第七章54B
『蒼穹を覆う』
同じ頃、城郭都市グァラル。レムは足場を探し、プリシラは空を見上げていた。
☁️ 突き抜けるような蒼穹
自分から乞うた教えを、投げ出せない
燦々と瞬く白い太陽、ゆっくりと流れる大きな白雲。
世界を体いっぱいで感じ、自分がその中の一部であることを自覚する。
――自分から望んで教えを乞うた立場だ。投げ出すには気が短すぎる。
(´・ω・`)
「……焦る気持ちに、嘘はつけません」
すぐに成果を求めたがるのは、性分というより置かれた状況が理由かもしれない。
――自分自身ではなく、別の場所で役目を果たそうとする相手への。
(ノ´▽`)ノ
「――あ! こちらにいらっしゃったでありますか!」
(・∀・)
「プリシラ様がお呼びであります! 一緒にきてほしいのであります!」
「わかりました。わざわざ、ありがとうございます、シュルトさん」
🏛️ 十日
陥落から十日、都市は落ち着いている
――グァラル陥落から、十日ほど。
ズィクルの手腕と、族長を譲ってなお影響力の薄れないミゼルダの統率力。
その二人が武力の暴走を抑え、混乱や悲劇の発生を未然に防いだ。
「より強きに従うのが帝国の習わし」
「なれば、口先だけのもの共より、妾の行動に義があるのは誰の目にも明らかであったろう」
(¬_¬)
「いくら何でも、極端な例でズルいと思います」
「妾を卑怯と、そう悪罵するか。なるほど、命知らずもいいところじゃな、レム」
「命が懸かっていれば、命知らずだと思います」
「でも、プリシラさんはそこまで短気なことはされない方だと」
(╬¬_¬)
「妾を、貴様の尺度で推し量ると?」
(・_・)
「元々、他の物差しを持っていませんから」
(;´Д`)
「ふん、小癪なことを言う。可愛げのない娘め」
🍷 赤毛の剣士
無精髭が精悍さを台無しにした男が来る
屋敷の扱いを巡った『決闘』で剣を振るった男。
燃えるような赤毛に鍛えられた長身、精悍さを無精髭が台無しにした容姿。
「ハインケルさん」
「プリシラ嬢にそんな口の利き方して、怖いもの知らずな娘だって呆れてただけだ」
「もちろん、今はレム様も僕たちのお仲間であります!」
(╬゚д゚)
「勝手抜かすな、チビ。この女はプリシラ嬢の敵のとこの娘って話じゃねえか」
「俺たちの味方どころか、潜在的な敵だ」
(゚д゚ ;)
「ええ!? レム様、僕たちの敵だったでありますか!?」
「ええと、それは保留しています」
🌀 ジレンマ
自分の存在を確たるものとするために向き合いたいのに
――記憶のないレムの所属は、自覚も情報も不足している。
それを確定させるのに最も貢献するのは、旅立った黒髪の少年だ。
瘴気は確かに障害だった。だが、彼の言行に嘘偽りや悪意がないことは認めている。
――素直に受け入れられない理由は、レム自身の足場が不確かであるからだ。
自分の存在を確たるものとするために彼と向き合いたいのに。
彼と向き合うには、自分の存在を確たるものとしなくてはならない。
――それはもはや、出口のない迷路に迷い込んだようなジレンマだった。
「相当に難儀していると見える。眉間の皺が、そのよい証拠よ」
「プリシラさんのお話は、いつも難しいので」
🎲 気紛れ
敵を育てているだけだ、と横から言われる
(;゚Д゚)
「おい、おいおいおい、正気か、プリシラ嬢? 敵を育ててやってるだけだろう」
「黙れ、凡夫。妾に指図するつもりか?」
「貴様を打つ妾の手とて暇ではない。書物のページをめくる役割がある故な」
「痩せた土地で飢え死にしかけたシュルトを拾ったことも……」
「実らぬ努力に血を流していた貴様を呼びつけたことも、いずれも妾の気紛れである」
(ノ≧∀≦)ノ
「はいであります! 僕はとっても運がよかったであります!」
(・・・・・・)
「お前はそれでいいのか……」
🛁 花弁を浮かべ
そろそろ状況が動く頃だ、と読んでいる
「――そろそろ、街を発ったものたちが魔都へ到着する頃であろう」
「状況が動くとすれば、この機に合わせての可能性が高い。気を引き締めておけ」
「プリシラ嬢は思い当たる節が?」
「大きな物事が動くときは、それまでの静けさが嘘のように一度に動く」
「まるで示し合わせたかのように、並べた積み木を崩すが如く、一斉にな」
「それで、プリシラさんはどうされるんですか?」
(゚д゚ )
「……えっ」
(≧▽≦)
「わかりましたであります! さっそく、お湯を張ってくるであります~!」
🌍 在るがまま
都合よくできている、の意味を聞く
「この世の全ては妾にとって、都合の良いようにできておる」
「じゃが、それは全てを妾の意のままに従えるという意味ではない」
「起こり得る何もかもが思惑通りなら、明日を迎える意味はどこにある」
(´・ω・`)
「それは、色々なことがうまくできない私には、贅沢な拒絶です」
「貴様に、妾と同じになれとも、同じものを望めとも思わぬ。好きにするがいい」
――掛け値なしの本音だとしたら、あまりにも規模が大きすぎる。
あまりに大きなモノを、愛し、慈しんでいることになる。
🪟 空じゃ
湯浴みの最中に、立ち上がる
(゚Д゚ ;)
「わ、わ、わ、わ~であります! お湯が、お湯が溢れて!」
――湯浴みの最中、髪を洗うレムの手を離れ、プリシラが立ち上がる。
そのまま窓を開け放ち、露台へ出てしまった。
(>﹏<)
「な、何をしているんですか! 他の人に見られてしまいますよ!」
「――空じゃ」
「空って……そこまで高い場所じゃありませんよ」
🐉 群れた翼竜
一つだった黒点が、二つ、三つと増える
( ゚д゚ )
「あれ、は……」
黒点の数は一つ――否、二つ、三つと徐々に増え。
ぼやけた像が次第にはっきりとしてくるにつれ、喉が喘ぐ。
🖤 黒角
白い雲と肩を並べて、翼の群れが来る
青い空を我が物顔で行くのは、白い雲と肩を並べて風を切る翼持つ竜の群れ。
「――城郭都市、グァラル」
・肩口で揃えた空色の髪
・爛々と輝く金色の瞳
・華奢に見える体を包む、華やかな装い
・そして頭部の、二本の黒い角
有角人種の多い帝国にあっても、『黒角』を目にする機会など絶対にありえない。
――それはすでに、存在しないはずの存在の証明だからだ。
( •̀_•́ )
「みんな、準備はいい?」
無数の嘶き――ありうべからざる数百の群れが応える。
『九神将』の『玖』にして、都市の壊滅を命じられた『飛竜将』。
第七章54B『蒼穹を覆う』終了。
レム
シュルト
プリシラ
ハインケル
マデリン