リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章53

『十一秒のその先』

痛い、赤い、怖い、どうして、死。――終わらない十秒間の先へ、幼いスバルが手を伸ばす。

🔁 絶望の十秒間

痛い、赤い、怖い、どうして、死

オルバルト「聞いた話じゃと、お前さんとこの街の連中はずいぶん頑丈らしいが……」

ヨルナ「――下郎っ!」

――また、同じ声が聞こえた。

痛いのが、考えるのを邪魔する。

世界を赤くする喪失が、周りを見るのを邪魔する。

急に全部が遠ざかって戻っても、ほんの三秒でまた新鮮に味わわされる。

痛い、赤い、怖い、どうして、死。――その、延々とした繰り返しだ。

頭が、おかしくなる。

📏 生存の法則

何度も繰り返して掴んだ、絶対の法則

赤と痛みが消えた瞬間、目をつぶって大声を上げる。

――それが、何度も繰り返して手に入れた、絶対の法則だった。

スバル

(╬゚Д゚)

「ああぁぁぁぁ――ッ!!」

爆音と爆風。屋根の上に尻餅。瓦の角がお尻に食い込む。

――でも、泣かない。視界をぼやかせたくないから。

スバル

(ノД`)

「見える……っ」

恐る恐る開けた目は、弾けても飛び出してもいなかった。

ルイ

「うあう!」

スバル

(>﹏<)

「大丈夫だ! 痛くて、赤くて……ああ、もう、でも、大丈夫……っ」

オルバルト

(・∀・)

「いやあ、全然大丈夫じゃねえんじゃわ、これ。こっからこっから」

🌪️ 隙間のない場所

煙管が、手裏剣をことごとく打ち払う

ヨルナ

(╬゚д゚)

「かような乱行、許しんせん」

煙管が手裏剣をことごとく打ち払う。

オルバルト

「じゃが、この派手さはワシにゃいらねえなぁ」

オルバルト

(¬_¬)

「究極、人間なんてでこに深く針が刺さるだけで死んじまうんじゃからよぅ」

ヨルナ

「――では、これならどうでありんしょう」

ヨルナ「隙間のない場所からどう逃れるか、シノビの技を見せてくりゃれ?」

瓦の竜巻が一気に中心へ圧縮される。

――だが、崩れた瓦の裏側から、無傷の怪老が顔を覗かせた。

オルバルト

「隙間のねえとこから逃げちまう、シノビの技じゃぜ。満足かよぅ」

オルバルト

「街の連中といい、後ろの子どもらといい、守るもんが多すぎなきゃ……」

オルバルト

「もっとワシともちゃんとやれんじゃろうによ」

🎯 一回だけなら

城の中へ逃げ込む手は、もう試した

――何回も前にも、転移で城の中に逃げ込んだ。

それも、追ってきたオルバルトに呆気なく殺されてしまったのだが。

スバル

「一回だけなら……」

オルバルトの意表を突ける。

オルバルト

「――なんじゃぜ!?」

ヨルナ

( •̀_•́ )

「余所見厳禁にござりんす――!」

真上からの踵落としが突き刺さり、後頭部から屋根に激突。

――轟音と共に、姿が城の中へ消えた。

オルバルト

(≧▽≦)

「かかかっか! 痛ぇ痛ぇ!」

スバル

(゚Д゚)

「嘘だろ!?」

🩸 九十年物

潰れた腕さえ、罠として使ってくる

ヨルナの踵を腕で受け、枯れ枝のようなそれがグシャグシャに潰れていた。

――それを、オルバルトはものともしない。

オルバルト

「ほれ、九十年物じゃぜ」

血塗れの右腕を、二の腕あたりで切断して投げつける。

――払うか、躱すか。ヨルナは一瞬の決断を迫られる。

オルバルト

「残念、どっちも外れよ」

先の一撃で開いた階下への穴から、凄まじい暴風が噴き出す。

オルバルト「シノビの基本じゃぜ。右か左か、迷わせたら上なのよ」

オルバルト

「さっきの外れってのも嘘なんじゃぜ」

――飛んでいった腕が内側から膨れ上がり、爆発する。

自分が落ちた穴も、切り捨てた腕も、全部に罠を仕込んで使う。

――ここまで『悪辣』とは、思ってもみなかった。

⚫ 足元の玉

転移の仕組みまで、すでに読まれていた

オルバルトの視線を外れ、大きく距離を取った位置へ転移する。

――こつんと、爪先に何かが当たった。

もう何度も目にした、黒くて丸い玉が。

オルバルト「いっぺん見てんじゃぜ。指差した方に飛ぶんじゃろ。どうやってんのか知らんけど」

オルバルト

(・∀・)

