第七章90
『地獄の揺り篭』
反乱軍の本陣。そして、戦場のすべての声に耳を開く男がいる。
📢 五つの頂点
五つのうち、二つだけ守護者が見えない
「――間違いありません! 正面、第一頂点『弐』アラキア!!」
「第二頂点『玖』のマデリン・エッシャルトと推測! 飛竜の群れが上空を旋回!」
――「第三頂点、守護者未確認!」
「同じく、第四頂点守護者確認できず! 確認できず!」
「第五頂点、派手な攻撃……一将じゃない! 二将だ! カフマ・イルルクス!」
「堅牢たる帝都ルプガナ、それを落とす側に立つことは考えたくはありませんでした」
(¬_¬)
「だが、事態は貴様の泣き言が収まるのを待とうとはせぬ」
「戦況に話を戻せ。優先すべきは第三と第四の頂点」
( •̀_•́ )
「は! 第三と第四の遠見を厚くせよ! 間違いなく、一将が出陣しているぞ!」
🐺 一騎当千
数で勝っていても、連携の考えが乏しい
戦力比で言えば反乱軍が正規兵を圧倒している。
――しかし、集結した叛徒たちに連携の考えは乏しい。
加えて攻め落とすべき敵は、堅固堅牢を絵に描いた帝都の最奥にこもっている。
「最低限、アラキアとマデリン・エッシャルト、モグロ・ハガネの参戦は疑えぬ」
「実力だけならカフマ・イルルクスも一将相当だ」
「ゴズ一将やグルービー一将の参戦はない。そうお考えですね?」
「ゴズ・ラルフォンは生死に拘らず、グルービー・ガムレットは動かしづらい」
帝都を追われるアベルを逃がすために抗ったゴズは、その後の消息が知れない。
「死を利用するやり方……その責を叛徒へ押し付け、兵の士気を煽る手法ぐらいだ」
「……考えたくありません。私もまた死兵となってでも剣を取ったことでしょう」
だが、実行するつもりがあるならば、開戦前が絶好の機だったはず。
「どちらであろうと、彼奴なら糸を張る」
😤 あんちゃん
あの中にいるのだから、と食い下がる
(>﹏<)
「やっぱりあたしもいきたい! あの中にあんちゃんがいるんだよ?」
(╬¬_¬)
「たわけ。不確定要素を増やすな」
( •̀_•́ )
「マデリンって子がいたよ! あの子がいるんなら、二人もいるかも!」
「この戦況において貴様の兄やあの娘の戦略的価値は低い」
「ミディアム嬢、アベル殿は貴女の身を案じておられるのです」
(╬゚д゚)
「だーかーら! あたしだってちゃんと考えてるってば!」
「それが難しいから空っぽの場所から中に……」
( ゚д゚ )
「――待て」
📨 伝令
その話を、どこで聞いてきたのか
「がらんどうの場所、と言ったな。それがいずれかの頂点のことなら、どこで得た?」
(・∀・)
「どこでって……あ! そうだった! ごめん、アベルちん!」
「どっちも、ヨルナちゃんみたいな子はいないって!」
告げられた言葉、その内容の精査は不要だ。意味はわかる。
――問題は、その情報がもたらされた経緯。
「誰が貴様に伝えさせた」
(╬゚Д゚)
「誰だ」
🌀 言霊の加護
――膨大な、猛烈な、情報の渦に呑み込まれながら、オットーは瞑目する
――膨大な、猛烈な、情報の渦に呑み込まれながら、オットーは瞑目する。
右から左から、上から下から、前から後ろから、とめどなく押し寄せる声の暴力。
――かつて、物心つくかつかないかの頃を過ごした地獄の揺り篭の再臨。
『言霊の加護』の持ち主には、人の声と、動物の声と、虫の声と、
風の音と、雨音と、耳鳴りの区別さえつかない。
――死なずにその時期を過ごせたのは、環境のおかげに他ならない。
そして、周囲の全てと言葉を交わせる代償に、周囲の全てから孤立する。
――自分が何なのかという問いかけの牢獄で、永遠に孤独になれるのだ。
