第七章85
『ユージン』
帝都の屋敷。囚われの二人が言葉を交わし、そして決戦の予感が届く。
🌬️ 張り詰める
緊迫感が、破裂のときを待っている
肌で味わう緊迫感は日毎に増し、破裂のときを待ち構えている。
「反乱軍が優勢……今や、帝国の色んな場所で反乱が起きていると聞きます」
きっかけは、レムたちが連れ去られる原因となった城郭都市グァラルの攻防。
――むざむざ追い返された帝国軍など恐るるに足らず、という風説だそうだ。
「嘘はついていない、と言えるかもしれませんが……」
もう一つの理由は、ヨルナ・ミシグレ一将の合流。
――それこそが元々のアベルの計画であり、共にいった彼の方針でもあった。
「……ただついていっただけで、役に立っていない可能性もありますが」
口を閉じ、動かないでいる姿なんて欠片も想像できないのだから。
💇 責任持って
爪を噛むのは、感情がささくれ立ったとき
(╬¬_¬)
「あ、あんたがやりたいって、言い出したんでしょうが」
(´・ω・`)
「ごめんなさい。考え事をしていました」
「そんなこと、いちいち言い訳がましく報告しないでよ」
「――ぁ、別に、言うなってわけじゃない、けど」
(¬_¬)
「……なに、その顔。あんたのその顔、イライラする」
「ごめんなさい。私も、いまだにちゃんと見慣れないんです。まるで他人の顔みたいで」
(;゚Д゚)
「こ、怖いこと言わないでくれる?」
何事かあると、そうして爪を噛むのがカチュアの癖だ。
――良くも悪くも、感情がささくれ立ったときにそうしていることが多い。
👭 ユージン
髪を結うのが上手い、と褒められる
(´・ω・`)
「……あんた、髪結うの上手よね」
(>﹏<)
「ば、馬鹿なこと言ったわ。忘れなさい。忘れろ、忘れろっ」
「な、なんでなのよ。言ってみなさい! 言えないなら……」
(╬゚д゚)
「ユージン……ユージンって、誰よ!」
(・∀・)
「え? あ、人の名前じゃありませんよ。友人、友達という意味です」
( ゚д゚ )
「ユージ……え、ともだ、ち……?」
「ごめんなさい、勝手でした。軟禁仲間と言い換えた方が……」
(>﹏<)
「ゆ、友人! 友人って、言った。言ったじゃない」
「……別に、いいわよ、それでも」
「でも、あんたが、嫌だって思ったら、その、いつでもやめれば?」
「やめませんが。そうじゃなく、私とカチュアさんは友人ということです」
🕊️ 兄と婚約者
打ち明ける勇気が、どうしても出ない
「やけに外の、反乱のことに詳しいじゃない」
「私は元々、戦っていたところから連れてこられましたから関心はあります」
「カチュアさんの婚約者も、戦場へ出ているというお話でした。心配、ですよね」
(´;ω;`)
「あいつは……! な、何したって死ななそう、だし。でも」
「それはお兄さんも、だったんですよね」
アベルの理念に感化されたわけでも、賛同しているわけでもない。
それでも、レムと関わり、互いに世話し、世話された人たちがそこにいる。
――もしも、カチュアがレムの立場の実際を知れば、レムを許すだろうか。
とても、大切な兄を亡くして悲しむ彼女に、それを打ち明ける勇気はなかった。
🏚️ 黒髪の少年たち
――いずれも、共通した特徴を持った十代の少年、『黒髪の皇太子』たちだ
「最近、離れの方に集められた人たちが理由だと思います」
「離れ……ああ、あの連中」
――いずれも、共通した特徴を持った十代の少年、『黒髪の皇太子』たちだ。
「閣下に御子がいないのは変だって、そういう話は、まぁ、あったのよね……」
「これまでの歴代の皇帝閣下はみんな、たくさん伴侶を作って、子どもも……」
「そこに、『黒髪の皇太子』の噂が」
(¬_¬)
「閣下に、帝国は任せておけないとか、言ってるらしいわね。……馬鹿馬鹿しい」
「強い奴が幅を利かせる帝国で、私みたいなのは居場所がない、し」
「……戦いがない間は、そこのところの差がないじゃない。だから、楽だった」
🧐 考えなし
黒髪黒瞳という以外、何もわかっていない
「そ、れは私も聞いてるけど……そ、それが?」
「皇帝閣下の子を名乗って反乱を扇動して、早々に囚われの身になるなんて状況……」
