リゼロを読む WEB版・初見向け解説
明るさ
字の大きさ
行間
地の文の書体

206話

第七章45

『コンコン』

宿を囲む百人は、武器も鎧も持たない市民だった。射抜いても倒れず、片目に炎を宿して立ち上がる。

🐅 前門の虎

囲んでいる相手から、敵意が感じられない

アル

(゚Д゚ ;)

「百人近い敵だぁ!?」

タリッタ

(・_・)

「包囲されていまス。敵意というよリ、警戒心のような印象ですガ……」

アベル

「一人や二人ならまだしも、百近いとなると見過ごせまい」

アベル

「――貴様は貴様で、囲まれた以外の問題を抱えているな?」

スバル

( ゚д゚ )

「――ぁ」

アベル

「理に逆らって手足が縮んだ。何が起こっても不思議はない」

🧠 引き出しにくさ

記憶がおかしい、と打ち明けてみる

スバル

(´・ω・`)

「実は、その……記憶が変な感じになってる気がする」

スバル

「覚えてるはずのことがうまく思い出せなくて、よくないかもしれない」

アル

(・・・・・・)

「……さっきの、妙な様子はそれかよ」

アベル

「――。具体的には?」

スバル

(´;ω;`)

「……大事な、家族の名前が出てこなかった」

アベル

「忘れたのか。それとも、口にするのに時間がかかるのか。どちらだ?」

スバル

(>Д<)

「――っ、違う! 忘れたんじゃない、思い出しづらいんだ!」

アベル

「……引き出すのに時間がかかる、か」

アル

「どう違うってんだ。この状況で拘るようなことかよ?」

アベル「大いに違う。忘れることと、引き出しにくさの間には雲泥の差がある」

🗣️ 答えよ

どうすれば襲ってくるのか、を問われる

アベル

「――外のものは、どうすれば襲ってくる」

スバル

(>﹏<)

「そ、そんなこと、言われても……」

アベル

(╬゚Д゚)

「答えよ! ナツキ・スバル!」

スバル

「わ、わからない! そ、外に出た途端、襲ってくる! それだけだ!」

――また、口を滑らせた。だが、今度は何も起こらない。

ルイ

(#`Д´)

「うーっ!」

ミディアム

(╬゚д゚)

「アベルちん! スバルちんをイジメないの! あんちゃんに言いつけるよ!」

アベル

「そも、必要な情報を喋らせただけだ。――宿の外に出ることが引き金になる、か」

ミディアム

(´ー`)

「スバルちん、強い子強い子」

👦 見た目だけの話じゃねぇ

押し込まれっ放しの自分に、気づく

ミディアムに慰められて感じる安堵感もそうだが。

問題は、アベルに対する言葉にし難い抵抗感と、恐れのような感情だ。

――気迫に逆らえず、押し込まれっ放しではないか。

アル「まるで、大人と子どもだぜ。それも、見た目だけの話じゃねぇ」

外見だけの話ではなく、その中身まで引きずられつつあるかのように。

🏙️ 魔都の住人

布陣した相手に、目星がつく

アベル

「――聞け。布陣した相手に目星がついた」

アル

「それで、賢いアベルちゃんの見立ては? 誰がオレたちを狙ってる?」

アベル「――カオスフレームだ」

ミディアム

「カオスフレームって……この街のこと?」

アベル

「宿を外から囲い、機を窺っているのは、この街の住人共で相違あるまいよ」

・百人単位の手勢を動かせる勢力は限られる

・二択――皇帝一行か、魔都の戦力か

・チシャはアベルに化けている。アベルがせぬことは、彼にもできない

・「のこのこと、手勢を率いて魔都へくるような暴挙」はしない

アベル

「仮に小理屈をひねろうと、カフマ・イルルクスが許すまい。あれは融通に欠ける」

アル

「あの兄ちゃんに、そこまで力があんの?」

アベル

「一時は『九神将』への昇格を打診されたものだ。諸事情で見送ったがな」

✉️ 親書の中身

前言を翻す相手には、見えなかった

ミディアム

「ヨルナちゃんが、あたしたちを襲わせようとしてるってこと?」

スバル

「――。アベルはどう考えてるんだ?」

アベル

(¬_¬)

「腑に落ちん」

スバル

「腑に落ちないって、ええと、納得できないってことだよな? なんで?」

アベル

「問えば、何事も答えが返ってくると考えるのは傲慢であろうよ。――親書だ」

アベル

「親書には、あれの欲するものを褒美とする旨を書いた」

アル

「あのお姉ちゃんの欲しいもん……つまり、皇妃の座?」

ミディアム

(・∀・)

