第七章106
『頂点乱麻(後編)』
閉ざされた玉座の間。そこで、二人の皇帝が向かい合っていた。
🚪 本物と偽物
閉ざされた扉は、主の意向の表れだった
『閉じる』とは文字通り、扉の完全な外界との隔絶を意味する。
――決して、余人を立ち入らせまいとする宮殿の主の意向の表れだと。
(・∀・)
「その主の意向はどちらのものと考えるのが適切なーのか、どっちだと思います?」
(¬_¬)
「……解せませんな」
ウビルクは剣林弾雨の降り注ぐ中を、掠り傷一つ付けずに歩き抜けたこともあった。
――星の囁きが事実なのか、超人的な戦闘力を秘めた虚言なのか、区別つかない。
🌟 そのために
人間性で召し上げられた者は、ほとんどいない
「人間性を評価されて召し上げられたものなど、ゴズ一将ぐらいのものでしょうな」
「それ以外のものは皆、能を認められてのこと。私奴も例外ではなく」
(´ー`)
「もしかして、ぼくの行動を裏切りとお思いですか?」
「なにせ裏切るには先に信じてもらわなくちゃいけません。ぼくを信じておいでで?」
(・・・・・・)
「いいえ、全く」
(´・ω・`)
「でしょう? 言ってて傷付くんですが」
「この心の臓の鼓動も、肺を膨らませ萎ませての呼吸も、何もかも」
その正気と本気が、凶気の向こう側を覗いたものでないかは定かではないが。
(・_・)
「――閣下、あなたはどうされますか」
❓ 望みは叶ったか
この先の対話で、何を求めるかを定める
(¬_¬)
「腰と言葉の軽い男だ。信義を空に預けた『星詠み』など、当てにしたものではないな」
他者にはヴィンセント・ヴォラキアそのものに見えているだろう顔。
――しかし、長年知るアベルにとっては、出来の悪い仮面にしか見えない。
何を悠長なと誹りを免れ得ない類の問い。だが、必要だったからだ。
――この先の対話において、何を求むるべきか定めるために。
「――いいや、まだだ。いまだ、余の求むるところの結果は得られておらぬ」
👁️ 欺瞞だな
両目を同時につむったこと自体が、意思表明
アベルは決して両目を同時につむらない。
――瞬きのあとには命のない帝国を統べる皇帝として、備えに不足すぎる。
それを行えたこと自体を、アベルは自らの意思表明とした。
自身を裏切り、背中から刺したも同然の相手を前にしても、感情を排してきた。
――その声に、ここで初めて色が混じる。隠すことをやめた軽蔑の色が。
「拡大する火種は全土へ燃え広がり、帝都についに無粋な土足を許したぞ」
「玉座にいたのが自分であれば、そうはならなかったとでも?」
「元より、俺が玉座からどいていなければ此度の絵図は描かれぬものだ」
🎭 写し鏡
仮面を引き剥がし、素顔を晒す
顔に張り付く仮面を引き剥がし、外気に、相手の視線に素顔を晒す。
――本物と偽物、余人にはその違いを見抜くことの叶わない写し鏡。
聡い男だ。行動と言葉、その意図は明瞭に伝わったことだろう。
――共に、見据える障害、抗うべき『大災』が同じであれば、それも道理だった。
( ゚д゚ )
「俺が――」
「――閣下」
その姿で、声色で、発するべきではない単語だ。
――自分より上へ遜ることなど、あってはならない立場の自覚を喪失した一声。
「――盤面の俯瞰、その一点が落ち度だ」
🌪️ 神業
得意な戦術が効かなくても、匙は投げない
首を落とそうと、手足を断とうと、残った部位を武器として襲いかかる石人形。
――ラムの得意な戦術は効果を為さない。だが、匙を投げるほど可愛い乙女ではいられない。
( •̀_•́ )
