リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章89

『カフマ・イルルクス』

三十二体の『虫』を取り込んだ男。その名は、一族の中でも怪物と呼ばれた。

🕳️ 異端

――『虫籠族』の在り方は異形異様、異端を見る目と無縁でいられない

――『虫籠族』の在り方は異形異様、異端を見る目と無縁でいられない。

外見上、虫籠族には人間族との大きな違いがない。

――もしも『虫』を入れなければ、人間族として生きていくことすら可能だろう。

だが、そうはしない。一族は体内に『虫』を入れ、その特徴を引き継ぐ。

帝国南方、集落の最奥にある異形の生物と毒の空気が蔓延した洞穴――『奈落』。

そこに生息する『虫』は、一般的に想起される虫とは根本から異なるものばかりだ。

――いったい、誰がその正体不明の生き物を取り込もうと考え始めたのか。

🐛 三日三晩

――蛹が破れたとき、人の形を保っていられれば儀式は成功

『虫』を入れる儀は、十二歳を待つのが習わしだ。命懸けであるためだ。

体力気力が整わないうちに挑んでも、取り込もうとした『虫』に喰い殺される。

自分の体を巡る血の全てが毒となり、内臓を腐らせ、脳を焼いていくような感覚。

取り込んだ『虫』は蛹となり、器とするか喰らい尽くすかを三日三晩かけて決める。

――蛹が破れたとき、人の形を保っていられれば儀式は成功。

取り込む『虫』の数が多いほど戦士としての力は増すが、共食いの危険も高くなる。

一流の戦士たちは、最低でも三体。現在の族長は、八体を取り込んだ一族の英雄。

👶 生後数日

――そして、カフマ・イルルクスは三十二体の『虫』を取り込んだ怪物だった

――そして、カフマ・イルルクスは三十二体の『虫』を取り込んだ怪物だった。

十二の誕生日まで行われないはずの儀式だが、初めて取り込んだのは生後数日。

族長の兄であり、優秀な弟に劣り続けた男の狂気が、我が子へと向けられた。

存在が露見し、初めて隠れ家から外に出されたのが十二歳。

――同胞が儀式に臨む年、カフマは十三体の『虫』と共生する怪物だった。

まだ苦しみを知らない世代はカフマを遠巻きにし、羽化を認められた世代は恐れる。

――異端視される虫籠族、その中でさらに異端視される立場。

🌅 希望

――故郷を離れたのは希望だった

積極的に他者と交流し、族長である叔父から戦士の在り方を学んだ。

そして虫籠族の戦士として尊敬されるため、新たな『虫』を入れる儀へ挑んだ。

許しを得る前に『虫』を持ち出し、立ち合いなしで儀式に臨む。

――その無謀な行動力だけは父親から受け継いだと、後々になって自戒する。

十四体目の『虫』を取り込み、地獄の苦しみを乗り越えて、生還した。

だが、どれだけ努力を重ねても、同胞たちは一線を引き続けた。

『虫』との共生の難しさを知る彼らだからこそ、同じモノと思えなかった。

――故郷を離れたのは希望だった。

🦁 我らも怪物揃いだ

――『なに、そう考えすぎずとも、貴公と同じく、我らも怪物揃いだ!』

外の世界にあっても、非凡な実力は規格外で異端視されるもの。

――どこでも怪物だと、所詮は逃れられない命運だと、そう思いかけた。

『――上がってこい、カフマ三将! 共に閣下の御為に力を尽くそうぞ!』

――『なに、そう考えすぎずとも、貴公と同じく、我らも怪物揃いだ!』

怪物と恐れられたカフマ・イルルクスですら及ばぬ怪物が、ひしめき合っていた。

――怪物ではないと言われたかったのではない。孤独でありたくなかったのだ。

怪物であっても、世界はカフマを取り残さなかった。

📈 速く、強く

見くびったことを、謝罪される

カフマ

( •̀_•́ )

「見くびったことを謝罪する!」

際限なく溢れるように見える茨も、取り込んだ『虫』の一部なのだ。

――当然、傷付けられれば相応の反動がある。それを気力で抑え込んでいるだけ。

先ほどまでの攻防、それよりもさらに速く、威力が増している。

戦場で起こる戦力の変化は、ほとんど全てが力の低下だ。

カフマ「ましてや貴公は、その重傷だろう――っ」

火の魔石を呑み込んだ肉体は、今なおも赤々と燃え続けている。

――進行形で燃え続ける体で生きられる『虫』なんて、いるはずもなかった。

カフマ

( ゚д゚ )

