リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章22

『無血開城計画』

血を流さずに城郭都市を落とす。スバルが出した答えは、誰も想像しなかった形をしていた。

🕊️ 鬼面を剥がされて

組み合わせるべきではない、二つの言葉

時は、都市庁舎で舞姫が舞うより遡る。

アベル

(・・・・・・)

「――無血開城、だと?」

嘲弄の響きはない。

あるのは純粋な疑念。何を言い出したのかわからないという一息。

スバル

「最小限の犠牲で済ませる算段はしても、そもそも犠牲ゼロって考えがお前にはない」

アベル

「当然だ。今俺たちがしているのは戦争だ。どうあろうと人死には避けられん」

アベル

「人的資源の浪費を避ける考えはできてもな」

スバル

(¬_¬)

「その、人的資源って考え方がそもそも好きじゃねぇな」

『人間』と『資源』。

組み合わせるべきではない単語だ。

そうやって一段階遠ざけるから、人が数字にしか見えなくなる。

🔥 すり減った魂

憔悴しきっていたはずの男が、大見得を切る

アベル

「ずいぶんと大見得を切るものよ。先ほどまで、あれほど憔悴していた貴様が」

スバル

「ボロボロの情けねぇ醜態晒したことは否定しねぇさ」

この国に吹っ飛ばされてから、災難がノンストップで降りかかっている。

右手が新品にすげ変わったのも、その一個だ。

幸運もある。

右手の交換。

レムレムが目覚めたこと。

フロップフロップとミディアムミディアムに出会ったこと。

それ以外は、幸運と災難の表裏一体。

スバル

「苦労の連続で、魂がすり減るとこだ。けど」

スバル「――摩擦した分だけ、火は付いたよ」

ちょうどそのとき、杖をついたレムが集会場の入口に着いた。

見届けにきたのだろう。

彼女の身勝手な懇願が、ナツキ・スバルの魂に火を付けたのだから。

🕳️ 抜け道

奇襲は、絶対にうまくいかない

スバル

「フロップさんから抜け道の話を聞いて、都市に入り込む戦略……奇襲のつもりか?」

スバル

「そんなの、絶対にうまくいかねぇぞ」

抜け道は、平時の警戒を通り抜けるためのものだ。

戦時の警戒網を潜れるとは思えない。

何より――

スバル「俺たちを都市で追い詰めた奴は、そういうのを見逃さない奴なんだよ」

塞ぐか、塞がないことで『罠』へ変えるか。

スバル

「抜け道から抜け出た瞬間、向こうで待ってた相手に斧で頭をかち割られるなんてこともありえるぞ」

フロップ

(>﹏<)

「なな、なんでそれを僕の顔を見て言うんだい、旦那くん! 怖い想像なんだが!」

全員に周知するつもりが、つい彼の顔をまじまじ見てしまった。

あれを、また目にするなど死んでも御免だ。

☠️ 人でなくてもいい

機能を麻痺させるだけなら、手はある

アベル

「出入りするのは、人間でなくてはならぬ理由もない」

アベル

「都市にこもった兵たちの機能を麻痺させるだけなら、物を持ち込ませるだけで十分だ」

スバル

「物って……」

アベル「――毒だ」

スバル

(╬゚Д゚)

「なおさら、見逃せるわけねぇだろ!」

あの毒の威力は、自分の体で知っている。

あの地獄の苦しみは、戦いで死ぬよりなお悲惨だ。

スバル

「被害を最小限にするって方向性で話してたんじゃねぇのかよ」

アベル

「貴様は何を言っている。抜け道を使った奇襲でも、こちらの手勢が犠牲になる可能性はあろう。毒なら、それはない」

アベル

「手持ちの戦力の犠牲を減らす。これが、被害を最小限にするということだ」

為政者と、それ以外。

立ち位置の隔たりは、理解以上だった。

この男は、帝国兵への被害を一切考えていない。

🤲 まあまあまあ

フロップが、間に割って入る

フロップ

「――まあまあまあ、待ちたまえよ、二人とも!」

フロップ

「僕はぜひ、旦那くんの語った『無血開城』という話を聞いてみたい!」

フロップ

「それが事実なら、夢みたいじゃないか!」

毒気を抜かれたのは、アベルの方も同じだったらしい。

アベル

「――。いいだろう、聞かせてみるがいい」

アベル

「貴様の案とやらでうまくこの商人を騙し、抜け道の所在さえ聞き出せればしめたものだ」

フロップ

( ゚д゚ )