「放テ――ッ!!」
矢は速度と回転を加えられ、鏃が食い込んだところで風を炸裂させる。
目をつぶり、手を使わずに針の穴に糸を通す。
――それも、同時に十も二十もある穴へと、同じだけの数の糸を通すという神業。
(≧▽≦)
「あア、快いナ! 敵も味方モ、その度肝を抜いてやるというのハ!」
「姉上は勝手によけル! 手を止めるナ! ラムの風に我らの意気を乗せロ!」
(╬゚Д゚)
「どけどけどけどけ! 石の雑魚人形が、戦場を荒らしてんじゃねえええ!!」
🚶 一進二退
大勢に背を向けて、帝都へ一歩を踏み出す
(>﹏<)
「退避――っ!!」
文字通り、モグロの腕の一振りで、押し込んだ戦況は瞬く間に押し返される。
――一進一退ではなく、一進二退の攻防が繰り広げられていた。
( ゚д゚ )
「――なに?」
戦場で相見える大勢の戦士たちに背を向けて、帝都へと大きな一歩を踏み出した。
⚡ より取り見取り
掴まるものがなくても、落ちない
「しゅわ!」
何にも掴まれなかったら、人の体は普通は地面に落っこちるのだ。
――なのにセシルスは、そういう当然を無視して高い氷壁を足場とする。
(≧▽≦)
「より取り見取りの目移り放題! 制限なしの小細工抜きです!」
エミリアの生み出した無数の氷の武器を、自分の服に突っ込んでおいたのだ。
「ちゃいちゃいちゃいちゃいちゃい!」
「すごい……」
「もしも龍が翼を失ってしまったら地竜と何が違うことになるんでしょうね?」
(>﹏<)
「マデリン、起きて! 起きてったら!」
マデリン自身も、助けにきたメゾレイアも、どちらの命も奪わせずに終わらせられるのは。
☁️ 嘘っちゃ
メゾレイア『――嘘っちゃ』
(;´Д`)
「いやぁ、今のは危なかった!」
打ち据えられる猛烈な一撃を放った腕を、足裏を合わせて走り抜けた。
「美人さん!」
「あ、はい!」
「あれ?」
暗黙の了解、先手を譲る姿勢でいたにも拘らず、くるはずの攻撃がこなかった。
その視線をさらに高い空へ。自分よりもずっとずっと高い空へ向けて、止まっていた。
「……何か、飛んでる?」
🕊️ 届きませんね
楽しげだった表情が、一転して慌てる
(;゚Д゚)
「えええ!? ちょちょちょ、待った待ったそれはないでしょう!?」
それまで何をされても楽しげだった表情が一点、大慌てに目を白黒させる。
――飛び込んでくるはずの相手が、まさか背中を向けたのだから。
「させます、かぁ!!」
メゾレイアは戻らなかった。戻らず、ぐんぐんと上昇し、空を切り裂く。
( ゚д゚ )
「――帝都の中に入ってく?」
🕸️ 戦士足れない理由
特殊な武器を選ぶ理由が、ここでわかる
鋭い衝撃が左の鎖骨を打つ。首元を打ったのは、相手が手にした鉄扇。
――扱う武器としては特殊な部類。その過去の疑問の回答を、いま得た。
戦士は頭ではなく、肉体に、血脈に沁み込ませた技を開示する。
――腕をひねられ、力の抜ける手から握ったそれを奪われる。
――自分の顔に、再び馴染んだ感触が被せられていることに気付く。
(╬゚Д゚)
「貴様――」
その顔で、自分のものではない顔で、チシャ・ゴールドが唇を歪める。
――それがひどく退廃的な笑みだと、自分の顔で認めてアベルは目を見開いた。
――玉座の間の壁を穿って飛び込んだ白光が、その胸を背後から貫いていた。
第七章106『頂点乱麻(後編)』終了。
ウビルク
ベルステツ
アベル
タリッタ
「フーラ、エル・フーラ、フーラ、エル・フーラ」
ミゼルダ
ジャマル
ズィクル
セシルス
エミリア