第七章45
『コンコン』
宿を囲む百人は、武器も鎧も持たない市民だった。射抜いても倒れず、片目に炎を宿して立ち上がる。
🐅 前門の虎
囲んでいる相手から、敵意が感じられない
(゚Д゚ ;)
「百人近い敵だぁ!?」
(・_・)
「包囲されていまス。敵意というよリ、警戒心のような印象ですガ……」
「一人や二人ならまだしも、百近いとなると見過ごせまい」
「――貴様は貴様で、囲まれた以外の問題を抱えているな?」
( ゚д゚ )
「――ぁ」
「理に逆らって手足が縮んだ。何が起こっても不思議はない」
🧠 引き出しにくさ
記憶がおかしい、と打ち明けてみる
(´・ω・`)
「実は、その……記憶が変な感じになってる気がする」
「覚えてるはずのことがうまく思い出せなくて、よくないかもしれない」
(・・・・・・)
「……さっきの、妙な様子はそれかよ」
「――。具体的には?」
(´;ω;`)
「……大事な、家族の名前が出てこなかった」
「忘れたのか。それとも、口にするのに時間がかかるのか。どちらだ?」
(>Д<)
「――っ、違う! 忘れたんじゃない、思い出しづらいんだ!」
「……引き出すのに時間がかかる、か」
「どう違うってんだ。この状況で拘るようなことかよ?」
🗣️ 答えよ
どうすれば襲ってくるのか、を問われる
「――外のものは、どうすれば襲ってくる」
(>﹏<)
「そ、そんなこと、言われても……」
(╬゚Д゚)
「答えよ! ナツキ・スバル!」
「わ、わからない! そ、外に出た途端、襲ってくる! それだけだ!」
――また、口を滑らせた。だが、今度は何も起こらない。
(#`Д´)
「うーっ!」
(╬゚д゚)
「アベルちん! スバルちんをイジメないの! あんちゃんに言いつけるよ!」
「そも、必要な情報を喋らせただけだ。――宿の外に出ることが引き金になる、か」
(´ー`)
「スバルちん、強い子強い子」
👦 見た目だけの話じゃねぇ
押し込まれっ放しの自分に、気づく
ミディアムに慰められて感じる安堵感もそうだが。
問題は、アベルに対する言葉にし難い抵抗感と、恐れのような感情だ。
――気迫に逆らえず、押し込まれっ放しではないか。
外見だけの話ではなく、その中身まで引きずられつつあるかのように。
🏙️ 魔都の住人
布陣した相手に、目星がつく
「――聞け。布陣した相手に目星がついた」
「それで、賢いアベルちゃんの見立ては? 誰がオレたちを狙ってる?」
「カオスフレームって……この街のこと?」
「宿を外から囲い、機を窺っているのは、この街の住人共で相違あるまいよ」
・百人単位の手勢を動かせる勢力は限られる
・二択――皇帝一行か、魔都の戦力か
・チシャはアベルに化けている。アベルがせぬことは、彼にもできない
・「のこのこと、手勢を率いて魔都へくるような暴挙」はしない
「仮に小理屈をひねろうと、カフマ・イルルクスが許すまい。あれは融通に欠ける」
「あの兄ちゃんに、そこまで力があんの?」
「一時は『九神将』への昇格を打診されたものだ。諸事情で見送ったがな」
✉️ 親書の中身
前言を翻す相手には、見えなかった
「ヨルナちゃんが、あたしたちを襲わせようとしてるってこと?」
「――。アベルはどう考えてるんだ?」
(¬_¬)
「腑に落ちん」
「腑に落ちないって、ええと、納得できないってことだよな? なんで?」
「問えば、何事も答えが返ってくると考えるのは傲慢であろうよ。――親書だ」
「親書には、あれの欲するものを褒美とする旨を書いた」
「あのお姉ちゃんの欲しいもん……つまり、皇妃の座?」
(・∀・)
「お嫁さん?」
