リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章73

『ヴァイツ・ログン』

全身の刺青は、近付いてはいけない危険の証。――そして彼は、前に出た。

⚒️ 人並み

――ヴァイツ・ログンは、自分が真っ当な生き死にをできるとは思っていない

――ヴァイツ・ログンは、自分が真っ当な生き死にをできるとは思っていない。

人並みというのは、普通や平凡という意味で使われる。

――でもそんなのは、人以下の存在からすれば、雲の上の基準だ。

鉄血都市『グララシア』。日夜、他人を傷付けるための武具が鍛えられるイカれた街。

物心ついた頃には親はなく、工房で雑用を押し付けられる立場だった。

拘りも関心もなく、鋼を鍛える職人を横目に黙々と仕事をする。

――生まれたときから一人だったのだから、死ぬときも一人で当然だろうと。

🖋️ 冤罪

――最初に入れられた刺青は、一目で罪人を見分けるための刑罰の証だ

工房で資材の横流しが疑われたとき、真っ先に目を向けられたのがヴァイツだった。

一人で行動することが多く、庇ってくれる関係性の相手も皆無。

――かけられた疑いを晴らす手段は、なかった。

――最初に入れられた刺青は、一目で罪人を見分けるための刑罰の証だ。

熱気に包まれる都市で袖の長い服を着る者はいない。刺青は常に剥き出しだ。

真っ当な工房の仕事はできなくなり、日銭を稼ぐために盗みに手を染めた。

――要するに、罪はあとから追いついてきた。

ヴァイツ

( •̀_•́ )

「オレがおぞましいものなら、それでいい……」

腕だけだった刺青を、肩に胸に、自分の手で大きく入れていく。足に、顔に、頭に。

腕の刺青は罪人の証、だが、全身の刺青は近付いてはいけない危険の証だ。

⛓️ 犯罪奴隷

この島へ送られることになった、その経緯

「――止まれ、罪人が! タダで済むと思うな!」

足下に倒れているのは、あの日、冤罪を被せた犯人だと酒の席で漏らした男。

口に含んだ耳を吐き捨てて、ヴァイツは衛兵に捕らえられた。

決まった処遇は、犯罪奴隷として悪名高き剣奴孤島へ送られること。

逆らう気力もなく受け入れた。抗う意思もなく、湖を渡った。

――どうあろうと構わない。死ぬつもりは毛頭ない。

スバル「――ヴァイツ! 剣を取れ! お前が頼りだ!!」

――『人並み』の、人間として、扱われたかった。

🛡️ 庇え

飛んできたものを見た瞬間、突き飛ばす

ヴァイツ「庇え……!」

蹴られた看守の頭が飛んでくるのを見た瞬間、シュバルツをタンザに突き飛ばした。

――体は弱いが、心が強いシュバルツ。彼なら、タンザをうまく使えるだろう。

一瞬で味方の首を刎ね、蹴り飛ばして思考を止める策。だが、それだけとは思えない。

――事実、ヴァイツ以外の四人の判断は一拍遅れたが、ヴァイツは動けた。

通路の壁をぶち壊しながら、黒い怪鳥――剣闘獣が突っ込んできた。

その嘴が貫くのは、床に転がった看守の頭だ。

💪 耐えたぞ

見せかけではない、本物の脅威と向き合う

シュバルツの素性を聞いても、ひれ伏すどころか殺意を高めた男――危険だ。

ヴァイツの、刺青で作った見せかけの危なさと違う、本物の脅威。

最初に刺青を入れられ、この地に流れ着く切っ掛けになった左腕を上げる。

縦ではなく、横にした腕を斧の刃に合わせた。肘の骨が砕け、肩まで押し潰される。

ヴァイツ「耐えたぞ……っ」

待ち構えるのではなく、踏み込んだことで斧の威力がわずかに弱まった。

――度胸と判断力が合わさったのは、自分以上に無鉄砲な子どもと出会った結果だ。

トッド

「耐えてないぞ」

残った右腕で取り押さえようとした瞬間、男の姿が消えた。

――否、消えたのではなく、見えなくなったのだ。視界の右側が、急に潰れたみたいに。

🥲 信じると言った奴

四人の無事に安堵する自分に、少し驚く

崩れかけの通路の上に四人が見えた。全員、怪鳥の横槍は免れたらしい。

――そのことに安堵する自分に、ヴァイツは少し驚いた。

壊れた左腕が痛い。何故か、顔の右側も痛くなってきた。

ヴァイツ

(・・・・・・)

「初めてだった……」

スバル

(>﹏<)

「ヴァイツ……!」

ヴァイツ「オレを、信じると、そう言った奴は……」

呟いて、胸の内につかえるものが、それだったのだと理解した。

理解して、膝から力が抜けて、その場に倒れて。

――なんだかやけに、いい気分だった。

🕳️ 落ちた

駆け寄ろうとする手を、細い指が止める

駆け寄ろうとするのを、伸びてくる細い指に止められる。

振り返ったスバルに、キモノ姿の少女は涙目で首を横に振った。

耳を引き裂くような鳴き声。倒れたヴァイツの頭上で、通路の天井が押し潰される。

落ちてくる天井の下にいるヴァイツを呑み込み、床が抜ける。

スバル「ヴァイツ――っ!!」

トッド

「二匹目が落っこちたのは運がよかったな。魔獣は殺すのも一苦労だ」

トッド

(・_・)