「お嫁さん?」

アベル

「あれは欲するものを得られる。だからこそ、城にこちらを呼びつけた」

アベル

「にも拘わらず、手勢を差し向けるのは筋が通らん」

アル

「あー、殺したくなるぐらい、アベルちゃんの嫁になるのが嫌って可能性は……」

アベル

「必要があればそれをする。感情は二の次だ。プリシラではあるまいに」

ヨルナ「わっちもこの魔都の主、侍従もいる前で嘘偽りは言わぬでありんす」

――前言を勝手に翻す女性には、見えなかった。

🎯 囮

囮役に、手加減はいらないと言い添える

アベル

「――タリッタ、奴らの目を引き付けよ」

スバル

(゚Д゚)

「アベル!?」

アベル

「大いに暴れ、外のもの共の注意を引け。その間に俺たちは外へ逃れる」

アル

「アベルちゃん、わかる話がもっとマシな策は……」

アベル

「ない。現状、持てる手札で打てる最善の手筋だ」

アベル

「貴様たちが縮んでいなければ、他の手段を模索する術もあったろうが」

スバル

(;´Д`)

「一言多い!」

タリッタ

「いエ、承知しましタ。私が外の相手の注意を引きまス」

スバル

「あの、し、死なないで……!」

タリッタ

(´ω`)

「えエ、またあとで会いましょウ」

アベル「タリッタ、手を抜く必要はない。本気でやれ」

アベル

「――この都市の人間は、誰であろうと容易く殺せはせぬ」

🏹 三連射

三十人ほどへ、致命傷を叩き込む

密林の狩猟者にとって、一瞬の地形と状況の把握は必須技能だ。

――そして彼女は、姉から族長を託された身である。

弦が引き絞られ、三本の矢が同時に放たれる。

一本は真っ直ぐ、二本は曲射。それぞれ別の獲物の首と胸を射抜いた。

タリッタ「狩りハ、いいでス」

誰とも話さなくていいから、彼女には向いていた。

獲物は、話すのを望まない。対話は、放たれた矢の会敵だけ。

見上げるほど大きな牛人が、体躯を活かして吶喊してくる。

――逃げ場はない。だから、身を低くして前へ走った。

鼻面を蹴り砕き、それを足場に宙へ。半回転して逆さの姿勢。

建物の陰、屋根の上、張り巡らされた足場――三百六十度を一度に捕捉する。

タリッタ

「矢が足りませんネ」

矢筒の矢を指に挟んで引き抜き、三連射を怒涛の勢いで繰り返す。

――おおよそ三十の敵へ、致命傷を叩き込んだ。

🔥 燃える片目

命を奪ったはずの相手が、立ち上がる

――射抜いたものたちの命を奪った、確信があった。

それなのに、呻きながら立ち上がるものたちは誰一人、命を失っていない。

タリッタ

「それハ、いったいなんでス?」

――その右目を、赤々とした炎が覆っていた。

倒れたものたちは全員、片目に赤い炎を宿している。

遅れて参じたものたちも、同じだ。

そして驚くべきは、同じ炎が傷口を焼いて、癒すこと。

タリッタ

(╬¬_¬)

「……少々、言葉足らずではありませんカ、アベル」

タリッタ

「私の役目は囮デ、敵を全滅させることではありませン」

射抜かれたものたちが、抜け落ちた矢を次々と折っていく。

――回収の当てが外れ、得意の弓術を封じられた。

タリッタ

「狩りにハ、短剣も投石も使うのですかラ」

🔗 魂を分け与える

刺客は鎧も武器も持たない、ただの市民だった

刺客たちは鎧も着ておらず、武器も持っていない。

見た目は、昨日すれ違った市民そのものだ。

――女性も、子どもも、含まれている。

アベル

「やはり、都市全体に『魂婚術』を張り巡らせているか」

アル

「コンコン……? おいおい、アベルちゃんよ、なんなんだそりゃ」

スバル

「アベル! 秘密にするな! 全部話せよ!」

アベル

「古き文献に語られる、失伝したはずの秘術の一つだ」

アベル

「『魂婚術』と呼ばれ、己の魂の一部を他者に分け与える」

アベル

「――結ばれた魂同士は、力の一部を共有する」

スバル

(╬゚д゚)

「わっかんねぇ! それ、どういうことだよ!」

アベル

「そしてこの都市において、『魂婚術』の使い手は一人――」

アベル「この魔都を構成する全てのものが、ヨルナ・ミシグレの力を共有している」

アベル

「故にこの都市は、軍勢を差し向けようと容易くは落ちぬ地であるのよ」

第七章45『コンコン』終了。