リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第六章2

『彼なりの歓待』

屋敷の主は、上機嫌で一行を迎えた。その理由を、スバルだけがなんとなく察している。

🏰 似すぎている屋敷

今のロズワール邸は、以前の屋敷ではない

今さらではあるが。

エミリア陣営の本拠地であるロズワール邸は、以前の焼け落ちた屋敷とは異なる。

場所をメイザース領の本邸へと移している。

とはいえ、間取りは以前と変わらない。

中央に本棟。

その左右を、西棟と東棟で固める。

馴染みのものだ。

広さもほとんど同じ。

屋内を歩き回っても、戸惑うようなことは滅多にない。

ただ、少しばかり似すぎている。

近くにアーラム村がないことを、失念しがちになるのが問題だ。

スバルなどは何度か、寝起きの勢いで村までラジオ体操しにいこうとした。

そして長い街道の途中で気付いて、途方に暮れたこともある。

そのたびにベアトリスがあくせく追いかけてくるので、すごく怒られるのだ。

🎭 喜色満面

ロズワールが、やたらと機嫌がいい

ロズワール

(*´∀`*)

「やーぁや、お帰りなーぁさい。無事のお戻り、何よりだーぁね」

応接間のソファに腰掛け、手を打って帰還を歓迎する。

その歓迎ぶりに、スバルとエミリアは思わず度肝を抜かれた。

スバル

(・_・;)

「……エミリアたん、なんか手紙におかしなことでも書いた?」

エミリア

(・へ・;)

「し、知らないってば。それよりスバルこそ、変な贈り物でもしたんじゃないの? ほら、スバルとロズワールってたまにこしょこしょ内緒話してるし……」

スバル

「んな馬鹿な! ロズっちにわざわざ贈り物なんてするぐらいなら、その時間とお金を俺は日頃の感謝を込めて、エミリアたんとベア子とペトラとフレデリカとパトラッシュと一応ラムに還元する方法を考えるよ」

ベアトリス

(¬_¬)

「女の名前ばっかりだったかしら」

スバル

(゚д゚)

「オットーとかガーフィールに贈り物とか男同士で恥ずかしいじゃん!?」

🎭 考え方の変化

本人は、変わったと言う

ロズワール

「なーぁんとも心外な反応だね。私が君たちの安否を心配し、その無事を喜ぶことのなーぁにがおかしいというのかな? 全部、当然のことでしょうに」

エミリア

「それは、そうなんだけど……ロズワール、今まであんまりそんなところ、私たちに見せたことなんてなかったし……」

ロズワール

「この一年で、私にも色々と考え方の変化があったということですよーぉ。私が協力的になることは、エミリア様にとっても喜ばしいことのはずでは?」

エミリア

(´ω`)

「うーん、そうよね」

彼女らしい寛容さで、変化を受け入れてしまう。

掌をひらひらと振っている姿を見ていると、スバルはイマイチ信用が置けないのだが。

ベアトリス

「あれの考えを理解しようとしても、それは常人と違いすぎて理解なんてできないのよ。スバルは……スバルもちょっとアレだけど、あれのアレさはそれ以上かしら」

スバル

( ̄~ ̄)

「お前、ちょっと今の台詞は指示語多すぎるぞ」

📕 叡智の書を無くした今

上機嫌の中身は、たぶんこうだ

上機嫌のロズワール。

訝しんだものの、その魂胆はなんとなくわかっている。

実際のところ、思惑は今しがた彼自身が口にした通りだ。

ロズワールは本気で、スバルやエミリアの無事帰還を喜んでいる。

『叡智の書』を無くした今。

立ち塞がる障害を突破するスバルの行動。

それだけが、ロズワールの未だ語らない目的に到達するための最善手なのだから。

スバル

「そう思ってるなら思ってるで、もうちょい協力的だと助かるんだがな」

ロズワール

「私の手助けの有る無しに関わらず、君は君の目的を達する。そうであると信じているからこその、君の力の及ばない部分での協力だ。実に対等な関係じゃーぁないの」

スバル

(-_-#)

