リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章42

『野心の獣』

戻った先は、猛獣と同じ檻の中。相手の手札を開くという、交渉と真逆の戦法しかない。

👋 乾いた音

戻ったのは、全滅する十秒前だった

――『死に戻り』の発動と、最悪の場面への回帰。

戻ったのは、ほんの十秒前に全員が殺された、その直前だ。

『できるのか? ついさっき、仲間たちを全滅させたあの体たらくで』

焦りと苛立ちが生み出した、ナツキ・スバル自身の弱音。

二度目の機会は、過ちを取り返すためのものではない。

許されるのは、償い切れない贖いだけだ。

スバル

(>人<)

「――ッ!」

両手で頬を力一杯叩く。乾いた音が室内に響いた。

オルバルト

( ゚д゚ )

「おお!? いきなりなんなんじゃぜ!?」

スバル

( •̀_•́ )

「驚かせて、悪い。……気合いを入れた」

揺れていた視界が、明瞭になる。

――鬼面のアベルだけが、動揺を見せずに堂々としていた。

🚫 戦ってはならない

――オルバルトとは、絶対に戦ってはならない

好々爺ぶった態度も、無音で侵入して驚かせたのも。

全ては、相手の素の反応を引き出すためのテクニックだ。

――罠や毒、忍術の類に他ならない。

オルバルト

「あちこち縮んでやりづれえじゃろ? それ、ワシがやったんだわ」

アル

(╬゚д゚)

「爺さん……!」

オルバルト

(・∀・)

「怒んな怒んな、片腕の若僧。むしろ、感謝してもいいんじゃぜ?」

オルバルト

「うっかり殺して話が聞けんくなったら困るから、縮めるだけにしといたんじゃし」

オルバルト

「ま、結構本気で殺そうとしてみたら、それは全部防がれっちまったもんじゃから」

オルバルト

「苦し紛れでやっといたってのもあるんじゃけどよ? じゃろ、若僧」

アル

(・・・・・・)

「……何のことだかな」

タリッタが弓を構え、アルとミディアムが臨戦の構えを取り――

そして、為す術なく殺された。

――オルバルトとは、絶対に戦ってはならない。

『死に戻り』の戻り先が、血に飢えた猛獣と同じ檻の中。

仲間と相談する時間は、ない。

⏳ 時間を稼ぐ

鬼面が、話を引き継いで時間を作る

スバル

「オルバルト、さん。あんたは……」

アベル

「――。貴様の術技が、このものたちを縮めたと言ったな」

出鼻を挫かれ、意図に気付く。

――スバルが必要としている時間を、与えたのだ。

アベル

(¬_¬)

「歳を重ねて衰えたと標榜するなら、一将の位を早々に返上すべきであろうよ」

アベル

「そうせぬ時点で、貴様の腹は決まっている」

オルバルト

(・∀・)

「へえ、言いよるもんじゃぜ。お前さんにワシの腹が見えるってのかよぅ」

アベル

「無論だ」

🥇 絶対の勲章

この男が何を欲しがっているか、を当てにいく

アベル

「貴様の性質は貪欲だ。その立場すら満足と程遠い」

オルバルト

「で? 不満爆発のワシが欲しがってるもんってのは?」

アベル「――『壱』の座」

枯れ葉がこすれ合うようなオルバルトの吐息の音が、消えた。

オルバルト

「片腕の若僧、妙な動きはせんことじゃぜ。あと、弓の娘っ子も息で見え見えじゃから」

アル

(;゚д゚)

「――ッ、頭の後ろに目がついてんのかよ」

オルバルト

(´ー`)

「研鑽不足って言っとくんじゃぜ。年季が違ぇのよ、年季が」

――アベルの指摘は、不正解だ。

だが、的外れでもない。

彼が言い当てたのは、オルバルトが抱えている『渇欲』そのものだから。

自分の野心が叶うなら死んでもいい。周囲に迷惑がまき散らされても関係ない。

――その並外れた破滅思考が、アベルの読み切れなかった闇だ。

🎯 図星

読みの上を行く答えを、横から差し込む

スバル「――オルバルトさん、あんたの狙いは『壱』じゃなく、皇帝じゃないか?」

刹那、空気の色が、匂いが、肌触りが変わった。

オルバルト

「坊主、またいきなりしゃしゃり出よるもんじゃぜ、驚くじゃろよぉ」

スバル

「驚いたのは、急に俺が喋ったからか? それとも……」

オルバルト

「図星言い当てられて驚いてんじゃねって聞いとるんか?」

オルバルト

(≧▽≦)

