リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章24

『傲岸不遜』

無血開城は成った。だが、勝利を確かめる間もなく、帝国最強の一角が現れる。

⏳ 酒宴の始まりが近づく

控室に、会話がない

控室に会話はなく、静まり返っていた。

フロップフローラさえ沈黙している。

廊下で、タリッタタリッタの顔色が危うくなった。

住み慣れた集落を離れ、姉も頼れず、丸腰で敵陣の真っ只中。

何を言えばいいのか、とっさに出てこない。

ビアンカ

「――タリッタ」

ビアンカ

「何も案ずることはない。俺を見ていろ」

根拠のない、安易な慰めの言葉だ。

だが、効果は絶大だった。

持つものは、持たざるものの懸命な努力を一瞬で抜き去る。

ナツミ

(´・ω・`)

「もう、腹も立ちませんけれど」

🍷 三十人近い男たち

ズィクル・オスマンは、小柄だった

ズィクル

(・∀・)

「――よくぞきた。お前たち、大層素晴らしい舞と歌を披露するらしいな」

想像を、一枚も二枚も裏切る姿だった。

まず、背丈が低い。

そして、大きく膨らんだ特徴的な髪型。

小柄な男の頭の上にあるだけで、マスコット的な愛嬌を発している。

剣力で武勲を立てるタイプには、見えなかった。

🙇 跪かない

最後尾の舞姫だけが、膝をつかない

最後尾に立った舞姫だけが、跪かない。

『将』の中に不穏な空気が広がる。

🛡️ 兵

(╬゚Д゚)

「何故、跪かない? 二将の前だとわかって……」

ズィクル

(´ー`)

「待て。そういきり立つな。この場は酒宴のために開いたのだ」

ズィクル

「芸事で身を立てるものたちに求めるのは、礼儀作法ではなく、無聊の慰めだろう」

ズィクル

「武人の気迫に身じろぎもしないか。さぞ、舞に自信があると見える」

ナツミ

「……寛大さに感謝を。ですが、ご安心くださいまし」

せっかくもらった好機だ。完敗を味わってもらうこととする。

🍶 酒杯を傾ける速さ

前代未聞の、大失態

舞姫の踊りに目を奪われ、喉を焼かれ、魂が渇いたように酒を求める。

自然と酒杯を傾ける頻度と速度が速くなる。

とりわけ速いのは、脳髄の痺れを癒さんとする指揮官だ。

判断力が酒と舞に奪われれば、本来ありえないポカもやらかす。

剣舞を見たい欲求に負けて、舞姫の求めるままに剣を差し出す。

ビアンカ

(¬_¬)

「――貴様の負けだ、ズィクル・オスマン」

疑いようのない男の声が聞こえても、その目は陶酔から抜けられない。

🔪 我に返った将たち

伸ばした手より早く、ナイフが飛ぶ

🛡️ 将

(╬゚д゚)

「――っ! おのれ、賊めらが! 勝手なことを……!」

手を伸ばすより早く、腕と足が投げられたナイフに貫かれる。

クーナ

(・_・)

「悪いんだガ、族長からアベルの顔は守れって言われてんダ」

舞の最中に、食事からナイフだけをこっそりかき集めていた。

だが、刃を躱して飛びのいた影が一つ。

🛡️ 髭の巨漢

「笑止! この程度で、帝国兵の足を止められると思うてか!」

ナツミ

(>﹏<)

「アベル――!」

🏹 引き絞られた矢

殺意の宿った矢を、声が止める

タリッタタリッタの緑色の瞳に、殺意が宿る。

アベルを救うため、男の息の根を狙う構え。

フローラ

(>﹏<)

「殺しちゃダメだ!!」

瞳に躊躇いが生じ、狙いがわずかにブレる。

放たれた矢は、背中ではなく右肩へ突き刺さった。

大剣は勢いを殺せず、回転しながら舞姫の背へ。

――後頭部の手前を掠め、床へ突き立つ。

はらりと、編み込まれた黒髪が解かれる。

偽りの黒髪が、床に落ちた。

そこには、舞姫の柔らかな印象を削ぎ落とした冷酷な皇帝がいた。

🗡️ 降伏勧告

部下の命は保証されるのか、と問う

ズィクル

(・・・・・・)

「そちらの言う通りにすれば、部下の命は保証してもらえるのか?」

アベル

「それも貴様の態度次第だ、『臆病者』」

ズィクル

(╬゚д゚)

