第七章91
『戦場を駆ける』
金色の獣が戦場を走る。届けるのは、集められた情報が形にした一本の指示。
🐆 血の香り
血の香りが、心を昂揚させようとする
纏った衣を脱ぎ捨てて、常日頃、淑やかを心掛ける手足を思い切りに伸ばす。
ここは戦場で、大勢が命をぶつけ合う場で、散りゆく命の終着点なのだ。
――それを頭でわかっていながらも、血の香りが心を昂揚させようとする。
自分の内に流れる血、人と獣の性質が交わったそれが偏ったものであるのだと。
――ガーフィールが無意識に制御している本能の訴え。それを御し切れない自分の性。
( •̀_•́ )
「――などと、自分を憐れんでいる場合ではありませんわ」
🧩 自分は何を
戦えも、知略もない自分は何をするのか
エミリアは強力な精霊術師であり、乱戦においても頼れる存在。
ガーフィールは武官として申し分なく、オットーは優れた判断力で道を示す。
――前者は発散の機会を戦場に求め、後者にはペトラがうまく対処してくれた。
ペトラは陽魔法で加護の反動を軽減しつつ、情報の取捨選択にも力を貸している。
――その成長度合いで言うなら、エミリアやスバルさえも抜き去って陣営一位だろう。
エミリアやガーフィールのように戦えず、オットーやペトラのような知略もない。
――ただ、滾る本能を抑え込んで戦場を駆ける自分は、何をと。
🏹 味方ダ
本陣からのお達しを、届けに来た
(・∀・)
「――見つけました! タリッタ様!」
( ゚д゚ )
「――ッ!? なんでス!?」
(´・ω・`)
「こんな姿で失礼いたします。わたくしはフレデリカですわ」
(≧▽≦)
「なるほド、お前だったカ。――美しい獣化だナ」
(・∀・)
「お前でなけれバ、毛皮を剥いで集落に飾っておきたいほどダ」
(;´Д`)
「ほ、褒め言葉として受け取っておきますわね?」
「お伝えすべきことが。――本陣の、アベル様からのお達しです」
🎯 第三頂点
壁を越えさせれば、防衛力が一気に落ちる
『シュドラクの民』の実力の本質は、狩猟と言えるほどの状況を用意してこそ真価を発揮する。
――彼女たちに壁を乗り越えさせれば、帝都の防衛力は一気に低下する。
(・_・)
「――。石ノ、人形が動いているようでス」
「鋼人カ? だガ、『九神将』は一人のはずだろウ」
獣化した今は通常時より高い視力を持っている。それでも土煙以外の何も見えない。
――狩猟を生業とする種族とはいえ、またしても及ばぬ自分に辟易としてしまう。
「それは『九神将』の一人であるモグロ・ハガネの手勢であると」
🦿 雪辱
いるとわかっていても、恐れは消えない
いるとわかっていたところで、『剣聖』への恐れは消えてなくならないのと同じだ。
(´ー`)
「心配するナ、タリッタ」
「あの『九神将』ならば雪辱を晴らシ、違う『九神将』なら腹いせダ」
膝下を木の棒に代替した右足を見せながら、そう問いかける。
( •̀_•́ )
「――いいエ、問題ありませン」
目にも止まらぬ速度で抜いた矢が真上に射出され、飛竜が回転しながら落ちてくる。
「頃合いを見テ、私たちで壁を越えましょウ。城壁を抜けれバ、私たちの勝ちでス」
(・∀・)
「それでこソ、シュドラクの長ダ。――フレデリカ、お前はどうすル」
「今お伝えした話を、他の方々にも伝えてまいりますわ」
「一穴が堤を崩ス、カ」
( •̀_•́ )
「ええ。――風穴が開きますわ」
💨 疾風の如く
二人が繋いだ連携を、無駄にはできない
「決して、命をみだりに投げ出すようなことはなさいませんよう」
(・∀・)
「お前が死ねバ、お前の毛皮はシュドラクで代々継いでいク」
(;´Д`)
「生憎と、お渡しする予定はございませんわよ!」
疾風の如く草地を蹴り、駆け抜けた先へアベルの指示を伝える。
ペトラとオットーの連携を無駄にはできない。
⚔️ じれってえ
顔を見ても満たされない、と言われる
「ジャマルカ。お前の顔は見ても満たされなイ」
(╬゚д゚)
「わけわかんねえこと言ってんな! クソ、じれってえ!」
(´・ω・`)
「カチュアの無事がわからねえ……トッドの野郎、ちゃんと守ってんだろうな」
城郭都市で捕虜になった帝国兵であり、アベルの素性を知ってこちらについた稀有な立場。
――生憎と、その野卑な性根が表れた顔は、面食いのミゼルダのお気に召さなかったが。
「私たちはこれかラ、第三頂点に向かウ。そこが狙い目だと話があっタ」
「狙い目だぁ? どこの誰がそんな話……」
「アベルだそうでス」
(╬゚Д゚)
「それを早く言え! おい! お前ら、準備しろ! 第三頂点にいくぞ!」
❄️ 白い結晶
手を伸ばすと、一秒ともたずに消えた
ちらちらと目の前を揺らいで落ちていくものに手を伸ばす。
――ほんの一秒ともたずに消えたのは、冷たい氷の粒、雪の結晶だ。
(・・・・・・)
「――。そうカ、お前は見ていなかったナ、タリッタ」
「エミリーダ」
生まれて初めて目にする雪の存在に、タリッタはわずかな震えを覚える。
「まったク、世界というのは広いものだナ」
「シュドラクの族長と元族長が揃っテ、やられっ放しになることが多すぎル」
視線を向けた先は、先ほどまでフレデリカの踏んでいた草、彼女が消えた方角。
――生きた情報の鮮度を保ったまま、縦横無尽に運び続ける伝令役を思い。
(´ー`)
「――美しい獣が私たちを生かス。どこまでモ、狩人の冥利に尽きるものダ」
第七章91『戦場を駆ける』終了。
「嫌になりますわね……」
タリッタ
「待テ、タリッタ。味方ダ」