リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章58

『寄る辺なきモノたち』

影には意思がある、と皇帝は言う。――そして、魔都の主が守っていたものの正体が告げられる。

🌙 三年前

悪夢に苛まれ始めたのは、三年前から

――タリッタが『天命』の悪夢に苛まれ始めたのは、三年前のことだ。

『シュドラクの民』にも、避けられない出来事への理解はある。

有体に言えば、『死』こそが最も避け難き運命。

同胞が死ねば、その魂が安らぎへ迎えられることを祈り、歌う。

元々、物事を考えるのが得意ではない。

わざわざ思い煩って、悩み事を増やすような真似はしない。

――自分の人生は姉の後ろに続くものと思っていた。

「――ねエ、タリッタ。私、『星詠み』に選ばれテ、天命を授かったノ」

――そう、最も身近な『魂の姉妹』に打ち明けられるまでは。

🧠 明々白々たる意思

狙われている相手に、偏りがある

ミディアム

(>﹏<)

「急にやる気になったね!? でも、アベルちんじゃ危ないよー!」

アベル

「あれが本命の『大災』であれば、こちらの備えに不足が過ぎると嘆こう」

アベル

「だが、そうでないなら……あれは本命の前の座興に過ぎぬ」

ミディアム

(╬¬_¬)

「もったいぶるの、アベルちんの悪い癖!」

アベル「――あれには意思がある。明々白々たる、人の意思が」

アベル

「先のあれは、貴様たちに手を伸ばしたのだ」

――落ちてくる影から二人を連れ去ったとき、タリッタも感じたのだ。

あの恐るべき漆黒から、わずかな執着のようなものを。

アベル

「腹の内でもがくものの意思が反映されているのだろう」

アベル

「救いを求め、片端から手を伸ばし続けている。見よ」

ミディアム

( ゚д゚ )

「――ルイちゃんと、ヨルナちゃんばっかり狙われてる?」

🟠 その名前

意思が誰のものか、わかっているらしい

――まるでアベルには、あの『大災』の意思が誰のものかわかっているようで。

アベル「――ナツキ・スバルだ」

アベル

「あれはナツキ・スバルの内より溢れたものだ。なれば、奴の意思が介在したとて不思議はない」

ミディアム

(゚Д゚ ;)

「ま、待ってよ、アベルちん……あれが、あれがスバルちんだって言うの!?」

アベル

「厳密には、ナツキ・スバルの意思の反映を許すもの、だ」

ミディアム

(╬゚д゚)

「アベルちんは、なんでそんなに平気そうなの!?」

ミディアム

「スバルちんが助けてって言ってるんでしょ? なのに、なんで平気なのって聞いてるの!」

アベル

(¬_¬)

「――あれの苦しみに寄り添えば、目の前の事態が収拾するのか?」

アベル

「生憎と、現実はそれほど柔軟でも友愛に満ちてもいない」

🎣 見つけさせるの

あたしも前に出る、と名乗り出る

ミディアム

( •̀_•́ )

「――あたしも、前に出るよ」

ミディアム

「あたしがいくのは、ルイちゃんとかヨルナちゃんが戦ってるところ!」

ミディアム「スバルちんに、あたしを見つけさせるの」

ミディアム

「それならルイちゃんたちの苦労もちょっぴり減るよね?」

アベル

(・_・)

「却下だ」

ミディアム

(>﹏<)

「アベルちん!」

アベル

「その状態では囮の役目も満足に果たせまい」

アベル

「貴様の死が周囲に与える影響の方が懸念材料となりかねん」

🗡️ 運命様、上等だ

元の大きさに戻った男が、駆けつける

アル「――だったら、ミディアム嬢ちゃんはオレが守る。それなら文句ねぇだろ」

ミディアム

(゚∀゚)

「アルちん!? おっきくなって……元に戻れたの!?」

アル

「ちょうど、出戻った爺さんと出くわしてな」

アル

(;´Д`)

「悪ぃが、爺さんは連れてこれなかった。賢く立ち回るんだと」

ミディアム

(´・ω・`)

「もう、怖いの収まった?」

アル

(・・・・・・)

「……怖いのは、たぶん一生収まるもんじゃねぇんだわ」

アル「それでも、やらなきゃならねぇ。……運命様、上等だ」

アベル

「ならば、何が貴様を立たせた?」

アル

「悪ぃけど、アベルちゃんの納得のために言葉を尽くしたりしねぇよ」

アル

(・∀・)

