第七章86
『五つの頂点』
帝都ルプガナ、星型の城壁。その五つの頂点に、五人の怪物が立つ。
🧿 単眼族
――『巨眼』イズメイルは、単眼族の勇士であり、一族の希望だった
――『巨眼』イズメイルは、単眼族の勇士であり、一族の希望だった。
眼部を一つしか持たない単眼族は、生存力を大きく喪失する欠点と引き換えに、
その単一の眼球に多くの特異性を獲得した。
――遠方を望める視力、マナの濃度や熱源の視認、異常に優れた動体視力。
身の丈以上の戦斧を振るい、豪快に戦場を薙ぎ払う『巨眼』。
――しかし、時代は彼の成長を待たず、停滞と弛緩のぬるま湯へと突入した。
( •̀_•́ )
「戦う機会さえあれば――」
東の地から始まった反乱の灯火が、戦う機会を奪われた彼を戦場へ誘った。
――黒い髪の男児を用意することが、この大乱の参加資格だった。
🪓 一閃
越えられないはずの障壁を、容易く踏破する
外の民にとっては決して乗り越えられない絶対の障壁を、容易く踏破する。
放たれた巨大な刃が音もなく空を薙いで、兵の上半身が五つ同時に消し飛んだ。
(╬゚д゚)
「帝国の兵が、何たる無様!」
眼を瞬きさせ、見える世界を切り替える。生き物の感情が、色として見える。
強い戦意は赤く、不安は黄色く、怯えは青く。
(╬゚Д゚)
「臆病者は消え去れ!」
「なんだ、これは。ここは帝都、ヴォラキア帝国の皇帝閣下の膝元だろう!」
「こんな弱卒を虐げ、それで手に入るような安っぽい栄誉ではない!」
⛓️ 恩赦
壁の上にいるのが、誰なのかに気づく
「殺さないで! 死にたく、死にたくねえ!」
(・_・)
「――。もうやめろ。これ以上、生き恥を晒すな」
「貴様も戦士なら、せめて最後は相応しく――」
「ちが、違う! 戦士じゃ、兵士じゃない!」
( ゚д゚ )
「なに?」
――「着させられたんだ! これ着て、弓持って戦え!」
「恩赦がある! 釈放するって、牢の外に出られるって……」
帝都に攻め上がる途中、矛を交えた守備隊の兵たちの方がまだ善戦した。
――彼らは正規兵ではなく、装備を与えられただけの罪人だというのか。
だとしたら、それは何のために――
今、壁上にいるのは、自分たち戦士と、戦わされる罪人たちだけ。
🔥 消えて
聞こえるはずのない声が、届いてくる
本来なら聞こえるはずのない声量。――力あるものはその声にすら力が宿る。
脚部を炎と化しながら浮かんだ褐色の肌の女が、赤い瞳をこちらに向けている。
(×Д×)
「お、おお、おおおお――っ!!」
全身全霊の一発――それを撃ち込まなくては勝てない相手と、全身の細胞が叫んだ。
(・・・・・・)
「消えて」
女の一声に続いて、視界を白く埋め尽くす光が世界を覆った。
💨 目くらまし
涙で洗い流そうと、眼を閉じた瞬間
とっさに戦斧を盾にして、押し寄せる炎から我が身を守った。
――かろうじて命を拾えたのは自分だけだろうと、イズメイルは理解する。
(・_・)
「――なんだ、生き残りが出るのか。運のいい……いや、悪いか?」
「き、さまが、皆を……」
(;´Д`)
「馬鹿言え、焼いたのは俺じゃない。こんな大それたこと俺にできるかよ」
「できる化け物がやった。恨むならそっちを恨め」
単眼の視界を切り替え、男を見通そうと眼を凝らす。――そして愕然とした。
一網打尽にしておきながら、青い。この男は戦士ですらない。臆病者でもない。
――もっと、おぞましい何かだ。
(╬゚д゚)
「生かしては、おけん――!」
