第七章27
『持つモノと持たざるモノ』
勝ち目のない戦いには乗らない。だが、勝ち目があるなら話は別だ。トッドは、都市へ引き返す。
👁️ 原始的な遠見
賢くないからこそ、慎重に見極める
勝ち目の薄い戦いに身を投じるのは、信じ難い馬鹿しかやらない愚行だ。
自分が賢いなんて微塵も思わない。
賢くないからこそ、慎重に判断すべきだ。
それが、持たざるものの戦い方だ。
勝ち目のない戦いには乗れない。
しかし、それは逆説的に言えば――
(・_・)
「――勝ち目のある戦いには乗る、って話で間違いないわけなんだが」
🚪 閉ざされた正門を軽々と
都市を捨てて逃げるつもりだった
都市庁舎が落とされた時点で、都市を捨てて逃げるつもりだった。
投降する気もない。
敵の頭脳があの男である限り、危険因子は真っ先に排除される。
少なくとも、自分ならそうする。生きるためなら、当然の配慮だ。
だが、選択を翻した。
(・∀・)
「間違いねえ。二年前、蛮族の討伐に従軍したときに見た女だ。――『弐』の、アラキア一将だった」
帝国最強たる『九神将』の一人が、反乱の制圧に現れた。
これは、消えたと判断した『勝ち目』に相違ない。
(´ー`)
「なら、勝ち馬に乗っておくのが賢い」
🎯 心中で叫ぶ
――ここで、確実にその男を殺してしまえ
都市庁舎の最上階が、嵐のような風に吹き飛んだ。
シュドラクも帝国兵も区別なく、誰もが倒れている。
そんな状況下で、青い髪の少女を背に立ち塞がったのは――
他の誰でもない、ナツミ・シュバルツだった。
浮かんだのは、緩んだ感想ではない。
――ここで、確実にその男を殺してしまえ、アラキア。
自分の手柄などどうでもいい。
踏みとどまったことが無意味になっても構わなかった。
確実に、戦争の申し子の息の根が止まれば。
🌞 空から降ってきた
傾きかけた天秤が、壊れる
決定的な刹那を見逃すまいと集中する視界の上部。
何かが閃いた。
( ゚д゚ )
「……おいおい、冗談だろ」
赤い煌めきが、二人の間に割って入る。
堂々とアラキアと向かい合い、絶対の強者として背に庇う。
――あの女もまた、常人とかけ離れた『持つ』側のものだ。
そして、命を拾ったナツミもまた。
戦闘力や運動力とは別の形の、『持つ』もの。
(>﹏<)
「今、空から降ってきたのはなんだ!? 飛竜か!?」
(・・・・・・)
「――黙れ、ジャマル」
「ちょうど今、アラキア一将がやられたところだからな」
傾いた天秤は壊れ、もう反対側に傾くことなど二度となかった。
👊 家族愛を盾に
妹の名前を出しても、通じない
(・_・)
「無駄死になんてして、妹を悲しませるのか?」
静かに伸びてきた腕に、胸倉を掴まれる。
「てめえ、カチュアの話をすればいつでもオレが引っ込むと思ったら大間違いだぞ」
(´・ω・`)
「そうか。……残念だ」
😲 思いがけない一言
死ににいくのではないなら、話は別だ
(´・ω・`)
「言っても無駄だろうが、犬死にになるぞ」
「馬鹿か! そんなできもしねえことやらねえよ! オレは、アラキア一将を連れ出す」
( ゚д゚ )
「……なに?」
「まさか、オレが玉砕覚悟で突っ込むとでも思ってたのか」
「ああ、思ってた。てっきり、お前さんは犬死にするのがお望みなのかと」
(╬゚Д゚)
「っざっけんな! オレだって考える頭はついてんだ!」
「――待て、俺もいく」
自殺に付き合うつもりはなかった。だが、そうじゃないなら話は別だ。
🗺️ 頭に叩き込んだ地図
どこで殺せば人目につかないか、熟知している
一度でも立ち寄った場所の地理や間取りを把握する習慣がある。
