リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第六章68

『サソリ座の女』

赤い光点の正体を知っても、腑に落ちないことが残る。

⭐ 星の名前

――名前の、意味

『シャウラ』とは、スバルの知る夜空に輝く星の名前――さそり座を意味する単語。

さそり座の名を冠する人物の正体が漆黒の甲殻を纏った大サソリとは、実にひねりのないシンプルな回答だ。

だが、目下、そのセンス不足の第一候補は『お師様』扱いのナツキ・スバルだ。

❓ 何故

――怒りの、向け先を失う

あのとき感じた耐え難い怒り、それは忘れられない。

――その憤怒の対象であった大サソリ、その正体が仲間のはずのシャウラだった。

何故、シャウラが大サソリの姿をしているのか。

何故、シャウラはスバルたちを攻撃し、殺そうとしているのか。

何故、シャウラはこの局面で本性を現し、戦いに横槍を入れてきたのか。

ベアトリス

「――スバル、落ち着くのよ。まず、深呼吸するかしら」

🕯️ 重なる光

――他に、候補がいない

ベアトリス

「それでいいのよ。――あれが、シャウラだっていうのは事実なのかしら?」

その仲間たちに感じる淡く温かな感覚を、あの大サソリにも感じている。

現状の塔での仲間たちの位置関係を思えば、他の候補者は考えられない。

スバル

「絶対にシャウラだ。なんでかわからねぇが、でかいサソリに化けてやがる……」

ベアトリス

「――。元々、正体不明の娘だったのは事実なのよ。その正体が、ちょっと大きめの虫だったくらいじゃ驚くに値しないかしら」

スバル

「すげぇ胆力だな……」

🧩 筋が通らない

――合理的では、ない

スバル

「何とか答えたらどうだ! もう、てめぇの正体は割れてんだぞ!!」

スバル

「言い訳とか、獲物を前に舌なめずりとか、やることがあんだろうが……っ」

しかし、大サソリは意思疎通不可能な外観のままに、一切の返事をしようとしない。

シャウラにその気があったなら、こんな局面で戦いに割り込んでくるような真似をしなくても、ここまで何度でも寝首を掻くタイミングがあったはずだ。

その機会を逃してまで、どうしてここで裏切りを露呈したのか。そんなの、全く合理的ではない。

スバル

「そう考えたくなるのは、俺があいつのホットパンツから見える白い足に魅了されちまってるからなのか?」

ベアトリス

「それでスバルの考えが甘くなるんなら、シャウラの作戦も捨てたもんじゃないのよ」

💜 紫の矢

🟣マナが、尽きかける

ベアトリス

「どうやら、くっちゃべってる暇はないみたいかし、ら!」

煌めく紫の光が荒れ狂い、ガラスの砕けるような音が通路に美しく連鎖する。

スバル

「うおおおおおお!?」

ベアトリス

「頭下げてるのよ! 直撃されたらヤバいかしら!」

ベアトリス

「ぐ、マズいのよ……! このままだと、すぐにこっちのマナが尽きるかしら……!」

