リゼロを読む WEB版・初見向け解説
明るさ
字の大きさ
行間
地の文の書体

206話

第七章58B

『寄る辺を持たぬモノたち』

「僕を、治し切ってはダメだ」――その一言が、レムに交渉のカードを握らせる。

😤 屈辱

牙が軋み、臓腑が煮えくり返る

――屈辱だった。

噛みしめる牙が軋み、臓腑が怒りで煮えくり返り、魂が悲憤でひび割れる。

マデリン

(¬_¬)

「なんて、無様だっちゃ」

他の竜人などいない。マデリンは、ずっと一人だ。

――だから何としても、伴侶と望んだモノを殺した相手を殺さなくてはならない。

🩸 肩口から腰まで

細い誰かが、突き飛ばされて前に出る

細い背中が突き飛ばされて、細い誰かが目の前に。

――浅くない鋭さが肉を抉る感触が、手の中に跳ね返った。

レム

(゚Д゚ ;)

「フロップさん!」

刃のように鋭い傷跡が四本、体の前面を生々しく切り裂いている。

マデリン

(╬゚д゚)

「次は、誰が……ッ」

――やった、とは思わなかった。手応えのなさが、憎悪の対象ではないと気付かせる。

🦷 カリヨンの牙

胸元の装飾品が、獣の牙ではなかった

目に留まったのは男自身ではなく、その持ち物だ。

剥き出しになった薄い胸板で、血に塗れている獣の牙の装飾品。

――否、それは獣の牙ではない。

マデリン「お前、なんで竜の牙を……カリヨンの牙を下げてるっちゃ!?」

マデリン

(╬゚Д゚)

「答えるっちゃ! 答えろ! それができないなら……ッ」

レム

(>﹏<)

「や、やめてください! 意識がないんです! 死んでしまいます!」

レム

(;´Д`)

「治癒魔法をかけます! 私は、治癒魔法が使えます!」

マデリン

「……救えるっちゃか?」

レム

( •̀_•́ )

「――。やります。何としてでも……!」

💧 命を救う魔法

プリシラ『傷ではなく、命そのものを見よ』

すでに、大勢に治癒魔法を施してきたあとだ。

そこへきて、瀕死に陥ったフロップの治療。精神的な負担も大きい。

プリシラ『傷ではなく、命そのものを見よ』

プリシラ『生き物の体には血だけでなく、目には見えぬものを様々巡る』

プリシラ『治癒術が掴むべきは、その先にある』

プリシラ『何もかもなくしたはずの貴様に、人を癒す力があるのは、それが貴様の本質である』

プリシラ『――誰しも、自分からは逃れられぬ』

レム

「――命を、見る」

治癒術とは傷を治す魔法ではなく、命を救う魔法なのだ。

繋ぐべき命の糸を繋ぎ、留めるべき流れをせき止め、消えかける灯火に勢いを取り戻させる。

🤫 治し切っては

治すのは止めず、治し切るのだけ止められる

か細く弱くなる呼吸と、血の気の失せた頬の色。

その両方が徐々に安定を見せ始め、長い睫毛が震え、青い瞳が薄く開いた。

フロップ「……僕を、治し切ってはダメだ」

レム

(゚д゚ )

「――え?」

――治してはいけない、ではない。

正しくは、治し切ってはいけない。

レム

(・・・・・・)

「治し切っては、いけない?」

――治すことは止めないのに、最後まで治すことは止めようとしている。

🤝 条件があります

人でなしと罵られかねない手を、断行する

レム

「――あなたは、どこの誰なんですか?」

マデリン

(╬゚д゚)

「マデリン・エッシャルト! 帝国の一将っちゃ!」

――彼女はフロップの生存に固執している。

執着する理由がフロップにはあり、それは現状、レムにしか留め置けない。

マデリン

(#゚д゚)

「なんで、その男の治療をやめたっちゃ!?」

レム

「――。フロップさんの治療を続けるなら、条件があります」

レム「――街を襲っている飛竜の群れを退かせてください」

レム

( •̀_•́ )

「その条件を聞いてもらえない限り、これ以上の治療はできません」

――人でなしと罵られかねないこの暴挙を、断固たる意志で決行した。

フロップも望むはず、なんて聞こえのいい言い訳はしない。

🗣️ 選んでください

首を押さえられても、言葉を止めない

マデリン

「――竜を、侮るのも大概にするっちゃ」

小さな手が首を押さえ、それ以上の言葉を発させない。

――思い出されたのは、同じぐらい強大な相手にレムを庇って前に立ったスバルの姿。

決して強くも特別でもなかった。それなのに、決して退くことをしなかった。

レム「私を、殺しても……あなたの負け、です……」

――怒りに任せて殺せば、フロップと言葉を交わす機会を逸することになる。

都市を滅ぼすか、フロップを救うかの二択。

レム

「――どう、しますか」

レム「――選んでください。あなたは人を殺すのか、それとも生かすのかを」

🧱 真っ平らな大地

瓦礫まで吹き散らされ、大地が真っ平らになる

建物は崩れ、その倒壊した瓦礫も吹き散らされ、真っ平らになった大地。

――集めた落ち葉が強風で散らされたような有様。

エミリア

(>﹏<)

「プリシラ! プリシラ、どこ!? 返事して! すぐ出してあげるから……」

プリシラ

「――ぴいぴいとうるさいぞ、半魔」

エミリア

( ゚д゚ )

「プリシラ!?」

プリシラ

「しぶといな。生きておったか」

エミリア

(´ー`)

「ええ、心配してくれてありがとう」

👑 敵だと思ってくれてる

案じられることを、笑い飛ばされる

プリシラ

(╬¬_¬)

「貴様が妾を案じようなどと笑わせるな」

プリシラ

「そも、妾と貴様は王座を競い合う敵同士であろう」

エミリア

(´・ω・`)

「む、またそんな意地悪なこと言って」

エミリア

「プリシラにケガしてほしいなんて、私はちっとも思ったりしません。それに」

エミリア

(*´ω`*)

「私のこと、ちゃんと敵だと思ってくれてるのね。少しだけ驚いちゃった」

プリシラ

「――待て、半魔。……状況が動く」

エミリア

「……飛竜が、離れてく?」

🕊️ 優先すべきもの

飛竜が退いた理由を、別の角度から見る

エミリア

「マデリンが、私たちのお願いを聞いてくれたんじゃ……」

プリシラ

(¬_¬)

「たわけ」

プリシラ

「ならば、引き下がらねばならぬ理由ができたということであろう」

プリシラ

「『雲龍』の存在が露見したのを理由に、撤退の指示が下ったか。あるいは……」

プリシラ「――帝都の命令よりも、優先すべきものを見つけたか、だ」

――脅威は唐突に去り、都市は思わぬ命拾いに揺れることとなる。

立て直しを図るには、まず受けた傷の深さと、それが癒えるのかを確かめなくては。

――ただ、一点だけ添えるべき事実がある。

フロップ・オコーネルという商人と、レムという少女の姿は忽然と消えたのだと。

第七章58B『寄る辺を持たぬモノたち』終了。