第七章58
『寄る辺なきモノたち』
影には意思がある、と皇帝は言う。――そして、魔都の主が守っていたものの正体が告げられる。
🌙 三年前
悪夢に苛まれ始めたのは、三年前から
――タリッタが『天命』の悪夢に苛まれ始めたのは、三年前のことだ。
『シュドラクの民』にも、避けられない出来事への理解はある。
有体に言えば、『死』こそが最も避け難き運命。
同胞が死ねば、その魂が安らぎへ迎えられることを祈り、歌う。
元々、物事を考えるのが得意ではない。
わざわざ思い煩って、悩み事を増やすような真似はしない。
――自分の人生は姉の後ろに続くものと思っていた。
「――ねエ、タリッタ。私、『星詠み』に選ばれテ、天命を授かったノ」
――そう、最も身近な『魂の姉妹』に打ち明けられるまでは。
🧠 明々白々たる意思
狙われている相手に、偏りがある
(>﹏<)
「急にやる気になったね!? でも、アベルちんじゃ危ないよー!」
「あれが本命の『大災』であれば、こちらの備えに不足が過ぎると嘆こう」
「だが、そうでないなら……あれは本命の前の座興に過ぎぬ」
(╬¬_¬)
「もったいぶるの、アベルちんの悪い癖!」
「先のあれは、貴様たちに手を伸ばしたのだ」
――落ちてくる影から二人を連れ去ったとき、タリッタも感じたのだ。
あの恐るべき漆黒から、わずかな執着のようなものを。
「腹の内でもがくものの意思が反映されているのだろう」
「救いを求め、片端から手を伸ばし続けている。見よ」
( ゚д゚ )
「――ルイちゃんと、ヨルナちゃんばっかり狙われてる?」
🟠 その名前
意思が誰のものか、わかっているらしい
――まるでアベルには、あの『大災』の意思が誰のものかわかっているようで。
「あれはナツキ・スバルの内より溢れたものだ。なれば、奴の意思が介在したとて不思議はない」
(゚Д゚ ;)
「ま、待ってよ、アベルちん……あれが、あれがスバルちんだって言うの!?」
「厳密には、ナツキ・スバルの意思の反映を許すもの、だ」
(╬゚д゚)
「アベルちんは、なんでそんなに平気そうなの!?」
「スバルちんが助けてって言ってるんでしょ? なのに、なんで平気なのって聞いてるの!」
(¬_¬)
「――あれの苦しみに寄り添えば、目の前の事態が収拾するのか?」
「生憎と、現実はそれほど柔軟でも友愛に満ちてもいない」
🎣 見つけさせるの
あたしも前に出る、と名乗り出る
( •̀_•́ )
「――あたしも、前に出るよ」
「あたしがいくのは、ルイちゃんとかヨルナちゃんが戦ってるところ!」
「それならルイちゃんたちの苦労もちょっぴり減るよね?」
(・_・)
「却下だ」
(>﹏<)
「アベルちん!」
「その状態では囮の役目も満足に果たせまい」
「貴様の死が周囲に与える影響の方が懸念材料となりかねん」
🗡️ 運命様、上等だ
元の大きさに戻った男が、駆けつける
(゚∀゚)
「アルちん!? おっきくなって……元に戻れたの!?」
「ちょうど、出戻った爺さんと出くわしてな」
(;´Д`)
「悪ぃが、爺さんは連れてこれなかった。賢く立ち回るんだと」
(´・ω・`)
「もう、怖いの収まった?」
(・・・・・・)
「……怖いのは、たぶん一生収まるもんじゃねぇんだわ」
「ならば、何が貴様を立たせた?」
「悪ぃけど、アベルちゃんの納得のために言葉を尽くしたりしねぇよ」
(・∀・)
「オレの主人は、あのエロ可愛い姫さんだけさ」
「オレの動きは、アベルちゃんが勝手に計算式にでも何でも組み込んでくれや」
🏹 自ら選ぶ他にない
背中を狙うなら好きにせよ、と背を向ける
「――タリッタ」
「背中を狙うなら好きにせよ。だが、心せよ」
手に持った弓に矢をつがえ、背中を射れば話は簡単だ。
――だが、簡単な話にポンと飛び込めるなら、こうも思い悩まない。
(´;ω;`)
「天命に従うカ、逆らうカ……私ハ。私、ハ……」
――いつかと同じように、流され、星に嘲笑われるだけのように。
⏱️ まだ、ほんの数分
数分しか経っていないのに、消耗が大きい
(╬゚Д゚)
「ううあああうううう!!」
横っ跳びに飛びついてきた小さな影が、ヨルナごと転移する。
「あの童を、案じておりんすな」
「うあう……!」
ルイを狙って放たれる影の腕は百に近い。
その全てを回避し、被害の拡大を防ぐ貢献は計り知れない。
「使え! 娘!」
「あう!」
茨を足場に提供し、回避行動を手際よく助ける。
――『大災』が城を呑んでから、まだほんの数分。
にも拘らず、消耗は無視できる範疇に収まらない。
🗣️ 右! 足場踏んで飛べ!