スバル

「尽きるとどうなる!?」

ベアトリス

「ベティーとスバルが仲良く一本の針で串刺しなのよ!」

❄️ 弱いものいじめ

❄️頭の上で、危ないじゃない

エミリア

「――さっきから、人の頭の上でビュンビュン危ないじゃない!」

エミリア

「スバルたちを狙って……弱いものいじめなんて卑怯よ!」

エミリア

「てや! えい! うりゃぁ!」

大サソリの強靭な鋏、その力は圧巻で、受け止めた相手の武器を容易く砕き、断裁する剛力を秘めている。

だが、エミリアにはその武器破壊が通用しない。

本能的な戦い方をよしとするエミリアにとって、敵の姿かたちは絶対ではない。

🌸 一人で

――一人に、なる

スバル

「ラム!!」

ラム

「いちいち怒鳴らなくても聞こえるわよ。黙りなさい。気が散るから」

ルイ

「ひぎゃはっ! 姉様ってばひどいひどい!」

今のルイは右腕をへし折られ、腕の一本を封じられた状態にある。

『拳王』の培った武術の経験値、それも不調の消えたラムの前では形無しだ。

ルイ

「すごいね! すごいな! すごいよね、すごすぎるね! 姉様ってば知ってた以上に強すぎるッ! 何これ何これ、なんでそんなに動けるの!?」

ラム

「知ったような口を利かないで、黙って死になさい」

🤢 引き取る

――屁でもないと、虚勢を張れ

込み上げてくる嘔吐感、無制限に高まっていくような体温。

これが、常日頃、ラムが味わっていると思われる絶不調。

この権能のおかげで、ラムの苦しみを引き取り、彼女に戦う力を与えることができる。

――このぐらい、屁でもないと虚勢を張れ。

ラム

「――馬鹿ね」

短く呟かれた言葉は聞き取れず、スバルの眉を顰めるだけの結果となった。

🌸 望み通り

――望み通りに、してあげる

ラム

「いい加減に倒れなさい。あまり長引かせると、うちの雑用係が昏倒するわ」

ルイ

「つれないね、つれないな、つれないじゃない、つれないったらないんだから! 姉様、姉様! もっと遊びましょう! 楽しもうよ! あたしたちって姉妹なのに、こんな風に取っ組み合ったことも一回もなかったじゃないッ!」

ラム

「――なら、望み通りにしてあげる」

掌に生じた風刃の渦は、人体の急所を抉るだけなら十分な威力がある。

🔄 スイッチ

――中身が、入れ替わる

ライ

「――ったく、人が寝てる間に勝手なことするんだからさァ。これだから、末妹ってのはわがままでいけない。姉様も、上の立場として同意見でしょ?」

うなじへの一撃が決まる瞬間、『拳王』の姿が変化し、ラムの掌打が外れた。

スバル

「スイッチ……!?」

ライ

「違う違う違う違う違うってッ! そんな狙ってやったわけじゃァなくてさ、たまたま目が覚めた瞬間、妹が劣勢だったってわけ。兄弟がやってるゲームが下手で、見てられなくってコントローラーを取り上げちゃう気持ちがサ」

