第七章95
『頂点楚歌』
龍が空に降りた瞬間、五つの頂点のすべてで戦況が動く。
🐉 神話の存在
空が落ちてきたのかと、錯覚する
空が落ちてきたのかと錯覚するような巨大な存在感。
――白く凍てつかせていく頂点決戦の一角に、それは現れた。
(>﹏<)
「エミリア様……ッ」
エミリアが戦えることと、エミリアを戦わせることとは単純に結ばれない。
――本来、エミリアは傷付く心配のない場所で、全てを見届けるべき立場なのだから。
「大将に顔向けできなくッなる」
🏅 武威
突っ込め、と叫んでも誰も動かない
(╬゚Д゚)
「てめェら! 城壁は俺様が崩した! とっととッ突っ込めやァ!!」
――「城壁を抜いたのはお前だ! なら、最初に抜けるべきはお前だ!」
「勇壮なる戦士、我々はお前の武威を尊敬する!」
身勝手な理由で戦いを起こしたものたちも、その内に秘めた戦士の誇りを至上とする。
「悪ィが、俺ッ様ァいかなきゃならねェとこがあんだよ。――あいつだ」
監視塔でも城郭都市でも、出くわす機会はあった。それを逃し続けてきた。
――戦いたいのではない。戦わなくてはならない相手なのだ。
「城壁越えは、てめェらに任せッてェ」
🥷 隠形
体の芯に響く攻撃だけは、打ち消せない
――ゾッと、ガーフィールの全身が総毛立った。
無心。無心だった。躊躇なく、問答無用で、渾身の一撃が放たれる。
衝撃が突き抜けたのは背中だ。ちょんと誰かの小さい足が、爪先が当てられている。
「丸々、お前さんの一発じゃぜ。ワシの体通して、戻しただけよ」
切り傷、打ち身、骨折や内臓破裂の類なら、即座に治せた。
――だが、体の芯に響く攻撃は、打ち消せない。
🔪 死んだら雑魚
見晴らしのいい平原で、気配なく背後に立つ
「実際、壁抜かれて中入られっと面倒じゃからよ」
先頭の横列に並んでいたものたちが、額や胸にクナイを突き刺され、倒れる。
――仮に駆け付け、治癒魔法をかけても間に合わない。刹那の深手だ。
(≧▽≦)
「かかかっか! 次から次へと、やべえのが出てきて困ったもんじゃぜなぁ?」
( •̀_•́ )
「オルバルト・ダンクルケン……『悪辣翁』だな」
「その呼び名、言われるたんびに言っとるんじゃけど、好きじゃねえのよなぁ」
気配を消し、建物の陰に隠れて近付いてきたならまだわかる。
――だが、この見晴らしのいい平原のど真ん中で、気配なく背後に立った。
🚧 全員死ぬ
払うべき敬意が、この相手にはない
「おうおう、聞き分けのいい奴らで助かるわ」
(¬_¬)
「カフマがしくじりよったから尻拭いよ」
「だから、チシャを出すなり、グルービーを呼び戻すなりせんとやべえって言ったのに」
(╬゚д゚)
「案の定だァ? ジジイ、てめェにこいつを笑う資格なんざねェぞ」
「こいッつァ強かった。それ以上に俺様が強かっただけだ」
「それがおんなじ側の、それもおんなじ『将』相手にかけるッ言葉か!?」
(・∀・)
「ワシは一将、カフマは二将。全然、おんなじでも何でもねえんじゃぜ」
そこにわかり合えない断絶を感じて、ガーフィールの瞳孔が細くなった。
――カフマには、払うべき敬意を感じた。だが、目の前の敵にはそれがない。
🔄 基本よ、基本
城壁を砕いた渾身が、余さずぶち込まれる
(╬゚Д゚)
「ぶっ潰すッ!!」
城壁を打ち砕いたのと変わらない渾身が、余すことなくぶち込まれる。
「すげえじゃろ? お前さんの攻撃の威力、そのまま地面に逃がしてんじゃぜ」
「ま、地面が大爆発してんのはお前さんの腕力がやべえからじゃけどもよ」
(×Д×)
「が、あぁぁぁ――!!」
指に引っかけたのは、老人が頭上に投げたカフマの体だったと気付いて、停止する。
「なんで二将は五十人からいて、一将はたったの九人ぽっちしかいねえんじゃと思う?」
( •̀_•́ )
「――ワシらがクソ強いからじゃぜ」
🗡️ 陽剣
あの席次の意味が、ここでわかる
「――陽剣」
(¬_¬)
「何とも、娘使いの荒いものよ」
視界を埋め尽くした強大な炎が立ち消える。――断ち切られたのではない。
文字通り、その存在がなかったの如く立ち消えたのだ。
「侮るでない、あれは『精霊喰らい』じゃ」
凄まじい勢いで突き抜けたのは大質量の鉄砲水。地平線まで縦に大地が割られる。
( ゚д゚ )
「オルバルト翁を差し置いて『弐』とは、こういうことでありんしたか」
🪨 魂婚術
年甲斐もなく目立とうとする、と言われる
「母上!」
「――ッ、わかっておりんす!」
相応の思い入れと、過ごした時間とが効力の強さに比例する。それ故に不安はあった。