「あんまりに考えなしではないかと」
アベルという、本物の皇帝の人物像を知っているため、その子どもとなると見る目も厳しい。
――少なくとも、愚かであるとは思えなかった。
「担がれて、騙ってるだけ? そんな畏れ多いこと、何のために……」
「……体のいい、人手集めの口実でしょう」
帝都を押さえ、玉座を奪い、皇帝の首を刎ねればそのものが次の皇帝となる。
――その人手集めの口実として、次代の皇帝候補を担ぎ上げるのはとても都合がいい。
「黒い髪と黒い瞳ということ以外は何もわかっていませんから、言ったもの勝ちです」
🩸 狩り
本物が見つかれば、あの老人は満足して死ぬ
(╬゚д゚)
「耳障りな声を出すな。目障りな真似をするな。竜の前で、不敬だ」
中庭に堂々と立ったマデリン、その姿はべったりと黒い血で汚れていた。
「その、血は? 怪我しているんですか?」
(・・・・・・)
「――。竜の血じゃない。これは返り血だ」
「戦ってきたんですか?」
「戦いは、対等と認めた相手とするものだ。竜と並び立つモノがいると思うか?」
「竜がしてきたのは狩りだ。面倒な縛りのある狩り」
「髪の黒いものは生かす。それ以外は殺す」
――もしも本物の『皇太子』が見つかったなら、あの老人は満足して死にそうな気がする。
それが、レムの心胆を寒からしめる想像であった。
🛡️ やめろ
癒者の替えを用意する、と脅される
「お前、調子に乗るんじゃないぞ。今さらお前がいなくても、癒者なら帝都に……」
「その癒者の人は口が堅いですか?」
(╬゚Д゚)
「――お前、調子に乗るんじゃないっちゃ」
(>﹏<)
「ば、馬鹿! 余計なこと言うな! ぜ、全然違うから!」
「な、何にもわかってないだけ、全部忘れてるから、馬鹿なのっ」
「馬鹿だけど、いた方がマシだから、やめ、やめて……」
「――お前みたいな、弱いモノが竜に逆らうな。次はない」
窓枠に手を置いたマデリンが、淡々と言いながらそれを握り潰した。
(´;ω;`)
「や、やめろっ! やめろ、馬鹿! 死ね! 馬鹿! やめろ!」
🛁 譲れない
口の利き方に気を付けろ、と言われても引かない
「口の利き方に気を付けろ、娘。本気で癒者の替えを用意するぞ」
「待ってください。どちらに?」
「あの男のところだ。竜は、あの男と話がある」
「怪我人なんですから、気持ちもいたわらなくちゃダメです。考えてください」
「お前……」
「水浴びを」
「……わかった」
「服も着替えてください。ちゃんと可愛い着替えがたくさんあるんですから……」
(;´Д`)
「わかったって言ってるっちゃ! しつこい奴っちゃ!」
彼女を手懐けたフロップの大手柄だ。――いつか、その調子で寝返らせてくれないだろうか。
⏳ 決する機会
呼び戻された理由が、そこにある
「不埒な目で竜を見るな、娘。――何を企んでも無駄だ」
「無駄なんて、言い切れないと思います。何をするのであっても」
「そういう意味じゃないっちゃ。何かするには、その時間がないって言ってるっちゃ」
「そのために竜は呼び戻された。――お前の役割も、そこまでだっちゃ」
❔ 何ができるか
空っぽな自分に、何が響かせられるのか
「――反乱軍との、決戦」
「ど、どこでとか、言ってなかったけど……」
戦場があちこちに点在する現状で、相手を一網打尽にする準備ができるとするなら。
「……もう、本当に馬鹿ばっかり。あんたも、あんたもそうよ、大馬鹿っ」
「馬鹿な真似したいなら、勝手に死ね! 死ね、馬鹿!」
(´ー`)
「ごめんなさい、ありがとうございます」
「でも、カチュアさんを悪く言われて、とても黙っていられなくて……」
「し、知るか! 私は、言われ慣れてんのよ!」
「言われ慣れるなんて、馬鹿げています」
「何度言われても、私はまた同じ場面で同じように反論すると」
「や、やめる。やめてやる。友達じゃない。私の方から、やめてやる……!」
「いえ、やめるかどうかは私に選択権があるはずです。ダメですよ」
(>﹏<)
「そんな一方的な話、あるか!」
何もない空っぽな己に、何を響かせることができるのか。
第七章85『ユージン』終了。

「何を、ボーっとしてんのよ」
「――ぴいぴいうるさいっちゃ、娘」