「もしそれが本気なら、ワシとか超やべえ奴じゃぜ、かかかっか!」

アル

「皇帝狙いって、皇帝殺しか? 兄弟、そりゃ飛躍だろ」

スバル

「悪名が知れ渡るだけで、メリットがねぇよな」

スバル

(・_・)

「でも、はっきりと否定はしないだろ、オルバルトさん」

🔄 開くのは相手の札

こちらの手札ではなく、オルバルトの手札を開く

アベルの正体は明かせない。偽皇帝がチシャだとも伝えられない。

――交渉可能な手札は、消えたのだ。

ならば、開くのはこちらの札ではない。オルバルトの札だ。

スバル

「今現在、皇帝の座についてるヴィンセント・ヴォラキア皇帝を引きずり下ろす」

スバル

「あんたの狙いとも噛み合うはずだ」

オルバルト

(;´Д`)

「待て待て、勝手にワシを天下の謀反人に仕立て上げるんじゃねえっての」

スバル

「だけど、本気で否定も止めもしない。皇帝直属の、一将の一人なのに」

――前回、彼が手を下すと決めたのはアベルの正体発覚後だった。

その確信がない限り、交渉の最中に短気は起こさない。

偽皇帝の『手出し無用』を守る『九神将』を、演じ切るからだ。

オルバルト

「ワシは閣下のことですーぐ頭に血が上るカフマとは違ぇのよ」

オルバルト

「この街で狐娘を敵に回すってのも賢くねえしの」

アベル

「――貴様の心中、測りかねた思惑がそれか」

🔥 陽剣の焔

望むものを、こちらから差し出す

オルバルト

(´・ω・`)

「やーじゃよ。じゃって、ワシを嫌な爺さん扱いしたのはお前さんじゃろ」

アベル「――ならば、皇帝を殺す機をくれてやろう」

オルバルト

「そもそも前提が違ぇって話を何べんさせんじゃ、お前さんら」

アベル

「貴様の狙いが皇帝の命にあるなら、これまでにも機会は幾度もあろう」

アベル

「だが、貴様は実行に移さなかった。――『陽剣』の焔が、皇帝を守るからだ」

オルバルト

(゚д゚)

「お……」

アベル

「その、焔の越え方を明かしてもいい」

張り付けてきた表向きの感情が、破り捨てられた。

――ヴォラキア皇帝を守護する何かが、彼の野心をこれまで阻んできたのだ。

オルバルト

「そんな話、冗談でも触れ回るもんじゃねえんじゃぜ」

アベル

「ここで詭弁や冗談を述べるものが、この強大な帝国に反旗を翻せると?」

アベル

「だとしたら、それは正気を失った狂人か、よほど肝の据わった大人物であろうよ」

オルバルト

「お前さんは、そのどっちでもねえと?」

アベル

「無論」

🎲 勝負せんか?

穏やかな会話の裏に、シノビの流儀がある

オルバルト

「確か、火の刻の鐘って話じゃったっけか」

ミディアム

(・∀・)

「ヨルナちゃんに呼ばれてるから、あたしたち、ちっちゃいままだと困っちゃう」

オルバルト

(≧▽≦)

「ヨルナちゃん! かかかっか! 大したタマじゃぜ、娘っ子」

オルバルト

「ヴォラキア皇帝を守護する『陽剣』の越え方は、ぶっちゃけ気になるんじゃぜ」

スバル

「――! だったら」

オルバルト

「おうおう、気が早いんじゃよぅ。――じゃから、勝負せんか?」

スバル

「……勝負?」

オルバルト

(・∀・)

「そう、勝負よ。好きじゃろ? 男の子」

スバル

「断るって、言ったら?」

オルバルト

「そんときゃお前さんが欲しいもんはなんも手に入らんじゃろ」

オルバルト

「ちなみに、今後はシノビの術技が寝る間も惜しんでお前さんらを襲うんじゃぜ」

薄く濁った瞳の奥で、闇色の感情が蠢く。

穏やかな会話の裏側には、容赦なく命を奪うシノビの流儀がある。

🏃 里の若ぇ奴らと

勝負の中身が、決められる

アベル

「勝負の内容はなんとする」

オルバルト

「狐娘の呼び出しまで時間もねえんじゃし、意外と困るもんじゃが……」

オルバルト

「ああ、ちょうどええわい」

スバル

「そのちょうどいいって、オルバルトさんにとって? 俺たちにとって?」

オルバルト

「ワシとお前さんら、両方にとってに決まっとるじゃろ」

オルバルト「――追いかけっこ」

オルバルト

( ̄ー ̄)

「よく、里の若ぇ奴らと勝負すんじゃぜ。わかりやすくて、いいじゃろ?」

第七章42『野心の獣』終了。