第七章57
『賢くは生きられない』
逃げるのが賢い、と怪老は言う。――だが、立ち上がった少年が求めたのは「権能」だった。
🌑 揺蕩っている
『――愛してる』
揺蕩っている。彷徨っている。翻弄されている。蹂躙されている。
胴体から四本の手足と首から上を切り離され、別々の場所を流されているみたいだ。
『――愛してる』
その声が聞こえるたびに、直前までの考えがリセットされ、ゼロに戻る。
――でも、それは逆効果だ。
その声を聞きたくて、声の主の下へゆきたくて、考えは始まっているのだから。
(・・・・・・)
「誰か、を……」
こんなどうしようもない状況でも、手を貸してくれるかもしれない、誰か。
その誰かが一緒にきてくれたら、きっと、答えも。
――だから、遠くから響いている声に届くために、手を、伸ばして。
🏃 逃げる算段
わざわざ戻ってきた、その理由
「つっても、カフマがあれとやり合っとるっちゅうことはあれじゃろ」
「閣下がやれって命じたってことじゃろし、閣下は逃げる気ねえんか?」
(;゚Д゚)
「た、タンザって嬢ちゃんと一緒に……」
「あんたは、あれとやり合うつもり、か?」
(;´Д`)
「おいおい、馬鹿言うんじゃねえんじゃぜ」
「あれ、かなりやべえんじゃぜ。ワシも右手持ってっかれちまってるし」
「ここに戻ったのも、うっかり閣下がいたら連れ出さなきゃなんねえからよ」
🧠 賢く生きた方が勝ち
何も作らないことで、完成されたシノビ
(>﹏<)
「こ、皇帝がいんだろ! 爺さんが守らなきゃならねぇ皇帝が……」
「閣下が自分で考えて動いてるってことは、それが閣下なりの最善ってこっちゃろ」
「あれ、どうにかできるって感じしねえし、何事も命あっての物種じゃろ」
(・∀・)
「ワシの大事なもんは自分の命と夢なんじゃぜ。踏みとどまる理由がねえわな」
――自由ではない。無法なのだ。
大切なものも、心傾ける他者も、何も作らないことで完成されたシノビ。
世界最高峰の『無法者』、それが彼の正体だ。
✊ ズルい大人
座っている場合じゃない、と立ち上がる
「……爺さん、一個聞かせてくれ」
(・_・)
「あの、あの黒い影の塊は、兄弟と関係があるんだよな?」
「おう、そうじゃぜ。あの影、ワシの目には坊主の中から出てきたように見えたわ」
――全部の中心に、ナツキ・スバルがいる。
ナツキ・スバルがあそこにいるなら、アルデバランはそこに往かなくては。
「賢く、生きろって言ったな、爺さん」
「ああ、じゃな。ワシはそう思うぜ」
(╬¬_¬)
「でも、オレはそうは思わねぇ。あんたの生き方は賢い生き方じゃねぇ、ズルい生き方だ」
(>Д<)
「座ってる場合じゃねぇ……親に、顔向けできねぇだろ……ッ!」
🔓 権能
勝てる見込みはあるのか、と聞かれて
「意気込みは結構じゃが、あれとやり合って勝てる見込みがあんのかよぅ」
(╬゚Д゚)
「ねぇよ! 誰も勝てるわけねぇだろ! オレが一万回挑んでも勝てやしねぇ!」
「いらねぇよ! それより、とっととオレを戻せ、クソジジイ」
( •̀_•́ )
「逃げる時間ならオレが作ってやる。だから、オレの権能を返せ!」
「元々、勝負はあの坊主の勝ちじゃったんじゃし、約束は果たさねえとよ」
( ゚д゚ )
「兄弟の、勝ち?」
「あの坊主、追いかけっこでまんまとワシを捕まえやがったのよ」
「一万回挑んでも勝てねえって相手に、どうやって挑むってんじゃ?」
🏹 密林の狩人
確証を得たのは、いつだったのか
「ほし、よみ……?」
「星の巡りや導きから未来のことを予見する役割を負ったもののことだ」
「いや、役割というより、宿業という方が正しかろうな」
「俺が帝都を追われた理由と『星詠み』には密接な関わりがある」
「帝国の滅びを予見したものだ。貴様はそれを知っていた」
「――故に、バドハイム密林で俺の命を狙ってのであろう」
「いつかラ、私があなたを狙っていたと気付いていたのですカ……?」
(゚Д゚ ;)
「タリッタちゃん!?」
「玉座の仕組みを知っていれば、俺の頼る先が『シュドラクの民』とは推測できる」
🛡️ 蚊帳の外
なぜ従おうとしなかったのか、を問われる
「その後のグァラルの攻略と魔都への道行き、どちらにも同行したが……」
「貴様は一向に天命に従おうとはしなかった。何故だ?」
「『星詠み』の宿業は、わかっていても抗せるものではないと聞くぞ」
(#`Д´)
「――もう! 全然わかんない!」
「タリッタちゃんがその気になってたら、アベルちんなんてもうとっくにやられてるじゃない!」
「貴様、少しは歯に衣を着せろ」
「……意味ヲ、見出せなかったかラ、でス」
「私ハ! あなたが皇帝ということモ、帝都を追われた事情も知りませんでしタ……!」
「だっテ、私ハ、『星詠み』なのは私でハ――」
✋ 五指を備えた
巨大な黒い腕が、真上から振り下ろされる
(╬゚Д゚)
「――ダメえ!!」
巨大な黒い腕が、五指を備えて真上から振り下ろされる。
叩き潰さんと――否、その手で掴み取ろうとするように。
「――ッ、ミディアム! アベル!」
ミディアムを抱え、アベルを肩に担いで真後ろへ跳ぶ。――が、足りない。
「そうはさせるものか――!!」
緑の茨に搦め捕られた城壁が、三人の天蓋となって割り込む。
――だが、触れた城壁は飴細工のようにほどけ、消滅していく。
「わっちの都で、これ以上の狼藉は許さぬでありんす――っ!」
真上へ蹴り上げられた城壁が巨腕を突き上げ、侵食が止まる。
――ただし、一瞬。それでも、その一瞬があれば十分だった。
「――っ、抜けタ!」
🙏 まずはお礼
また救われたな、と礼から入る
「また俺を救ったな、タリッタ」
「それでも俺を救ったのは、自らの手を汚さなくては天命を成就できぬからか?」
(´;ω;`)
「チ、違いまス……!」
(╬゚д゚)
「それよりも、助けてくれてありがとうでしょ!」
(*´▽`*)
「タリッタちゃん、ありがと~!」
「それしてから、今の話! タリッタちゃんにどうしてほしいって言ってるの?」
「それが『星詠み』の詠んだ未来であり、タリッタに下った天命だ」
(¬_¬)
「――? 聞いても意味わかんないよ。そんなの変じゃん!」
♟️ 別物か
知る滅びと、目の前のものが違うのか
「――おかしい、か」
「貴様の知る滅びとは、あれのことで相違ないか?」
「あれガ、『大災』かどうかハ……」
「貴様の知り得ることではない、か。ならば、他の『星詠み』であればどうだ」
――『星詠み』の心当たりなら、ついさっき出くわしたばかりだった。
飄々とした態度の優男は、あの闇を見て、なんと言ったか。
「あれハ、自分の担当外だト……」
(・・・・・・)
「――。そう、『星詠み』が述べたか。そうか」
表情の見えない仮面の下から、短い呼気が漏れる。
――それが、笑ったように聞こえて。
第七章57『賢くは生きられない』終了。
スバル
オルバルト
アル
ミディアム
アベル
タリッタ
カフマ
ヨルナ