「助っ人キャラが普段から使えない、RPGのお約束喰らってる気分だよ、俺は」

強すぎる助っ人が、スポット参戦しかしないのはお約束だ。

彼の場合、スバルが追い込まれれば追い込まれるほど。

『死に戻り』による運命改変力を信じる根拠になる。

ますます大喜びで、窮策するスバルを見物し続けることだろう。

食えない輩のままだ、と舌打ちしたくもなる。

🧣 論功式以来

客人二人を、ようやく紹介する

アナスタシア

「――そろそろ、うちらもご紹介してもらってええかな?」

スバル

(・∀・;)

「と、待たせて悪かった。ロズワール、お客さんだよ。詰めて座ってくれい」

ロズワール

「聞いているよ。それにしても、面白い顔ぶれだね」

上座にロズワールが深々と腰を下ろす。

来客用のソファを客人二人に勧め、スバルたちはその対面に座った。

ロズワール

「遠方よりはるばるようこそ。こうしてまともに顔を合わせてお話するのは、論功式以来のことですねーぇ」

アナスタシア

「ほんまやね。それにあのときも、言うほどちゃぁんとお話したわけやなかったし……実質、これが初めていう感じになるんやないかな」

論功式とは、正式に『白鯨』の討伐が認められた際の式典だ。

エミリア陣営・クルシュ陣営・アナスタシア陣営が合同で評された。

王都の王城で行われた、小規模のもの。

だが各陣営の代表者が集うことになったため、『聖域』の直後のメンバーは全員参加している。

緊張で青い顔のオットー。

城に目を輝かせるガーフィール。

あれだけやらかした後でしれっと参加するロズワールも、大したタマだ。

📨 手紙の内容

エミリアが、その言い方に食ってかかる

ロズワール

「――それで手紙にあった通り、オットーくんとガーフィールの負傷離脱と。なーぁるほど、了解しました。実に、頼もしい功績です」

エミリア

( ̄^ ̄)

「二人は大ケガして、帰ってこれないぐらいなの。それなのに、そんな風に言うなんてどういうことなの」

ロズワール

「どーぉうか早合点されずに。二人の負傷は確かに痛ましいことですし、しばらく離脱を余儀なくされるのは痛手に違いありません。ですがその反面、陣営に致命的な被害を被ったものはいない。他陣営を含め、複数の大罪司教と遭遇していながらこの結果……実に奇跡的な巡り合わせです」

ロズワール

「無論、大罪司教の残した爪痕は早急に対処すべき事柄ではありますが、エミリア様や都市防衛に尽くした諸氏は最善の行動で被害を最少に留めた。そのことは少なからず、ご自分で認められてよいことだと思いますよーぅ」

エミリア

(´・ω・`)

「……そう、ありがと」

釈然としない顔で、礼を言う。

言葉には正論の色が強いはずなのだが、発言者の印象というものは大事なものである。

スバルにも胡散臭く聞こえたので、全員そうだろう。

🧣 呼んだ側の責任

ロズワールが、アナスタシアに牽制を入れる

ロズワール

「まーぁ、皆さんに私がどう思われるかはこの際いいとして、話を進めるといたしましょうか。――ちなみに、そのような騒動が起きた都市プリステラに、エミリア様方を招いたのはアナスタシア様のはずですが……その点、どう思っておいでですか?」

アナスタシア

「騒ぎの真ん中に引き入れてしもたことは、申し訳なかったって思うとるよ。謝れ言われたらちゃぁんと謝る、その心の準備はできてるから」

ロズワール

( ̄ー ̄)

「そして、真摯に頭を下げればびた一文払わずに済む……と。ああ、私への謝罪はなくて結構。エミリア様も、すでに断ってしまわれたのでしょう?」

エミリア

「だって、魔女教が悪さしたなら、悪いのは魔女教でしょう? ただ呼んだだけのアナスタシアに責任があるはずないじゃない。それに私たちの場合、プリステラに呼んでもらった目的は果たせたわけだし……」