「ええ!? 旦那くん!? まさか君は……」

スバル

(╬゚д゚)

「違う違う違う! 口裏合わせてない!」

🚪 入口から

入口から、静かな問いが差し込まれる

場の間隙に、微かな声が滑り込む。

レム

「それで、あなただったらどうするんです?」

レム

「淡い夢でも、血塗られた現実でもない、別の道を見つけられるんですか?」

スバル

「……いちいち、俺の心が沸き立つ言い方をしてくれるもんだぜ」

覚悟を、引き締め直す。

スバル

「俺の案は抜け道も、血を流す必要もない」

スバル

「ただし、フロップさんには力を貸してもらうことになる」

✨ 恵まれた才能

フロップには、商才のほかにもうひとつある

フロップ

「だけど、旦那くん、僕が非力で少々口が回るだけの行商人なのは君も知っている通りのはずだよ?」

スバル

「ああ、もちろん。でも、フロップさんには商人ってだけじゃなく、生まれ持って恵まれた才能があるんだ」

スバル「――顔がいい」

フロップ

(・_・)

「――へ? 顔?」

ミゼルダ

「そうカ、確かにナ」

タリッタ

「――! 姉上、何か気付かれたのですカ?」

ミゼルダ

「いいヤ、顔がいいというスバルの話に賛同しただけダ」

タリッタ

(´・ω・`)

「姉上……」

だが、その脱力ものの審美眼こそがヒントをくれた。

スバル

「髪を染めたり、体の模様を描いてるってことは化粧はするだろ? その道具、ちょっと俺に貸してみちゃくれないか?」

💄 しばらくして

戻ってきた成果に、全員が言葉を失う

戻ってきた『成果』を見せられ、面々が言葉を失う。

困惑や呆れではない。

純粋な驚きと、感嘆だ。

スバル

「素材の出来がよければ、俺にもこのぐらいのことはできるってことだ」

フロップ

「イマイチ、僕には成果が見えていないわけなんだが、どうなっている感じなんだい?」

スバル

「おいおい、心配いらねぇってフロップさ……いいや、心配いらないさ、フローラ」

フロップ

( ゚д゚ )

「フローラ!?」

金色の長い髪を柔らかに梳かす。

目元がはっきりするようにアイシャドウ。

睫毛を整え、頬にほんのりと赤。

唇に紅を塗り、衣装を変えた。

華奢な体なら、ほんの少しの工夫で『彼女』と見せかけられる。

スバル「美は、作れるんだ」

🧊 突き刺さる声

感嘆の中に、ひとつだけ冷たい声が混じる

レム

(╬¬_¬)

「ふざけてるんですか?」

スバル

(>﹏<)

「え!?」

スバル

「ふ、ふざけてない! 全然ふざけてないから、そんな目するな!」

レム

「あなたを……少しでも信じてみようとした私が馬鹿でした」

スバル

「結論が早い! その見切り方、今さらだけどラムそっくりだな!」

レム

「は?」

🎯 真意

黙っていた一人だけが、狙いを見抜いていた

アベル「――狙いは、ズィクル・オスマンか」

驚きを隠せずにいた周囲と違い、この男は真意を測るために黙っていた。

帝国二将。

城郭都市グァラルに駐留する帝国兵の指揮官。

堅実で無難な用兵を好む実力者。

そして――

スバル

「とびきりの『女好き』って聞いたぜ。帝国兵の間じゃ有名みたいだった」

レム

(¬_¬)

「『女好き』……あまり、好ましい印象は受けませんね」

スバル

「つまり、無害な女だったら近付ける可能性が高い」

スバル

「それなら、このフローラの力があればいけるはずだ」

💪 肩を掴んで

一人でやらせるつもりは、最初からない

スバル

「安心してくれ、フローラ。もちろん、一人でやらせるような真似はしない。俺もおんなじように戦うつもりだ」

ミゼルダ

(´・ω・`)