「恐るべきは発想」

頭で考えていたら、魔石を呑み込んで体を燃やすなどとても実行できない。

😄 満喫している

急速に癒えていく規格外に、息を吐く

肩の骨が変形した『虫』の角が腹筋を貫き、体を城壁から弾き落とす。

――だが、その爪を突き立てた城壁を這い上がり、目の前で高々と跳躍していた。

赤い蒸気を噴いて傷が塞がる。急速に癒えていく規格外に、カフマは息を吐いた。

カフマ

(・_・)

「は」

それが笑みの衝動だと気付いて、カフマは自分の口に手を当てる。

カフマ「快い」

認めよう。――ガーフィール・ティンゼルとの戦いを、満喫している。

👁️ 割り込めやしねェ

背負っているものが、ここでは邪魔になる

勝利をもぎ取らなくてはならない。大義のため、皇帝閣下の御為、恩人に報いるため。

――虫籠族の地位向上を願っている同胞たちのため。

ガーフィール

(╬¬_¬)

「――てめェ、どこッ見てやがる」

ガーフィール

( •̀_•́ )

「俺様ァ、ここだ」

ガーフィール「この瞬間だけァ、他の何にも割り込めやッしねェ」

刹那、世界の色が遠ざかり、目の前の敵だけが世界の全部になる。

――なんと、無粋なことを言わせたのかと、カフマは己の行き届かなさを恥じた。

カフマ

(・・・・・・)

「――ああ、貴公と自分だけだ」

🌿 逃がさない

――外から壊せないなら、内側からと

掌に顔面を鷲掴みにされ、頭蓋骨が常外の握力に悲鳴を上げた。

だが、カフマも相手の口元に手を入れ、そこで茨を体内へと流し込む。

――外から壊せないなら、内側からと。

背中を城壁に埋められ、持ち上げられ、再び落とす。上げ、落とす。

全身が埋まった城壁にひび割れが生じ、星型の頂点の先端が二つに割れる。

――それでも、茨は力を失わず、体内へ流れ込み続ける。

吐き出し切ってしまえば、他の反乱軍を退ける有効打をみすみす手放すことになる。

――だが、ガーフィール・ティンゼルという怪物には、そうする価値があった。

カフマ

(>﹏<)

「あ、ああ、あああああ――っ!!」

🩸 蛮行

――ガーフィールの鋭い爪が、自らの腹部を横に引き裂いた

カフマ

( ゚д゚ )

「――な」

――ガーフィールの鋭い爪が、自らの腹部を横に引き裂いた。

その傷口から茨が溢れ出す。――死を間近に引き寄せる蛮行だった。

その傷口に茨が殺到すれば、体を二つに裂いて、決着だ。

だが、刹那の空白が、はち切れる寸前だった相手に一呼吸の猶予を与えた。

顎が閉じる。茨が引き千切られる音がして、大虎の大口が閉じた。

踏み込んだ拳が、銀色の手甲の硬い衝撃がカフマの顔面をぶち抜く。

――鉄壁と謳われた帝都ルプガナの城壁が崩壊を始める。

自ら引き裂いた腹の傷が、血の煙を噴きながら塞がっていく。

カフマ

(×Д×)

「……怪物め」

カフマ

(´;ω;`)

「閣下、申し訳ございません……」

――生まれたときから聞こえ続けた『虫』の声も、やけに静かに思えた。

✊ 俺様の勝ちだ

落ちていく体を、強引に掴んで逃れる

無防備に落ちていく男の体を強引に掴んで、瓦礫を蹴って崩落現場から逃れる。

ガーフィール「開けッてやったぜ、風穴」

ガーフィール

(;´Д`)

「あァ、クソ、痛ェ……ッけど」

ガーフィール

(・・・・・・)

「……強く、なってんのか、俺様ァ」

一枚、以前と比べて壁を破った。そしてそれを、この戦いで確かなものにしたと。

ガーフィール

(・∀・)

「――怪物ッなんて評価、そっくりそのまま返してやるよォ」

わずかに胸を上下させ、息のあるカフマ。

――エミリアは、自分たちの手で死んでしまう人を減らそうと言った。

そしてオットーも、足腰が立たなくなるまでぶちのめせ、と言った。

ガーフィール

( •̀_•́ )

「――俺様の、勝ちだ」

第七章89『カフマ・イルルクス』終了。