第七章97
『西の彼方より来たる』
盤面が動く。西の空から、そして西の丘陵から、二つの予備戦力が姿を現す。
🎯 空撃ち
両者の思惑は、同じ一点で重なった
魔晶砲はあらゆる意味で国土防衛の切り札だ。残弾を空にするような暴挙はできない。
「貴様にそうまで自暴自棄な真似はできまい」
「――精鋭は囮に使う。敵は無視できない」
味方にも被害の出かねない欠点は、モグロの戦場では考慮する必要がなくなる。
――ばら撒かれた石人形も、巨大なモグロさえも、本体ではないからだ。
故に、両者の思惑は重なり、放たれた魔晶砲は――はずだった。
⚡ 速い判断
呆気に取られた中で、誰よりも早く戻る
放たれた白い光を呑み込んだ黒い光を、戦場の大勢が目の当たりにした。
――誰もが呆気に取られて動きを止めた。指揮所にいたアベルも例外ではない。
彼が違ったのは、そこからの復帰が誰よりも早かった点のみ。
多くの場合、戦場において必要なのは正しい判断よりも、速い判断だ。
( •̀_•́ )
「今すぐに打ち上げよ! 遅れれば、ズィクル・オスマンの死を招く!」
「疾く、動け!」
元より、ズィクルの命も勘定に入れた上での作戦だ。その空々しさを呑み込んで、兵は動いた。
――ここはアベルの決断力よりも、ズィクルの積み上げた信頼の為せる業だ。
「――必然、俺のすべき役目も、近い」
「――西から盤面を動かそうとしている貴様は、何者だ?」
😔 惜しい
良しとするくらいなら、玉座に在るべきではない
( ゚д゚ )
「――よもや」
惰弱な姿を見せれば、帝国では侮られる。それがヴォラキア帝国流だ。
「無論、帝都へ挑む以上、何らかの対策はあるものと考えてはいましたが……」
献上されたものを平らげ、『九神将』の力で以て敵の策ごと粉砕する。
『互いの奇策が消えれば、あとは純粋な兵力の差だ。――やれ』
(;゚Д゚)
「魔晶砲の被害を、皆無とされますか」
――伏せ札をギリギリまで伏せておく手腕、まさしくヴィンセントのやり口だ。
「戻ってなんとされますか、閣下……」
以前と変わらぬ帝国の在り方を維持し、再び皇帝の務めを放棄するのか。
――それを良しとさせるぐらいならば、優れたる皇帝でも玉座に在るべきではない。
🎆 予備戦力
同じ轍は踏めない、と次の手を用意する
「――次の、魔晶砲の用意を」
相手が魔晶砲を打ち消す切り札を二枚持つなら、同じ轍は踏めない。
「――! ベルステツ宰相! あれを!」
叛徒たちの本陣が敷かれているだろう地点の空に、魔石の光が放たれる。
前線で戦う兵たちに知らせるつもりなら、いささかあの合図は頼りなさすぎる。
――故に、知らせる相手は前線の兵たちではなく。
予備戦力とは、ただ単に出し惜しんだ駒ではない。
――戦況を決定的に変えるために投入される、正しい意味での切り札であるべきだ。
🐉 飛竜隊
西の空から、悠然と迫りくる群れがある
西の空より来たる影。横に大きく展開し、悠然と迫りくる空の覇者たる飛竜の群れ。
炎のように赤い帆を張り、たなびかせる竜船。
――帝国最強の飛竜隊を擁した存在が、反乱軍の予備戦力だった。
「だとしても、制空圏の奪い合いが拮抗するのみ」
「いえ、彼女が『雲龍』を呼び出したのであれば、その前提も変わってくる」
竜人であるマデリンは、自らの血族に当たる『龍』を呼び出すことができる。
――ただしそれは、それだけ彼女が追い込まれた可能性とも隣接する。
⭐ あれは、星?
