リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第六章59

『白い世界に嗤う』

攻略本を開いた先に待っていたのは、レイドの人生ではなかった。

🔁 君らしい

――乱暴な結論で、決着する

もっとうまい言葉が、完璧なやり方が、美しい接し方があったのではないか、そう考えてしまう。

ユリウス

「だが、君らしい。良くも悪くも、ね」

スバル

「……そうかよ。俺らしいってのが、昨日までの俺とどのぐらいダブってる発言なのかってのは、結構、今の俺のアイデンティティに関わるとこなんだが」

ユリウス

「自己の確立という意味でいえば、しばらく前の私も大いに揺さぶられたものだよ。同じ苦境を味わった先達として君に助言しようか。――それはそれ、これはこれだ」

スバル

「うるせぇな!」

投げ手が未熟で拙い言葉ではあったが、受け手が有能で助けられたといったところか。

🌟 見つかったッス

🌟本が、見つかった

シャウラ

「――お師様~、終わったッスか~?」

スバル

「なんでそんな控えめ? お前、そんなキャラだったっけ?」

シャウラ

「んや、お師様が誰かと二人きりで話すときって、結構、核心突いた話をするときが多いじゃないッスか。で、あーしがいると雰囲気がブレイクするから離れてろってだいぶ前に言われたんで守ってんスよ」

シャウラ

「――レイドの本が見つかったッスよ」

スバル

「……は?」

シャウラ

「あんなクズの名前がついてる本なんて、とっとと焼いた方がいいとあーしは思うッスよ。お師様もでしょ?」

スバル

「は、は、は……」

シャウラ

「ははは? お師様、高笑いッスか?」

スバル

(#゚д゚)

「――早く言えよ!!」

🦂 お手柄

🦂見つけたのは、その子だった

エミリア

「あ! スバル、見て! レイドの本が見つかったの!」

これがこの世界の全ての死者を記録しているなら、比喩ではなく、蔵書は星の数ほどもあるように感じられる。

エミリア

「見つけてくれたのはメィリィよ。お手柄でしょ?」

スバル

「お手柄ってきょうび聞かねぇな……ってのは置いといて、メィリィが見つけてくれたのか! そりゃ確かに大手柄だ! よくやってくれたな」

メィリィ

「べ、別にい。ただ、目についた本だったから、たまたま言ってみただけよお。ちょっとだけ早く見つかっただけで、大したことじゃないと思うわあ」

スバル

「馬鹿言えよ。ちゃんと自分がやってやったことは自慢げにしていいの。偉いぞ、メィリィ。さっそく、俺を突き飛ばそうとしたマイナスをゼロに戻したな!」

メィリィ

「こんな簡単に取り戻せちゃうのお!?」

📕 装丁

――本は、ただの本に見える

ラムが抱える一冊――背表紙に描かれた紋様、それはスバルには読めない文字だ。

ただ一見して、本自体からレイドを感じるような異様な感覚はない。

スバル

「当人がどれだけ型破りでも、それを記録した本まで歌舞いてるってことはねぇのか」

ラム

「装丁が無意味にごてごてしていたり、題字の自己主張が激しかったりすればわかりやすかったでしょうね。その分、メィリィが見つけてくれて助かったわ」

スバル

「ほら、見ろ、メィリィ! ラムまでお前のこと褒めてるぞ! あの、ラムが! このラムが! やっぱり喜んでいい……ぐぇっ」

ラム

「黙りなさい」

ラム

「バルスのことがあるもの。うっかり早まった真似をして、バルスのように記憶が抜け落ちたら大変だわ。だから、誰にも見せていないわよ」

🧠 推論

🧣読んだ量が、関係している

🧣 エキドナ

「まず、『死者の書』の危険性……それはわかりやすく、ナツキくんの現状が示す通り、自身の記憶をなくす可能性がある」

実際、本当の意味で記憶を喪失した最初の回、スバルは全ての記憶を喪失していた。

エピソード記憶の欠落だけでなく、自分自身さえもなくしていたなら。

🧣 エキドナ

「第一に、『死者の書』を読むことの代償として記憶が失われる。これは一度、本を読んだナツキくんと、同じく本を読んだユリウスとの症例の違いから考えづらい」

ベアトリス

「……あまり考えたくないけど、少しの記憶を失っている可能性はあるのよ。読書量と失われる記憶の量が比例するなら、その推論も成り立つかしら」

ユリウス

「同感だ。つまり、私とスバルの事情が違っているのは、読んだ本の数の違い……メィリィ嬢の目撃した、昨夜のスバルの行動と符合することになる」

🧣 エキドナ

「この推論を肯定する場合、レイドの『死者の書』に目を通すべきは、むしろ一度も『死者の書』を読んでいない私たちだ。すでに読んだナツキくんとユリウスは、危険かもしれない」