エミリアが、自分の首元のペンダントに触れる。

そこには新たな大魔石がはめ込まれている。

今も昏々と眠り続ける大精霊が、復活のときを静かに待ち続けている。

パックの依り代となる高純度の結晶石の入手。

それが目的だった以上、確かに陣営の目的は達成されているのだ。

エミリア

「あと、たまたま私たちがいたから魔女教を追い返せたのかもしれないじゃない。そう考えたら、むしろアナスタシアのお手柄だったんじゃ……」

ロズワール

(-ω-;)

「さすがにそこまで考えられるのは、他陣営への肩入れすぎるので止めますよーぅ」

エミリアの前向きさに、アナスタシアが何故か救われる形になる。

とはいえ、今の追及は言ってみただけの牽制だ。

実際のところ、魔女教の狙いの大部分は、スバルたちがプリステラに持ち込んだ可能性がある。

そこを指摘されてしまえば、魔女教悪しに違いなくても気分は重たくなる。

ので、一致団結して魔女教が最悪、と意見を固めておくのが吉だ。

🖤 組織ではない

魔女教は、潰しても止まらない

スバル

「そのあたりに関しちゃ、他の三陣営も納得済みだよ。大罪司教も一人は死んで、一人は捕縛……魔女教としちゃ、もうガタガタだろうよ」

ロズワール

「組織力、については疑問の余地があるけどね。奴らの場合、連携やら団結といった言葉と無縁の無法者集団だ。たとえ味方が一人もいなくなって、最後の一人になったところで狂人の狂人たる精神は晴れない」

スバル

「……それについちゃ、同意見だがな」

魔女教という組織は、もはや組織というより狂人たちの寄合所だ。

そこがなくなったところで、大人しくしていようなどと考える可愛げはない。

残る『暴食』と『色欲』の蛮行も、決して止まることはないだろう。

🌟 全知の賢者

だからこそ、対抗手段がいる

スバル

「だからこそ、対抗手段がいる。そのための今回のお話ってわけだ」

ロズワール

「……『賢者』シャウラとの接触、ねーぇ」

スバル

「難しいだろうってのはわかるけどな。手段が他に見つからない以上、試せることは試してみるしかない。せっかく全知全能……じゃなくて、全知扱いか。そんな賢者がいるってんなら、話聞きにいくだけ損はないだろ?」

ロズワール

「そーぉれをしちゃおうとした結果、命を支払う大損をする羽目になった人間が、この数百年で何人もいるわけだーぁけどね」

常識としてそれを語られると、確かに押し返される意見ではある。

だが、こちらにはちゃんとそのための隠し玉もあるのだ。

🧣 到着する手段

アナスタシアは、監視塔まで辿り着ける

スバルが目配せする。

アナスタシアが、鷹揚に顎を引いた。

アナスタシア

(・∀・)

「そこで、うちの出番なんよ。幸い、うちはその『賢者』の監視塔に無事に到着する手段を持ってる。せやから、道に迷う心配はないよ。安心したってな?」

ロズワール

「言葉だけで信じろ、と言われましてもねーぇ。そもそもその手段があるのなら、大金を支払ってでも欲しがる輩が大勢いる。何故、あなただけがそれを?」

アナスタシア

「うちは商人で、もちろんお金は大事や。――やけど、金銭にも代えられんもんかてあるんよ。これは、そんな中の一個やって話やね」

薄い胸に手を当てて、堂々とそう嘯く。

アナスタシアを装っているにも関わらず、その一言には不思議と力がある。

彼女が今、本来の彼女でないことを知るスバルでさえ、気圧されるような力が。

ロズワール

「やーぁれやれ、だ。これだから修羅場も鉄火場も噛み分けた人は扱いが難しい。それにこれもどーぉせ、エミリア様はご納得済みなんでしょうしねーぇ」

エミリア

(・ω・;)

