リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第六章89

『シャウラ』

四百年、待ち続けた少女のために、最後の延長戦が戦われる。

🌫️ ボロボロ

――こぼれ落ちて、剥がれ落ちて

ボロボロ、ボロボロ、こぼれ落ちていく。

ボロボロ、ボロボロ、剥がれ落ちていく。

ボロボロ、ボロボロ、色褪せていく。

ボロボロ、ボロボロ、ボロボロして、全てが遠く、煌めいていく。

🏁 全員で

🟠全員で勝てなきゃ、嘘だ

――塔外、押し寄せる無数の魔獣のスタンピード、『魔獣使い』の奮戦で突破。

――二層、ロイ・アルファルドの肉体を奪ったレイド・アストレアの撃破。

――四層、因縁の冒涜者、憎っくき大罪司教ライ・バテンカイトスの撃破。

――一層、まだ見ぬ未知の『試験』、エミリアの敢闘により突破。

スバル

「――全員で勝てなきゃ、嘘ってもんだろうが!」

なくしにいくのではなく、失われたものを取り戻しにいくのだと。

きたときよりも、帰りの人数が増えたとしても、それはそれだ。

🌈 虹の騎士

――攻防一体の、超次元

ユリウス

「――往く!」

ユリウス

「――短期決戦」

虹と化したユリウスの斬撃は、極光を纏った魔法剣『アル・クラリスタ』を恒常的に発動しており、受けるという防護すらもまともに取り合わせない。

スバルが十度以上も殺され、エミリアやユリウスの死因にもなったことがある『死』の一刺し――ヘルズ・スナイプ。

それを、ユリウスは剣で弾くのではなく、極光の防御力で受け流す。

つまり、攻防一体、『虹の精霊騎士』とでも呼ぶべき超次元の剣士が生まれていた。

🔥 焦熱の大鋏

――ここにきて、新技を出す

紅蠍はその赤々とした甲殻の輝きをさらに鮮やかなものにして、生じる熱を大鋏から放出、ユリウスへと豪快に叩き付け、虹の騎士を大きく弾き飛ばした。

焦熱の大鋏――スバルが名付けるなら、『ジーザス・シザース・ヘルファイアフォーム』。

殻を破って成長する敵キャラなんてものは、現状は望まれていないのだ。

😵 振り落とされる

――綱引きではなく、振り落とし

ベアトリス

「――スバル!!」

スバル

「根性――ッ!」

ベアトリス

「――ムラク!」

振り回されるのではなく、振り落とされる。

スバル

(゚д゚;)

「――ぺっ、ぺっ! クソ、何とかしねぇと!」

ベアトリス

(゚д゚;)

「――ぺっ、ぺっ! 勝ち筋を見つけないとダメなのよ!」

🃏 最後の一枚

――手札を、見落とすな

縋りたい可能性は三つ。

ユリウスがさらなる覚醒を遂げ、紅蠍を一蹴して癪だけど勝利。

スバルとベアトリスが新技を完成、それが紅蠍を完封してチームの勝利。

急に空からエミリアが降ってきて、可愛さで世界が平和になってラブ&ピース。

スバル

「三個目寄りの一個目に期待したいところだが……」

ならばせめて、持てる手札を見落とさず、ナツキ・スバルを完遂しろ。

そうして、自分の持ち得る手札を探したとき、スバルは気付いた。最後の一枚、まだ使っていない手札を残していたことを。

スバル

「――この旅の、全部の力をここで使うぜ!」

🎯 待ち続けた

――スナイパーってのは、孤独なもん

シャウラ

「スナイパーってのは、常に孤独なもんッスからね」

だから、待った。自分も、スナイパーとしての誇りを胸に、待ち続けた。

くる日もくる日も彼方を見据え、塔へやってくる相手を見据え、待ち続けた。

それを煩わしく思ったこともあったが、それがなくては忘れっぽい自分は、すぐに色んなことを忘れてしまったとも思う。

一緒に歩いたこと、喋ったこと、過ごした日々や交わした思いも、何もかも。

シャウラ

(´-`)

「あぁ……それは、嫌ッスねえ」

💗 愛されたい

🌟あーしも、愛されたいッス

待てと言われれば、いつまでだって待つけれど、待たせるからには戻ってきてほしい。

戻ってきてくれさえすれば、いつまでだって待てるから。

シャウラ

「お師様が戻ってきてくれて、嬉しかったッス」

シャウラ

「あーし、幸せ者ッスよ、お師様」

シャウラ

「もう、置き去りは嫌ッスよ、お師様。……あーしも、愛されたいッス」

シャウラ

「あーしを、愛してほしいッス。――お師様」

❤️ 愛の色

――赤は、抑えられない『愛』の色

その鮮やかな赤い色は、シャウラが泣き叫んでいる結果みたいだ。

四百年、自分の感情を閉じ込めて、言いつけを守ってこの塔にこもっていたシャウラという存在が、溢れんばかりの思いを爆発させて、光り輝いている。

赤は情熱、赤は激情、赤は抑えられない『愛』の色。

スバル

「――さそり座の女ってのは、愛情深いってのが通説だからな!!」

スバル

「それで他の男にいかれると、もやもやするのが男心――っ!!」

ベアトリス

(゚д゚#)

