リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章96

『深愛で描く』

水晶宮が輝く。その一撃を止めるために、飛び出した二人がいた。

🗿 最大の障害

――モグロこそが、帝都攻略における最大の障害であると

本来の鋼人は、その肉体を鉱物や金属といった無機物で構成した存在。

その異質な生態には不明な部分が多く、意思疎通の困難さは竜人すら圧倒する。

だが、実態はそうではない。

――モグロは自らの外見と鋼人の特性に便乗し、鋼人を自称しているだけの存在だ。

――モグロこそが、帝都攻略における最大の障害であると。

🌗 燃える空と白い龍

四散するはずだった体が、地べたにある

空に打ち上げられ、四散するはずだった体が地べたの上にある。

――その事実を認識し、困惑が頭の中を占めた。

ハインケル

( ゚д゚ )

「剣が……」

剣をなくした心配をした自分が嫌になった。

――その一瞬の心の動きが、そのまま中途半端な自分を象徴しているみたいに思えて。

右の空は、赤々とした炎で作られた分厚い雲が灼熱の世界を包み込む。

左の空は、白雲を纏った巨大な威容が翼を広げ、凍てつく大地を睥睨する。

ハインケル「燃える空と、白い龍……」

🪨 規模感を間違えた

家と見紛う大岩が、次々と頭上を通り抜ける

家と見紛うような巨大な大岩が、次から次へと頭上を通り抜けていく。

ハインケル「……モグロ・ハガネ」

数十メートル、あるいはそれ以上の巨体が、第三頂点として文字通り立ちはだかる。

引き剥がされた農地を、舗装された街路を自らの腕や胴体として用いて。

投げ続けているのは、ヨルナの支配していた魔都カオスフレームの住民たち。

――その全員が片目に赤い炎を灯し、高い士気を保っているという共通点がある。

壊れた部分を補修するように、激突した大岩自体が次なる巨体の材料とされる。

――それでも投擲をやめない理由は単純明快。他の叛徒が攻め込む時間を作るためだ。

😖 無理だった

撤退した者まで合流し、戦力が膨らみ続ける

ハインケル

(・・・・・・)

「……馬鹿げてる」

他の戦場で撤退を選んだ叛徒たちも合流し、なおも戦力は膨らみ続ける。

ハインケル「どうか、どうかしてやがる……お前ら! 全員! どうかしてんだよぉ!!」

右を見ても左を見ても、上を見ても下を見ても地獄しかない場所で。

――やっぱり、無理だった。無理で無理で無理で、無理しかなかった。

軽快な蹄の音が響いて、疾風馬がハインケルの横を抜ける。

――通り過ぎる瞬間、ここで膝を屈するハインケルを軽蔑する眼差しを残して。

ハインケル

(´;ω;`)

「……やっぱり、俺には無理だよ、ルアンナ」

🐎 レイディ

その座にいるのは、先代の威光あってのこと

剣を手にし、愛馬であるレイディの背に揺られながら、ズィクルは自嘲する。

――『将』の座に収まっているのは、先代たちの威光に相乗りした経緯が大きい。

ズィクル

「私自身、その在り方に従えているとは言い切れない」

ズィクル「――私は帝国二将、『臆病者』のズィクル・オスマンだ!!」

レイディはズィクルの意を汲んで、生涯最高の走りを見せた。

――その走りは慣れない戦口上など無視して、多くの叛徒たちの心に火を付けた。

ズィクル

( •̀_•́ )

「右翼は光人! 左翼は刃金人! あとのものは、この私に続け!」

ズィクル

(╬゚д゚)

「『鋼人』モグロ・ハガネを、我らが討つ!」

「おお――っ!!」

✨ 迷信にすら

出来過ぎと思うほどの援護を受けて、進む

「射レ――!!」

麗しく、気高い彼女らの援護を受けて突き進む。出来過ぎだと思われるほどで。

ズィクル

(´ー`)

「なに、出来過ぎという話をするならば、あの祝福こそ」

自らが果たさなければならない役割を思い、ズィクルは祝福を欲した。

――わずかばかりでも可能性が上がるならばと、迷信にすら頼りたい気持ちになって。

「ズィクル二将! お下がりください! ここは我らが十分に!!」

ズィクル「馬鹿を言うな! 退路はない! 下がる余地もない! 私も往くぞ!!」

ジャマル

(・∀・)

「はっ! 『女好き』のズィクル二将が、前線へ出張っていらすとは!」

ズィクル

「ジャマル上等兵、手応えは?」

ジャマル

(≧▽≦)

「上々! 右見ても左見ても、正面見ても敵だらけ! 楽しくなってきやがりました!」

ズィクル

「私はこれから、モグロ一将を『捌』の座からどいてもらうつもりだが、ついてくるかね!」

ジャマル

( •̀_•́ )

「命令とあらば! 何なら、道を作っておこうじゃねえですか!」

ズィクル

(´ー`)

