第七章41
『茶飲み話』
湯呑みを持った老人が、いつの間にか部屋にいた。――話を『しに』きたのではなく、『聞きに』きた。
🗓️ あと三時間
議題は、紅瑠璃城への出頭
( •̀_•́ )
「――作戦会議!」
議題は『紅瑠璃城への出頭』。
手紙を書いたアベルと、昨日の使者三人が必須という条件だ。
――縮んだ三人を連れていって、悪ふざけとみなされないだろうか。
「相手の出方がわからぬ状況で、手札を見せるなど正気の沙汰ではない」
(´・ω・`)
「だよな……俺も、ヨルナならきっと話を聞いてくれるはずだなんて言えない……」
ヨルナに抱いた印象を言語化するなら――『悪女』。
そこに魔都の支配者の地位と、『九神将』の力量が備わっている。
「女装などと、わっちに嘘をついたでありんすか、的なこと言われたらどうするよ」
「あれなら一応、ナツミ・シュバルツのロリ状態を装っておくか……?」
(゚д゚ ;)
「マ、待ってくださイ。それはいよいヨ、私も混乱してしまいそうでス……」
「それで、どうするの? 火の刻の鐘って、あと三時間くらいだよ?」
🍵 湯気の立つ湯呑み
宿の一室で、誰かが茶を淹れている
「若返りって、不老長寿の秘術っぽくねぇか?」
(・∀・)
「勝手に茶ぁ入れて飲んどるけど、他にも飲みたい奴とかおる?」
バネ仕掛けの人形のように、タリッタが動く。
抜き放った弓に矢をつがえ、狙いは超至近距離。
(´ー`)
「やめとけやめとけ。ワシ、先の尖ったもん向けられんの好きじゃねえんじゃぜ」
(╬゚д゚)
「ふざけたことヲ……! あなたはいったイ……」
「――オルバルト・ダンクルケン」
「でも、お爺ちゃんどうやって入ってきたの?」
「あの、鹿人の娘を通したじゃろ? で、一緒に入ってきたわけよ」
(≧▽≦)
「かかかっか! どうやって入ってきたかは秘密じゃぜ」
😈 面白ぇじゃろ
心当たりを尋ねると、あっさり認められる
「俺たちがこうなった理由、それに心当たりがあるなら正直に……」
「ああ、それかよ。それならワシがやったんじゃぜ。面白ぇじゃろ、シノビの術技」
駆け引きなど抜きに、あっさりと。
「だもんで、殺さないで絞る技なら色々あるんじゃぜ。――面白ぇじゃろ?」
そう言い放って、温かな茶を啜った。
⚖️ 覆せっかよ
手出しはさせぬ、という明言を持ち出す
「この魔都の支配者、ヨルナ・ミシグレの考えは耳に入っていよう」
「あれはこのものたちを使者と認めた。手出しはさせぬと、そう明言したと」
(#`Д´)
「そ、そうだ! わたくしたちも命懸けでしたのよ! なのに、この仕打ちは話が違いますわ!」
「おいおい、興奮して混ざっちまっとるじゃろ、それ」
「ワシがお前さんらをつついたのって、昨日の勝負がつく前じゃろ?」
「戦ってる最中に付いた刀傷で死んでも文句言われねえんなら……」
「戦ってる最中に入れた縮こまる術の文句も言われる筋合いねえじゃろ」
(>﹏<)
「き、詭弁だ……!」
❓ 胸の内を聞きに
何用で来たのか、何度も問い直す
(╬¬_¬)
「俺は貴様に、何用できたと聞いたはずだ。いったい、何度問えば答える気になる?」
「どうせ敵になる連中なら、ちょっと弱らせといてもバチは当たらんじゃろ?」
「そいつはオレたちを縮ませた理由になっても、茶ぁ飲みにきた理由にはなってねぇ」
「ワシがきた理由はぶっちゃけ、お前さんらの話を聞きにきたってのが一番すんなりじゃろうよ」
「昨日の城での啖呵、ありゃワシも痺れたもんじゃぜ」
「閣下相手にあれこれかまそうって奴は結構おるし、今んとこは全部失敗しとるわけよ」
「だのに、なんでまた危ねえ橋を渡んのかと、胸の内を聞いてみてえって話じゃわな」
(・_・)
「……それを聞いて、どうするんだよ」
「そんなもん、聞いてから決めるに決まっとるじゃろ」
(≧▽≦)
「で、嘘言えんように先に小細工しとくわけじゃぜ、かかかっか!」
👁️ 面はお喋り
正体を明かすか、という誘惑がよぎる
――ここは勝負すべき場面ではないか。
アベルの正体を明かせば、オルバルトを味方にできるかもしれない。
「目線、顔の強張り具合、ほんのちょっぴの筋肉の緊張……」
「別に口が動かなくてもよ、色々と喋ってくれんのじゃぜ、実際」
「踊り子っぽい嬢ちゃんは弓使いの嬢ちゃんを頼りにしとる」