「勝手に決めて、ごめんなさいとは思ってるからね?」

ロズワール

「でも、勝手に決めることをやめようとまでは思わない。それでよろしい。あなたは茨の道をあえて選んで行かれる方だ。そこにこそ、彼もついていく」

気乗りしない態度だが、彼の興味は結局そこに行き着く。

エミリアが困難な道を選べば選ぶほど、スバルが乗り越えるべきハードルは高くなる。

ロズワールにとって、それが今や『叡智の書』に代わる希望であるから。

⚜️ 記憶にない

ロズワールは、ユリウスを覚えていない

スバル

「とにかく、アナスタシアの案内で、そのなんちゃら砂漠を越えてくる。ちょっとばかし、また日数がかかりそうだけどさ」

ユリウス

(-ω-)

「なんちゃら砂漠ではなく、アウグリア砂丘だ。何度も訂正されているのだから、いい加減に覚えたらどうだろうか」

ユリウス

「ロズワール様にとり、非常に心苦しい申し出とは思います。ですが、都市プリステラでは今も、魔女教の暴威に晒され、心身ともに傷付いた人々が大勢いるのです。我々の行動が彼らの心を救う一助になるのであれば、どうかここはお許し願いたく」

ロズワール

「ずーぅいぶんと優美な言い回しだ。見たところ、非凡な能力の持ち主だが……私の記憶にないのが解せない。つまり、そういうことだーぁね?」

記憶にないユリウスの存在。それだけで、ロズワールは事情を理解する。

かすかにユリウスが目を伏せると、ロズワールは肘掛けに腕を置いて頬杖をついた。

🎭 言い訳する必要はない

「誰かのためだなんて、言わなくていい」

ロズワール

( ̄ω ̄)

「『暴食』の権能で人々から忘れられ、世界に取り残される焦燥感。君は自ら置かれたその状況を打破するために、か細い希望を求めて『賢者』シャウラを目指すわけだ。べーぇつに誰かのためだなんて、言い訳する必要はないんだよ?」

ユリウス

(゚д゚;)

「――っ。決して、そのような私利のために動くようなことは!」

ロズワール

「責めてるわけじゃーぁない。むしろ自然なことだし、私はその方が好ましいと思っているしね。何事も、基本的に他人のためより自分のための方が必死になるものだ。結果的に他者が救われるにせよ、その過程に救われ、満足感や達成感、優越感を得る心を否定する必要はない」

道化の化粧の奥で、笑みはさらに深くなる。

ロズワール

「ましてや現状、君が救われれば他者も同じように救われる可能性が高い。大義名分を背負い、行動するのにいささかの呵責もいらないだーぁろう?」

ユリウス

「私は……」

🧣 うちの騎士様

アナスタシアが、割って入る

アナスタシア

「――メイザース辺境伯、そのあたりにしといてもらってええ?」

声に詰まるユリウスを手で制す。

はんなりと微笑み、愛らしく小首を傾げた。

アナスタシア

「うちも、正直なところ記憶にはないんやけど……それでも、この子ぉはうちの騎士様らしいんよ。それがどうしようもないことでいじめられるんは、見ててええ気持ちやないんやね」

ロズワール

「記憶から失われても、主従の絆は活きている……と?」

アナスタシア

「どうやろね、そのあたりのことはうちもよぅわかってへんよ。せやけど、ユリウスに道中、気遣われたんは自然で悪ぅなかったし……それに、や」

持ち上げた指で、対面のソファを指差して。

アナスタシア

( ̄▽ ̄)

「いつまでもいらんことして、そっちの陣営が割れるんは防いだつもりやよ?」

指摘の先には、噴火寸前のスバル。

スバルが怒鳴る寸前ということは、当然、エミリアとベアトリスも同じだ。

ロズワール

(´∀`)ゞ

「はいはい、わーぁたしが悪かったですよ。ただ、そういう側面もあると指摘しただけだったんですがねーぇ」

スバル

(# ̄皿 ̄)

