第七章46
『幼い蛮勇』
魔都の全員がヨルナの力を分けられている。――確かめる方法は、誰かを傷付けることだった。
👣 即席の足袋
正気の沙汰とは言えない、と言い添えられる
( ゚д゚ )
「街の人たちが、ヨルナとおんなじ力を持ってる……!?」
(>﹏<)
「そんな怖い話があるもんか! 『魂婚術』なんて……」
(¬_¬)
「出任せを並べているとでも? ならば、貴様らの手足が縮んだ事象をどう説明する」
「王国と帝国とでは術技の土台と培った研鑽が異なる。失伝した術技は枚挙に暇がない」
縮んだせいで、誰も足に合う靴がない。
布でくるんだ、即席の足袋のような状態だ。
――ほどけたら止まってしまう。それはダメだ。
「とはいえ、俺も候補にこそ考えていたが、まさかとは思っていた」
(・・・・・・)
「今も、それ以外にないか疑っている。それほど、正気の沙汰とは言えぬ所業だ」
🕯️ 魂を引き裂く
その術が、何を代償にしているのか
「さっきの、正気の沙汰じゃないって話はどういう意味なんだ?」
「魂とはすなわち、そのものの根源にあるオドのことだ」
(・_・)
「でも、なんで魂がくっつくと強くなるの?」
「近い例で言えば、精霊術師と精霊との関係だ」
「術師と精霊は契約関係を結ぶことで、互いの根源に互いを接続する」
スバルも、精霊術師の端くれだ。
可愛いドレスの女の子と契約して、彼女の力を借りている。少な目だけど。
「精霊と約束するのって、すごい大変なことだから……」
(;゚Д゚)
「それとおんなじことをしてるって、しかもたくさんの人と!」
「うんうん」
「む、難しいんじゃないかって、思うんだ」
「それ故に、正気の沙汰ではないと言ったのだ」
「それで自我を保つなどと、尋常で行えることではあるまい」
🤏 裾を摘まむ
自分なら誰に魂を渡せるか、を考えてみる
スバルなら、ベアトリス以外に魂は渡せない。
ここにいるミディアムやアルなら、悪さはしないだろう。
――アベルに渡せと言われたら、ごねてしまいたい。
(´・ω・`)
「うー……」
ルイは意外なほど聞き分けがよかった。
大声も上げない。敵の注意も引かない。
裾を摘まむのは、自分の不安をどうにかさせるためではない。
スバルの不安に寄り添う術を、探しているかのようだった。
――嫌な奴で、怖い奴で、許せない奴だ。
レムに嫌われたくないから、それだけが一緒にいる理由だ。
それなのに――
🕵️ 一人捕らえれば
見たまま受け取った答えは、置いておく
「オレたちを襲わせたのもヨルナ姉ちゃんで、Q.E.Dってこったろ」
「――。それが最も、現状を見たまま受け取った答えであろうな」
「そ、それはちょっと、違うかも……」
「ベアトリスと契約してても、今あの子が何してるかとかはわからなくて」
「力だけ借りパクして、こっそり暴れられるって?」
(・∀・)
「た、確かに! 誰か一人、向こうの人から話が聞ければはっきりするじゃん!」
(≧▽≦)
「あ、ホントだ~! アベルちん、天才! それだよ、それ!」
「そりゃ、それができたら苦労はねぇよ。相手はなんせ、全員がヨルナ姉ちゃんの力を受け取ってる」
(´・ω・`)
「あ、そっか……」
🩸 無作為に
住民か余所者かは、履物で見分けられる
(;´Д`)
「どうすんだ、アベルちゃん。この調子じゃ付き合えねぇぜ」
「貴様の望みに興味はない。だが、確かめる方法はある」
「確かめるって、何をだよ」
「あのものらの強靭さが、『魂婚術』によるものかどうかをだ」
「傷が癒えれば、『魂婚術』の影響下だ」
「傷付き、あるいは命を落とせば『魂婚術』の影響の外――推察は誤りと外せる」
「オレたちみたいに住人の対象外ってパターンもあるだろ」
「履物を見れば、住民と余所者との区別は付けられる」
⚖️ 出し惜しみ
出し惜しみとは何なのか、わからない
(>﹏<)
「だ、誰かを傷付けなくたって、他の方法が……」
「あるなら言ってみるがいい。考慮に値する案なら耳を傾ける」
(╬¬_¬)
「――もっとも、今の貴様にそれを期待するのも酷というものであろうが」
「でも、それがなんでダメなんだよ」
「否定ではない。ただの事実だ」
「自身の望みを最大限に通そうとすれば、知略か実力が必要となる」
「不足するなら、望む結果の方を削り、妥協するしかない」
「――貴様が本心からそれを望むなら、出し惜しむのは矛盾であろう」
わからない、わからない、わからない。
本当に、わからない。スバルの出し惜しみとは何なのか。
短い手足と小さな肺では、飛んだり跳ねたりもうまくできないのに。
📣 かかってこい
涙になる前に、背を向けて走り出す
つぶった目の奥から、熱いものが込み上げてくる。
それが涙に変わってしまう前に、背を向けて走り出した。
( ゚д゚ )
「兄弟!?」
「スバルちん!」
誰も傷付けたくない。死なせたくない。
そのための実力と知略が、どちらも足りない。
――なら、引き換えにするのはスバル自身だ。
( •̀_•́ )
「かかってこい! 俺はここだ!」
甲高い子どもの声が、通りの雑音を掻き消す。
いくつもの瞳に捉えられ、心臓が縮む痛みを味わった。
(´・ω・`)
「――ぁ」
早まったことをしたと、やってしまってから後悔する。
🐑 白い癖毛
腕を掴んだのは、同じくらいの年頃の少年
「待って」
腕を掴んでいたのは、背の低い人影。
簡素な軽装、短く見える白い癖毛の少年。
――今のスバルと、そう変わらない年齢感だ。
「ごめん」
――次の瞬間、右目を燃やした少年に軽々と投げ飛ばされていた。
(゚Д゚ ;)
「わ、わあああああ――!?」
回転しながら青い空へ。
視界の端をすごいスピードで障害物が通りすぎていく。
――やがて高さのてっぺんに達して、今度は真っ逆さまに。
「ああああ――っ!」
⛺ 即席のクッション
落下先に、間に合わせのクッションが敷かれる
「アルちん!」
「わかってらぁ!」
出店のテントの固定が切り離され、ピンと張られる。
――即席のクッションだ。
(×Д×)
「いき、てる……?」
だが、二人も無事ではなかった。
衝撃で吹っ飛ばされ、通りに倒れている。
(>Д<)
「あ、アル! ミディアムさん!」
🐏 小さな角
謝りながら、それでも手を止めない
「さっきので終わってほしかったのに……」
覆い切れない炎を、右目に宿したままに。
「お、まえは……」
「必要なことなんだ。この街は……僕たちは、あの御方を失えないんだから」
――小路で引っかかったものの正体が、ここでわかる。
タリッタと向かい合っていた、片目を燃やした人たちの表情。
それがみんな、この少年と同じ辛そうな顔だった。
「ごめんよ。許してなんて、言わないよ」
癖毛の中、側頭部からちょんと覗いているモノ。
――小さな、角。
白い癖毛と角を見て、まるで羊のようだと場違いに思った。
「うーっ!!」
前に割って入った金髪の少女が、鈍い音と赤い血を撒き散らして飛ばされていく。
第七章46『幼い蛮勇』終了。
スバル
アベル
アル
ミディアム
ルイ