「スバルながら、最低な物言いなのよ!」

💪 綱引き

――弱いという認識を、悪用する

スバルたちは弱い。――その認識を、悪用する。

ベアトリス

「エル・ヴィータ――!!」

スバル

「ぐおおお!!」

重力の影響を軽減するムラクの反対、重力の影響を増大させるヴィータ。

だが、当然、それでもまだ足りない。

スバル

「――ここが見せ場だ! やってくれ!!」

🐴 乱入

――仇敵が、助力する

踏みとどまったスバルの前、ぴんと張り詰める鞭を掴んでいたのは、その異形の巨躯で引っ張り合いに乱入した餓馬王だった。

全身に花を纏った熊が、翼を持つモグラが、怪しげな蛇が、参戦する。

仇敵であるはずの魔獣たちが、スバルの戦いに助力していた。

🦂 魔獣の母

――『魔獣使い』では、そぐわない

メィリィ

( ̄ε ̄)

「……ホント、人使いが荒いんだからあ」

メィリィ

「みんな、いらっしゃあい。見てるだけなんて、もったいないわあ」

『魔操の加護』の力を用いて、アウグリア砂丘を占拠する魔獣の群れを意のままに操るその姿は、一介の『魔獣使い』などという肩書きではそぐわない。

それはかつて、南の帝国を荒らした存在、『魔獣の母』の再臨。

🐲 ジャイアン

――最後の協力者は、六層にいた

当然、メィリィの受けたダメージを、スバルが『コル・レオニス』で引き受け、分配したのだ。――スバルの持つ、最後の手札に。

スバル

「――巻き添えにしてすまん、ジャイアン! 手伝ってくれ!!」

ものすごい心が痛い決断だが、もっと心が痛いのは、ジャイアンがスバルの『コル・レオニス』による負担の分配の条件を満たしてくれていたこと。

つまり、ベアトリスや他の仲間と同様、ジャイアンもスバルを支えたいと、そう思ってくれていたということになる。

スバル

「――そのまま、お前の敗因だ、シャウラ」

⚔️ 決着

――尾を断ち、鋏を落とす

放たれる虹の斬撃が、力比べに拮抗する紅蠍の尾を、根本から断ち切った。

しかし、力比べに負け、尾を斬られ、動揺と焦りのある攻撃は、初代『剣聖』との戦いを乗り越え、壁を破った騎士には通用しない。

ユリウス

「し――っ!」

ユリウス

「――アル・クランヴェル」

纏った虹の鎧を脱ぐ瞬間、爆発的に広がる極光が閉じかけた大鋏を内から爆ぜさせ、根本から吹き飛ばしていた。

❓ あなたはだあれ

――色が、変わっていく

スバル

「――ここまでだよ、シャウラ」

スバル

「メィリィ」

メィリィ

「……お兄さんたちって、わたしがいなかったらどうしてたのかしらねえ」

メィリィ

「あなたはだあれ? 赤くて怖いサソリさん? それとも……」

メィリィ

「それとも、誰なのかしらあ?」

揺れるそれが、静かにメィリィを見つめ、それから、視線がスバルへと移る。

スバル

「シャウラ」

瞳は緑に、甲殻は黒と、徐々に落ち着いていって、やがて。

スバル

「――シャウラ!」

🕰️ 覚えてるッスか

🌟あーしとお師様は、似た者同士

シャウラ

「覚えてるッスか、お師様。あーしに、絶対戻ってくるから待ってろって、そう言っていなくなったッスよ」

スバル

「覚えてねぇ。つか、知らねぇって言ってるだろ。何べんも言わせるなよ」

シャウラ

「まぁ、仕方ないッス。お師様が忘れっぽいのはあーしに譲られてるッスもん。あーしとお師様は似た者同士ッス」

スバル

(゚д゚)

「ゾッとしねぇ! いや、言語センスが近いのは認めるけども」

スバル

「俺は辛抱弱いからな。せっかちだし、すぐ結果が欲しくなる。せめて、相手の傍にずっといられたら、我慢しようって気にもなるけど……」

シャウラ

「あ~、そりゃダメダメッスね、お師様。いいッスか? こんな名言があるッス。愛ってのは我慢ッスよ!」

スバル

「それ、オシャレは我慢の間違いだろ!? 尽くす女っていうか、貢ぐ女のスローガンっぽいぞ!?」

😢 涙

🟠お前のお師様は、クソ野郎だ

シャウラ

「あれ? お師様、涙目ってか、ちょっと泣いちゃってないッスか?」

スバル

(゚﹏゚)

