リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章59

『タリッタ・シュドラク』

三年前の夜、魂の姉妹が遺した天命。――そして今、タリッタは矢をつがえ、狙いを定める。

👭 同じ日に生まれた

同じ日に生まれた子には、魂の繋がりがある

――『シュドラクの民』では、同じ日に生まれた子らには魂の繋がりがあるとされる。

親姉妹よりも強い、半身としての絆。

クーナとホーリィの二人も、同じ日に生まれた魂の姉妹だ。

黒髪の先を桃色に染めた美しいシュドラク、マリウリ。

優しく穏やかで、引っ込み思案のタリッタと相性がよかった。

どんな葛藤も、みっともない不安も、彼女相手なら自然と打ち明けられた。

「――ねエ、タリッタ。私、『星詠み』に選ばれテ、天命を授かったノ」

「星が教えてくれるノ。星ガ、役目を与えてくれるノ」

「本当ハ、誰にも話すつもりはなかったノ。でモ……あなたハ、私の魂の姉妹だもノ」

🎵 聞いた覚えのない歌

知らない歌を歌い、知らない物語を語る

――狩りから戻ると、子どもらの面倒を見るマリウリが知らない歌を歌っていた。

ミゼルダ

(・_・)

「マリウリの歌、聞いた覚えのないモノだナ」

ミゼルダ

「だガ、いい歌ダ。心地のいイ」

――誰も、その歌の出所を気に留めない。

タリッタだけが、それを恐れ、不安視していた。

「星から教わったんじゃなク、もう知っている歌を歌っただけなノ」

「私じゃなイ、他の『星詠み』ガ……」

タリッタ

(>Д<)

「――ッ、意味がわかりませン!」

知らない知識を披露し、知らない歌を歌い、知らない物語を語る。

――それは、タリッタの知らないマリウリだった。

🌟 返セ

懊悩を、ずっと胸の内に仕舞い込む

タリッタ

(╬゚д゚)

「あなたガ、マリウリを惑わせているのですカ?」

タリッタ「――返セ、私の魂の姉妹ヲ」

放たれた矢は、どこにも届かないまま空しく落ちる。

――星は、反逆の意志さえも認めようとはしない。

言えない悩みは、全てマリウリに聞いてもらってきた。

――ならば、マリウリが原因の悩みは、誰に聞いてもらえばいいのか。

姉に打ち明ければ、危険な思想を理由に追放されるかもしれない。

会えなくなるのは、嫌だった。

――だから、懊悩をずっと胸の内に仕舞い込んで。

🧊 学習しない

かろうじて押しとどめられている、その理由

『大災』へ挑むには条件がある。――戦う力と、抗える心。

どちらが欠けても、戦場へ立つことはできない。

ルイは、この都市が滅ぶか否かに一切関わりがない。

――それでも喰らいつくのは、それ以外の理由のため。

――『大災』は生き物ではない。これが、最大の要因だ。

アル

(¬_¬)

「こっちの攻撃に対応したり、出方を変えるって脳みそもねぇ」

生き物であれば、学習し、対応を学んで戦況を変えただろう。

感情的になって行動が変われば、やはり戦況は激変したはず。

――それが起こらないから、この戦力でもかろうじて押しとどめられる。

🕊️ 安らぎは、わっちと共に

全員、下がる準備をする

ヨルナ

( •̀_•́ )

「――全員、下がる準備をするでありんす」

ミディアム

(>﹏<)

「ヨルナちゃん!」

ヨルナ

「下がりなんし! 口惜しいでありんすが、あの男の言う通りにしんしょう」

ヨルナ

(╬゚Д゚)

「この都市をそっくり呑ませ、妾が内より爆ぜさせるでありんす」

カフマ

「できるのか?」

ヨルナ

「城一つぶつけて足りぬと言うのであれば、あとは街一つぶつけてみるだけ」

ヨルナ

「もっとも、それで足りなくば、わっちを皇妃にして国をぶつけるしかありんせんが」

カフマ

(#゚д゚)

「そのようなこと、臣下の一人として断固としてお諌めせねばならん!」

ヨルナ

「わっちとわっちを愛するものたちが揃えば、このような都市はまた容易く形を成す」

ヨルナ「――安らぎは、わっちと共に」

ミディアム

( •̀_•́ )

「――みんなで戦いながら下がる! 大急ぎで!」

🩸 白く凍えた夜

人生最大の失敗が、この夜に起きる

「――どうしよウ、タリッタ。私、『星詠み』なのニ」

こぼれたのは嘆きの声だけではなく、胸元までを濡らす赤々とした鮮血もだった。

ミゼルダ

「あとはマリウリの気力次第ダ、タリッタ」

ミゼルダ

(・・・・・・)

「マリウリと過ごセ。最期まデ。それが魂の姉妹の役目ダ」

幼い娘が母の手を握り、頬擦りして、別れを告げる。

明日もまた会えると信じて疑わない無邪気な娘と、死の床にある母の別れが。

「どうしよウ、タリッタ。まだ私、天命を果たせてないのニ……」

タリッタ

(>﹏<)

