リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章31

『同郷の語らい』

英雄じゃない、と言われた。その言葉に潰されかけたスバルの前に、同じ世界から来た男が立つ。

🪖 たくましい腕に

肩を掴む腕に、強い意思がこもっている

掴まれた肩にかかる腕の力は強い。

自傷行為を絶対に続けさせまいという意思が感じられた。

アル

「やめとけよ」

奇行を見咎められた情けなさが、腹の底から湧き上がる。

まるで、壁に向かって走らされるゲームのキャラクターだ。

何も考えていなかったところも含めて、そのものズバリの有様だ。

アル

(;´Д`)

「そんな真似続けて馬鹿になっても知らねぇぜ」

スバル

(´・ω・`)

「……それは、お手数おかけしました」

アル

「なんで敬語だよ。あと、声ガサガサ過ぎてビビるわ」

👂 たまたま呼びにいったら

あのやりとりを、聞かれていた

アル

(・_・)

「――そんなに、あの嬢ちゃんに言われたことがしんどかったのか?」

スバル

(╬゚Д゚)

「お前、聞いてたのか……!」

アル

「別に盗み聞きしようとしてたわけじゃねぇぜ?」

アル

「そのあと、兄弟がこの世の終わりってな面で歩き出すもんだから、心配になってついてきたんだ」

スバル

(´・ω・`)

「レムは、どうした? その、俺と話したあと……」

アル

「顔色悪くなったあとも、兄弟はまともに受け答えしてた」

アル

「だから、あの嬢ちゃんが兄弟を不審がっちゃいなかったと思うぜ?」

無様を晒したのは、レムの前を離れたあとからだったらしい。

🛡️ 冷たい鉄兜の奥

さっきの言葉の意味を、確かめてみる

スバル

「アル、さっきの……どういう意味だ?」

スバル

(・・・・・・)

「……俺の、死にたい気持ちがわかるとか、どうとか」

――何か知ってるんじゃないのか。

冷たい鉄兜の奥に隠れた感情を、目を凝らして確かめようとする。

表情も、瞳も見えない。

アル

(・∀・)

「オレだっていい歳したオッサンだぜ? 兄弟みてぇな修羅場、オレにだって経験あんだよ」

アル

「――かわい子ちゃんの前でダサい真似したこともな」

本音を探ろうとしても、黒鉄に遮られて叶わない。

だが、ナーバスになりすぎているとも自省した。

スバル

「知られてるわけない、か……」

✋ 仮定の話

片腕を失ったら、と仮定してみる

異世界召喚された者が全員、何かしらの力をもらうわけではない。

力があれば、アルの左腕もなくならずに済んだはずだ。

仮に自分が片腕を失う事態に陥ったら――

スバル

「……戻る、のか?」

『死に戻り』を、決して頼り切らないと決めた。

しかし、ならばどこまで頼るのか。

腕や足は。

指は。

目は。

どこまで失えば『頼る』と決断できるのか。

水門都市で、リカードリカードの失った腕のために戻らなかった。

今日も、足を失ったミゼルダミゼルダのために戻っていない。

権能を使えば、より良い成果が引き寄せられる可能性があるとわかっていながら。

スバル「俺は偽善者だ」

👉 悪いループ

デコピン一発で、思考が止まる

スバル

(×Д×)

「レムにも……づぁっ!?」

アル

「悪いループだぜ、兄弟」

強烈なデコピンが、額を弾いた。

アル

(・∀・)

「おお、だいぶいい音なったな。つか、さっきの頭突きに追い打ちしちまった」

スバル

(>﹏<)

「それは、いい……じゃなく、なんだよ、今のは!」

アル

「あの嬢ちゃんの一言にどんだけぐらついてんだよ」

アル

「こんなこと言うだけ恥ずいけどな……オレはな、兄弟に期待してんだぜ?」

📢 プリステラの演説

あのとき背負ったものを、忘れていない男がいる

アル

「プリステラで兄弟がやった演説、覚えてるよな」

アル

「あそこで放送するってことは、兄弟は『英雄幻想』を背負ってくことになるんだってな」

大勢の期待と希望を一身に背負い、負けることは許されない存在。

誰もがそうあってほしいと願う、『英雄』という名の『幻想』。

あのときは、あまりにも気楽に答えた。――それは、いつもと変わらないと。

アル

「ここでだって同じだ。一人に否定されて、それでなんだってんだよ」

アル

( •̀_•́ )