「オレの主人は、あのエロ可愛い姫さんだけさ」

アル

「オレの動きは、アベルちゃんが勝手に計算式にでも何でも組み込んでくれや」

🏹 自ら選ぶ他にない

背中を狙うなら好きにせよ、と背を向ける

アベル

「――タリッタ」

アベル

「背中を狙うなら好きにせよ。だが、心せよ」

アベル「――天命に従うか否か、結局、貴様は自ら選ぶ他にないのだと」

手に持った弓に矢をつがえ、背中を射れば話は簡単だ。

――だが、簡単な話にポンと飛び込めるなら、こうも思い悩まない。

タリッタ

(´;ω;`)

「天命に従うカ、逆らうカ……私ハ。私、ハ……」

――いつかと同じように、流され、星に嘲笑われるだけのように。

⏱️ まだ、ほんの数分

数分しか経っていないのに、消耗が大きい

ルイ

(╬゚Д゚)

「ううあああうううう!!」

横っ跳びに飛びついてきた小さな影が、ヨルナごと転移する。

ヨルナ

「あの童を、案じておりんすな」

ルイ

「うあう……!」

ルイを狙って放たれる影の腕は百に近い。

その全てを回避し、被害の拡大を防ぐ貢献は計り知れない。

カフマ

「使え! 娘!」

ルイ

「あう!」

茨を足場に提供し、回避行動を手際よく助ける。

――『大災』が城を呑んでから、まだほんの数分。

にも拘らず、消耗は無視できる範疇に収まらない。

🗣️ 右! 足場踏んで飛べ!

見えている側が、動く側に指示を出す

ミディアム

「うおりゃあああ――!!」

アル

「いくぜ、ミディアム嬢ちゃん! 堂々、オレらの参戦だ!」

何故か、青龍刀の刃を自分の首に宛がい、危険な姿勢で駆け出している。

アル

「右! 足場踏んで飛べ! 瓦礫に爪先引っかけて、今度は上!」

ミディアム

「うんりゃ!」

動いた位置を順番に影が撫で、削り、押し包む。――だが、届かない。

アル

「おい、そっちの入れ墨の兄ちゃん、手伝え! オレが指示する!」

カフマ

(╬゚д゚)

「断る! 何故、自分が貴公のような得体の知れない輩に……」

アル

「上だ! 茨をでかく広げろ!」

カフマ

( ゚д゚ )

「む!?」

とっさに広げた茨の上を、影の大波が流れるように軌道を変えた。

カフマ

「あの『大災』の動きを読めるのか?」

アル

「ちょいと因縁があってな。話を聞く気になったか?」

カフマ

「――。被害を減らすためなら致し方ない。だが、出任せならば許されんぞ!」

🏛️ 真の象徴

感傷という見方は変えず、誤りだけ訂正する

アベル

「魔都の放棄、その提案を考慮できる程度には頭は冷えたか?」

アベル

「くだらぬ感傷という考えに変わりはない。だが、貴様の誤りを訂正してやる」

アベル「寄る辺なきものが縋り、頼るのはこの都市ではない。貴様だ」

アベル

「象徴として建ったのは紅瑠璃城だが、真の象徴は常に天守閣にあった」

ヨルナ

「わっちがいれば子らが空腹を堪え、雨に濡れるのも厭わぬと、そう言うとでも?」

アベル

(・・・・・・)

「――言うぞ、奴らは」

飛来した瓦礫の破片が、その顔から鬼面を引き剥がす。

額を血が伝い、しかし表情は小揺るぎもしない。

アベル

「民草は愚かだ。痛くなければ抗うことを忘れ、敵がいなくば己を鎧うことすらせぬ」

アベル

「だが、その弱く姑息な愚かさこそが、奴らを奴らたらしめる」

アベル「奴らは貴様のためならば、飢えも雨をも耐え忍ぼう」

アベル

「そして、再び太陽が昇り、腹が満たされる日を、貴様と望むことを選ぶのだ」

アベル

「魔都を放棄せよ。奴らの行く当ては貴様と同じ。そして寄る辺は貴様自身だ」

💥 城でなく、都市で

放棄したあと、どうするのかを問う

ヨルナ

「魔都を放棄し、あの『大災』から逃れて、どうするでありんす?」

アベル

「この期に及んで俺を試すか。貴様もわかっていよう」

アベル「城を呑んだときと、同じことを魔都で行う」

アベル

「――呑んだ城では吹き飛ばすには足らずとも、貴様の愛した魔都であれば話は別であろう」

――遠く、高所に佇む黒瞳が同じ光景を眺めている。

ウビルク

「とーにーかーく、ぼくの担当外ですから!」

ヴィンセント

「貴様、右腕はどこで落とした」

オルバルト

「あの、でっけえ影に呑まれちまったい」

オルバルト

「それにしても閣下、こんなとこで悠長にしてっていいのかよぅ?」

ヴィンセント

「大事ない」

アベル「手は打った。――ヴォラキア皇帝、ヴィンセント・ヴォラキアとして打つべき手を」

第七章58『寄る辺なきモノたち』終了。