リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章76

『帝都にて邂逅す』

帝都の屋敷。軟禁されたレムは車椅子の女性と出会い、フロップは偽皇帝と向き合う。

🏛️ 自由と不自由

――軟禁といっても、レムの置かれた状況は比較的自由の多い立場だ

――軟禁といっても、レムの置かれた状況は比較的自由の多い立場だ。

狭い部屋に閉じ込められることも、過剰な暴力や暴言に晒されることもない。

食事は毎食用意され、湯浴みの時間も提案される。

――ある意味、シュドラクの集落での暮らしよりも住みよいのは間違いなかった。

ただし、行動は屋敷の主――ベルステツ・フォンダルフォンの私兵に見張られている。

クーナやホーリィには力不足を味わわせてしまっただろう。

――ルイやミディアム、そしてナツキ・スバルという少年は。

🛞 せーのっ

声を上げれば済むのに、それをしない人がいる

濃い発色をした癖のある茶髪を、頭の左右で二つに分けた色白な女性。

車輪の片方が通路の隅の溝に引っかかり、立ち往生している。

何度も懸命に車輪を回そうとするが、細い腕では必要な力が入らない。

声を上げれば誰かが駆け付けるだろうが、彼女はそれをしなかった。

――誰かに頼るのを良しとしない。そんな頑なさに、親近感めいたものを覚える。

レム「――お手伝いしますね」

レム

( •̀_•́ )

「せーのっ」

カチュア

(╬¬_¬)

「……余計な真似、しないで」

カチュア

「大体、そっちも杖ついてるくせに何なの?」

レム

(´・ω・`)

「ええと……ご心配、ありがとうございます」

カチュア

(╬゚д゚)

「心配とかじゃない! 耳が腐ってるんじゃないの?」

口調は刺々しいが、微妙に言い慣れていない雰囲気が漂っている。

――嫌味にしては、傷付ける才能に欠けていた。

🤝 人質

見ない顔だ、と警戒される

カチュア

(¬_¬)

「……見ない顔で、見かけない雰囲気ね。あんた、誰なの」

レム

「――。レムと言います。事情があって、こちらの屋敷に誘拐されてきました」

カチュア「――カチュア」

カチュア

( ゚д゚ )

「誘拐ってことは、あんたも人質ってこと?」

レム

「あまり私にそういう役目を求めるのが適切とは思えませんけど……」

レムがいなくなったことで気を激しく揉むのは、スバルくらいだろう。

レムの存在が大局を左右するとしたら、それはスバルが大局を左右するときぐらい。

レム

「あの人に、そこまでのことなんて」

力不足の中で不条理に苛まれ、懸命に抗い続ける姿を何度も見せられた。

何もかも自分でやらなくちゃいけないと、背負い込み続ける彼の姿を。

――レムは、それがどうにも耐え難かった。

🫤 取り換えの利く道具

自分を騙すためだけに、つかれた嘘

レム

「ベルステツさんの娘さんやお孫さん、とか?」

カチュア

「ベルステツ様は独り身で、ご家族はいらっしゃらないはずよ」

世継ぎを作らない皇帝への不信感を叛意の理由に挙げた、その本人が家族を作らない。

――なんだか腑に落ちない。

レム

「カチュアさんを人質に取られて、ご家族はさぞ心配されているでしょうね」

カチュア「あいつからすれば、私なんて取り換えの利く道具かもしれない」

カチュア

(´・ω・`)

「じ、邪魔になったら、それこそすぐに手放しても」

――それは、他ならぬレムと同じような色合いの頑なさだ。

過剰な期待や信頼を、その相手に抱きたくないからつかれた嘘。

誰かをではなく、明確に『自分』を騙すための嘘だった。

🚶 押しどころ

足踏みしたままでいない、と決めている

レム「カチュアさん、もう少しお話しませんか?」

カチュア

(>﹏<)

「な、何よ……そんな勝手なことして、宰相様に……」

レム

「もしも怒られても、そのときは私が無理やり押し掛けたんだと言ってください」

カチュア

(;´Д`)

「実際、そうじゃない……あ、ちょっと!」

車椅子を押すついでに、レム自身も相手の体を支えにできる。

これなら杖なしでも転ばないで済むし、案外悪くない立ち位置だ。

レム

「カチュアさんのお部屋はどちらなんですか? 私の部屋は西側ですけど」

カチュア

「……は、反対の東側」

レム

( •̀_•́ )

