第七章51
『魔都の女主人』
城の屋根の上で、告げ口と要求と提案が交わされる。――そして、踵の一撃が天守閣を割った。
🍙 兵糧丸
腹が減っていないか、と差し出される
(・∀・)
「あれじゃな、坊主。お前さん、腹ぁ減っとりゃせんか?」
「兵糧丸つってよ、ワシらシノビの携帯食よ」
(;´Д`)
「これ一個で腹具合は一日もつのと、頭と体もうまく回るって代物じゃぜ。ただし、味は最悪でよ」
「仕事先でこれ食うたびに思ったもんじゃぜ」
「里の偉い爺様たちみてえに、ワシもとっとと隠居して、こんなもん食わない生活をしてえと」
(・_・)
「……だったら、そうすればいいじゃんか」
「じゃが、なんでか今もワシはこいつを食っとる」
(´ー`)
「一切合切ぶち込んだごちゃっとした食い物が、ワシにとって一番の馳走ってことよ」
――たぶん、オルバルトなりの称賛ではある気がした。
🗣️ 告げ口
子どもの言葉を、真剣に受け止める大人がいる
(╬¬_¬)
「――オルバルト翁、ここはわっちの城でありんすよ?」
「城主尻目に、その城を尻に敷くっちゅうのはなかなか気分がええもんよ」
「その長生きの秘訣とやらで、自分の寿命を縮めるだなんて正気の沙汰とは言えぬでありんす」
( •̀_•́ )
「悪いけど、告げ口させてもらったよ」
「オルバルトさんのルールなら、別に反則じゃないだろ」
(≧▽≦)
「かかかっか! 口の減らねえ坊主よな。けど、それで正解よ」
「お前さん、もしかしてヴォラキア皇族だったりせんか? 性格悪いのが揃っとるからよ」
(´Д`;)
「めちゃくちゃ怖いこと言わないでくれよ……」
――子どもの言葉だからこそ真剣に受け止め、応えようとする大人もいる。
✌️ 二つの要求
返せ、と、手出しするな、の二つ
「オルバルト翁、わっちから二つ、要求がありんす」
「まず、タンザをわっちの下へ返すでありんす」
「おいおい、そりゃ乱暴な話じゃぜ。娘っ子には娘っ子の考えがあんじゃろうよ」
(╬゚д゚)
「――黙りなんし」
たった一言が、空気を一変させる。
「タンザの訴えも考えも、あの子の口以外から聞くつもりはありんせん」
「もう一つ、この子らとしているお遊戯、それを中止することでありんす」
「お遊戯、ねえ。一応、遊びっぽくても真剣勝負じゃぜ?」
「わっちは昨日、皇帝閣下の御前で申し上げたはずでありんす」
「――使者の方々に手出し無用、閣下であろうと守っていただきとうござりんすと」
🔥 誰の街だと
勝てないと、こちらもわかっている
「一応、ワシは何にも手出ししてねえんじゃぜって、そういう言い訳はすっけども」
「それはオルバルト翁の決めた解釈でありんしょう?」
(╬゚Д゚)
「――ここが、いったい誰の街だと思っていんす?」
――本気で怒っている人は、その人生を懸けて感情を燃え上がらせる。
だから、傍にいればわかってしまう。
(´・ω・`)
「うー……」
戦っても勝てないと、彼女もわかっているのだろう。
🤝 お相子
割って入った提案を、誰も止めなかった
「――っ、オルバルトさん!」
( ゚д゚ )
「そ、それ、どうやってんの……?」
「かかかっか! 身体制御はシノビの基礎中の基礎なんじゃぜ」
「ワシも人生で指折り何本目かの危ねえ状況だからよ。目ん玉の半分しか気にしてやれねえ」
「オルバルトさんも、ルール違反っぽいことをしようとしたし、俺も告げ口した」
「どっちもどっちってことで、だから……」
「大人しく悪かったって認めて、それでお互い収めようってことかよぅ」
(>﹏<)
「約束は三回で、まだ見つけられたのは二回目だけど……そこは大目に見てよ」
――ヨルナは、何も反対しなかった。
尊重してくれたということだと思う。すごく、ありがたい。
🦶 踵の一発
今の頭で考えたことか、と問い返される
「のう、坊主。それが、今のお前さんならではの考えなのか……」
「元々のお前さんでも考えることなのか、ワシにゃあちっともわからねえんじゃが……」
(・・・・・・)
「一度けしかけた勝負、ぽいと途中で投げ捨てるなんて半端な真似、生憎とワシはしたくねえのよ」
手の中で瓢箪が握り潰され、砕け散る。
「童の差し出した手も取れぬ老害、その頑なを悔やみなんし」
飛んだ長い足が振り下ろされ、轟然と天守閣が二つに割れた。
(゚Д゚ ;)
「うおわあああ――っ!?」
「下がって、巻き込まれないようにしなんし。生憎と、わっちは手加減が苦手でござりんす」
⚔️ 超越者同士
手出し無用の約束が、外れる
「お互い、手出し無用って話だったはずじゃが……これで、もう構わんわけよな?」
「この都市で、わっちに勝てるおつもりとは驚きでありんす」
(¬_¬)
「耄碌したなら『九神将』の席、後進に譲るのをおススメするでありんすよ」
「かかかっか! そりゃ無理じゃぜ。ワシ、『九神将』で一番長生きする気じゃし」
・ヨルナの一撃は、いずれも城壁さえ崩壊させる威力
・オルバルトの攻撃は派手さがなく、いなしながらちょっかいを入れる程度
「別に、人殺すのに城崩す力なんていらんからよ」
「究極、でこに長めの針一本刺したら死によるんじゃぜ」
「なら、試してみなんし」
💨 たわむ煙
質量のないはずの煙が、衝撃を散らす
質量も硬度もないはずの煙管の煙が、足刀を受けてたわむように衝撃を散らす。
(╬゚Д゚)
「おしゃああああ――!!」
十発、二十発の蹴りに、煙はいよいよ散り散りになる。
「面白い真似しよる。それ、術技書に書き残しちまいてえんじゃが」
煙管がクナイを打ち砕く。
――煙管の方には、何の被害もない。
🌀 宙の階段
四方から迫る手裏剣が、何かに止められる
衝撃が屋根を伝い、ヨルナの体が高々と舞い上がる。
四方から迫るのは、いつ投げたかもわからない手裏剣。
「わかっておりんしょう。わっちはこの街の主、魔都の支配者でありんすと」
手裏剣を止めたのは、空に舞い上がっていた屋根瓦の一枚だった。
十枚以上の手裏剣の全てが瓦に受け止められる偶然など、起こるはずがない。
腕の動きに合わせて瓦が空を泳ぎ、螺旋状の階段を作って停止する。
――厚底が瓦を足場にし、ゆっくりと天守閣へ降りてくる。
(;´Д`)
「かーっ、本当に厄介じゃぜ、お前さん。どうやっとんのよ」
「わっちは、こう見えて物を大切に扱う女でござりんして」
🏯 城にも
半壊した天守閣が、直っていく
パンパンと、両手が叩かれる。
傷が治っていく映像を、何倍速にもしたみたいに。
――半壊した天守閣が、直っていく。
(゚д゚)
「こ、これって……」
『魂婚術』の使い手であるヨルナ。
そして、「物を大切に扱う女」という言葉。
――組み合わせると、一個の仮説が思い浮かぶ。
第七章51『魔都の女主人』終了。
オルバルト
スバル
ヨルナ
ルイ