第七章55
『魔都狂騒曲』
同じ声が重なって号令をかける。――そして皇帝が下した判断は、都市の放棄だった。
🗣️ 重なった声
城が倒れ、影が氾濫する
紅瑠璃城の倒壊と、影の氾濫。
――魔都を知るものにとって、天が落ちてくるのに等しい衝撃だった。
「「――全員、静まれ!!」」
(╬゚д゚)
「止まるな! あれへの対処が遅れれば全員が命を落とすことになる」
「城を呑み込み、なお空を喰らい尽くさんとする大喰らいだ」
「ここで余らが手を打たねば、瞬く間に犠牲が増えよう!」
「「――カフマ・イルルクス!」」
「「あの影の足を止めよ! 貴様の停滞は、帝国民の命と引き換えと知れ!」」
( •̀_•́ )
「御身の傍を離れます。どうか、陽剣の加護ぞあらんことを!」
「貴様らの働きが余の加護となる。死力を尽くせ」
窓を切り裂いて飛び出した背中が大きく膨らみ、マントの奥から六枚の透明な翅が広がる。
🃏 伏せた手駒はなし
互いの手駒を、数え合う
「何人連れてきた」
「供回りは見ての通りだ。カフマ・イルルクスに不在のオルバルト・ダンクルケン」
(¬_¬)
「もう一人はいても大した役に立たぬ」
(・∀・)
「伏せた手駒はなしか。身軽さが仇になったな」
(╬¬_¬)
「その責を余に問うのは不条理が過ぎようよ」
(>Д<)
「あ、ああ……なんで、なんで、なんでこんなときに……っ」
――底を見せていない少年だが、この怯えようでは方策に組み入れられない。
心情に配慮してではない。純粋に、役に立たないという判断で。
「なれば、取るべき手立ては多くはあるまい」
🧣 絞め技
打撃もナイフも効かないなら、何が効くか
打撃もナイフも効果的でないとわかり、絞め技が効くとわかってからは。
――それ一辺倒での撃退に終始した。
「外せませン。たとエ、どれだけ力があったとしてモ」
「対処法がわかれバ、私でもどうにかできましタ」
別れる直前に、アベルから告げられた言葉。
――できもしない指示を、あの目の持ち主が出すだろうか。
獣には通用しないはずの絞め技を、彼女が習得している事実。
そしてその理由までも、彼なら知り得ているのではないかと――
⭐ 天命
通りがかりの一般人が、名を言い当てる
「――ありゃりゃ、こーれはまたなかなか壮観ですねえ」
「ぼかぁ、たまたまここを通りがかっただけの一般人なんですが……」
「……一般人ハ、これを見て平然としてはいられないと思いまス」
「なかなか壮観とお伝えした通りです。――ねえ、タリッタさん」
(゚д゚ ;)
「私が何故、シュドラクだト……!」
――以前、その言葉を口にした男は、すでに。
(・_・)
「天命、ですよ。シュドラクの穢れとなった、タリッタさん」
「星の巡りとも、導きとも言えるそれのことです」
「ぼくたちの天命、というべきでしょうかね」
「――ぼくを殺しても事態は好転しません。前もそうだったでしょ?」
(>﹏<)
「まるデ、何度も見た悪夢と向き合わせる気分ですかラ……!」
「果たすも果たさぬも、あなたの自由だ」
🤝 一緒に頑張って
名前を呼ばれて、胸の奥が弾む
(≧▽≦)
「タリッタちゃん!! よかったー! すぐ見つかったし、タリッタちゃんが無事で!」
( ゚д゚ )
「アベルやスバルたちは無事ですカ? それニ、あれはいったイ……」
「アベルちんとアルちんは無事! スバルちんとルイちゃんははぐれてる!」
( •̀_•́ )
「今から、ヨルナちゃんと一緒にあの影を止めるの!」
「タリッタちゃんの力もいるって、そうアベルちんが言ってたから!」
(๑•̀ㅂ•́)
「あたしも頑張るから、一緒に頑張ってくれる!?」
「わかリ、ましタ。――すぐに向かいましょウ」