「それはいくら何でも無茶ダ、スバル!」

ミゼルダ

「お前の目つきにも愛嬌はあル。だガ、生まれ持ったものハ……」

スバル

「おいおい、よしてくれよ、ミゼルダさん。あんた、俺の話を聞いてなかったのか?」

スバル「――美は、作れるんだよ」

ミゼルダ

「お前には負けタ。……見せてみるがいイ、お前の可能性ヲ」

クーナ

(・・・・・・)

「こレ、何の話してんだかわかんねーんだガ」

🎴 手札は少ない

化粧が通じるのは商人だけか、と問われる

アベル

「ナツキ・スバル、一つ聞くが……貴様の化粧、通ずるのは商人だけか?」

スバル

「言ったはずだぜ。仮に作戦を決行するなら、俺も同じ立場に立つってな!」

アベル

「たわけが。誰が貴様になど期待するか。鏡で自分の顔を見てからほざくがいい」

スバル

(´・ω・`)

「言い方!」

アベル「商人だけでは手に余る。――なれば、俺が続こう」

ミゼルダ

( ゚д゚ )

「あ、アベルがだト!?」

アベル

「平時であれば、一考するにも値せん愚策よ」

アベル

「だが、現状こちらの手札は少なく、打てる方策も限られる。効果的ならば、身を切ることも必然の状況だ」

座を追われたとて、皇帝であることに揺らぎはない。

ダメな権力者なら、我が身を大事にするあまりに下手を打つところだ。

👥 手が足りん

連れていく面子が、その場で決まる

アベル

「使えそうなのはクーナとタリッタ、といったところか」

クーナ

(・_・)

「おい?」

アベル

「押さえを利かせるだけの手勢はいる。とはいえ、一目で『シュドラクの民』とわかるものは避けたい」

バリバリの武闘派であるミゼルダミゼルダ。

一見して特異な印象を与えるホーリィホーリィ。

この二人は、素性を隠したい今回にはそぐわない。

クーナ

「族長が言うんなラ、アタイから言うことは特にねーナ」

タリッタ

「姉上のお考えに従ウ。……化粧にも、興味があル」

🙋 私も

レムの同行だけは、断ることになる

レム

「私も、ご一緒させてください。きっと役に立ってみせます」

スバル

「レム……悪いが、それは無理だ」

レム

(╬゚д゚)

「――っ! また、私を不必要に危険から遠ざけようと……」

スバル

「お前の参加を却下するのは、純粋に作戦の成功率が下がるからだ」

スバル

「……お前は、都市の帝国兵たちに顔を見られてる」

レム

「でも……でも、顔を見られたという条件なら、あなたも同じじゃないですか!」

スバル

「ああ、だけど違うんだ」

スバル「だって、次にグァラルの正門を潜るのは俺じゃなく、ナツミ・シュバルツだから」

レム

(・_・)

「は?」

レム

「ですが、どうにかしてほしいと、そうあなたにお願いしたのは私です」

レム「その私が、口を挟めるはずないじゃありませんか。……成功させてください」

🐂 ボテちんを休ませたい

血の繋がった妹の目も、誤魔化せてしまう

ミディアム

「――おーい、あんちゃーん! そろそろ、ボテちん休ませたげないと可哀想だから、どっか置いときたいんだけどー」

ミディアム

(・_・)

「あれ、あんちゃんは?」

フロップ

「おお、妹よ! 兄を見失うとはずいぶんと薄情じゃないか。僕はここだとも!」

眉を寄せて考え込む。

しばらく押し黙り、やがて何かに気付いたように叫んだ。

ミディアム

(≧▽≦)

「あんちゃん、実は姉ちゃんだったのか!」

フロップ

(>﹏<)

「旦那くん!? これ、僕はいったいどうなってるのかな!? 怖い!」

血の繋がった妹の目も誤魔化せるなら、作戦のかなりの足掛かりとなりそうだった。

第七章22『無血開城計画』終了。