第七章64
『魔法の言葉』
縮んだのは体と、頭の中身。――だが、それは『神童』だった頃へ戻ることでもあった。
🌀 オドの容れ物
肉体を後退させる、その理屈
――他者のオドへ干渉し、肉体の成長を著しく後退させるシノビの秘法。
生物とはいずれも、オドの容れ物に過ぎない。
ならば、オドの形を変えれば、容れ物の形も自由に変えられる。
(・∀・)
「けどあれ、結果と影響がだいぶズレてて面白ぇじゃろ」
「ワシもてっきり縮むだけかと思ってたんじゃが、頭の中身までそっくり若返りやがんの」
「実際、体だけじゃなく頭の中身も縮んでくれた方が殺しやすいんじゃし、至れり尽くせり」
「――けど、もしもの話よ」
(¬_¬)
「もしも、体も頭も小せえときの方が万全って奴がいたら、どうなると思う?」
「歳喰うってのはあれこれ諦めやら妥協やらが身につくってことじゃぜ」
(・・・・・・)
「もしも、そんな奴からそういうもんが消えたらどうよ?」
🔥 うるさい、馬鹿
――怒りが、沸々と込み上げる怒りが、スバルの魂を熱くする
――怒りが、沸々と込み上げる怒りが、スバルの魂を熱くする。
「クソ、チクショウ、なんで俺がこんな目に……!」
うるさい、馬鹿。そんな泣き言、誰も耳を貸してくれないんだ。
「言ったろう。私は戦士だったんだ」
うるさい、馬鹿。それが嘘っぱちなのは、もうバレてるんだ。
「言ったはずだ。他人に命を預ける気はない……」
うるさい、馬鹿。そうやって一人で乗り切れるもんか。もっと周りを見ろ。
( •̀_•́ )
「ヴァイツ、受け取れ! 剣を持ってる奴が狙われる!」
(>﹏<)
「ヒアイン! 後ろだ!!」
――振り向いた尻尾が、剣を奪おうとした男を横から殴りつける。
⚙️ 隠された仕掛け
剣ではなく、壁の取っ手に目を留める
――剣に目を奪われていたが、よく観察すれば壁に取っ手があった。
(;´Д`)
「これを引いたら、どうなる!」
歯車が噛み合い、何かが剣闘場の真下で稼働する。
――音を立てて剣闘場を二つに割ったのは、地面から起き上がった鉄の柵だ。
うまく使えば、剣闘獣を向こう側へ追いやることができる。
ただし、今回は追い込む方向を間違えて失敗した。
狩場が小さくなり、体が倍ぐらい大きくなったように感じる。
「――次だ!」
🎭 卑怯者と臆病者と詐欺師
――卑怯者と臆病者と、それから詐欺師と協力して、この『スパルカ』を生き延びる
「オレは、食うに困って盗みを働いた……」
「危険な相手と思わせておけば、案外、死ぬような事態は避けられる……」
「どうせお前らも、俺を囮にして逃げるつもりだろうが!」
(╬゚Д゚)
「俺は……俺はもう利用されねえ! 利用されてたまるかよぉ!!」
――その臆病は、周りが育てたものだった。彼が悪いわけじゃない。
「信じた相手に騙され、家業を奪われた挙句に奴隷になったんだ」
(´;ω;`)
「正直に生きても馬鹿を見るだけなら、せめて最後に残った自分ぐらい……!」
――卑怯者と臆病者と、それから詐欺師と協力して、この『スパルカ』を生き延びる。
「次だ……!」「次だ」「次!!」「次こそだ!」「次でいく……ッ」
「次は……!」「次はいける……!」「次!」「次が……」「――次こそ」
( •̀_•́ )
「負けねぇ」
――負ける気が、微塵もしないからだ。
⭐ 魔法の言葉
『――やっぱり、あの人の子だな』
――剥がれ落ちるように記憶は薄れ、大切な顔が遠ざかる。
かくして、ナツキ・スバルは十歳前後の幼童へと舞い戻った。
――かつて、ナツキ・スバルが『神童』だった時代へと。
幼い頃のナツキ・スバルは自信に溢れ、何でもできると信じて疑っていなかった。
周りの子どもたちを引っ張り、星空にさえ手が届くと信じてやまなかった。
――成長するに従い、その自己肯定感は現実に摩耗し、失われていった。
輝く星々は、曇り空に隠れていった。
敗北を知らず、諦めを知らず、夢が叶わないことも、頑張っても届かないことも。
力不足を悔やむことも、袋小路に嘆くことも、投げ出すことも、知らない。
『――やっぱり、あの人の子だな』
その言葉から注がれる無限の力が、幼い心の枷を外す。
