リゼロを読む WEB版・初見向け解説
明るさ
字の大きさ
行間
地の文の書体

206話

第七章54B

『蒼穹を覆う』

同じ頃、城郭都市グァラル。レムは足場を探し、プリシラは空を見上げていた。

☁️ 突き抜けるような蒼穹

自分から乞うた教えを、投げ出せない

燦々と瞬く白い太陽、ゆっくりと流れる大きな白雲。

世界を体いっぱいで感じ、自分がその中の一部であることを自覚する。

――自分から望んで教えを乞うた立場だ。投げ出すには気が短すぎる。

レム

(´・ω・`)

「……焦る気持ちに、嘘はつけません」

すぐに成果を求めたがるのは、性分というより置かれた状況が理由かもしれない。

――自分自身ではなく、別の場所で役目を果たそうとする相手への。

シュルト

(ノ´▽`)ノ

「――あ! こちらにいらっしゃったでありますか!」

シュルト

(・∀・)

「プリシラ様がお呼びであります! 一緒にきてほしいのであります!」

レム

「わかりました。わざわざ、ありがとうございます、シュルトさん」

🏛️ 十日

陥落から十日、都市は落ち着いている

――グァラル陥落から、十日ほど。

ズィクルの手腕と、族長を譲ってなお影響力の薄れないミゼルダの統率力。

その二人が武力の暴走を抑え、混乱や悲劇の発生を未然に防いだ。

プリシラ

「より強きに従うのが帝国の習わし」

プリシラ

「なれば、口先だけのもの共より、妾の行動に義があるのは誰の目にも明らかであったろう」

レム

(¬_¬)

「いくら何でも、極端な例でズルいと思います」

プリシラ

「妾を卑怯と、そう悪罵するか。なるほど、命知らずもいいところじゃな、レム」

レム

「命が懸かっていれば、命知らずだと思います」

レム

「でも、プリシラさんはそこまで短気なことはされない方だと」

プリシラ

(╬¬_¬)

「妾を、貴様の尺度で推し量ると?」

レム

(・_・)

「元々、他の物差しを持っていませんから」

プリシラ

(;´Д`)

「ふん、小癪なことを言う。可愛げのない娘め」

🍷 赤毛の剣士

無精髭が精悍さを台無しにした男が来る

屋敷の扱いを巡った『決闘』で剣を振るった男。

燃えるような赤毛に鍛えられた長身、精悍さを無精髭が台無しにした容姿。

レム

「ハインケルさん」

ハインケル

「プリシラ嬢にそんな口の利き方して、怖いもの知らずな娘だって呆れてただけだ」

シュルト

「もちろん、今はレム様も僕たちのお仲間であります!」

ハインケル

(╬゚д゚)

「勝手抜かすな、チビ。この女はプリシラ嬢の敵のとこの娘って話じゃねえか」

ハインケル

「俺たちの味方どころか、潜在的な敵だ」

シュルト

(゚д゚ ;)

「ええ!? レム様、僕たちの敵だったでありますか!?」

レム

「ええと、それは保留しています」

🌀 ジレンマ

自分の存在を確たるものとするために向き合いたいのに

――記憶のないレムの所属は、自覚も情報も不足している。

それを確定させるのに最も貢献するのは、旅立った黒髪の少年だ。

瘴気は確かに障害だった。だが、彼の言行に嘘偽りや悪意がないことは認めている。

――素直に受け入れられない理由は、レム自身の足場が不確かであるからだ。

自分の存在を確たるものとするために彼と向き合いたいのに。

彼と向き合うには、自分の存在を確たるものとしなくてはならない。

――それはもはや、出口のない迷路に迷い込んだようなジレンマだった。

プリシラ

「相当に難儀していると見える。眉間の皺が、そのよい証拠よ」

レム

「プリシラさんのお話は、いつも難しいので」

🎲 気紛れ

敵を育てているだけだ、と横から言われる

ハインケル

(;゚Д゚)

