第七章56B
『飛竜災害』
『飛竜将』が通りに立つ。剣は落ち、少年の両目が燃え――そして、雪が降る。
🚨 あの子はマズい
武人の眼力はない。それでも、わかった
戦士の勘や武人の眼力なんてものは全く持ち合わせていない。それでも――
「あの子はマズい」
(・∀・)
「やあやあ! 初めて見かけるお嬢さん、少しだけ話を聞いてもらえるだろうか!」
(・_・)
「この都市の人間は全員殺していい。そう、老いぼれに言われてる」
「その老いぼれさんは都市の全滅は間違いだったと言っていたみたいだよ」
(¬_¬)
「友人も仲間もいない。竜にいるのは同胞と、敵だけだ」
(≧▽≦)
「お名前、知りたいであります! 僕はシュルトであります!」
😰 怯え
青ざめた顔に、脂汗が浮かんでいる
ハインケルは目を見張り、青ざめた顔におびただしい脂汗を浮かべていた。
「なんだ、お前。怯えているのか」
「お前は戦士、お前も戦士、お前も……逃げない。戦士だ」
( ゚д゚ )
「え……僕のこと、でありますか?」
「そう。お前も戦士だ」
(╬゚д゚)
「剣を抜け。竜が叩いてやる。流した血の重さの分だけ」
「――当たレ!」
放たれた矢は、持ち上げた手の指二本で挟み取られる。
――視線は、ハインケル一直線だ。
🗡️ 転がり落ちた
己を鼓舞しようとしたが、届かない
(>Д<)
「お、おおおぁ……ッ!」
歯を食い縛る頬が赤くなり、己を鼓舞する血流が怯懦をひねり潰そうとする。
――高い音を立てて、震える手から剣が転がり落ちた。
渾身の剣技が放たれる瞬間、彼の腕は上がらなかった。
「やはり、お前は戦士じゃない」
👊 桁違いの一撃
石壁が、人の形にひび割れる
軽蔑し切った言葉が、横っ面に拳と共に叩き込まれる。
石造りの建物に激突し、石壁が彼の人型にひび割れた。
・前のめりに倒れる鼻面を、反対の拳がぶち抜く
・跳ね返る胴を蹴りが穿ち、背後の家屋が倒壊する
・足を掴み、力ずくで反対の建物へ投げる
背中の鞄から現れたのは、鋏を大きく開いたような形状の長大な武器。
――『飛翼刃』。彼女の身長ほども大きい、先鋭的な代物だ。
「やめないか、マデリン嬢。君の怒りはわかる」
「竜は、この世で最も偉大な生き物だ。その竜にお前たちが噛みつくなら……」
(╬゚Д゚)
「こんなすくたれ者の仕業なんて、許せるものか」
🛡️ 儚すぎる庇
幼い少年が、両手を広げて割って入る
(>Д<)
「だ、ダメであります――っ!」
幼い少年は両手を広げ、マデリンとハインケルの間に割って入った。
――しかし、その無謀を見て手を止めるほど、彼女は優しくなかった。
「どのみち誰も、生かしはしない」
🩺 拭えない血
私の戦いをします、と告げる
「――レム! 無事でいるカ!?」
(>﹏<)
「無事でよかったノー! もう、街の中はあちこち大騒ぎで大変なノー!」
杖を握るのと反対の右手には、レム自身のモノではない血がこびりついている。
――拭っても拭っても、拭い去れないほどに。
(゚д゚ ;)
「そ、そうだったんですか……!?」
「正しくは湯殿と、屋敷の広さが目当てである」
「死人が増えると士気が下がル。アタイらがレムのお守役ってこっタ」
「死んじゃう人ヲ、できるだけ少なくしちゃうことなノー!」
「私は、私の戦いをします。クーナさん、ホーリィさん、よろしくお願いします!」
🌥️ 日輪は陰った
露払いに使われたことが、貸しになる
「露払いに妾を使うとはな。この貸しは高くつくぞ、レム」
「ありがとうございました。心から感謝を込めて、髪を洗います」
(・∀・)
「それで済まそうとは何たる豪胆よ。許す。気に入った」