怖い以上に、憎たらしい。痛い以上に、悔しい。泣きたい以上に、笑いたい。
――異世界召喚されて以来、最強の存在としてギヌンハイブを蹂躙する。
👀 鬼気迫る
四人が、一個の生き物のように連携する
――誰もが、声をなくして絶句する。
仮に総督の指示がなかったとしても、誰も何も言えなかっただろう。
「ヴァイツ! イドラ! 左右に散れ!」
(╬゚д゚)
「ヒアイン、怖いのはわかるけど逃げるな! 剣を拾って、引き付けてから投げろ!」
――角を折られ、躾けられた剣闘獣ギルティラウ。
率先して武器を持った相手を狙い、危険な存在から排除にかかる。
その一辺倒を繰り返す悪癖を、武器を渡し合うことで突く。
(≧▽≦)
「ははは! すごいすごい! めちゃめちゃ頑張るじゃないですか、バッスー!」
少年の指示が何度も命を救う以上、聞かないという自由は封印される。
――『合』は、幼い少年を中心に一個の生き物のように完全に連携する。
「――何か、狙っているのか?」
⬆️ 理想の立ち位置
全員が生きたまま、その形が初めて揃う
――全員が生きていて、なおかつ理想的な立ち位置が初めてやってくる。
「ヴァイツ、構えろ!! イドラとヒアインも!」
ギリギリまで睨み合いする度胸があるのは、彼だけなのだ。
(╬゚Д゚)
「う、ああああ――!!」
指先がかかった瞬間、軽い体重全部を使ってレバーを引く。
――突き上がる鉄柵が、真下から顔面を打ち抜いた。
🗡️ 一人で使うルールはない
誰一人としてまともに使えない武器。でも、一人で使わなきゃいけないルールはない
「イドラ! ヒアイン!」
誰一人としてまともに使えない武器。でも、一人で使わなきゃいけないルールはない。
二人がかりで担ぎ上げて、身動きのできない相手に振り下ろしちゃいけないルールも。
(╬゚д゚)
「死ね、死ね死ね死ねえええ!!」
「終わってくれ――!!」
――だが、殺されたくないのは相手も同じだ。
首に大剣をめり込ませたまま、前足が二人を打ち払う。
「させるか、ケダモノが……っ」
剣が前足を地面に串刺しにする。
「ここで寝ていて、戦士を名乗れるか!」
「もう死んでくれよ、クソったれがぁ!」
――それでも、頭の一振りが四人全員を振り払った。
(×Д×)
「つ、ぎは……」
🦌 ご無礼します
体が言うことを聞かない、そこへ影が落ちる
――もう一度、あの大剣に飛びつかなくちゃ。だが、体が言うことを聞かない。
無事な方の前足が、振り上げられて――
空から落ちてきた小さな影が大剣を踏んで、押し込んだ。
――それで、剣闘獣の首を刎ね飛ばしたのである。
(´・_・`)
「……あの、どうして私はこんな場所にいるのでしょうか」
「――そこまでだ! よくぞ、『スパルカ』を生き延びた!!」
( •̀_•́ )
「本職の権限を以て、諸君を剣奴孤島の一員として受け入れよう!」
「よくやった!」「大したもんだったぞ!」「やるじゃねえか、チビっ子!!」
「ひとまず、俺はナツキ・シュバルツだから、よろしく」
(;´Д`)
「お願いだから……ちょっと寝る」
🎲 命を賭けた
予期していたのか、と総督に問われる
「君の言い分には一理あった。これを予期していたのか?」
「期待はしてましたよ? こうなったらいいなぁと思ってその通りになった」
「……そのような不確実な可能性に、自身の命を賭けたのかね」
(・∀・)
「――? ええ、そうですけど?」
――二人が使い物にならなければ、自分の命で支払うと言い張ったことなど
なかったかのような態度だった。
「それと、最後の場面で何をした? 少女を、起こしに向かったのか」
「『合』は五人一組であの子が起きなきゃ人数不足でやってもらうって言ったのはグスタフさんですよ」
「それは逆にあの子が起きたらいつでも加わっていいって意味でしょう?」
「――。不正には当たらない」
( ゚д゚ )
「『合』の全員を、たった一人で生き残らせたか」
仕掛けや武器を見落とさず、仲間に目を配り、敵の動きも観察し、細い糸を渡り切った。
第七章64『魔法の言葉』終了。
オルバルト
スバル
ヴァイツ
ヒアイン
イドラ
セシルス
「――ご無礼します」
グスタフ