「おい、おいおいおい、正気か、プリシラ嬢? 敵を育ててやってるだけだろう」

プリシラ

「黙れ、凡夫。妾に指図するつもりか?」

プリシラ

「貴様を打つ妾の手とて暇ではない。書物のページをめくる役割がある故な」

プリシラ

「痩せた土地で飢え死にしかけたシュルトを拾ったことも……」

プリシラ

「実らぬ努力に血を流していた貴様を呼びつけたことも、いずれも妾の気紛れである」

シュルト

(ノ≧∀≦)ノ

「はいであります! 僕はとっても運がよかったであります!」

ハインケル

(・・・・・・)

「お前はそれでいいのか……」

🛁 花弁を浮かべ

そろそろ状況が動く頃だ、と読んでいる

プリシラ

「――そろそろ、街を発ったものたちが魔都へ到着する頃であろう」

プリシラ

「状況が動くとすれば、この機に合わせての可能性が高い。気を引き締めておけ」

ハインケル

「プリシラ嬢は思い当たる節が?」

プリシラ

「大きな物事が動くときは、それまでの静けさが嘘のように一度に動く」

プリシラ

「まるで示し合わせたかのように、並べた積み木を崩すが如く、一斉にな」

レム

「それで、プリシラさんはどうされるんですか?」

プリシラ「――湯浴みじゃな。花弁を浮かべ、香を焚くがいい」

レム

(゚д゚ )

「……えっ」

シュルト

(≧▽≦)

「わかりましたであります! さっそく、お湯を張ってくるであります~!」

🌍 在るがまま

都合よくできている、の意味を聞く

プリシラ

「この世の全ては妾にとって、都合の良いようにできておる」

プリシラ

「じゃが、それは全てを妾の意のままに従えるという意味ではない」

プリシラ

「起こり得る何もかもが思惑通りなら、明日を迎える意味はどこにある」

レム

(´・ω・`)

「それは、色々なことがうまくできない私には、贅沢な拒絶です」

プリシラ

「貴様に、妾と同じになれとも、同じものを望めとも思わぬ。好きにするがいい」

プリシラ「世界はただ、在るがままに美しい」

――掛け値なしの本音だとしたら、あまりにも規模が大きすぎる。

あまりに大きなモノを、愛し、慈しんでいることになる。

🪟 空じゃ

湯浴みの最中に、立ち上がる

シュルト

(゚Д゚ ;)

「わ、わ、わ、わ~であります! お湯が、お湯が溢れて!」

――湯浴みの最中、髪を洗うレムの手を離れ、プリシラが立ち上がる。

そのまま窓を開け放ち、露台へ出てしまった。

レム

(>﹏<)

「な、何をしているんですか! 他の人に見られてしまいますよ!」

プリシラ

「――空じゃ」

レム

「空って……そこまで高い場所じゃありませんよ」

プリシラ「空を見よ、レム。――どうやら、『ばけえしょん』も終わりのようじゃ」

🐉 群れた翼竜

一つだった黒点が、二つ、三つと増える

レム

( ゚д゚ )

「あれ、は……」

黒点の数は一つ――否、二つ、三つと徐々に増え。

ぼやけた像が次第にはっきりとしてくるにつれ、喉が喘ぐ。

プリシラ「――疾く、下のものらに武器を持たせよ。群れた翼竜に、遊びはないぞ」

🖤 黒角

白い雲と肩を並べて、翼の群れが来る

青い空を我が物顔で行くのは、白い雲と肩を並べて風を切る翼持つ竜の群れ。

マデリン

「――城郭都市、グァラル」

・肩口で揃えた空色の髪

・爛々と輝く金色の瞳

・華奢に見える体を包む、華やかな装い

・そして頭部の、二本の黒い角

有角人種の多い帝国にあっても、『黒角』を目にする機会など絶対にありえない。

――それはすでに、存在しないはずの存在の証明だからだ。

マデリン

( •̀_•́ )

「みんな、準備はいい?」

無数の嘶き――ありうべからざる数百の群れが応える。

『九神将』の『玖』にして、都市の壊滅を命じられた『飛竜将』。

マデリン「恐れ慄き、逃げ惑え。お前たちに逃げ場はない。――竜がきた」

第七章54B『蒼穹を覆う』終了。