「折れんなよ、兄弟。かましてやれよ、兄弟。――期待に応えろよ、兄弟」

アル

「オレは忘れちゃいねぇ。そして、悪ぃが今さら逃がさねぇよ、兄弟」

アル「始めちまったんだ。掲げた看板は死ぬまで下ろせねぇって話さ」

💔 頭の中に響き渡る

ずっと頼りにしてきた一言が、消えた

――あなたは、英雄じゃないんですから。

スバル

「ずっと、レムの一言を頼りにやってきたんだ」

――あなたは、英雄じゃないんですから。

スバル

「レムが信じてくれてたから、俺は膝を折らずにやってこられた」

――あなたは、英雄じゃないんですから。

スバル

「今が一番、踏ん張らなきゃいけないときなのに」

――あなたは、英雄じゃないんですから。

スバル「俺を奮い立たせる、魔法の言葉だったんだ」

――だって、スバルくんはレムの英雄なんです。

その一言が、信頼が、支えがあったから、今日までやってこられたのに。

🧱 逃げ場を塞いで

だったら取り戻せばいい、と逃げ場を塞がれる

アル

「だったら、取り戻せばいい」

スバル

(・_・)

「――え?」

アル

「取り戻すんだよ。あの嬢ちゃんの期待も、兄弟本人の自信も」

アル

「看板は下ろせねぇ。戦うしかねぇんだ」

アル

「負けっ放しでもいられねぇなら、望み通りに勝ち続けるしかねぇ」

アル「失った期待と評価は、それ以上の結果でしか取り戻せねぇ」

王城での失態。

落とした信頼を回復できたのは、行動したからだ。

断じて、打ちひしがれて壁に額を打ち付けていたからではない。

スバル

(;´Д`)

「……馬鹿か、俺は。いや、馬鹿だ俺は」

スバル「――俺は、レムの英雄なんだ」

❓ 今さらすぎる疑問

レムがどういう相手なのか、と聞かれる

アル

「あのレムって嬢ちゃん、どういう立場なんだ?」

アル

「けど、その嬢ちゃんの一言で兄弟はボロボロになってる。――ありゃ、なんなんだ」

表情は見えない。だが、視線に宿った熱を感じる。

常に飄々と気安い、不真面目な同胞。

その印象が、自分の中で変動するのを感じた。

スバル

「レムは俺の……俺たちの身内だ。ただ、『暴食』の大罪司教の被害に遭った」

スバル

「そのせいで誰の記憶からも消えて、自分自身のことも覚えてない」

アル

(・∀・)

「――。そういうことか。なるほどなるほど、合点がいったぜ」

アル

「知らねぇ子のはずが、知ってる子に似てた」

スバル

(・_・)

「知らないのに知ってるって……それ、ラムのことか?」

アル

「おお、そうそう」

🤝 肩入れしてやる

協力するぜ、と肩入れを申し出られる

アル

「――おし、わかった。協力するぜ、兄弟」

スバル

(・_・)

「あえ?」

アル

「ただし、突っ込んでやれる肩は片腕分しかねぇけどな」

スバル

(¬_¬)

「笑えねぇよ」

スバル

「……ラムと知り合いだから、力を貸してくれるのか?」

アル

「オレが肩入れするのは兄弟さ」

アル

「どのみち、兄弟が英雄やるってんなら、あの嬢ちゃんのことも外せねぇ」

スバル

「別に英雄になろうってんじゃ……」

アル「――なるんだよ。ナツキ・スバルは、英雄に」

否やと言わせない遮り方だった。

アル

(・∀・)

「なんて、な」

強烈な熱が、冗談めかした一声に霧散する。

🛡️ 外には届かない声

鉄兜の中だけで、誰にも聞こえない呟き

小走りに走りながら、鉄兜の中だけに呟きが響く。

外には届かない、ただ自分に聞かせるためだけの声。

アル

「――『英雄幻想』、か」

目をつむり、瞼の裏という闇の中に響かせるように。

アル「英雄に、なってもらうぜ、兄弟。――いいや、ナツキ・スバル」

第七章31『同郷の語らい』終了。