逃げ場や隠れ場所の心当たりがないと、安心できない性格なのだ。
だから、グァラルに入ってからは都市のあらゆる場所に足を運んだ。
どこで殺せば人目につかず、どこに隠せば見つからないか、熟知している。
(╬¬_¬)
「てめえらに情けはかけねえよ」
帝国に弓引く反乱軍に協力する衛士への怒りは、計り知れない。
(・_・)
「まぁ、俺にはない発想だが」
殺す必要があるから殺すだけで、殺さなくていいなら殺さなかった。
🔒 地下の牢
最奥の牢を守っていたのは、腕の立つ女
最奥の牢を守っていたのは、髪を黄色く染めた大きな体の女。
腕が立つのは一目でわかった。
「むむっ、何者なノー!?」
(╬゚Д゚)
「オレがいなかった戦場で、勝った気になってんじゃねえぞ!」
(>﹏<)
「おかしな奴が出てきた、ノー!」
「そらそらそらそらそらそらそらそらぁ!」
「――っ! 強い奴なノー!」
その隙に、牢の錠へ斧を力一杯叩き付ける。
斧の先端がひしゃげ、代わりに錠前が壊れた。
🩸 焼かれて塞がれた傷
背中の傷跡に、目を奪われる
背に浴びた斬撃。
痛々しい傷跡。
おまけに、焼かれて塞がれている。
熱した刃で傷付けられなければ、こういう傷はつかない。
「あの赤い女、何を……」
( •̀_•́ )
「回収した! ジャマル、いくぞ!」
意識を逸らした隙に、後ろ回し蹴りが胴体へ突き刺さる。
壁に叩き付けられ、ホーリィはぐったりと動かなくなった。
🏹 見られている
足下に、太い矢が一本突き刺さる
足下に、太く大きな一本の矢が突き刺さる。
間違いなく、数日前に胴体を射抜いた射手と同一人物だ。
――見られている。
「お前さんに先行してもらって、さっきと同じように矢を切り落とす」
「俺は一将を振り落とさないよう全力で走る」
「はっ、らしくねえ。それがてめえの手か? 破れかぶれじゃねえか」
「でも、俺はまだ運がいいだろ」
(・∀・)
「お前さんって、かなり強めの手札が残ってるんだからな」
「……やっぱりカチュアは見る目がなかったぜ。もっと頭のいい奴だと思ってた」
「俺の婚約者の悪口はやめろよ、お兄様」
「いいぜ、乗ってやるよ。たまには馬鹿みたいな賭けも悪くねえ」
「うるせえ。――てめえは黙って、オレの背中についてきやがれ」
⚔️ 矢の嵐
ジャマル・オーレリーの、剣の舞
路地を飛び出した途端、豪風を纏った矢の一発。
驚異的な反射神経で、双剣を合わせて切り落とす。
血が燃え、心臓が跳ね、命が沸く。
極限の集中力が世界を緩慢にする。
肌を伝う汗の一滴も、舞い散る砂の一粒も感じられるような気がした。
「――ははぁっ!」
繰り広げられるのは剣舞。ジャマル・オーレリーの剣の舞だ。
眼帯に塞がれた右目から流れる血を、舐める。
そして猛然と、真っ向から敵へ飛び込む。
最後の最後まで自分らしくあれたことこそが、何よりの褒章だった。
🕳️ 通り抜けた穴
自分なら絶対にやらない、と思ってから
(´ー`)
「……最後の最後まで、お前さんは馬鹿だったな」
破れかぶれの策に命を託すなんて真似は、絶対にしない。
――否、死なないためにこそ、そんな真似は絶対にしないのだ。
「路地から飛び出したお前さんを追わせれば、連中の注意もこっちからは逸れる」
義兄を連れ帰るという約束は果たせなくなった。
だが、帝都に戻るための別の手立ては手に入った。
「……ひめ、さま」
「やれやれ、ずいぶんとあどけない顔するもんだ」
そういえばまた、連れが眼帯をしているなと、ぼんやり思った。
思ってから、ふと首を傾げる。
第七章27『持つモノと持たざるモノ』終了。
トッド
ジャマル
ホーリィ
アラキア