🔥 灼熱

――腹が、焼ける

スバル

(ノ゚Д゚)ノ

「ぐ、ぎあぁぁぁぁ――っ!」

まるで、腹を火掻き棒で掻き回されるような激痛に苛まれる。

ライ

「はあん? やっぱりね。動けるわけない姉様が動けたのって、お兄さんのおかげだったわけだッ! 姉様ったら、妹がいない隙に妹の想い人と絆を深めたわけ!?」

その足下、踵から刃先の短い隠し刃が覗いており、その先端をラムの血で濡らしていた。

ベアトリス

「スバル!?」

ラム

「バルス、やめなさい!」

この苦痛はラムには返せない。返した途端、ラムは動けなくなる。

🎒 荷物扱い

❄️担がれて、逃げる

ラム

「ベアトリス様! バルスを連れて下がってください! 邪魔なだけです!」

スバル

「だ、ダメだ……! 俺が、ここから離れたら……」

ラム

「く……! エミリア様! 一度こちらへ!」

エミリア

「え? あ、うん! わかったわ!」

エミリア

「ごめんね、ちょっとだけ大人しくしてて!」

スバル

「女の子に担がれて、プライドが傷付く……」

ラム

「傷付く矜持なんて今さらないでしょう。大人しく荷物扱いされなさい!」

👑 権能

――加護の、上位互換

ラム

「バルス、何をしているかわからないけど、それを解きなさい。そのままだと……」

スバル

「お、俺が耐えかねるってか? 言っとくが、俺は男の子だぜ。やせ我慢と強がりは、俺たち男の特権……」

ラム

「それだけボロボロで、エミリア様に担がれていてよく言えたものね」

エミリア

「スバル、何かしてるんでしょう? 途中から、私もすごーく体が軽くなったし、打たれたところも痛くなくって……ベアトリス、もし、スバルに無理させてるなら」

ベアトリス

「ベティーじゃないのよ。これは、スバルが勝手に……権能でやってることかしら。ベティーだって、やめさせられるならやめさせたいのよ」

ベアトリス

「――。加護の、上位互換みたいなものかしら。スバルはかなり無茶してそれを使っているのよ」

ラム

「ラムの責任を勝手に持ち去ろうだなんて、いつからそんなに偉くなったの?」

スバル

「悪いな……紳士なんだ。だから、女子の荷物はスマートに持ってあげちまう……」

🦂 手出しなし

――襲われて、いない

スバル

「やっぱりだ」

エミリア

「やっぱり? 何がやっぱりなの?」

スバル

「メィリィは、今も、バルコニーで魔獣を押しとどめてくれてる……」

ベアトリス

「あの娘は、シャウラに襲われてないってことになるのよ」

スバル

「その通り」

スバル

「シャウラがああなったのは、メィリィと別れたあと。いずれにせよ、メィリィにシャウラは手出ししてない……」

エミリア

「起きてる問題を解決しないと、逃げてても追い詰められるばっかりになっちゃう!」

⚜️ 噴煙

――壁が、両断される

ラム

「――っ、止まりなさい!」

衝撃波は石造りに見える通路を斜めに両断し、石材と噴煙が立ち込める。

ユリウス

「ラム女史……それに、エミリア様とベアトリス様か」

エミリア

「ユリウス!?」

ユリウス

「別れてほんの数分だと思ったが、ずいぶんと手酷くやられたようだね」

スバル

「うるせぇ……一応、無傷だよ……」

スバル

「頼むから、レイドの首は刎ねてきたって言ってくれ……」

ユリウス

「事実と異なる報告をするのは、騎士として非常に苦しい選択だ」

ベアトリス

「……もはや、それが答えになってるかしら」

🩸 大修羅場

――正門と、後門

レイド

「はン! 女共が揃ってお出迎えたぁわかってンじゃねえか、オメエ。ちっとばかし遊ンでやって、退屈してきたとこだったンだ。オメエらでオレの相手すっか、あン?」

ラム

「……最悪の展開ね」

エミリア

「どうして、この階にいるの? あそこから出られないはずなんじゃ……」

レイド

「おいおい、笑わせンなよ、激マブ。オレはいきてえとこにいって、斬りてえもンを斬って、抱きてえ女を抱く。他人のしきたりなンぞに従ってやるかよ」

これで、正門のレイド、後門の『暴食』と大サソリ。――大修羅場だ。

レイド

「――オイ、稚魚。これ以上、面白くねえことくっちゃべるンじゃねえよ」

📰 朗報と悲報

――そこに、いる

スバル

「まだ、『暴食』の一匹と、あの影の対処法が見つかってねぇってのに……」

ユリウス

「――スバル、その件について、私から朗報と悲報がある」

スバル

「じゃあ、朗報から先に聞かせてくれ」

ユリウス

「君が不安視している、姿の見えない『暴食』の大罪司教の片割れだが、彼を警戒する必要はない。そのことは私が保証しよう」

スバル

「――? 根拠はわからねぇが、確かに朗報だ。じゃあ、悲報ってのは?」

ユリウス

「『暴食』の大罪司教、ロイ・アルファルドはそこにいる」

スバル

「……あ?」

その剣先が指し示す先に立っているのは、獰猛な鮫の笑みを浮かべる偉丈夫だけ。

ユリウス

「目の前にいる、初代『剣聖』レイド・アストレア。――彼が、ロイ・アルファルドだ」

第六章68『サソリ座の女』終了。