「生かしておけないのは同意見だ。それと、前々から思ってたんだが」
腰から下げた小さな包みが空中で開き、黒い粉をぶちまける。
涙を分泌して洗い流そうと、眼を閉じたその瞬間――
魔石砲の砲弾が直撃し、その『巨眼』ごと吹き飛ばしてしまっていた。
🎯 一番槍
足止めさせて、まとめて焼く単純な作戦
敵の先鋒を城壁へ上らせ、死んでも構わない相手に足止めさせる。
――あとは相手方ごと、大火力でこんがり一掃する単純な作戦だ。
「大抵の場合、一番槍ってのは自信のある奴が務めるからな」
(¬_¬)
「さて、相手の出足は潰してやったが、どう出る?」
帝国各地から集まった荒くれ部族たちの博覧会だ。
「相手がどれだけ妙な部族を揃えても、大した影響があるとは思えん。なにせ……」
⭐ 五つの頂点
――五つの頂点に五人の怪物
――紫色の茨が荒れ狂い、押し寄せる人馬人の大軍を薙ぎ払う。
――巨大すぎる飛翼刃が空を切り裂き、体の一部を武器とする刃金人を噛み砕く。
――大地から生える石塊の人形の拳が、飛べぬ翼を生やした翼人を打ち倒す。
――殺戮の技を極めた異常者集団が、額に石を埋め込む光人を鏖殺する。
――大自然と我が身を一体にし、呼吸同然に単眼族を真っ赤な炎が焼き尽くす。
(・∀・)
「化け物具合なら、こっちもいい勝負だ」
――五つの頂点に五人の怪物。
「少なくとも、俺ならやれって言われても絶対に御免だ。とはいえ……」
――近付けないための方策、殺すための方策、殺し損ねたときの方策、逃げる方策。
(;´Д`)
「そのせいで、帝都に戻れたってのにカチュアと会えてない」
(╬¬_¬)
「いい加減にしろ、戦いたがりの異常者共め」
🌿 力不足だ
間に合わせた、と守りに就く
体内が脈動し、腕から凄まじい勢いで紫色の茨が放出される。
上半身が人、下半身が馬の人馬人の群れの足下を薙ぎ払い、胴体を貫く。
馬の脚力と勢いが上半身へ伝い、投げつけられる投槍の威力は魔石砲に見劣りしない。
( •̀_•́ )
「自分の守護する頂点を選んだのが、貴公らの不運だ」
痛みと共に骨が軋む音がして、軽鎧を纏った胸部が内側から裂ける。
外に向かって開いた白い肋骨が、震えながら鋭い先端を眼下へ向けた。
――直後、射線上がごっそりと抉れ、人馬人たちをまとめて呑み込み、消滅させる。
「……だが、間に合わせた。自分のいる限り、この帝都の守護は抜かせん」
🙇 治世
疎まれるばかりの一族が、その世で生きてきた
「閣下の、その手腕がもたらした安寧を容易く踏み躙る叛徒たちめ」
一人の、希少で疎まれるばかりの虫籠族の男として、その作った世で生きてきた。
――何故、ヴィンセント・ヴォラキアが刃を向けられなくてはならない。
この帝国の在り方を変え続けている男と、それに匹敵する覇業が他者に為せるものか。
🐯 大一番
農地を蹴って、城壁へ飛び上がった影がある
「――そりゃァ、大した覚悟じゃァねェか。嫌いじゃァねェよ」
茨も、白い砲撃も回避して、農地を蹴って城壁へと飛び上がった人影。
――端的に言って、強敵だった。
( •̀_•́ )
「ヴォラキア帝国二将、カフマ・イルルクスだ」
羽織ったマントを内側から破って、六枚の透明な翅が飛び出した。
(・∀・)
「――ガーフィール」
(・∀・)
「――本当は名乗るなって言われッてんだが、しょうがねェときってのがあらァ」
――開戦初日にして訪れた大一番と、帝国二将最強の男は見誤らなかった。
第七章86『五つの頂点』終了。
イズメイル
「――まとめて焼く」
トッド
ガーフィール