「プリシラさん、陽剣の調子は……」
「妾にかかれば、斬れぬナマクラであろうと翼竜など物の数ではない」
「綺麗事で本質を見誤るな。ここで最も価値あるものが誰か。妾でなければ貴様だ」
「た、戦えないと言えば、シュルトさんが!」
「そう焦らずとも、シュルトはそう簡単には死なぬ」
「――あれはその愛くるしさと健気さで妾の寵愛を勝ち取ったが故に、な」
🔥 目が燃えてル
何度殴られても、少年が死なない
――鋭い刃で何度も殴られながら、少年は命を落としていない。
「それがおかしい! 竜は殺すつもりでやった。なんで死なない?」
(´;ω;`)
「い、痛い、痛いであります……っ」
「――シュー、目が燃えてル」
あろうことか、赤い瞳が両目とも、揺らめく炎を灯していた。
(゚д゚ ;)
「な、なんでありますか、これ!? あ、熱い! あ! 熱くないであります!」
「お前、まさかあの狐人の身内だっちゃ!?」
――突然、口調が崩れた。彼女は、その炎に心当たりがあったのだ。
「また、竜の邪魔をするっちゃ……! 消えるっちゃ、邪魔者――!!」
☀️ 大儀である
真横から、真っ赤な宝剣が衝突する
「ゆかなくては、ミディアムに怒られてしまう!」
真横から衝突した真っ赤な宝剣が、紅の光を無音で炸裂させる。
「お姫くん!」
「プリシラ様!!」
(・・・・・・)
「プー」
「わかっておるではないか。かようなとき、叫ぶべきは妾への称賛であると」
「それは捨て置いても構わぬぞ。役に立たぬならばそれまでの話じゃ」
「生憎、そうもいかないよ。何より、君の大事な執事くんが痛い思いをしてまで守ったんだ」
「は、ハインケル様は僕が連れていくであります……!」
「大通りを避け、高い建物の脇道を抜けよ。シュルト、道は覚えておるな」
(≧▽≦)
「はいであります! ちゃんと、毎日お散歩してたであります!」
(´ー`)
「褒めて遣わす」
💥 心の臓が潰れても
髪を飾る宝飾が、一挙に砕け散る
音を立てて、橙色の髪を飾る宝飾が一挙にひび割れ、粉々に砕け散った。
――まとめた長い髪が広がり、波打つそれが背中を流れる。
「――お前も死なないっちゃか」
「竜人とはな。そのような古物、いったいどこより引っ張り出した?」
「その、膨らんだ乳を潰してやったはずっちゃ」
――空での交錯は、痛み分けだったのだ。
「どうやら器物すら、妾がこの世から失われるのを惜しむらしい」
「――『魂婚術』っちゃな。あの狐人とおんなじっちゃ。知り合いっちゃか?」
(╬¬_¬)
「知らぬ。そちらが妾の『ぱくり』であろう。妾こそが『おりじなる』である」
「苦手意識のある相手と同様に、貴様では妾に勝てぬということじゃ」
(#゚д゚)
「――ッ、竜をコケにするっちゃか!?」
❄️ 三つ目の天変地異
二つの天変地異に、もう一つが加わる
・一投で数十メートル範囲が平たく薙ぎ払われる飛翼刃
・竜人の膂力と、周囲の被害を顧みない精神性
――城郭都市の南方は、それで壊滅した。
一つの都市で、二つの天変地異に同時に襲われるなど、悪夢でしかない。
「――いや」
ヴォラキアの気候で、吐息が白く曇ることなど。ましてや――
――三つ目の天変地異、それが重なれば、それは悪夢か。
――はたまたそれは、大いなる一手となり得るか。
銀の鈴が鳴ったような、美しくも芯の通った響きが。
いなくなった自分の騎士を探し、雪を引き連れた『魔女』が城郭都市に参じていた。
第七章56B『飛竜災害』終了。
フロップ
マデリン
シュルト
ウタカタ
ハインケル
クーナ
ホーリィ
レム
「――そこまでよ」