「いらねぇ指摘だろうが。お前、本当にふざけんなよ」

ロズワール

「そうかーぁな? 結果に恩恵を受ける人間の大小問わず、そうした偏見を抱く人間は必ず現れる。邪推し、口さがなく文句を垂れる輩はね。その自覚がなかったようだから、先んじて忠告しようかと思っただーぁけ」

🩹 王城の記憶

その罵りは、スバルにも刺さっている

誰かのためでなく、自分のためだろう。

行いをそう罵られた経験は、実はスバルの中にも痛々しい形で傷がある。

かつて王城で。

スバルはエミリアに、彼女のための行動を自分のためだと言い返された。

あのときの痛みは忘れ難いし、結果的にそれはおそらく事実だった。

だが、事実であろうとなかろうと。

傷付ける目的でそれを口にされることは、きっとある。

しかし、だからといって。

スバル

「やったことの意味を、正しく受け止める人が減るわけじゃない。こいつがそんなタマかよ、ふざけろ」

ロズワール

「仕方ないでしょーぉうに。君と違って、私は彼の人柄を知らないからねーぇ。……君も、数日、旅を同行しただけの間柄には見えないが」

長い睫に縁取られた瞳が、その瞬間にだけ本格的な悲壮感に暮れて。

ロズワール

「また、君だけが覚えているわけだ。あの、レムと同じように」

スバル

(-_-)

「何の因果か、だけどな」

ロズワール

「それは君が特別な証だよ。大事に、大事にするといーぃ。――欲しくても、得られないものが大勢いるのだから」

後半の述懐は、ロズワール以外にはよく聞き取れなかった。

問い詰めても決して口を割らないだろうと、スバルはさっさと見切りをつける。

🗝️ 眠り姫

レムを、連れていく

スバル

「手紙で話した通りだ。座敷牢と……」

ロズワール

「『眠り姫』は連れ出す、だったね。思い切ったことをするものだ。あれだけ、君はあの子に触れられるのを嫌がっていたはずなーぁのに」

スバル

「起こす方法がわかるかもしれないんだ。試すさ。当然だろ?」

ロズワール

「その手段を最初に、あの子で試そうとするのが意外だったんだよ。君はひどく利己主義者を気取るけど、実情の部分で自罰的だ。心のどこかで、頭の片隅で、自分が最初に救われるべきではないと、そう思ってやしないかい?」

図星を突かれて、スバルは思わず黙り込んだ。

⛓️ 奇妙な楔

先に救われることの、罪悪感

今回のプレアデス監視塔を目指すにあたり。

スバルは屋敷に到着する寸前まで、悩み続けていた。

『暴食』の被害者の症例として、レムを同行させるかどうか。

それはレムを目覚めさせること自体への忌避などでは、当然ない。

可能性があるなら、一日でも一秒でも早く起きてほしいと願っている。

だが、それにナツキ・スバルが救われることの是非は、また別なのだ。

都市プリステラに、あれだけ大勢の人々がレムと同じ被害を受けている。

彼らの家族は、家族を奪われたことも知らず。

眠る人々は、案じられる権利さえ奪われたまま。

そう思えば思うほど、スバルの心には奇妙な楔が突き刺さる。

多くの人々に先駆けて、救われることの罪悪感だ。

❄️ 私の覚悟

エミリアが、背中を押す

エミリア

( ̄^ ̄)

「そのことは、ちゃんと私がスバルを説得したの。だから、問題ないわ」

ロズワール

(・o・)

「……ますます、意外ですね」

ロズワール

「こういってはなんですが、彼女の目覚めはエミリア様にはあまり都合がよろしくないのでは? どう考えても、スバルくんはあの子に強い情がありますよ? 事によればそれは、エミリア様への情にも匹敵する……」

