第七章66
『ヒアイン・ヤッツ』
跳ね橋を渡ってきたのは、ヒアインを囮にして逃げた仲間たちだった。
👏 いい度胸だった
島での暮らしは、そう悪いものではない
――剣奴孤島での生活は、そう悪いものではなかった。
『スパルカ』での戦いぶりは、剣奴たちにも好評だったらしい。
「どう見てもひょろひょろのガキなのに、いい度胸だった」
「僕は僕として生きているだけなので周りの方にどう思われようとといったところ」
――自分を曲げない意志と、それを貫き通せる力量。
それが、傍若無人な自我を肯定させている。
(・_・)
「だが、それで嫌われるのはいい傾向とは言えない」
「『合』がそうであるように、私たちは一人では島を生き抜けないのだから」
(╬¬_¬)
「薄気味悪いガキなら、もうこっちは二人で十分って話だぜ」
⏳ 悠長
楽しく過ごしているように見える、と刺される
「この数日、シュバルツ様は剣奴の皆様と楽しく過ごされていらっしゃるようですが」
「私は、ヨルナ様の下へお戻りしなくては」
――右目に触れる仕草。ヨルナの寵愛が残っている証だ。
ライオンの首を一息で刎ねたのも、彼女本来の実力ではない。
「でも、焦りすぎてもダメだ。闇雲に足掻いても欲しいものは手に入らない」
(>﹏<)
「ですが! シュバルツ様のように悠長にしていられません!」
( •̀_•́ )
「それは大間違いだ、タンザ。俺も、絶対に、帰らなきゃいけないんだ」
「それでも、たぶん俺の方が頭の使い方がうまいと思う」
🧱 跳ね橋と呪則
島を出るための障害を、二つに整理する
「――この島を出るために、俺たちの壁になるのが二個」
「その一個が、島と向こう岸を繋げてるのが跳ね橋ってこと」
「二つ目は言うまでもなく、呪則だよ。グスタフさんが剣奴全員にかけてるってやつ」
(・・・・・・)
「何が怖いって、詳しいルールがわからないことだよ」
「絶対やっちゃいけないことは明言してくれてますし安心ですよね」
「看守に逆らうなとか、剣奴同士で死合い以外の揉め事禁止とか、勝手に逃げるなとか」
「――やはり、最後が問題ですね」
「年に一度の御前死合いでの褒賞なんてのが有名ですね」
「観客の方が大金を払って召し上げるって方法もあるとか」
☁️ 晴れない曇り空
跳ね橋が上がり、新しい到着がある
(≧▽≦)
「――バッスー! 跳ね橋が上がりますよ! 新しい方々のご到着です!」
「シュバルツじゃねえか。なんでここにいやがる」
(・∀・)
「お、ヒアインもきてたんだ。冷やかし?」
(╬゚д゚)
「冷やかしなわけあるか! ……次の生贄がくるって聞いて、それで」
剣奴孤島の周辺は、年がら年中曇り空だという。
――空模様からして、人の気持ちを暗くする場所である。
「意外だ。セッシーは晴れの日大好きなのかと……」
「でも、雷光って名乗ってるんだから、雲があっても気にしないのか」
「なるほど、気にしたことありませんでしたが言われてみれば」
🌉 上がる橋
――上がった跳ね橋を下ろすのではなく、沈めた跳ね橋を『上げる』のだ
最初は、どこかで歯車が動く音が聞こえた。
――そして、湖中に深々と沈んでいた跳ね橋が姿を見せる。
――上がった跳ね橋を下ろすのではなく、沈めた跳ね橋を『上げる』のだ。
分割された橋が水平に持ち上がり、連結して一つになる。
大量の水を排水しながら、剣奴孤島を一時だけ孤立から解き放つ。
「あの橋を動かしてるのは……」
「跳ね橋を制御している塔がありますからその中で操作ですかね」
「向こう岸まで一キロちょっと、二キロないくらいか……?」
😖 あの、馬鹿共
馬車から下ろされた顔に、見覚えがあった
黒い疾風馬が引く馬車が跳ね橋を渡り終え、中の人たちが下ろされる。
(゚Д゚ ;)
「あ――っ!?」
――連れてこられたのはみんな、ヒアインと同じ蜥蜴人。
(¬_¬)
「……俺を囮にしてまで、逃げたくせに」
「ヒアインを囮にした奴らか」
🎭 端役
いい気味だ、と言った口を止められる
(╬゚д゚)
「い、いい気味だぜ! 人をダシにするからてめえも馬鹿を見る羽目になんだ!」
「ただただ凡庸なやられ役の発言だなぁと思いましてビックリと同時に感心を」
「名ありの人物はそれに相応しい言動をし、そうでないものは愚かしさに見合った言動をする」
「弱い人は弱そうなことを言い! 強い人は強そうなことを言う!」
「何故皆さんこぞって自分から端役へ下ろうとするのか」
「みんな自分の人生を生き抜く必要のある役者でしょうに」
🍚 分けてもらった食い物
仲間だったんじゃないのか、と食い下がる
「下の人たちは? 仲間だったんじゃないのかよ」
「あいつらは俺を囮にして、そのあともヘマしたんだよ!」
「――でも、崖下に鞄を落としたとき、食い物を分けてもらったんだろ?」
(゚д゚ )
「あ」
「野盗から逃げるのに手を引いてもらったり、火が起こせなかったときに代わりに……」
――極限状態で人間の本性が出る、なんて話がある。
だったら、『スパルカ』で彼らがやってしまったことが本性だとでもいうのか。
臆病で卑怯で詐欺師で、それがその人の全部だと決めつけるのか。
「話してみたら、違う話が聞けるかもしれない」
(;´Д`)
「……薄気味悪いガキだ。何でもかんでも知ったような口ききやがって」
「あいつらに『スパルカ』は越えられねえよ。だから、もう無理だ」
🌱 割り切れない
それは茨の道だ、と釘を刺される
「――バッスー、それは茨の道というやつですよ」
「もしそうでないのに分不相応を望めば――ただ死あるのみ、ですよ」
「運命は変えられないと、目の前にあるものを至極当然と受け入れる」
「自らの道は自らで切り開く他にないと割り切るのです」
「それが、セッシーが人を助けない理由?」
(・・・・・・)
「永遠に力は借りられませんよ。人はいずれ死ぬ。僕ですら不死ではない」
――意図はわかる。理屈も、わからないではない。
でもそれは、強くて問題を斬り拓ける人だから言えてしまう理屈だ。
「セッシーは割り切れっていうけど、この割り切れない気持ちが大事なんだよ」
( •̀_•́ )
「これを、青臭いガキのワガママだって言われても、そうなんだ」
(≧∀≦)
「あはっ」
(≧▽≦)
「その意気込みまさしく運命の反逆者!」
💪 最強の援軍
頼んでおいたものが、できあがっている
「ヌル爺さん! ――頼んでたもの、できてる?」
――次の『スパルカ』。剣闘獣は、翼を生やした巨大な鼠だった。
違うのは見た目だけで、獰猛さや危険さに大きな違いはない。
――臆病者のくせに、気が逸って噛みついて、それが理由で問題を招いて。
それでもギリギリまで、仲間たちは見捨てようとはしなかった。
(´;ω;`)
「てめえが一番どうしようもないなんてこと、わかってんだよ……」
――会場の、観客席にいる大勢の剣奴たちが、驚きにどよめきを起こす。
五人の蜥蜴人の傍には、いるはずのない六人目の人影がいて。
(゚Д゚ ;)
「な、な、な、何してやがるんだ、シュバルツ――!?」
第七章66『ヒアイン・ヤッツ』終了。
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