「……お前のお師様は、クソ野郎だ。俺が、この手でぶっ飛ばしてやりてぇよ」

シャウラ

「それ、あーしめちゃめちゃ複雑な気持ちで見てなきゃなんないヤツッス! お師様がお師様をKOって、もうどんな状態なんスか! ……もう」

シャウラ

「……お師様の体液、しょっぱくて甘いッス」

スバル

「言い方……」

シャウラ

「言い方なんて、何でも変わったりしないッスよ。あーしの想いは、全身全霊、体で表現してる通りッス。――お師様、愛してるッス」

💗 待ってる時間も

🌟四百年なんて、すぐだったッス

シャウラが折に付け、「愛してる」とそう口にするのは、愛が溢れているから。

四百年間、愛したい、愛されたいと、それを願い続けた彼女の想いが。

スバル

「……俺は、お前に愛してるなんて言わないぜ」

シャウラ

「わかってるッス。お師様はいけずだし、照れ屋でシャイッスから。でも、そこも好きッス。ぞっこんッス。オンリーユーッス」

スバル

「いつかって……気の長ぇ話だな。四百年待つ気かよ」

シャウラ

「そうッスか? 四百年なんて、すぐだったッスよ」

泣かせないと、そう誓った。今も、それを違えるつもりはない。

だから――泣いてほしかった。泣いて、まだ足りないと、訴えてほしかった。

シャウラ

「四百年なんて、明日の明日みたいなもんだったッス」

シャウラ

(*´ω`*)

「――待ってる時間も、愛してたッスもん」

⏳ 役目

――これは、『死』ではない

スバル

「――シャウラ」

ボロボロと、剥がれる甲殻の一部が砂の上で塵に変わる。

それは一部に留まらず、剥がれ落ちる全ての部位に伝搬していく。

ベアトリス

「……役目を、果たし終えたかしら」

だが、本能は理解していた。――これは『死』ではない。

これは、彼女が星番としてこのプレアデス監視塔を任され、そして、いずれ迎える今日が訪れたとき、避けられない結末だったのだと。

スバル

「だったら……俺たちが……」

ユリウス

「――スバル、わかっているはずだ。その仮定は、彼女への侮辱だと」

ユリウス

「そして、君がすべきは後悔ではない」

🕯️ 見送り

――一番傍で、見送られていく

そして、ずっと一人きりだった彼女を、より強く抱きしめた。

ゆっくりと、一人でなくなって、見送られていく彼女の一番傍で。

遠く、監視塔から誰かが走ってくる淡い気配。それが、塔にいる仲間たちで。

ずっと、一人で過ごした彼女のために、みんなが集まってきていて。

シャウラ

「でも、あーしはお師様が一人いてくれたら十分ッス」

そんな、可愛げのないことを言う姿が目に浮かんで、それがそのまま涙に変わった。

鋭い、何もかもを壊してしまいそうな牙で、この場にいる誰よりも壊れやすいだろうスバルを壊さないよう、愛おしむよう、優しく、優しく。

スバル

「シャウラ……シャウラ……シャウラ……」

シャウラ

「お呼びッスか? お師様」

目をつむれば、呼びかけに答える彼女の声が耳に蘇る。

それなのに、もう、彼女はどこにもいなくて。

🌟 約束

――煌めいていく全部に、あなたがいた

シャウラ

「ねえ、お師様。だから、また、いつか――」

シャウラ

「いつかまた、あーしと出会ってほしいッス」

シャウラ

「今度は、お師様があーしを待つ番ッスよ? 追う女より、追われる女ッス」

シャウラ

「――お師様、大事な、大事な、約束ッス」

シャウラ

「今度は、忘れないでくださいッス」

シャウラ

「――お師様、愛してるッス」

🦂 小さな蠍

――四百年でも、色褪せない色

黒い塵が降り積もった砂の大地、そこがわずかに揺れて、何かが這い出す。

それは小さな、掌ほどの大きさの存在。

その、ただの触れ合う仕草が、あの愛嬌の面影を残しているように思えて。

スバル

(゚﹏゚)

「お前は、馬鹿だ」

忘れられるものかと、震える声で、スバルはそう呟いた。

それをくすぐったく、こそばゆく思うように受け入れ、小さな、小さな蠍が震えた。

――それは、四百年の時でも色褪せさせられない、『愛』の色をしていた。

第六章89『シャウラ』終了。