エミリア

「そうね、そうだと思う。レムが目覚めたら、スバルはしばらくその子にかかりきりになっちゃうだろうし、私のこともどうでもよくなっちゃうのかも」

スバル

(゚д゚;)

「いや、それはいくらなんでも……」

ない、はずだ。

エミリアへの想いが揺らいだことはないし、今後もそれは誓える。

ただ、それとは別の部分で、レムへの強い感情があるのも事実なのだ。

そしてエミリアの言う通り、レムが目覚めれば、かかりきりになるのは間違いない。

エミリア

「それでスバルにそっぽ向かれるなら、私が今度はこっちを向いてもらえるように頑張るだけだから。今さら、スバルがいないなんて困るもん。だからどんなにレムが可愛くて夢中になっても、私の方にもきてもらいます」

スバル

Σ(゚д゚)

「え、エミリアたん!?」

エミリア

「それが私の覚悟と、私の決めたこと。それに、誰もスバルが救われたって文句なんて言わないわ。――だからいいの。レムを、起こしてあげましょう」

ある種の告白のような響きに、スバルの方が驚き、膝が震えた。

これまでにも何度か、エミリアから好意のようなものを告げられたことはある。

あるが、それはどれも彼女の、親愛の域を出ていなくて――。

エミリア

(*^ω^*)

「私に、レムに、ベアトリスに、ペトラにパトラッシュに、オットーくんとガーフィール! スバルはすごーくすごーく、幸せ者でいいの」

スバル

(・∀・;)

「後半に地竜と男が混じってたんですがそれは」

🟣 片手の特権

ベアトリスの条件は、ひとつだけ

スバルの隣に座っていたベアトリスに、脇を突かれた。

ベアトリス

( ̄ヘ ̄)

「別に、今さらスバルの浮気性に文句を言うつもりはないのよ。……でも、片手はいつも空けておくかしら。それは、ベティーだけの特権なのよ」

スバル

(*´ω`*)

「……お前、アホほど可愛いな」

ベアトリス

「当然かしら。ベティーの可愛さは、天地神明に響き渡るのよ」

天地の神々がどう思うかまでは知らない。

だが、スバルの心には響き渡った。

――今はもう、そうすることに躊躇いはない。

スバル

「ってわけだ、ロズワール。愛されすぎてて悪いな。レムは、連れてくぜ」

ロズワール

「エミリア様もベアトリスも、その変わりように驚かされるばーぁかりだよ。いーぃとも、好きにしたまえ。元より、止めるつもりもないからね」

スバル

( ̄д ̄)

「じゃあ、さっきまでの問答なんだよ」

ロズワール

「行いの意味を解しているか、老婆心ながら確かめただけさ。そちらの名無しの騎士殿にも、悪いことをしたねーぇ」

⚜️ 名乗り

ユリウスは、跳ね除けた

ユリウス

「いえ」

小さく息を吸い、それからスバルとアナスタシアを代わる代わる見る。

ユリウス

( ̄ー ̄)

「私はユリウス・ユークリウス。今は彼の記憶にしか形がありませんが、ルグニカ王国の近衛騎士が一人。この程度のことで、心を乱すほど未熟ではあれません」

邪悪な魔法使いの邪悪な嫌がらせを、見事に跳ね除けた。

スバル

( ̄▽ ̄)

「……ぐらぐらだったけどな」

ユリウス

「君はどちらの味方なのだろうか? 今、背中から刺された気分だが」

と、最後にそんなやり取りがあったことだけ、こっそりと付け加えておく。

🚪 東棟へ

次は、座敷牢だ

話し合いが終わり、スバルたちは応接間を退室していった。

アウグリア砂丘を目指すにあたり、重要な鍵を握る可能性がある人物。

その接触のため、屋敷の東棟に存在する『座敷牢』へと向かう。

そこには約一年前から、ずっと繋がれている存在がいる。

前の屋敷が焼け落ち、この屋敷へ住人たちが移動してきたのと同じタイミングで運び込まれた。

本来、接触など勧められる関係性の相手ではないし、安全でもないのだが。

🟣 残った二人

ベアトリスは、釘を刺しに残っていた

ロズワール

「どういう結果を持って帰ってくるやら。そのあたりに期待させられてしまうのは、わーぁたしもまた感化されているということなーぁのかな」

ロズワール

「これは私も、彼に好意的なメンバーの仲間入りなのかな? どう思う?」

ベアトリス

(¬_¬)