❓ リセット

――俺は、どちらなのか

スバル

「じゃあ、一回記憶がなくなってる俺の場合はどうなる? 記憶の喪失条件が『死者の書』の情報の蓄積なら、俺はリセットされてる? されてない?」

ラム

「それは由々しき問題ね。もう一度、バルスの記憶が抜けて、同じ説明をしなくちゃならないなんて……考えただけでもゾッとするわ」

スバル

「俺もゾッとするけど、言い方!」

エミリア

「ん……それ、私もすごーく心配。またスバルに色んなこと忘れられるの、嫌だもの」

表立って言えないが、スバルには前回のループでメィリィの『死者の書』を読んだ記憶もあるのだ。

あれは、今回も読んだ一冊にカウントされているのだろうか。

🙋 俺が読む

――読むのは、俺が一番マシだ

スバル

「すげぇ手前勝手な発言をしていいか? ――読むのは、俺が一番マシだと思う」

ベアトリス

「悪ふざけしてる場合じゃないのよ。スバルは、自分の記憶を……」

スバル

「いや、もちろん、記憶はなくしたくねぇよ。でも、リスクマネジメント的にはこの判断が適切だろ。どう考えても、記憶がなくなった結果、みんなを危険な状態に追い込む可能性が低いのは俺だ。俺、この中で一番弱いし」

スバル

「忘れるつもりで挑むわけじゃねぇよ。でも、俺たちはチームだ。みんながみんな、全員のために何かしらの役割を負う必要がある」

スバル

「ユリウスが戦う担当、エキドナが知識人担当、ラムが毒舌担当で、メィリィが可愛い担当で、ベアトリスが可愛い担当、エミリアちゃんが美少女ヒロイン担当で、シャウラがグラビアシーン担当って考えると、ここは俺が担当すべきだろ」

シャウラ

「そんなことねッス! シーンが暗転するときとか、お色気シーンは重要ッス! あーし、お師様と芸術のためなら脱ぐッス!」

スバル

「いや、それ以上脱がれると俺は引くから頑張らなくていいよ」

👋 いってくる

――みんなが、見ている

ベアトリス

「もう、こんな風に頑なになったらスバルは梃子でも動かないかしら。そういうところ、記憶がなくなっても変わっちゃいないのよ」

ラム

「ラムとの約束を忘れたらすり潰すわよ」

スバル

「今、いい感じのモノローグしてたタイミングで何を!?」

エミリア

「無茶しないでって言っても、スバルは無茶しちゃうんだもんね。……そういうところ、すごーくズルいって思うの。私、いつも心配してる」

エミリア

「絶対戻ってきてね……って、約束したら、スバルは破るから約束しないけど」

エミリア

「――スバル」

スバル

「じゃ、いってくる。帰りは遅くなるかもしれないから、先にご飯食べてていいよ」

エミリア

「……バカ」

📖 めくる

――表紙を、めくる

意識すれば、確かな禍々しさを本に感じる。

やはり、誰の書を手に取ったかで、受け手の気分も変わるものなのか。

瞬間、書に記された文字が浮き上がり、眼球からスバルの脳へと情報を叩き込んでくるような錯覚に見舞われる。

――意識が、書庫から闇へと、切り離された。

⬜ 白い

――ここは、彼の過去ではない

『死者の書』の内容を辿る旅路は、相手との同化だ。

あの瞬間、書の内容をなぞるナツキ・スバルは『メイリイ・ポートルート』だった。

――今、自分がいる場所は、明らかにその、レイドの過去ではなかった。

スバル

「……あ?」

手を見る。足を見る。首を巡らせれば、胴体も、腰もあった。

つまり、スバルの体があるのだ。その時点で、メィリィの『死者の書』で起きた現象とは噛み合っていない。

👧 またきちゃったの

――知らない少女が、立っている

「――あらら? お兄さんったら、またきちゃったの?」

色素の薄い、透き通る金糸のような美しい髪を長く、本当に長く伸ばしている。

それは白い床の上に広がり、立ち尽くす少女の足下を金色の海のように埋め尽くす。

大きく丸い青の瞳と、透き通る陶磁器のような白い手足。

一方、体には粗末な薄布を継ぎ合わせたような不格好な服を纏い、その美麗な印象を損なわせている。

見たことのない、少女だ。そのはずだ。

改めて見ても、知らない少女。――微かに、記憶が疼くような気がしたが。

🌀 記憶の回廊

――ここの、名前を教えられる

「少しは落ち着いた、お兄さん?」

スバル

「ここは……いや、お前は? どっちから聞けばいい?」

「欲張りだなァ、お兄さん。でも、どっちも聞きたいって素直な気持ちを吐き出すところは嫌いじゃないよ。私たちは、欲張りな人が大好きだからサ」

そう言って、少女は困惑するスバルに対して、その唇を横に裂いて嗤った。

まるで、その少女の魂が、多くの命を蔑ろにしてきたと、本能が察するように。

「ここは、寂しく白い、魂の終着地点。オド・ラグナの揺り籠。――記憶の回廊」

スバル

「記憶の、回廊……?」

🍽️ 名乗る

――少女の形をした、悪意

そのスバルの反応に満足げにしながら、少女は、言った。

少女の形をした、悪意が、嗤いながら、言った。

ルイ

「――あたしたちは、魔女教大罪司教『暴食』担当、ルイ・アルネブ」

ルイ

「どうせまた、短い間だけど、よろしくね、お兄さん」

第六章59『白い世界に嗤う』終了。