「まダ、まだそんなことを言うんですカ……!」

タリッタ

(´;ω;`)

「あなたハ、シュドラクのマリウリ! それ以外の何が欲しいというんでス!」

「――生まれタ、意味。それガ、欲しいノ」

――娘もいる。タリッタもいる。シュドラクもいる。なのに、意味が欲しいと。

彼女はその瞬間、自らに流れる血を無意味と切り捨てたのだ。

タリッタ

(・・・・・・)

「――もウ、やめてくださイ」

抜いた短刀の切っ先が、青白い喉にそっと宛がわれる。

――でも、それはタリッタの、人生最大の失敗だった。

🌌 千夜、超えた先

重なった手が、宛がわれた刃を押し下げる

「そうだワ、タリッタ。――私にハ、あなたがいタ」

細い手が重なり、宛がわれる刃を押し下げる。

――嫌な音と感触があり、短刀の先端が胸を致命的に抉ったとわかる。

「千夜、超えた先デ、私ハ……あなたハ、旅人と出会う……」

「旅人ハ、この大地を滅ぼす『大災』の味方……だかラ、それヲ、殺さないト……」

「黒い髪ト、黒い目ノ、旅人……ヲ、殺しテ」

「『大災』ヲ、止めテ、タリッタ……それガ、私の役目……」

「もウ、私は果たせなイ、かラ……お願イ、タリッタ……私ノ、魂ノ、姉妹……」

――最後に、弱々しく掠れた息が漏れて、それが最後だった。

小屋の扉を開け放ち、外へ飛び出そうとした足が止まる。

そこに、いてはならない小さな影が座り込んでいた。

母の血を浴びて涙を流すタリッタを、ウタカタが見つめていた。

👁️ 見えてんだよ

下がれ、と叫ぶ声が飛ぶ

アル

(;´Д`)

「ミディアム嬢ちゃん! 下がれ! これ以上は今の嬢ちゃんじゃ逃げ切れねぇ!」

ミディアム

(╬¬_¬)

「う~! 悔しい! でも、ごめん!」

――『大災』の周囲、跳ね回って牽制を続ける矮躯。

全身を汗でぐっしょり濡らしながら、少女は仕掛け続けている。

アル

(#`Д´)

「クソ、クソクソクソ、チクショウ!」

アル

(╬゚д゚)

「なんでオレが、あいつのことでこんな悩まなきゃなんねぇんだ! 恨むぞ、兄弟!」

アル「見えてんだよ!」

ルイがどう動くかわかっているかのような的確さで回り込み、横抱きにさらう。

ルイ

「うー! うあう! あーう!」

アル

「――寝てろ!」

アル

「触角!」

カフマ

「カフマ・イルルクスだ!」

💥 足らぬか

魔都を吹き飛ばす衝撃が、それでも届かない

アベル

「――やれ、ヨルナ・ミシグレ!!」

ヨルナ「わっちは主を、愛しんせん」

爆ぜる衝撃が凄まじい風を生み、魔都を吹き飛ばした。

――都市そのものを引き換えに放たれた一撃が、『大災』を打ち消し――

アベル「――足らぬか」

噴煙の向こうに、なおも蠢く闇の気配がある。

届きはした。だが、足りなかった。

ヨルナ

( ゚д゚ )

「――タンザ?」

吹き飛んだ宿の地下から、小柄な鹿人の少女が飛び出した。

ヨルナ

(゚Д゚ ;)

「――やめなんし!!」

🏹 知りたくもなイ

シュドラクが最も忌避するものと、向き合う

――同族殺しは魂が穢れ、祖霊と同じ土へ還ることは許されない。

それがシュドラクの最も忌避する、『シュドラクの穢れ』だ。

ウタカタ

(・_・)

「ウー、見てタ。マー、ターのデ、自分刺しタ」

ミゼルダ

「あの刺さり方ダ。あれハ、私の妹の仕業ではなイ」

――他ならぬ、タリッタ自身はそうは思えなかった。

口を塞ぐために短刀を抜いた、その短慮がなければ死ぬことはなかった。

――そして今。

アベル

「――タリッタ」

血を流した男が、そっと指を天へと向ける。

――空を見ろ、ではない。天命だ。選べと、決断が強いられる。

矢筒から抜いた矢を弓につがえ、狙いを付ける。

何千、何万回と繰り返してきた狩猟の技法が、彼女を一人の狩人へ変える。

タリッタ「――天命なんテ、知りたくもなイ」

弦が弾かれ、矢は狙い違わず――走り出そうとした長身の女の足を射抜いた。

――『魂の姉妹』に託された天命に背いて。

命懸けで突き進んだ少女の本懐を、遂げさせることを選んだのだ。

タンザ「――ヨルナ様」

魔都炸裂に匹敵する二度目の衝撃が、『大災』を今度こそ吹き飛ばした。

第七章59『タリッタ・シュドラク』終了。