「ぐ……っ」

アベル

「貴様は『女好き』と呼ばれる以前は『臆病者』とそう呼ばれていたな」

ズィクル

「『女好き』の上、『臆病者』と誹られる私であれば、女に剣を突き付けられ、我が身惜しさに降伏すると……」

だが、そうではなかった。

アベル

「巧みで堅実な用兵により、目立った戦果は少ないが、味方の被害も少ない策略家」

アベル

「貴様、何を勘違いしている?」

アベル

「他者が貴様を臆病と誹るのは、結果を見ての虚勢か、そうでなければ結果を見られない愚者の放言だ」

アベル「俺は、貴様の性質を勝算とした」

アベル

「貴様は無駄な被害を嫌う。故に、この状況で抗うまいと判断したのだ。――俺を失望させるか?」

その瞳に去来したのは、感動に近い驚きだった。

ズィクル

(´ー`)

「――武装を、解除いたします。部下にも、厳命を」

🔥 屋上へ

剣狼の旗が、燃える

アベル

「何を呆けている。さっさと屋上の旗を燃やしてこい」

ナツミ

(・_・)

「うえ? わ、わたくし?」

アベル

「貴様だ。貴様だけだぞ。事態が動いてから、何一つ役目を果たさなかったのは」

確かに、巨漢が跳ねたときに尻餅をついた自分だけ、何もしていなかった。

ナツミ

「わ、わかりましたわよ! ええ、ええ、ごめんあそばせ!」

冷たい風を浴びながら、松明を掲げる。

――ここに、城郭都市グァラルの陥落は成った。

👁️ 特別な目

離れた場所から、正体に気づいた男がいる

ジャマル

「おいおい、何の冗談だ、ありゃ」

トッド

「――嘘だろ」

燃える旗のすぐ傍らに、都市庁舎内で見かけた女の姿。

豊かな黒髪。

鋭い目つき。

確か名前は――

トッド「――ナツミ・シュバルツ」

あの通路で出くわした弱々しさは、まるで見当たらない。

トッド

「まさか、お前か?」

考えれば考えるほどに一致し、見れば見るほどに乖離する。

トッド

「ありえないと、思ってた。正面から、潜り抜けようとするなんて」

トッド

「まさか、あれも布石ってことか? わざと俺たちに見つかって、正面突破なんてありえないって先入観を、植え付けた?」

トッド「……ヤバい」

🏃 壁の穴へ

矜持では、勝ちも命も拾えない

ジャマル

「てめえ、怖気づいたか? それでも帝国軍人か、あぁ!?」

トッド

「矜持じゃ勝ちも命も拾えんよ。大体、お前にもわかるだろ。都市庁舎はもうダメだ」

トッド

「その前に逃げなきゃ、勇敢に討ち死にする以外の選択肢はなくなるぞ」

命も、有限な手札だ。

勝利のために使うならともかく、負け惜しみのために使うのはもったいない。

トッド

「生きてれば恥をすすぐ機会もあるさ。けど、死んだらそれまでだよ」

ジャマル

(╬゚д゚)

「クソったれ!」

トッド「ひとまず、ナツミって名前で覚えとくことにするか。――戦争の申し子さんよ」

🍾 略奪上等

駐留軍は、武装解除に応じた

指揮官の身柄が押さえられたと知れると、帝国駐留軍は武装解除に応じた。

ミゼルダ

(・∀・)

「それにしてモ、大したものだったナ、スバル……いヤ、ナツミ」

ナツミ

「でも、これだけの人数……やはり、正面対決は厳しかったですわね」

ミゼルダ

「たとえ敵が多かろうト、シュドラクの誇りは挫けなイ。……とはいエ、単純な数は覆し得ないものダ」

ミゼルダ「誇レ、ナツミ。お前は智によって勇を示しタ。我らではできなかったことダ」

🩺 上から下まで

ケガを隠していないか、上から下まで確かめられる

レム

「あなたはどこかにケガをしていても、それを隠して同じことを言いそうな気がしたものですから」

ナツミ

(・∀・)

「わ、わたくしの身を案じてくださるんですの?」

レム

「は?」

ナツミ

「あ! ごめんなさい! 調子に乗りましたわ!」

レム

「しましたよ」

ナツミ

( ゚д゚ )

