な日本の城郭に、近い。

キモノ姿の関係者を、ちらほら見かけるのも一因だろう。

「こちらにてお待ちを。――ヨルナ様はすぐにいらっしゃいます」

😨 いるはずのない顔

広間には、先客がいた

広間には、先客がいた。

ナツミ

「あちらの方々は……」

「皆様と同じく、ヨルナ様との接見を求められた方々です」

「ヨルナ様は気紛れな方でいらっしゃいますから、一度にお相手すると」

ナツミ

(´д`;)

「ええ……」

顔も知らない同士で、ものすごく気まずい。

相手方も、聞かれたくない話かもしれないのに。

アル

「それ言い出すと、オレらもまさにそれだわな、ナツミちゃん」

ナツミ

「……そう呼ばれると、わたくしの方もサブイボですわね」

先客は四人。武器を持たない一人が、少し前に座っている。

おそらく、あれが代表で、残り三人は護衛だ。

如何なる人物が、如何なる目的でヨルナとの接見を求めたのか――

ナツミ

(゚Д゚ ;)

「――ッ」

喉が詰まり、頬と首が完全に引きつった。

とっさに顔を伏せる。視線が一度こちらを向き、そして外れた。

ナツミ

(・・・・・・)

「……冗談じゃ、ありませんわよ」

――それは、この場にいるはずのないアベルと同じ顔をした男だった。

第七章36『混沌たる魔都』終了。