「――魔獣ってのは、角を折った奴の死体を食うんだよ」

トッド

「命令されてる間、さぞ鬱憤が溜まるんだろうな。そいつが死ぬと、腹いせに食う」

首を蹴り飛ばして、大鳥がそれを狙うのにスバルたちを巻き込もうとした。

――でも、そうはならなかった。何故なら、何故なら。

スバル

(×Д×)

「ヴァイツが」

トッド

(¬_¬)

「あんな見た目で仲間想いの奴だったな。――だから死んだ」

🧠 心を砕く

何も教えずに殺す流儀を、なぜ曲げたのか

何も聞かせず、知らせず、教えないで殺すのがトッドの流儀。

――それなのに、どうしてぺらぺらと、今は話を聞かせたのか。

聞かせて、わからせて、スバルの頭を次の疑問に向かわせるためだ。

看守と魔獣の関連性が解決してしまえば、思考は次に、ヴァイツのことに向かう。

トッド「ようやく、ガキっぽい顔になったな」

得体の知れない敵から、血の通った人間にするための、心を砕く手順。

💔 三人

大声で虚を作り、そこへ刃を差し込む

タンザ

(;゚Д゚)

「シュバルツ様――!」

トッド

「やることちぐはぐだぞ、お前さん」

しゃがんだトッドが股下に腕を差し込み、小さい体を真横に放り投げる。

トッド

「遊んでこい」

――大鳥が壊して、外と繋がっている壁の大穴へと。

イドラ

( ゚д゚ )

「皇帝閣下の御子だぞ!? 正気なのか!?」

その訴えに対するトッドの答えはシンプルだった。――ただ無言で、斧を振った。

トッド

「目の前で消えてどうすんだ」

目が合って、身じろぎした途端に擬態が乱れる。そこに赤い絵の具が加わった。

イドラ

(>﹏<)

「け、決闘だ……っ」

イドラ

「君も、戦士なら――」

トッド

(・∀・)

「わ!」

大きな声で叫んで虚を突き、その生まれた虚に刃を差し込む。

トッド「戦士じゃなくて、兵士だ」

👃 似た臭い

本当に皇帝の子どもなのか、と直接聞かれる

トッド

「実際のところ、どうなんだ? お前さん、本当に皇帝閣下の子どもなのか?」

スバル

(´・ω・`)

「なんで、投降とか、しない? 俺が、皇帝の……」

トッド

「投降なんてして、適当に理由付けて殺されちゃ敵わん」

トッド

「事の真偽は、こっちが有利な状況にしてから聞いた方がいい」

トッド

(´ー`)

「判断に思考を割けるし、間違いもしづらい。――それと、安心できる」

トッド

「ナツキ・シュバルツ、それは俺が知ってる怖い奴の名前に似ててな」

スバル

「瘴気が、わかるのか?」

トッド

(・∀・)

「瘴気? ああ、いや、違う違う。本当に臭い、体臭だよ」

トッド「――お前さん、兄貴かなんかいないか?」

トッド

「もしもいるなら、そいつとの交渉材料にお前さんを生かしておいてやってもいい」

手足の伸びたスバルを、縮んだスバルの兄弟だと思っている。

――トッドの中に『殺さない』という選択肢が生まれたなら。

スバル

( ゚д゚ )

「……に、兄ちゃんのことを、知ってるのか?」

🥶 操ろうとしたな

言葉を並べようとした口を、待てと止められる

口を開いて、この場を乗り切る言葉を並べようとしたスバル。

トッド

「――待て」

伸びてくる掌に顔を掴まれ、指の隙間から彼の目が見えた。

トッド「――お前さん、俺を操ろうとしたな?」

どん、と鈍い音がして、鋭い感覚が胸の中に滑り込んでくる。

スバル

(×Д×)

「ぎゃ、ぎぃぃっ」

トッド

(;´Д`)

「失敗失敗、油断も隙もあったもんじゃない」

咳込んで、口の中から赤くなった包みが落ちた。――もう関係ない。使えない。

死んで、死んではいけない。死んだらマズい。死んだら、死んじゃ、ダメで。

トッド

「動くなよ」

スバル

(´;ω;`)

「し、んじゃ、ダメ……」

トッド

(╬゚Д゚)

「せーのっ」

🚫 救えない人

――絶対に救えない人が出てしまったとき、ナツキ・スバルの『心』が壊れる

割れてない頭、痛くない胸、死んでない命が、そこにあって。

それを確かめたスバルが、安堵の息を吐いて、その顔を上げたところに――

ゆっくりと、こちらに振り返っている刺青だらけの男がいた。

左腕が斧でぐしゃぐしゃになり、右目をナイフで突き刺された、ヴァイツが。

ヴァイツ

「初めてだった……」

ヴァイツ

「オレを、信じると、そう言った奴は……」

スバル

(╬゚Д゚)

「ああああああ――ッ!!」

手を伸ばしても、何をしても、もう絶対に助からない、ヴァイツの体が。

――後ろ倒しになり続ける、『死』からやり直される開始地点。

――絶対に救えない人が出てしまったとき、ナツキ・スバルの『心』が壊れるから。

第七章73『ヴァイツ・ログン』終了。