「――閣下、どうぞご随意に」

💠 織り込み済み

――そのために、この魔晶砲をどうしても撃たせる必要があった

宮殿を構築する水晶部分は、特に純度の高い魔水晶。宮殿自体が兵器なのだ。

――その威力は、大都市を丸々消し飛ばすほどの破壊をもたらすとされる。

過去、使用されたのは数百年前――『大災』相手であったと言い伝えられている。

――そのために、この魔晶砲をどうしても撃たせる必要があった。

それも戦況を変えさせるための決定打ではなく、織り込み済みの被害の一環として。

アベル

(・・・・・・)

「――離脱はせなんだか、ズィクル・オスマン」

ズィクルには、戦線から離脱するという選択肢があった。

――しかし、それを選ばないだろうという予感も、アベルにはあった。

「――物見より伝令! 水晶宮の魔晶砲に、兆しあり!」

「照準、第三頂点!!」

「――魔晶砲、射線上に異変あり!!」

アベル

( ゚д゚ )

「……なに?」

🎣 誤認

自ら最前線を走ったのは、狙わせるためだった

自ら最前線を愛馬でひた走り、勝機は我らにありと声高に訴え、

その魔晶砲の照準を自分たちに合わさせた。

――全ては、この戦況を決定的に変えるのに最善の機だと、誤認させるために。

脳裏を過ったのは母であり、姉であり、妹であり。

――抱えて死ぬには美しすぎる祈り、穏やかに迎えるはずだった終焉。

ズィクル「――ベアトリス嬢?」

🕊️ 見過ごさない

祝福を求めに来たとき、直感していた

ベアトリス

(;´Д`)

「こんなことだろうと思ったのよ」

祝福を求めて陣幕にやってきたとき、彼が死ぬつもりであることを直感した。

――四百年前、あの戦乱の絶えなかった時代では、同じ目をしたものが大勢いた。

たぶん、もう一度あの時代を繰り返しても、もっといいアプローチはできない。

――きっと、また同じような無力感を味わい、死へ向かうのを見過ごしてしまう。

ベアトリス「――今日ここで、同じことをする理由にはならないかしら」

ルイ

(>﹏<)

「あー、う!」

如何なる方法でか短距離の『転移』を繰り返して、ルイはこの場所へ連れてきた。

――先に、ルイは自らの立場を証明した。ならば、次はベアトリスが応えるべきだった。

ベアトリス

「みんなの怒る顔が目に浮かぶのよ」

ベアトリス

( •̀_•́ )

「ベティーは、スバルのパートナーかしら」

🕳️ 呑み込む

射線上に、二人が割り込む

美しい宮殿の全体が眩く光り輝き、世界の形を変えるほどの光が地上へ向かう。

――その射線上にルイと割り込み、ベアトリスは胸の前で手を合わせた。

ベアトリス「――アル・シャマク」

――その、世界を変える光さえ呑み込む別世界への穴が、開かれ、閉じた。

魔晶砲によってもたらされるはずの被害は、もたらされなかった。

戦況に、大きな影響はない。――ただ、大きく劣勢に傾く可能性は、失われた。

😭 代償

少女の姿かたちが、徐々に希薄になっていく

ルイ「うあ! あーう! あうう!!」

文字通り、少女の姿かたちが徐々に希薄になっていく。

――大勢の命を救うため、彼女はあの光を彼方へと消し飛ばした。

その大きすぎる力の代償に、散り散りになっていくベアトリスの存在。

剥離するように欠ける光に指を伸ばしても、すり抜けるそれは留まらない。

ルイ

(´;ω;`)

「あー……っ!!」

叫んで、叫んで、叫んでもどうにもならないのに、必死に叫んだ。

――それ以外にできることが、それ以上にできることが見つからなくて。

ルイ

「――ぁ?」

この瞬間だけは、その戦場を形作る全部を忘れ、彼方に、目を向けた。

――そして、その彼方に向けて、跳んだ。

🧡 運命様、上等だ

跳んで、跳んで、跳んで、そして――

内臓が絞られるみたいな負担がかかるが、構わなかった。

――ベアトリスにかかるだろう負担の全部も引き受けて、ルイは跳んだ。

跳んで、跳んで、跳んで跳んで跳んで、跳んで跳んでそして――

ルイ

(´・ω・`)

「うあう……」

スバル「――わかってる。お前たち、どっちも無茶しすぎなんだよ」

伸ばした腕から少女が奪われる。――否、優しく、抱き上げられたのだ。

辿り着いた先にいた、黒髪の少年の腕で、優しく、大切に、ぎゅっと。

大役を成し遂げた少女の瞼が震え、ゆっくりと瞳が開く。

ベアトリス

(´;ω;`)

「――心配、かけすぎなのよ」

スバル

(´ー`)

「ああ、俺も愛してる」

囁くような親愛に、誇らしげな深愛で応じて、繋がれるべき手が繋がれる。

スバル

( •̀_•́ )

「じゃあ、始めるとするか。――運命様、上等だ」

第七章96『深愛で描く』終了。