第七章83
『戦乱と戦場』
帝国全土に火の手が広がる。反乱を潰して回る二人の目に、それはどう映るのか。
🗺️ 血の渇望
数年の安寧が嘘だったかのように、賑々しい
ここ数日、帝国はこの数年の安寧が嘘だったかのように賑々しい。
帝国民は建国以来、初めての『平穏』を甘受していたはずだったのだ。
年単位で心身を消耗し、前例のない平和な時代を築いた。
――それが望まれていなかったとわかれば、その心中の落胆は想像に余りある。
まったく、国民は愚かで、皇帝は哀れだ。
(¬_¬)
「なんでわざわざ死ぬかもしれない可能性を増やすのやら……」
(・・・・・・)
「あいつも……あー、えー、そう、ジャマルとかも」
――もはや顔もぼやけている男の記憶を辿りながら、気を引き締める。
迂闊な発言をして、ジャマルを忘れているとバレたら面倒だ。
🪑 見苦しい
いつ隣に来たのか、把握できていない
彼女は直前まで、馬車の屋根の上にいたはずだ。
――いつの間に隣にやってきたのか、トッドの知覚では把握できなかった。
大抵の人間が躓くのは、勝てないと殺せないを混同しているからだ。
絶対に勝てなくても、容易く殺せる相手はいる。
(・_・)
「座る? わたしが椅子に?」
(;´Д`)
「他にあるか? 椅子をなんだと思ってるんだ」
「帝国じゃ強ければ何でもまかり通るが、それはそれとして兵にも心があるんだ」
(・・・・・・)
「……意味ある? それ。どうせ、わたしは一人で戦うのに」
「降伏した連中と交渉するのは誰だ?」
(¬_¬)
「大体、一人でいいならなんで俺がいる? お前さんの言葉は矛盾だらけだ」
扱いに慣れれば、アラキアも牧羊犬を躾けているようなものだ。
――違うのは、その犬自体が途轍もなく強い力を持った狼でもあること。
✍️ 三本目の手
地図に何を書き込んでいるのか、と聞かれる
「地図、何を見てたの?」
(´・ω・`)
「……わからない」
(・∀・)
「だろうな」
意味の読み替えや意図的に間違った記号で、他人が見ても情報を取り出せない。
落としても行動は割れず、捕虜にされても解読目当てに生かされる可能性がある。
――やっておいて損のない、躓かぬための三本目の手というやつだ。
「意味のない書き込みは単なる目くらまし。どれがどれか、お前さんに説明はしないが」
「わからないから、言われても。……多い?」
(・・・・・・)
「ああ、今の皇帝閣下になってから、ここまで手の付けられない状況は初めてだ」
🏝️ 引っかかり
あの噂の出所が、引っかかっている
「皇帝閣下の御落胤、黒髪の皇太子」
( ゚д゚ )
「閣下に子ども……本当に?」
「重要なのは事実かどうかじゃなく、そういう風聞が流布されて……」
「挙句に立ち消えずに火勢を強め続けてるところにある」
上陸寸前に撤退し、事なきを得た初仕事。ベルステツの叱責は受けた。
――絶対に対峙してはならない脅威が、あそこにあったと感じ取ってしまったのだ。
(;´Д`)
「馬鹿馬鹿しい。俺らしくもない」
(¬_¬)
「反乱なんてあちこちで起こってるが、どれも長続きしやしない。――夢を見てるだけだ」
⚔️ 衝突
――帝国軍と反乱軍、西の平原を戦場とした衝突はすでに始まっていた
――帝国軍と反乱軍、西の平原を戦場とした衝突はすでに始まっていた。
「相手は?」
「クノエレメンテの住民、執政官を殺して気勢を上げている」
「情勢の悪いときに動かされたな。……それで、あの集団に例の疫病神は?」
「確認されていない。我々はいないと考えている」
(・_・)
「いるなら最初から顔見せしてくるはずだしな。――アラキア一将」
「合図を出して、兵を撤退させてくれ。脇目も振らずに下がるのをおススメする」
( •̀_•́ )
「そうでないと――アラキア一将の炎は、焼き尽くす相手を選ばない」
「太鼓を鳴らせ! 兵を引かせろ!」
🔥 戦術兵器
狩る側ではなく、狩られる側だと知らされる
「アラキア、太鼓の音を聞いて下がってくる兵には当てるな」
「他は?」
(´ー`)
「好きにしていい」
とんでもないことをやらかす力を持った女だが、彼女は別に戦いが好きではないらしい。
――なので、戦場で好きにしろというのは適切ではなく。
その片手に子どもが遊ぶような木の枝を握り、両膝から下を炎と変えて、高い空へ。
――降り注ぐ爆炎が、逃げ出す背中を追いかける狩人気取りを灰へと変える。
自分たちが狩るものではなく、狩られるものに過ぎない立場であることを、彼らは知る。
「鳴らせ鳴らせ鳴らせ! 太鼓を鳴らせ! 全員戻れ――ッ!!」
👑 皇太子
降伏の申し出が、こちらへ届く
「――ファング上等兵! アラキア一将を止めてくれ!」
「相手が降伏を訴え出てきた! 戦いは終わりだ!」
「そんな都合のいい申し出を許していいのか?」
「今なら一方的に全滅させられる。余計な禍根を断つのと、見せしめはしておいた方がいい」
――「ダメだ! 降伏した奴らが、『皇太子』を連れてる!」
( ゚д゚ )
「――なんだと?」
「どうしてここで『皇太子』が出てくる。いないって話だっただろう」
「や、奴らが隠していた……今さら、出てきたんだ……」
(╬¬_¬)
「ちっ、切り札のつもりだったのか? 手札の価値もわからない奴らめ」
「使者を引っ張ってこい。全滅したくないならって、必死に走らせろ」
🪓 嘘だな
大義名分として使われているのか、を確かめる
「お前さんたち、『皇太子』を抱えてるそうだな。それが反乱の大義名分か?」
「そ、そうだ。『皇太子』は、帝位を望まれている……」
「あ?」
その反応が、トッドに確信させた。――言いがかりは、言いがかりでないと。
次の瞬間、腰に下げた斧を振るい、棒立ちの男の頭を叩き割る。
「上等兵! 勝手な真似を……」
「こいつは嘘をついた。相手に『皇太子』なんていない」
「――アラキア一将には、あのままやらせる」
「ぐ……もしも、もしも本当に『皇太子』がいたら」
「いない」
その御落胤を名乗り、反乱を企てるもののなんと多いことよ。
――そしてその『皇太子』を、可能な限り生きて捕らえよという宰相の指令。
(;´Д`)
「ああ、まったく、お話にならん。――いつになったら帝都に戻れる」
🕯️ 生存本能
――燃え広がっていく戦乱の炎の向こうに、誰かがいる
反乱は潰える。どれだけ気勢を上げようと、帝国という重みには勝てようはずもない。
そのことに一切の疑いはないと、そう考えていながら、トッドはふと思う。
――燃え広がっていく戦乱の炎の向こうに、誰かがいる。
延々と、延々とトッドの生存本能を疼かせる、誰かが。
『――。関係ある? 剣奴孤島のこと』
基本的に、過ぎたことをトッドは振り返らない。
にも拘らず、あの出来事だけは引っかかり続ける。
あの判断は正しかったはずだ。悔やむはずもない。
だが、もしも、万一、何かの理由で悔やむことがあるとすれば、それは――
(・・・・・・)
「――あの日の撤退が、俺の人生を詰ませたときだけだ」
第七章83『戦乱と戦場』終了。

アラキア