見覚えのない旗が、掲げられている
西の丘陵、そこによくよく見れば新たに展開する一団の姿があった。
――一瞬、上級伯の戦力かと思われたが、どうやらそうではないらしい。
ドラクロイ上級伯の家紋である、頬傷のある飛竜のものでもない。
ヴォラキア帝国の剣に貫かれた狼の国紋でもない。
――全く異なる旗が掲げられている。
🟠 ナツキ・スバル
完全に出遅れた、と急かされる
(>﹏<)
「おい、兄弟、どうすんだ!? 完全に出遅れちまってんぞ!?」
(╬¬_¬)
「グダグダ騒ぐな、トカゲ野郎……。シュバルツは取り込み中だ……!」
「我々はどうする。このまま叛徒の列へ加わるのか?」
(≧▽≦)
「まさしく天下分け目の大戦の様相! 胸の高鳴りが止まりませんよ!」
ナツキ・シュバルツはあくまで偽名でしかない。
――自分の本当の名前は『ナツキ・スバル』であるのだと、名前を呼ばれて強く思えた。
「お前のそれ、俺の名前呼んでるって認識でいいんだよな?」
「うあう! うあう、うあう、うあうー!」
(;´Д`)
「わかった! わかったから鼻水付けるな! ばっちぃ!」
ルイに対してスバルはとても償い切れないあれこれをやらかした。
「それをしたら、お前と向き合う資格がない。だから、ちゃんとするよ」
⚡ 険悪
二人の間に、剣呑な空気が流れる
「――シュバルツ様、よろしいですか?」
(¬_¬)
「あまり悠長にされている時間はないのではないでしょうか」
(´・ω・`)
「悠長って、ちょっと刺々しい言い方……」
(╬¬_¬)
「悠長にされている時間はないのではないでしょうか」
(╬゚д゚)
「……スバル、何なのかしら、この生意気な鹿娘は」
「タンザと申します。成り行き上、シュバルツ様の世話係をしていました」
「ここからはちゃんとスバルはベティーたちで引き取るから、お役御免なのよ」
「引き取る、ですか? そのご様子で?」
(・∀・)
「ベティーを抱っこするのはスバルの生き甲斐だから、これでいいかしら」
「今、ベティーよりもその娘の名前を先に呼んだのよ。どういうつもりかしら?」
( ゚д゚ )
「え? そうだった?」
(╬゚Д゚)
「そうなのよ! 激おこぷんぷん丸かしら!」
🤫 内緒で
忍耐も無限ではない、と釘を刺される
(>﹏<)
「みゃっ」
「グスタフさんだ。見た目は怖いけど、根は真面目でおっかない」
「背中のはルイで、この子はベアトリス。この子は俺の……」
「えーと……あれだ、ほら、あれ」
「……詳しいことは、おいおい話すってことで」
(╬゚д゚)
「待つかしら! スバル、まさか見た目だけじゃなく、頭の中身も……もがもがっ」
「俺が縮んでること、みんなに話すとややこしいんだ。いったん、内緒で」
(´・ω・`)
「……ベティーのこと、ちゃんと覚えてるのよ?」
「お前を大好きだってことと、これをしなくちゃってことは」
(´ー`)
「お前がいなきゃ、俺は生きていけない。だろ?」
❓ おかしいのよ
流れ込んでくる量が、多すぎる
正面から手と手を握り合い、スバルの内からベアトリスへと温もりが流れ込む。
――感覚的にそれが悪いものではないと、むしろ安心に繋がるものだとわかる。
ちょっと、微妙に、ベアトリスについての記憶があやふやな部分がある。
――細部がぼやけているだけなのと、体が元に戻れば大丈夫という楽観があった。
「離れ離れの間、スバルはマナを排出する手段がなかったかしら」
「だからマナは溜まる一方で、でも、この量は」
それは確かに、こう呟いていた。――多すぎる、と。
⭐ プレアデス戦団
何をしにきたのか、を言い切る
(;゚Д゚)
「――あ、兄弟、ヤバい! セシルスの奴が先走った!!」
「どうする、オレが連れ戻すか……?」
「いや、セッシー止めるのは誰がいっても無理。……旗を」
「心得ているぞ、シュバルツ」
次々と旗が掲げられ、この丘陵にいる一団の結束が固いと、周囲にも見えただろう。
「ルイ、背中から降りてくれ」
「もういきなり消えないから、そこは大丈夫。飛ばした原因と和解したんだよ」
「――。ベティーは離れるつもりはないのよ」
「ああ、お前は一緒にいてくれ。――タンザ、準備いいか?」
「じゃあ、仕掛けるぜ、みんな!」
「「「おおおお――っ!!」」」
「スバル、何をするつもりかしら」
( •̀_•́ )
「決まってるだろ? ――クソ親父の始めたくだらない戦争を、台無しにしてやるんだ」
第七章97『西の彼方より来たる』終了。

ベルステツ
ヒアイン
ヴァイツ
イドラ
セシルス
ルイ
タンザ
ベアトリス
「――シュバルツ、本職の忍耐も無限ではない」