――背丈が縮もうと、彼女の真っ直ぐな心根は縮みも曲がりもしない。
まるで名前を呼ばれたことを喜ぶように、胸の奥で懊悩が弾んだ気がした。
🖐️ 底知れない餓え
呑まれたものは、世界から消失していく
――呑まれたのは天守閣だけではない。
上層が中層が、濁流の如く氾濫する黒に呑まれ、世界から消失していく。
取り込まれれば救われる術などない、本物の暗闇。
――あれは、あってはならないモノなのだと本能が察する。
伸びてくるそれは、他にたとえようもないほど『手』であった。
一本や二本ではなく、まとめて十も二十も。
膨大な影が訴えかけてくる感情は一つ、『餓え』だ。
ありとあらゆるモノを取り込まんと欲する、底知れない『餓え』。
「童、振り回しんす。舌を噛まぬよう気を付けなんし!」
爆ぜた瓦を引き寄せ、足場として空に逃げ道を作る。
――撃ち込んだ瓦は影を貫けず、触れた箇所を消失して呑まれた。
💎 住民が建てた城
あの城を建てようと言い出したのは、誰か
――紅瑠璃城を建てようと考えたのは、ヨルナではなかった。
魔都の住民たちが、主の居城がみすぼらしくあってはならないと話し合い。
それぞれで希少な貴石を集め、あの美しい城を築き上げたのだ。
――苦難を想像したことなどない。想像するまでもなく、見ていたのだから。
城壁の石の一個に至るまで、全てに住民の愛が込められた代物。
――それをただの城だと、何故思えよう。何故、愛さずいられよう。
爆ぜる城の衝撃波が、内側から黒い闇の勢いを猛然と削いだ。
(´;ω;`)
「新たな城を建てようと、あの日々を愛した城はあの城のみ……」
「潰える愛を呪わしく思うのは、わっちの想いが至らぬせいでありんしょうか」
🐝 等しく帝国臣民
手の届かない場所へ、別の手が伸びる
城へ集まってきた住民たちへ、影が押し寄せる。
――ヨルナの位置からでは、手が届かない。
「――容易くさせると思うな!!」
深緑色の茨が影より早く、住民たちの体を棘に引っかけて外へと逃がす。
(╬゚Д゚)
「カフマ・イルルクス、皇帝閣下の命にて助太刀する――!」
――過去、彼はヨルナの謀反鎮圧のためカオスフレームで暴れ回った一人だ。
「貴公と考えは相容れないとわかっているが、これを放置することはあってはならない!」
「先の、わっちの子らを守ってくれたこと、感謝するでありんす」
(´・ω・`)
「――。『将』として、当然のことをしたまでだ!」
✉️ 親書の望み
言われる前に、用件はわかっている
「うあう!」
「皆まで言わずともわかっている。そも、貴様の処遇を巡って、あれとは意見を違えた」
「俺に従うつもりがあるのか? ならば、数に加えるとする」
「ヨルナ・ミシグレ、事情はわかっているな。あれは放置できぬ大災だ」
(¬_¬)
「まさか、あのようなことが起こると知っておりんしたか?」
「何かあるとは考えていた。何があるかまでは、俺の推測の外側だ」
(・・・・・・)
「――閣下」
「不用意に俺をそう呼ぶな。親書の望みを破り捨てられたくなくばな」
「それは失礼を。……いったい、どこでわっちの望みを知りんした」
「確証はなかった。貴様が、俺からの使者を無事に帰すまでは」
(・∀・)
「使者の子らに、閣下は一度は叱られるべきでありんしょう」
「それも、全ては事を収めてからだ。ヨルナ・ミシグレ、俺の指示に従え」
🏳️ 撤退戦
どんな策にも乗る覚悟で、問いかける
「それで、どうするつもりでありんすか」
――魔都を守るためならば、どんな策にも乗る覚悟で問いかける。
第七章55『魔都狂騒曲』終了。
アベル
カフマ
アル
タリッタ
ウビルク
ミディアム
ヨルナ
ルイ