第七章58B
『寄る辺を持たぬモノたち』
「僕を、治し切ってはダメだ」――その一言が、レムに交渉のカードを握らせる。
😤 屈辱
牙が軋み、臓腑が煮えくり返る
――屈辱だった。
噛みしめる牙が軋み、臓腑が怒りで煮えくり返り、魂が悲憤でひび割れる。
(¬_¬)
「なんて、無様だっちゃ」
他の竜人などいない。マデリンは、ずっと一人だ。
――だから何としても、伴侶と望んだモノを殺した相手を殺さなくてはならない。
🩸 肩口から腰まで
細い誰かが、突き飛ばされて前に出る
細い背中が突き飛ばされて、細い誰かが目の前に。
――浅くない鋭さが肉を抉る感触が、手の中に跳ね返った。
(゚Д゚ ;)
「フロップさん!」
刃のように鋭い傷跡が四本、体の前面を生々しく切り裂いている。
(╬゚д゚)
「次は、誰が……ッ」
――やった、とは思わなかった。手応えのなさが、憎悪の対象ではないと気付かせる。
🦷 カリヨンの牙
胸元の装飾品が、獣の牙ではなかった
目に留まったのは男自身ではなく、その持ち物だ。
剥き出しになった薄い胸板で、血に塗れている獣の牙の装飾品。
――否、それは獣の牙ではない。
(╬゚Д゚)
「答えるっちゃ! 答えろ! それができないなら……ッ」
(>﹏<)
「や、やめてください! 意識がないんです! 死んでしまいます!」
(;´Д`)
「治癒魔法をかけます! 私は、治癒魔法が使えます!」
「……救えるっちゃか?」
( •̀_•́ )
「――。やります。何としてでも……!」
💧 命を救う魔法
プリシラ『傷ではなく、命そのものを見よ』
すでに、大勢に治癒魔法を施してきたあとだ。
そこへきて、瀕死に陥ったフロップの治療。精神的な負担も大きい。
「――命を、見る」
治癒術とは傷を治す魔法ではなく、命を救う魔法なのだ。
繋ぐべき命の糸を繋ぎ、留めるべき流れをせき止め、消えかける灯火に勢いを取り戻させる。
🤫 治し切っては
治すのは止めず、治し切るのだけ止められる
か細く弱くなる呼吸と、血の気の失せた頬の色。
その両方が徐々に安定を見せ始め、長い睫毛が震え、青い瞳が薄く開いた。
(゚д゚ )
「――え?」
――治してはいけない、ではない。
正しくは、治し切ってはいけない。
(・・・・・・)
「治し切っては、いけない?」
――治すことは止めないのに、最後まで治すことは止めようとしている。
🤝 条件があります
人でなしと罵られかねない手を、断行する
「――あなたは、どこの誰なんですか?」
(╬゚д゚)
「マデリン・エッシャルト! 帝国の一将っちゃ!」
――彼女はフロップの生存に固執している。
執着する理由がフロップにはあり、それは現状、レムにしか留め置けない。
(#゚д゚)
「なんで、その男の治療をやめたっちゃ!?」
「――。フロップさんの治療を続けるなら、条件があります」
( •̀_•́ )
「その条件を聞いてもらえない限り、これ以上の治療はできません」
――人でなしと罵られかねないこの暴挙を、断固たる意志で決行した。
フロップも望むはず、なんて聞こえのいい言い訳はしない。
🗣️ 選んでください
首を押さえられても、言葉を止めない
「――竜を、侮るのも大概にするっちゃ」
小さな手が首を押さえ、それ以上の言葉を発させない。
――思い出されたのは、同じぐらい強大な相手にレムを庇って前に立ったスバルの姿。
決して強くも特別でもなかった。それなのに、決して退くことをしなかった。
――怒りに任せて殺せば、フロップと言葉を交わす機会を逸することになる。
都市を滅ぼすか、フロップを救うかの二択。
「――どう、しますか」
🧱 真っ平らな大地
瓦礫まで吹き散らされ、大地が真っ平らになる
建物は崩れ、その倒壊した瓦礫も吹き散らされ、真っ平らになった大地。
――集めた落ち葉が強風で散らされたような有様。
(>﹏<)
「プリシラ! プリシラ、どこ!? 返事して! すぐ出してあげるから……」
「――ぴいぴいとうるさいぞ、半魔」
( ゚д゚ )
「プリシラ!?」
「しぶといな。生きておったか」
(´ー`)
「ええ、心配してくれてありがとう」
👑 敵だと思ってくれてる
案じられることを、笑い飛ばされる
(╬¬_¬)
「貴様が妾を案じようなどと笑わせるな」
「そも、妾と貴様は王座を競い合う敵同士であろう」
(´・ω・`)
「む、またそんな意地悪なこと言って」
「プリシラにケガしてほしいなんて、私はちっとも思ったりしません。それに」
(*´ω`*)
「私のこと、ちゃんと敵だと思ってくれてるのね。少しだけ驚いちゃった」
「――待て、半魔。……状況が動く」
「……飛竜が、離れてく?」
🕊️ 優先すべきもの
飛竜が退いた理由を、別の角度から見る
「マデリンが、私たちのお願いを聞いてくれたんじゃ……」
(¬_¬)
「たわけ」
「ならば、引き下がらねばならぬ理由ができたということであろう」
「『雲龍』の存在が露見したのを理由に、撤退の指示が下ったか。あるいは……」
――脅威は唐突に去り、都市は思わぬ命拾いに揺れることとなる。
立て直しを図るには、まず受けた傷の深さと、それが癒えるのかを確かめなくては。
――ただ、一点だけ添えるべき事実がある。
フロップ・オコーネルという商人と、レムという少女の姿は忽然と消えたのだと。
第七章58B『寄る辺を持たぬモノたち』終了。
マデリン
レム
「……僕を、治し切ってはダメだ」
エミリア