第七章87
『頂点決戦』
水晶宮の玉座と、星型城壁の頂点。二つの戦いが同時に進む。
🔢 数の理
兵数は倍以上。それでも決まらない理由
帝都ルプガナの周囲には多数の叛徒が集結し、兵力比で倍以上の兵数を集めた。
――大抵の場合において、戦いとは数で決まる。
「集まった叛徒らの目的は余の首で一致していようが、その手法に妥協の余地がない」
(・_・)
「思い出しますな、『選帝の儀』を」
「最大の派閥を作られたバルトロイ閣下はその人柄を警戒され、早々に除かれることに」
(╬¬_¬)
「よくも語る。その兄上を除いたのは、他ならぬ貴様とラミアであったろう」
「加えて、バルトロイ閣下の真の思惑を察せず、今も生き恥を晒している次第です」
🌟 道化
星は、眩く主張しないと見てもらえない
(・∀・)
「本物の閣下は今頃は壁の外なんですから、嫌味の矛先に迷ってしまう……」
(;´Д`)
「んん? お二人で揃って険しい目……ぼかぁ、余計なことを言ってしまいましたか?」
「貴様の重ねてきた無礼が帳消しになるわけではない」
(╬゚д゚)
「これまでのことが実を結べば、貴様は余が手ずから首を刎ねてやろう」
(´ー`)
「もちろん、承知しております。でも、あなたは慎重な方だ」
「本当の本当に寸前まで、ぼかぁ、命を取られないものと思っていますよ」
(;゚Д゚)
「ぼかぁ、宰相閣下の方が怖いなぁ。その内に、地獄を秘めていらっしゃいそうで」
「私奴のようなものを恐れるなどと、『星詠み』らしくもない」
「星は高い空から地上を見下ろすもので、眩く己を主張するものでないと見てもらえない」
👹 怪物
各部族が英雄を投入してくるのでは、と問われる
「それこそ各部族、自分のところの英雄を投入してくるのでは?」
「星は地上の眩い光であれば目に留めると。ならば……」
「この戦況を動かし得る綺羅星について、事前に貴様に詠み聞かせてもおかしくなかろう」
(・∀・)
「残念ながら、ぼかぁそうした話は聞いていませんね」
帝国各地の、在野の英雄など比べ物にならない。
地に眠れる獅子がいようものなら、ヴィンセントは決して見逃さなかった。
――その目に適わなかった時点で、英雄は怪物に劣るのだ。
「所詮、私奴もヴォラキアの人間ということです」
そう笑みも見せずに言い残し、老宰相が謁見の間から歩み出ていく。
🔥 身の証
存在意義でもある眼を、自ら焼き潰した
「時に、宰相閣下はご存知なんですか?」
その沈黙を受けて、ウビルクは「やっぱり」と頷いた。
(´・ω・`)
「まるで、ぼかぁ人間じゃないと言われたみたいで傷付きますよ」
(´;ω;`)
「……傷付きますねえ」
「ぼくだけを見て、『星詠み』が何たるか決めつけるなんて、なさらないと」
「自らの魔眼を潰すような蛮行、己の身の証を立てるためだけに起こせるものではあるまい」
(×Д×)
「ああ、あれは痛かった。喪失感も尋常じゃありませんでした」
「ですが、おかげで話を聞いてくださる気にはなったでしょう?」
魔眼族でありながら、自分の存在意義でもある魔眼を焼き潰す。
――止めなければ、四肢さえ潰したかもしれない。
🖐️ 掌の上
新たな囁きはないな、と確かめる
「貴様の耳に、新たな天命の囁きはない。相違ないな」
(・_・)
「――ええ。ぼかぁ、嘘は言いません。新たな天命は下っておりませんよ」
「あなたの作った盤面を、天の差配が崩すようなことはありません」
「どうされました?」
その、あえて言わずともな装飾が、皇帝に扮するものの胸に引っかかりを残していた。
🌿 森が丸ごと
空さえ飛んでいなければ、と歯噛みする
(╬゚Д゚)
「お、おおぉぉぉォォォ――ッ!!」
