第七章52
『恋心は譲れない』
爆発が空を染める。――そして、繰り返される赤の中で、スバルは決定的な違和に気付く。
🧱 無機物にもオド
その負担が、どれくらいのものなのか
――城に『魂婚術』を使い、無機物にすらオドを通わせている。
誰かにマナを譲り渡すのは、それ自体が結構疲れることだ。
契約している大精霊に持っていかれてヘロヘロになった経験がある。
――そのリスクが、ヨルナの場合は単純計算で百倍以上。
(;゚Д゚)
「そんなの、すごい体に悪そうだ……!」
その上で、彼女は踵落としで城を割る実力があるのだ。
🌊 波打つ屋根
どちらも、まだ片鱗しか見せていない
( •̀_•́ )
「オルバルト翁の技術も十分厄介……消しておくに限るでありんす」
・正面から追いかける衝撃波
・背後から迫る屋根瓦の波濤
――大海原のように波打つ天守閣。
――怪老は宙を蹴り、自ら波濤へ頭から突っ込んだ。
(´ー`)
「土ん中潜る術の応用、ぶっつけでできたワシすごくね?」
「そうして逃げ惑う一方で、オルバルト翁の狙いは果たせるんでありんすか?」
――どちらも、まだ力の片鱗しか披露していない。
💣 火の魔石
さっき差し出されたものの、正体
(゚д゚)
「兵糧丸!?」
(・∀・)
「に、見えるじゃろ? けど、これ食ったらやべえことになっちまうんじゃぜ」
狙いを付けているとも思えない投げ方。
――彼にとって、爆弾はただ人がいるところに落ちればいいのだ。
「聞いた話じゃと、お前さんとこの街の連中はずいぶん頑丈らしいが……」
(¬_¬)
「それ、うちの里の連中より頑丈だったりすんのかよぅ」
(#`皿´)
「――下郎っ!」
💥 空を染める
紫煙が、横薙ぎの斬撃のように空を裂く
(╬゚Д゚)
「は、あああぁぁぁ!!」
煙管の軌跡を紫煙がなぞり、横薙ぎの斬撃のように空を一閃する。
――バラバラに撒かれた爆弾を、ことごとく捉えた。
凄まじい爆発音が連鎖し、轟音と衝撃波が城の空を染め上げる。
爆発の一個は、スバルたちの傍で起こった。
耳を塞いで口を開けろ、とテレビか本で見た気がする。
――その両方を、怠った。
( ゚д゚ )
「か――」
頭が揺れて、視界が真っ赤に染まる。
🩸 あまりにも軽い
背中の真ん中を、狙われていた
――赤い視界の端、ヨルナの背後にオルバルトが出現した。
狙いは背中の真ん中。漫画なら一発で心臓ごと貫くような位置だ。
(>﹏<)
「ルイ――!」
肩に乗った手を掴んで、ヨルナたちの方を指差す。
――転移。そして、顔に浴びせられた、ぬるい液体。
握った腕が、あまりにも軽くて。
(・_・)
「なんじゃ、今の? お前さんら、向こうでへたれとったはずじゃろ」
赤い視界の中で、それよりもなお赤い腕を、ぶんぶんと振っていた。
「ルイ……?」
(´;ω;`)
「ルイ! 早くしないと……」
(・・・・・・)
「いや、無茶言ったら可哀想じゃって。もう首から上がねえんじゃぜ?」
スバルが彼女をどうするか、何の答えも出していないのに。
💋 安くありんせん
瞳の反射で、自分の顔が見えた
(>﹏<)
「童! 童、わっちを見るでありんす!」
――ヨルナの瞳の反射で、自分の顔がわかった。
爆発の衝撃をちっとも消せなかったせいで、目玉が押し出されている。
まるで、出来の悪いゾンビ映画の特撮みたいで、ちょっとおかしい。
「童! わっちを愛すれば、その傷も……」
「とんと知らねえんじゃが、愛って簡単に芽生えるもんじゃなくね?」
(╬゚д゚)
「黙りなんし!」
――柔らかい感触が顔に当たり、息遣いをすぐ間近に感じる。
キスされたのだと、それがわかるのに時間がかかった。
「わっちの唇は安くありんせん。これで……」
💔 譲れない
状況を変えられる手を、それでも取らない
――スバルがヨルナを愛したら、状況が変わる。
きっとそれが、彼女の力の源みたいなもので。
だけど――
真っ赤な視界の向こう側、遠い場所にいる好きな女の子の顔が浮かんだ。
微笑んだその子を見ると、胸が高鳴る。だから、愛せない。
「――ま、男と女のことはそううまくは回らんわな」
くるくると回る視界。転移とは違う、地続きの回転。
すぐ下に、跪いたヨルナと、その前に立つオルバルト。
隣には倒れた女の子の体。そして二人の間に、何かが立っていて。
――それは、首から上がなくなった、幼いスバルの体だった。
🖤 常闇
『――どこにいるの?』
何もない、浮かんでいる、手足もない、空も地面もない空間。
――常闇とさえ思える漆黒に、すすり泣きが響いている。
『愛してる』
『愛してる。愛してる。愛してる』
本来、色んな感情が込められるはずの言葉。
嬉しいとか、怒ってるとか、悲しいとか、喜んでるとか。
――なのに、ここを埋め尽くす愛情は、たった一個だけ。
その全部に、『悲しい』だけが詰め込まれている。
聞いているだけで、死んでしまいたくなるすすり泣きが、やまない。
『――どこにいるの?』
🔁 知っているから痛い
何が起きるか知っている分だけ、痛い
「それ、うちの里の連中より頑丈だったりすんのかよぅ」
(╬゚Д゚)
「――下郎っ!」
――一分前と、同じ声。同じ順番。同じ爆発。
脳が理解を嫌がっている間は、痛みを無視することもできた。
でも、最初から何が起きたのかわかっていたら、その痛みは無視できない。
(>Д<)
「あ、ぎ、ぎゃあああああ――ッ!!」
「うあう! うあうう!」
(;´Д`)
「かーっ、本気かよ、狐娘。今ので死なねえって、どんな体しとんじゃ」
「……子どもを手にかける匹夫に、乙女の秘密を明かすはずもありんせん」
「ぴいぴいと、子どもの泣き声は聞くに堪えんのじゃぜ。――うっせぇわ」
「待ちなんし――!」
❗ 違う
同じ場所へ、また戻される
――また、同じ場所へ。
赤い視界。破れた鼓膜。飛び出した目玉。
たぶん、死んだ。死んだのだ。
とても痛くて辛くて、それから遠ざけられて。
――でも、またすぐにこの場所に戻ってきて、それで死んで。
それがわかっていながら、頭の中で「どうして」を繰り返した。
――これは、違う。
(×Д×)
「おえは、ちが……っ」
「うあう! あう、うー!」
「ひが……おれ、のじゃなひ……っ」
違う。違う違う違う。違う違う違う違う違う。
――痛みが頭を埋め尽くす前に、絶対に忘れてはいけないことを思う。
――ナツキ・スバルの『死に戻り』じゃない、別の何かだと。
第七章52『恋心は譲れない』終了。
スバル
ヨルナ
オルバルト
ルイ