「へ?」

レム

「だから、心配しました。当然でしょう」

レム

「どれだけふざけた作戦だったとしても、あなたにそれをさせたのは私です」

レム

「ただ、言動はどうあれ、あなたはどうにかしてみせました」

レム「本当に、この都市を落としてみせた。それも、死人を出さないでです」

🏛️ 都市長の個室

もじゃもじゃ頭が、その前に跪く

すでに踊り子の衣装を脱ぎ捨て、男物の装いに袖を通していた。

その前に、跪くもじゃもじゃ頭。

ズィクル

「――は。その通りにございます、閣下」

話すまでもなく、舞の最中に気付いていたという。

アベル

(・・・・・・)

「ズィクル・オスマン、俺に従え。悪いようにはせぬ」

ズィクル

(≧▽≦)

「は! 閣下の御為でしたら、このズィクル・オスマン、身命を賭させていただきます!」

ナツミ

(>﹏<)

「ま、待った待った、本気ですの!?」

ズィクル

「よもや、閣下が私の二つ名を……それも、不名誉でしかないと呪ったものを覚えていてくださり、挙句、それを信じてくださったとは……」

アベル

「帝国の支配者たらんとすれば、遍く国土を解さねばならん。仕える臣下のことも同様だ」

アベル

「己の手足もわからずして、皇帝の歩みが乱れぬと思うか?」

憧れの選手にホームランを打たれた投手の心境かもしれない、と思った。

🚨 帝都の増援

増援を招き入れるべき、という進言に

ズィクル

「まずは、帝都より送られるはずの増援、これを市内へ招き入れ、投降を呼びかけるべきかと」

アベル

「――帝都の増援」

部屋の空気が、震えた。

アベル「――今すぐに街の正門を閉じよ! 使者であろうと取り合うな!」

ミゼルダ

「タリッタ、ゆケ、正門を閉ざすよう言ってこイ」

タリッタ

「あ、姉上、いったい何ガ……」

ミゼルダ

(╬゚Д゚)

「――ゆケ! シュドラクの名を汚すナ!!」

🍃 のんびりとした声

ルイが指差した先に、誰かがいた

ルイ

「うー! うー! あーうー!」

大粒の涙を流し、何かを恐れるように表情を強張らせている。

指差した先は、大広間の片隅。

――何もない、はずだが。

四本の矢が乱れ飛び、その空間へ押し寄せる。

アラキア

「――それだと、わたし、殺せない」

瞬く間に、ミゼルダミゼルダの全身が凄まじい炎に呑まれた。

褐色の肌。

銀色に近い白髪。

左目を覆った眼帯。

豊かな毛並みの尻尾。

手には、その辺で拾ったような枝。

アベル

「――貴様か、アラキア」

アラキア

「閣下、ひさしぶり」

ズィクル

( ゚д゚ )

「アラキア一将……帝国最強の、『九神将』の一人!」

アベル

「それも、九神将の『弐』だ。――つまり、帝国で上から二番目ということになる」

アラキア

「えらい」

🌪️ 頑張っても、無駄

掴んだはずの勝利が、崩されていく

ナツミ

「やっと、この手に掴んだ勝利を邪魔されてたまるか――!」

アラキア

「頑張っても、無駄」

大広間の全体が捻じ曲がるような、凄まじい風。

天地がひっくり返り、上下左右も正面背後もわからなくなる。

――竜巻だ。

ズィクル

「じょ、せいを……これ以上、傷付け、させは……」

とっさに体を引き寄せ、クッションとなってくれていた。

シュドラクたちは、ことごとく地に伏している。

敵対の意思を見せたものこそ、強い被害を受けていた。

あれほどの破壊を発揮しながら、攻撃する対象を選んでさえいた。

🌞 いるはずのない存在

レムを背に庇い、両手を広げる

レムレムを背に庇い、両手を広げる。

死んでも、よかった。

レムを守れるなら、死んでもよかった。

女の格好をして、偽物の胸まで作って、化粧をして、ウィッグを被って。

そんな滑稽な姿で、守らなくてはならない少女のために立ち向かった。

プリシラ

(¬_¬)

「――何とも滑稽な挺身よな。だが、悪くはない」

熱も、喪失感も、痛みも訪れない。

目を開けると、そこに誰かの背中がある。

右手に赤々と輝く剣。

押し寄せるはずだった破壊の全てを、斬り伏せている。

尊大で、傲慢で、この世の全てが足下に跪くと確信している紅の瞳。

プリシラ「名乗る必要はないぞ、愚物。妾の名をこそ呼ぶがいい」

第七章24『傲岸不遜』終了。