「確かに、多対一は自分の得意とするところだが――」
「しゃァらくせェッ!!」
手甲の強度と脚力を信用し、一直線に茨の嵐へ。
「その覚悟は見事だが、判断は過ちだ」
――誇張なしに、森が丸ごとぶつかってくるような圧力だ。
「だったら、こォだ!!」
叩き付けた靴裏を通じ、足場となる城壁の一部が隆起する。
――『地霊の加護』。大地の範囲は、加護者の解釈が大きく寄与する。
(╬゚д゚)
「空ッさえ飛んでなきゃァなァ!」
👊 間合い
速さではなく、緩急で崩しにくる
「ならば切り込む!」
翅が視認困難なほどの速度ではためき、真横に出現する。速さではなく、緩急だ。
「させッかよォ!」
跳ね上げた両腕を、黒い甲殻が覆っていた。
――茨に翅に肋骨、そして甲殻。いったい、何体の『虫』を入れているのか。
手の届く距離はガーフィールの間合い、ここで押し負けては話にならない。
「いかッせるかァ!」
背中の翅を強引に羽ばたかせ、体を浮かせたカフマの胸部が開く。
――突き出した肋骨の向こう、胸の内にある黄金色の『虫』と目が合った。
🐛 苗床
勇ましく眠れ、と送り出される
「貴公のような勇士の存在を知らずにいた。自分の不明を恥じるほどだ」
(・∀・)
「はんッ、知らねェのを責めやッしねェ。知られてッ方がおっかねェかんなァ」
「悪ィが、名前ッ以外は話すつもりァねェ。それもギリッギリだかんなァ」
(´ー`)
「このような状況下でなければ、貴公とは真っ向から渡り合い、語らいたかった」
一歩、踏み出そうとした膝の力が抜け、その場に膝をつく。
――何かが、自分の体の中を這い回っている。
「自分と至近で打ち合うなら、被弾は避けるべきだった」
茨で負った傷、そこに『虫』が管から卵を植え付けた。
「治癒魔法とは、癒し手でもあるのか。その多芸さには目を見張る。だが」
( •̀_•́ )
「貴公の技と力量、このカフマ・イルルクスが確かに胸に刻もう。――勇ましく眠れ」
頭蓋を打ち砕く衝撃に血飛沫が舞い、体が城壁の端で弾んで、落ちる。
📜 覚えておくこと
――『もしも、言葉の売り買いをしたなら――』
『いいですか、ガーフィール、よく覚えておいてください』
『迂闊に相手の挑発に乗って余計なことを言わないように』
『とは言っても、あなたのことですから、辛抱強さはそこまで期待しません』
『だから、これだけはしっかり覚えておくように』
――『もしも、言葉の売り買いをしたなら――』
落ちた先が、野っ原の上だったのが不幸中の幸いだった。
――土の上に落ちたおかげで、大地はガーフィールに味方した。
割れた頭は治癒魔法で治せる。だが、発動するには『虫』が邪魔で。
『虫』は攻撃ではないから、治癒魔法では取り除けなくて。
――だから、頭を使うのをやめる。元々割れた頭だ。頼りになるはずもない。
壁上の魔石砲、その中に装填された魔石を呑み込んで、腹の中で砕いた。
溜め込まれた灼熱のマナが内側で膨れ上がり、『虫』を焼く。
🔥 ぶっ潰す
――『その相手は必ず、足腰が立たなくなるまでぶちのめすこと!』
( ゚д゚ )
「――ッ、なんだ!?」
「――ガーフィール・ティンゼル」
落ちた城壁を再び這い上がった、肥大化した猛獣の姿。
――全身を燃え盛る炎で包んだ狂戦士が。
――『その相手は必ず、足腰が立たなくなるまでぶちのめすこと!』
(╬゚Д゚)
「ぶっ潰してやらァ――ッ!!」
「こい、ガーフィール・ティンゼル!!」
「ああああらぁぁぁぁァァァ――!!」
金色の虎の猛撃と、波濤の如き紫の茨が真正面から激突し、星型の頂点がひび割れる。
――動かし難い天墜を、帝国史に刻む亀裂の一矢であった。
第七章87『頂点決戦』終了。

ベルステツ
ウビルク
ガーフィール
カフマ