見えている側が、動く側に指示を出す
「うおりゃあああ――!!」
「いくぜ、ミディアム嬢ちゃん! 堂々、オレらの参戦だ!」
何故か、青龍刀の刃を自分の首に宛がい、危険な姿勢で駆け出している。
「右! 足場踏んで飛べ! 瓦礫に爪先引っかけて、今度は上!」
「うんりゃ!」
動いた位置を順番に影が撫で、削り、押し包む。――だが、届かない。
「おい、そっちの入れ墨の兄ちゃん、手伝え! オレが指示する!」
(╬゚д゚)
「断る! 何故、自分が貴公のような得体の知れない輩に……」
「上だ! 茨をでかく広げろ!」
( ゚д゚ )
「む!?」
とっさに広げた茨の上を、影の大波が流れるように軌道を変えた。
「あの『大災』の動きを読めるのか?」
「ちょいと因縁があってな。話を聞く気になったか?」
「――。被害を減らすためなら致し方ない。だが、出任せならば許されんぞ!」
🏛️ 真の象徴
感傷という見方は変えず、誤りだけ訂正する
「魔都の放棄、その提案を考慮できる程度には頭は冷えたか?」
「くだらぬ感傷という考えに変わりはない。だが、貴様の誤りを訂正してやる」
「象徴として建ったのは紅瑠璃城だが、真の象徴は常に天守閣にあった」
「わっちがいれば子らが空腹を堪え、雨に濡れるのも厭わぬと、そう言うとでも?」
(・・・・・・)
「――言うぞ、奴らは」
飛来した瓦礫の破片が、その顔から鬼面を引き剥がす。
額を血が伝い、しかし表情は小揺るぎもしない。
「民草は愚かだ。痛くなければ抗うことを忘れ、敵がいなくば己を鎧うことすらせぬ」
「だが、その弱く姑息な愚かさこそが、奴らを奴らたらしめる」
「そして、再び太陽が昇り、腹が満たされる日を、貴様と望むことを選ぶのだ」
「魔都を放棄せよ。奴らの行く当ては貴様と同じ。そして寄る辺は貴様自身だ」
💥 城でなく、都市で
放棄したあと、どうするのかを問う
「魔都を放棄し、あの『大災』から逃れて、どうするでありんす?」
「この期に及んで俺を試すか。貴様もわかっていよう」
「――呑んだ城では吹き飛ばすには足らずとも、貴様の愛した魔都であれば話は別であろう」
――遠く、高所に佇む黒瞳が同じ光景を眺めている。
「とーにーかーく、ぼくの担当外ですから!」
「貴様、右腕はどこで落とした」
「あの、でっけえ影に呑まれちまったい」
「それにしても閣下、こんなとこで悠長にしてっていいのかよぅ?」
「大事ない」
第七章58『寄る辺なきモノたち』終了。
ミディアム
アベル
タリッタ
ルイ
ヨルナ
カフマ
ウビルク
オルバルト