故に、『言霊の加護』の歴代の加護者はいずれも早逝してきた。
📻 最大へ
――以前、スバルにせがまれて話したとき、彼はこれを『チャンネル』と呼んだ
常時発動する種類の加護は、その効果に強弱をつけることで影響を緩められる。
――普段は最弱に設定している、その音量を上げ、強弱を最大へ引き上げた。
――以前、スバルにせがまれて話したとき、彼はこれを『チャンネル』と呼んだ。
「ガーフィールにも、ずいぶんと無理を言いましたからね……」
エミリアを死力を尽くすまで戦わせるわけにはいかない。
――当然だが、スバルやレムの回収以前に、エミリアの命が最優先なのだ。
その目的を果たすため、一番傷を負い、血を流す役目がガーフィールだった。
🩸 責任から逃げるな
安全圏で罪悪感に浸っているだけでいいのか
どこまでいっても、危険を負うのはガーフィールだ。オットーではない。
自分は安全圏でぬくぬくと、胸を痛めて罪悪感に浸っているだけでいい。
――それで事が済んだら、「さァすが、オットー兄ィだぜ!」と称賛されるのか。
(╬゚д゚)
「冗談じゃない」
自分では絶対に選べない道をエミリアが選んでくれて、オットーは安心した。
――内心で喜んでしまった。だから、部外者でいてはいけない。
いくつもあった可能性から、ここを選び取ったのはオットーなのだ。
🤧 とってもバカ
言ってほしかった言葉を、言ってもらえる
(;゚Д゚)
「鼻血、いっぱい出てますよ。ちょっと怖いです」
( ゚д゚ )
「鼻……ぁ、気付きませんでした」
「ガーフさんに負けないぞーって?」
(¬_¬)
「やっぱり。オットーさんって、たまにすごいバカ」
「ガーフィールと違って、僕はもっとあっさり失血死しますから」
「ただ、身を切る覚悟はすべきです」
「オットーさんが、みんなにいけって言ったから?」
(;´Д`)
「ペトラちゃんには敵いませんね」
――正確には、オットーが言ってほしかった言葉だった。
🤍 使えない子じゃない
思っているほど頭の悪い子ではない、と言う
「わたし、オットーさんが思ってるほど、頭の悪い子じゃないと思います」
(╬¬_¬)
「それで、オットーさんは自分が思ってるより、頭がよくないと思います」
「それは……答えづらいですね」
「わたしはオットーさんが思ってるほど、使えない子じゃないつもりです」
小さな手が白く発光し、それが浸透してくる。頭に鳴り響いた耳鳴りが和らいだ。
「これは……陽魔法?」
(´・ω・`)
「旦那様から教わってる、魔法の一部です。まだ、初歩も初歩ですけど」
「こんなの、いつもオットーさんが言いそうなことなのに」
「ずっと怒ってるの。気持ちはわかるけど、声と態度がトゲトゲしすぎ」
📡 支配します
かつてほど、孤独ではありえなかった
「わたしがいたら、もうちょっと効率よく頑張れます」
「それなのに、子どもは見ちゃダメってわたしのこと、後ろに下がらせますか?」
(>﹏<)
「言い方が悪い!」
「下がらせますか?」
握りしめた手が、ほんのわずかに震えているのを、この賢い少女が気付いていないはずがない。
――自分も何かしたいと願うのはペトラも同じなのだ。
「あとで、フレデリカさんには一緒に怒られてもらいますよ」
「一人で鼻血出してるより、一緒に鼻血出そうって言ってもらえた方が嬉しいです」
(・∀・)
「鼻血は嫌ですけどっ」
( •̀_•́ )
「わたしたちが、支配しますっ」
――懐かしき故郷へ帰るオットーは、しかしかつてほど孤独ではありえなかった。
第七章90『地獄の揺り篭』終了。
ズィクル
アベル
ミディアム
オットー