「……気色悪いこと言い出すんじゃないかしら、と思うのよ。お前の場合、本気でやってやれないこともないから、怖いとしか言いようがないかしら」

ロズワール

「さすがにこの体で迫るほど、節操のないつもりはなーぁいとも」

ベアトリス

「女だったこともあるのよ。十分、警戒はしておくかしら」

つんと澄ました顔のまま、自分の縦ロールを引っ張って弄り出す。

手持ち無沙汰か、あるいは苛々しているときの癖だ。

ロズワール

「スバルくんたちは座敷牢だろう? 君も彼の傍にいないと危ないんじゃーぁないの?」

ベアトリス

「牙の抜いてある野良犬より、牙を磨いてる飼い犬の方が厄介なのよ。だから、ちゃんと釘を刺しておこうと思ったかしら」

ロズワール

「飼い犬とはまたひどい。先生の、なら望むところなんだが」

ベアトリス

(-_-#)

「救いようのない変態なのよ。……ロズワール、あまりスバルを試すんじゃないかしら。余計な刺激、ベティーが許さないのよ」

🔢 二つ目

ロズワールが、数を数えている

笑みを引っ込め、いつものように片目を――青い目をつむる。

黄色だけの視線で、ベアトリスを見つめ返した。

ロズワール

「君と私では立場が違う。腰の軽い君と違い、私は一途でね」

ベアトリス

「それで母様に掠りもしてないところを見ると、スバルの手を握れるベティーの方が数百倍マシだからムカつきもしないかしら」

ロズワール

「言うようになーぁったものだ。禁書庫の司書気取りの君は、せーぇいぜい幸せになるといい」

ベアトリス

「当然なのよ。だから、その幸せを守る動きもさせてもらうかしら」

ソファに座ったままのロズワールと、正面に立つベアトリス。

同じ視線の高さで、火花を散らせる。

ロズワール

( ̄ー ̄)

「大罪司教を一人、倒した。スバルくんの中に、これで二つ目が入ったはずだ」

ベアトリス

(-_-;)

「……候補は、スバル以外にだっているはずなのよ」

ロズワール

「だが、どれも彼より近くも重なりもしない。掠るだけの方と重なる方と、どちらが選ばれるかは自明の理だよ。つまらないお為ごかしはやめたまえ」

何の話をしているのか、この時点では明かされない。

🚪 扉が閉まる

ベアトリスは、振り返らなかった

ベアトリス

(*`ω´)

「――これ以上は、やらせないかしら」

少女はギュッと、自分の腕の袖を掴み、ロズワールを睨みつけた。

ベアトリス

「ベティーは、スバルのものなのよ。だから、スバルはスバルのままかしら」

ロズワール

「君の頑張りを邪魔するつもりはなーぁいとも。私としては、数が減っていれば減っているほど助かる。それだけの話だーぁからね」

キッと、最後に強く睨みつけ、ベアトリスは扉へと向かう。

ロズワール

「ベアトリス」

ベアトリスは足を止めた。

しかし、振り返らない。

ロズワール

「私はね、君には幸せになってほしいと、少なくとも他の有象無象と比べればずっと強く、そう思っているんだよ。君は……妹のようなものだからね」

ベアトリス

「――ゾッとしない話なのよ。それに、お母様ほどじゃないかしら」

ロズワール

「それが愛というもの、だーぁろう?」

返事はなかった。

ただ、扉が開かれて、閉じる音だけが応接間に静かに響いた。

それきり、応接間に続く音は何もなかった。

第六章2『彼なりの歓待』終了。