――果たして、愛した男と過ごした大地を、どれだけ愛せるか。
「大義である」
「――邪魔」
(・∀・)
「それを容赦なく妾へ打ち込むとは、妾の美貌が惜しくないか?」
「決めたの。手足がなくなっても、姫様は姫様」
「決めてもらった、の方が正しかろうよ」
「わっちを忘れてもらっては困りなんす」
(¬_¬)
「年甲斐もなく、妾より目立とうとはな」
✨ 万物へ変じる
挟み撃ちが、互いを打ち合う結果になる
挟み込むはずの攻撃が肝心の相手を外して、互い同士で打ち合う驚天動地。
「小癪」
白い光の破片となって飛び散った体が、恐ろしい拡散力を伴った散弾となる。
――纏った土の衣を容易く貫いて、二人を穿った。
パン、と軽い音を立てて、ヨルナの簪が砕け散る。髪飾りごと。
「誰ぞの贈り物か? 母上」
「――。妾の愛し子たちからの贈り物でありんす」
ヨルナの愛を受け、そしてヨルナを守るために代わりに砕ける資格を持つもの。
「消えた耳飾りは、確か四人目の夫からもらったものじゃ」
(>﹏<)
「よ……っ」
「妾は八度、夫を得た。もっとも、母上には及ぶまいが」
🌈 炎か、水か
陽剣なら届くはず、という前提の穴
「プリシラ、陽剣であればどんな相手にも届くはずでありんしょう」
「母上に言われずとも、その認識に相違ない。じゃが、思い違いがあろう」
「妾の陽剣は焼きたいものを焼き、斬りたいものを斬る」
「あるいは光とも影ともつかぬとなれば、届かせるのにさぞ難儀しようよ」
万物へと届き得る陽剣の所有者と、万物へ変じる能を有する超越者の対峙。
(;´Д`)
「なるほど、厄介な相手に育ったものでありんす」
「――いつなりとでも、舞台の中心は妾ということよな」
プリシラの眩さに焼かれ、なおも燃え尽きぬ存在だけが彼女の傍にあれるなら。
――こうしてアラキアが立ちはだかる状況は、なんと皮肉な巡り合わせであるのかと。
🗺️ 分析官
深追いすると、自分の立ち位置を見失う
「なんか、戦ってなくても同じくらい出血してる気が」
聞こえる『声』を深追いしていると、自分自身の最初の立ち位置を見失いかける。
――この正解を見失った場合、オットーはおそらく言語を喪失するだろう。
風の音や衣擦れの音さえも『声』と錯覚し、正気を逸する未来が容易に見て取れた。
「第一は焼き払われて、第二は……これ、エミリア様だな」
(;´Д`)
「あー、エミリア姉様……」
「え、エミリア姉様に悪気は存在しないからっ」
「元々、第二頂点の反応はかなり悪かった。――竜人に、生き物が怯えるからでしょう」
「すごい役立ってるよ、オットーちん! アベルちんが次の報告ちょうだいって!」
「絶対にそんな可愛げのある言い方してないと思いますが……」
「承知しました。分析官殿も、斥候十分にご注意を」
「分析官……」
行商人に内政官、続いて武闘派内政官と呼ばれた挙句に今度は分析官だ。
😵 雑音
――世界が、あらゆる生き物が悲鳴を上げるのも当然だ
「全部片付いたら、倒れるまでお酒飲んでいいから頑張ってっ」
(>﹏<)
「それだとまるで、僕がとんでもない呑兵衛みたいに聞こえるんですけどねえ!?」
さらなる情報の確度を、とチャンネルを開いた直後だ。大きな雑音が脳を揺さぶった。
「う、ぁ……!?」
――世界が、あらゆる生き物が悲鳴を上げるのも当然だ。
その存在に意識を奪われなかったものが、この戦場でたった二人だけ。
――オットーはとっさにペトラの手を掴み、ミディアムの肩を突き飛ばしていた。
頭上を、赤々と燃ゆる炎の塊が大気を焦がしながら通り抜けていく。
手が届かなかった伝令の兵たちが、地図ごと一気に焼き尽くされる。
🪓 一番の根っこ
振り下ろされた凶刃を、力一杯に跳ね返す
(;゚Д゚)
「――っ、危ない!」
低い姿勢から腰の裏の蛮刀を抜き、振り下ろされた凶刃を力一杯に跳ね返す。
「立って、オットーさん!」
「――失敗失敗、今のでいっぺんにやっちまうつもりだったんだが」
――龍の存在感を意識的に無視した、もう一人。
「女子供も容赦なく、ですか? ずいぶんと野蛮じゃありませんか」
「戦場で仕事してる奴を非戦闘員とは認めんよ」
「僕やこの子たちが仕事を? 陣から離れたここで、どんな仕事を……」
(・_・)
「さあな。ただ、俺の勘が言ってる」
「お前さんたちが、この戦争で悪さを働いてる一番の根っこだ」
第七章95『頂点楚歌』終了。
「――あッれが、龍」
「――おお、ワシの隠形見抜くかよ。ヤバくね?」
ヨルナ
プリシラ
アラキア
オットー
ミディアム
トッド