「何が詰まってるか、喰らってからのお楽しみよ。面白ぇじゃろ?」

🖤 愛のない所業

――『死に戻り』に愛があると思えるぐらい、これは愛のない所業だった

ヨルナ「――わっちを愛しなんし。今すぐに」

何回そうやって、助けてもらえそうになっただろう。

言う通りにしてあげられなくて、悲しい。

ルイ

「うあう! うああう!」

必死に腕を引いて、何とかスバルを生かそうとしてくれる。

――だからいつも、スバルより先に死んでしまって、とても辛い。

頭が、壊れそうになる。心が、死んでしまいそうになる。

これは、『死に戻り』じゃない。

『死に戻り』が慈悲深いなんて、ちっとも考えたくなかった。

――『死に戻り』に愛があると思えるぐらい、これは愛のない所業だった。

🫂 みんななら

どの手を選んでも、行き止まりになる

ヨルナを助けたくても、邪魔になってしまう。

ルイと逃げようとしても、追いつかれてしまう。

――レムを、連れ帰らなきゃいけないのに、ここで死んでしまう。

ルイ

(・_・)

「うあう」

そっと、手を握る少女の温もりが伝わってきた。

スバル「――みんなだったら、どうするのかな」

ナツキ・スバルには、この問題は解決できない。

元のスバルはここにいない。どうにかする方法も思いつかない。

――でも、ちゃんとスバルの中に、みんなからもらったものがある。

スバル

「すごい強くて」

オルバルトと戦えるようなみんなは、後ろで応援しててほしい。

スバル

「魔法が使えて」

ヨルナを手伝えるみんなも、今のスバルには真似できない。

スバル

「だったら……」

諦めの悪い、最後の最後まで頑張れる。――そんなみんなの真似ならどうだ。

🏆 勝つのは

――勝つのはいつだって、お師様ッス!

ヨルナも無事じゃなきゃダメ。もっといい方法があるはずだ。

考えんのをやめんじゃァねェぜ。

馬鹿ね。ここで諦めるなんて冗談じゃないねーぇ。

必ず、大丈夫ですわよ。みんながついてるもんっ。

戦いには決着が付き物、必然。割って入る隙間があるはずですわね。

それが、勝利の鍵なのよ。

スバル

(・・・・・・)

「勝利の、鍵」

誰の? ――戦っているのって、ヨルナとオルバルトと、どっちの――

スバル

(゚д゚)

「違う」

スバル

(´;ω;`)

「違う違う違う違う、違う――!」

――勝つのはいつだって、お師様ッス!

スバル

「ルイぃぃぃ――っ!!」

指差した先は、オルバルト。

オルバルト

「――なんじゃぁ!?」

🤏 捕まえた

転移の刹那なら、怪老でも反応できない

猛然と、すぐ目の前にあるオルバルトの後頭部にしがみつく。

――転移の刹那に組み付かれるのには、さしもの怪老も反応できない。

オルバルト

( ゚д゚ )

「うお! な、なんじゃなんじゃ! 坊主か!?」

スバル「――俺の勝ちだ!!」

オルバルト

「――なに?」

スバル

(╬゚Д゚)

「俺の勝ち……俺の勝ちだ! オルバルトさんの負けだ! そうだろ!?」

オルバルト

「だから、何を言っとるんじゃ、お前さんは……」

スバル

「一回でいいって、言っただろ!」

スバル

「お、追いかけっこ! かくれんぼは、三回見つけろって……」

スバル

「でも、追いかけっこなら、一回捕まえたら、いいって……だから」

スバル

(ノД`)

「だから! 俺の勝ちだ! 捕まえた! 勝負は、俺の勝ちだ!」

――ズルだと思う。でも、他の方法が思いつかなかった。

スバル

「先にズルしたのは、オルバルトさんの方だぁ……」

ヨルナ

「――オルバルト翁、どうするでありんすか?」

ルイ

「うあう! あー、うー!」

オルバルト

「痛ぇんじゃぜ」

オルバルト

「いっぺんけしかけた勝負、途中で投げ捨てらんねえって言ったのはワシじゃがよ」

オルバルト

(;´Д`)

「それをまさか、こんな風に悪用されるたぁ思わんかったんじゃぜ」

オルバルト「かかかっか! 誰が見ても負けじゃろ」

オルバルト

「勝ち負けまで関係ねえなんて言い出したら、そりゃもうシノビじゃなく、ケダモノじゃぜ」

スバル

(>﹏<)

「俺の、勝ちだぁぁぁ……!」

オルバルト

「何べんも言われたら腹立ってくるじゃろ。――うっせぇわ」

第七章53『十一秒のその先』終了。