「布巻いた若僧とちっちぇえのはお前さんじゃな。で、お前さんと弓使いは……仮面の若僧」
(¬_¬)
「――弱ってるときなんか、ますますそれが顕著なもんじゃろ?」
🪢 忍びの不文律
話を聞くとは言ったが、交渉とは言っていない
――『幼児化』は、話を聞くためだと彼は言った。
決して、『交渉』するためだとは言わなかった。
「話を、しにきたんじゃ……」
「話を『しに』きたと、話を『聞きに』きたは似ててちょっと違ぇじゃろ?」
「態度でけえし、自分は誰も頼ってねえしで仮面の若僧が大将じゃろ?」
「それが何のつもりで、あの狐娘を口説きにきたのか聞かせてみるんじゃぜ」
「――。それが叶わなければ、如何にする?」
「そんときゃ、もっと別の手段を講じるだけじゃね?」
――どちらも動けない、膠着状態。
偽皇帝とヨルナに縛られ、オルバルトは追加の敵対行動が取れない。
こんな状況が、ここ以外のどこで用意できるだろうか。
🎭 素顔を晒す
賭けに出て、鬼面の中身を差し出す
( •̀_•́ )
「――アベル」
鬼面越しに、意識がこちらを向くのがわかる。
感情は見えない。――しかし、意図は察せられたと感じたから。
( ゚д゚ )
「……ああん?」
「顔の見えない若僧の正体と、俺たちの目的が知りたいんだろ」
「おいおい、そいつはちょっと笑えねえんじゃぜ?」
「笑い話にするつもりもねぇよ。――アベル」
たおやかな指が、自分の顔に伸びる。
(゚д゚)
「――こいつは、どえれえことじゃぜ」
「閣下、じゃと? じゃが、そいつはおかしすぎんじゃろ。なら、ワシが一緒に――」
「老いた知恵を巡らせろ、オルバルト・ダンクルケン」
「貴様は答えを持っていよう。あとは引き出すだけだ」
(;´Д`)
「なら、あれはチシャってことになんのかよ。まんまとやってくれる……」
「しかし、そうなっとあれかよ。閣下らしくもなく、やられっ放しじゃね?」
「俺の腹の底を、貴様の眼が見透かせると?」
🎆 死に花
弓は下ろさなくていい、と言われる
「タリッタさん、もう弓下ろしていいよ。オルバルトさんは……」
「あ? いや、別に下ろさんくていいんじゃぜ?」
「つか、敵じゃねえって確定しとらん奴の前で警戒解くとか、無理じゃろうもん」
(゚Д゚)
「は?」
「こっちの話を……」
「聞いたんじゃぜ? 聞いてから判断するって言ったじゃろ。で、したわけよ」
「どちらへ出るかわからぬ札の一枚だったが、貴様はそう動くか」
「らしくねえぜ、閣下。本気で手札がねえって状態だったのが致命的よな」
「しかも、ここで引くのがワシってのが運がねえ。いっぺん、やってみたかったのよ」
「ほう、何をだ?」
🩸 血の匂い
全員が動いたが、間に合わなかった
全員が動いた。しかし――
「昨日、種がわかんねえのがお前さんじゃぜ、隻腕の」
「けど、ちびっこくなるとあちこち思った通りに動かなくてしんどいじゃろ」
「歳喰ってから覚えた技ってのは、若ぇときはうまく使えねえもんじゃぜ」
指先から血が散る。
アルとミディアムの首が抉られ、血が噴出した。
タリッタは、壁に縫い留められていた。
星形の投擲具が胸を貫き、背を貫通して壁に。――即死だ。
「――手出しを禁じる理屈も、貴様には及ばぬか」
「ワシは死ぬ前にでけえ花火を打ち上げてえのよ」
(・∀・)
「歴代最高って言われてる皇帝を弑逆して、それで処刑されんなら大満足ってもんじゃぜ」
「貴様の、その破滅的な嗜好は読めなんだ。俺の手落ちか」
「こいつらは仕掛けてきたから返り討ちじゃけど、お前さんは別に死ぬ必要ねえんじゃね?」
(╬゚д゚)
「――たわけめ」
スバルがアベルを庇い、ルイがスバルを庇う。
――あまりにも、馬鹿げた肉の盾だった。
「てっきり、閣下は一人で死ぬもんじゃと思っとったんじゃぜ」
「――。誰も、貴様の目測の限りに収まるものではない」
🔁 やり直し
聞き覚えのある声が、始まりを告げる
血が流れ、熱が奪われ、奥底まで沈んで――
失われた血液が体を巡り、耳元でうるさく騒ぐ。
極限まで研ぎ澄まされた聴覚が、自分の血流の音を拾う。
自分がどこへ戻ったのか、確かめるべく――
忘れ難い悪辣な声が、新たな戦いの始まりを告げていた。
第七章41『茶飲み話』終了。
スバル
アベル
アル
タリッタ
ミディアム