「――私は、知らなくちゃいけないことがたくさんある」

『――誰しも、自分からは逃れられぬ。努々、妾の言葉を忘れず、精進せよ』

無力な自分を否定するよりもやるべきことがある。

――そう明瞭に言ってくれた人の言葉を実践し、足踏みしたままでいないために。

🛏️ 寝たきり

傷が治ると、こちらの居場所が危うくなる

フロップ「こう何日も寝たきりで過ごすというのは、商人の立場としては焦りを覚えてしまうな」

その日の働きが、行商予定が稼ぎに直結する行商人だ。

――自分が囚われの立場でいると知れば、妹がどんな反応をするだろうかと。

フロップの傷が完治してしまうと、レムの身の置き所が途端に不安になる。

フロップ

「それこそ、君の考えやご機嫌次第と言えるんじゃないかな、マデリン嬢」

幼く見える彼女の腕力は途轍もなく、その爪でフロップを引き裂くことは容易い。

それでも彼女を丸め込むような真似をしたくないのは、ひとえに――

――彼女が純粋に、よく知る『身内』のことを大切に想ってくれているから。

👤 偽皇帝くん

一度聞いた声を、この人は忘れない

ヴィンセント

「――興味深い話題ではあるが、今すべき話ではないな」

一度聞いた声をフロップは忘れない。なので、その声も間違いようがなかった。

――ただし、そのときの心情は、とても複雑を極めるものだった。

フロップ「村長くん……いや、皇帝閣下くんというべきか」

ヴィンセント

「言い直してそれか? いずれであれ、不敬な呼び名に代わりはないな」

フロップ

( ゚д゚ )

「勉強不足で甚だ恥ずかしいけれど、本当によく似せているのだね」

フロップ

「僕も旦那くんを手伝って、よく村長くんの化粧をさせてもらっていたものだけど」

フロップ

「そのときの素顔と瓜二つだ」

ヴィンセント

「――。城郭都市の件は耳に入っているが、貴様も企ての関係者か。度し難い、暴挙だ」

フロップ

(・∀・)

「そうかな? 楽しい試みだった。何しろ、犠牲者が出ない」

ヴィンセント

(¬_¬)

「結果論だな」

❓ 何故

解せないことを、正面から並べる

フロップ

「タリッタ嬢もクーナ嬢も、僕もそうだ。――だからこそ、解せない」

フロップ

「彼が、どうして帝位を追放され、ああした立場に置かれたのか」

フロップ「何故、君たちは盤石な帝国を揺るがしてまで、事を起こさなくてはならなかったのか」

ヴィンセント

(╬¬_¬)

「――。よくよく、口の回る男よな」

フロップ

「それが商売道具なんだ。商人なものでね」

フロップ

(・∀・)

「あとは妹からもよく褒められるんだが、なかなか美形らしい。それも商売道具だ」

伸ばした手でこちらの顔を掴み、引き寄せる。

ヴィンセント

(╬゚Д゚)

「その顔と口、不敬の贖いにこの場で奪ってやってもいい」

フロップ

「……口に気を付けろという意味なら、声を奪う方が理に適っているかもしれないね」

ヴィンセント

「脅しの類には屈さず、命を懸けるのも躊躇わぬと聞く」

ヴィンセント

「ベルステツの言う通り、貴様はどうやら厄介な災いの種であるらしい」

フロップ

(≧▽≦)

「さあ、どうしてみる、偽皇帝くん。僕はとても扱いづらいぞぅ!」

ヴィンセント

「貴様と共に連れてこられた癒者の娘がいると聞く」

フロップ

(×Д×)

「完封されてしまった!」

🗺️ 選べる

何をしにこの部屋に来たのか、を尋ねる

フロップ

「偽皇帝くん、君は何をしにこの部屋に?」

フロップ

「もしや、皇帝閣下くんがどんな様子だったのか、僕から聞きたかったとかかい?」

ヴィンセント

「――。だとしても、見当違いだ」

ヴィンセント

(・・・・・・)

「あのものがどうしているかはこの目で見た。言葉も交わした上でだ」

つまり、ヴィンセントはフロップに話を聞きにきたわけではない。

――だとしたら、思いつく可能性は一つだけ。

フロップ

「話しておきたいことがあったから、かな?」

帝位簒奪が完全に成れば、アベルは帝国だけでなく、この世界からも追われる。

――それが、自分の望みなのだろうか。

大事な『身内』であった彼の死に関わった人物が、全てを失うことが。

『お前らは、なんだって選べるんだよ』

何も知らないまま流されるより、何かを知って歩き出すのを選びたい。

フロップ「聞かせてもらえないだろうか、偽皇帝くん。君が、何を語りにきたのかを」

🌑 滅びの理

見知った男とは、わずかに違う歪み方をする

その問いかけにヴィンセントは、見知った男とわずかに印象の異なる歪みを口の端に湛えた。

アベル「――『大災』、それがもたらす滅びの理について、だ」

第七章76『帝都にて邂逅す』終了。