「あれは欲するものを得られる。だからこそ、城にこちらを呼びつけた」
「にも拘わらず、手勢を差し向けるのは筋が通らん」
「あー、殺したくなるぐらい、アベルちゃんの嫁になるのが嫌って可能性は……」
「必要があればそれをする。感情は二の次だ。プリシラではあるまいに」
――前言を勝手に翻す女性には、見えなかった。
🎯 囮
囮役に、手加減はいらないと言い添える
「――タリッタ、奴らの目を引き付けよ」
(゚Д゚)
「アベル!?」
「大いに暴れ、外のもの共の注意を引け。その間に俺たちは外へ逃れる」
「アベルちゃん、わかる話がもっとマシな策は……」
「ない。現状、持てる手札で打てる最善の手筋だ」
「貴様たちが縮んでいなければ、他の手段を模索する術もあったろうが」
(;´Д`)
「一言多い!」
「いエ、承知しましタ。私が外の相手の注意を引きまス」
「あの、し、死なないで……!」
(´ω`)
「えエ、またあとで会いましょウ」
「――この都市の人間は、誰であろうと容易く殺せはせぬ」
🏹 三連射
三十人ほどへ、致命傷を叩き込む
密林の狩猟者にとって、一瞬の地形と状況の把握は必須技能だ。
――そして彼女は、姉から族長を託された身である。
弦が引き絞られ、三本の矢が同時に放たれる。
一本は真っ直ぐ、二本は曲射。それぞれ別の獲物の首と胸を射抜いた。
誰とも話さなくていいから、彼女には向いていた。
獲物は、話すのを望まない。対話は、放たれた矢の会敵だけ。
見上げるほど大きな牛人が、体躯を活かして吶喊してくる。
――逃げ場はない。だから、身を低くして前へ走った。
鼻面を蹴り砕き、それを足場に宙へ。半回転して逆さの姿勢。
建物の陰、屋根の上、張り巡らされた足場――三百六十度を一度に捕捉する。
「矢が足りませんネ」
矢筒の矢を指に挟んで引き抜き、三連射を怒涛の勢いで繰り返す。
――おおよそ三十の敵へ、致命傷を叩き込んだ。
🔥 燃える片目
命を奪ったはずの相手が、立ち上がる
――射抜いたものたちの命を奪った、確信があった。
それなのに、呻きながら立ち上がるものたちは誰一人、命を失っていない。
「それハ、いったいなんでス?」
――その右目を、赤々とした炎が覆っていた。
倒れたものたちは全員、片目に赤い炎を宿している。
遅れて参じたものたちも、同じだ。
そして驚くべきは、同じ炎が傷口を焼いて、癒すこと。
(╬¬_¬)
「……少々、言葉足らずではありませんカ、アベル」
「私の役目は囮デ、敵を全滅させることではありませン」
射抜かれたものたちが、抜け落ちた矢を次々と折っていく。
――回収の当てが外れ、得意の弓術を封じられた。
「狩りにハ、短剣も投石も使うのですかラ」
🔗 魂を分け与える
刺客は鎧も武器も持たない、ただの市民だった
刺客たちは鎧も着ておらず、武器も持っていない。
見た目は、昨日すれ違った市民そのものだ。
――女性も、子どもも、含まれている。
「やはり、都市全体に『魂婚術』を張り巡らせているか」
「コンコン……? おいおい、アベルちゃんよ、なんなんだそりゃ」
「アベル! 秘密にするな! 全部話せよ!」
「古き文献に語られる、失伝したはずの秘術の一つだ」
「『魂婚術』と呼ばれ、己の魂の一部を他者に分け与える」
「――結ばれた魂同士は、力の一部を共有する」
(╬゚д゚)
「わっかんねぇ! それ、どういうことだよ!」
「そしてこの都市において、『魂婚術』の使い手は一人――」
「故にこの都市は、軍勢を差し向けようと容易くは落ちぬ地であるのよ」
第七章45『コンコン』終了。
アル
タリッタ
アベル
スバル
ルイ
ミディアム