第七章43
『瞼の裏側』
かくれんぼ、三回勝負。一回目は十秒で終わった。――そして、死なないはずのルールの下で。
🏃 逃げるのはワシ
単純なぶん、実力がもろに出る
(・_・)
「おい、かけっこ……?」
「なんじゃ、その疑問符。まさか、追いかけっこも知らんとか言い出さんじゃろ?」
「もちろん、言葉は知ってる。ただ、この状況で出てくる単語じゃないだろ」
「追いかけっこ中は命の取り合い解禁じゃぜ、とか」
(≧▽≦)
「かかかっか! んなわけねえじゃろ」
「――その追いかけっことやら、どのような仕組みだ?」
「片方が逃げて、片方がとっ捕まえる……あ、逃げんのはワシって方が助かるわ」
(・∀・)
「じゃあ、逃げるお爺ちゃんをあたしたちが捕まえたら勝ち? わかりやすいね」
「わかりやすくハ、ありますガ……」
ルールはシンプルで、不確定要素が介在する余地がない。
――言い換えれば、実力がもろに出る。
🙈 三回見つける
一回勝負か、三回勝負かを選ぶ
「ワシを捕まえるまでせんでも、ワシを見つけたら勝ちって条件ならどうじゃ」
「ただし、そっちなら三回勝負じゃぜ」
( ゚д゚ )
「――かくれんぼ?」
(・∀・)
「お、ええ名前じゃな。それ採用」
(¬_¬)
「わざわざオレたちの勝ち目が高い方法まで提案してくれるなんて、裏があるのを勘繰っちまう」
「ワシとしちゃ、お前さんらが勝ってくれた方がありがたいんじゃぜ?」
「これは、お前さんらの話を聞く価値があるか知りてえからやってんじゃからよ」
「――かくれんぼだ」
📜 決め事
交わされた決め事は、三つ
一つ目――『互いに危害を加えない』ことの確約。
二つ目――『隠れ場所は都市内に限定する』こと。
三つ目――『勝利条件の明確化』。
「けど、なんで三回なんだ? ケチケチしないでどっちも一回でもよくないか?」
「一回ならまぐれがありそうじゃろ。けど、三回あればそりゃ実力じゃぜ」
「運も実力のうちって考え方もあるぞ」
「生憎と、運否天賦は信じねえのよ。つか、帝国民は大抵そうじゃろ」
幸運も不幸も存在せず、結果は全て自分の実力が招く。
――逃げ場がなくては生きられないものには、息苦しい国だ。
「隠れる場所は、俺たちが物理的にいけない場所はなし」
「本当に細かい奴じゃぜ。――ま、言われなきゃやっとったけども」
「忘れてくれんなよぅ。これは、お前さんらの試金石じゃってこと」
👁️ 瞼の裏
馬鹿馬鹿しい問いが、嗤われずに通る
「――で、最初のヒントは?」
真剣勝負なら馬鹿馬鹿しいと切り捨てられる問いかけ。
だが、オルバルトはこれを嗤わない。
――スバルが呑ませた、勝利のための条件だからだ。
縮んだ以上、彼が見たいのは戦闘力ではない。
頭の回転と、発想力。
端的に言えば、「馬鹿とは取引しない」ということ。
「まずは小手調べ……ワシはこの宿の近く、『瞼の裏』に隠れるとするんじゃぜ」
(・・・・・・)
「――瞼の、裏」
「さ、せいぜい頑張るんじゃぜ、若ぇの」
🏹 侮られた弓
見てきたように言うな、と返してしまう
「タリッタ、弓を下ろせ。もはや向ける相手もおらぬ」
(´-ω-`)
「……はイ」
弓を向けられ、涼しい顔を貫き通した怪老。
次代の族長からすれば、シュドラクの力を愚弄されたに等しい。
――決意の後押しを求めてきた旅で、これでは逆効果だ。
「本気であの爺さんのお遊びに付き合う気かよ、兄弟」
「俺だって、あんな調子でやり込められていい気分じゃねぇよ」
( •̀_•́ )
「けど、ギリギリで可能性は残せた、だろ?」
「……それこそ、爺さんを囲んで叩くって手もあったぜ」
(;´Д`)
「馬鹿言えよ。その気になられたら手も足も出ねぇよ」
「――。まるで、見てきたみてぇに言うじゃねぇか」
――実際、この目で見てきている。
🎭 認識を歪める
気付かれない理由は、最初からあった
「オルバルトさんも案外抜けてるよな。目の前のお前の正体にちっとも気付かねぇんだから」
「――。貴様は何を言っている?」
「この仮面を被っている。ならば、オルバルトの反応は当然のものであろうが」
(゚Д゚)
「な……っ! それって、まさか『認識阻害』か!?」
「昔、皇帝とシュドラクが友誼を結んだときニ……」
「皇帝がそれと知られず森を訪れるために使っていたト、そう言い伝えられていテ」
(╬¬_¬)
「貴様、今まで伊達や酔狂で俺がこの面を被っていると本気で思っていたのか?」
(>﹏<)
「そこまで言わなくても、最初からそう一言説明すればよかっただろ……!」
🚪 大きな音で
猶予は二時間ちょい、化粧の時間も要る
「ヨルナと会いにいくなら、俺は化粧する時間もいる。……猶予は二時間ちょい」
「やはリ、女装はする必要があるのですネ……」
カオスフレームの広さは、グァラルのざっと五倍以上。
そこから隠れたシノビの頭領を、二時間で、六人で、三回。
(๑•̀ㅂ•́)
「全員、周囲に最大限の注意を払ってくれ。――じゃあ、いこう!」
「おーっ!」
「あうー!」
大きな音を立てて、扉を閉める。
👉 みーつけた
出ていって、十秒ほどで戻ってくる
「――で、すぐ戻る」
( ゚д゚ )
「へ?」
(≧∀≦)
「かかかっか! おいおい、これすぐ気付くとか性格悪くね?」
「こんなもん、いきなり見抜かれたワシ赤面もんじゃぜ、超恥ずいじゃろ!」
「なるほど、『瞼の裏』か。最初から、ここだとわかっていたのか?」
「この手の勝負持ちかけてくるタイプって、絶対一回はこれやろうとするからな」
思い出すのは、はるか遠い記憶。
魔法でループする廊下を作り、延々と同じ空間を歩かせようとしたベアトリス。
――スタート地点がゴールだと、一目で看破したあの日。
今思えば、可愛い策略に付き合ってやればよかったと反省しきりだが。
――相手はお茶目な少女ではなく、底意地の悪い怪老だ。手加減無用。
「正直、お見通しだったぜ、『悪辣翁』」
「お前さん、『悪辣坊』って名乗っちゃどうよ」
「わざわざ、ワシに聞かせるためにでけぇ声で出発の音頭も取っとったわけじゃし。大した腹芸よ」
「おお~! やったね、スバルちん! 十秒くらいで一回目だよ!」
🕳️ 見晴らしのいい奈落
二つ目のヒントは、矛盾して聞こえる
「それで、次のヒントは?」
「ふむ……次の隠れ場所は、さながらそうじゃな」
「見晴らしのいイ……」
(・_・)
「奈落ぅ?」
「初回は期待以上、じゃが、勝負の本番はこっからじゃぜ」
颯爽と後ろへ飛び、窓枠に足をかけ、外へ。
「次はもうちょい、歯応えのある隠れ方しとくんじゃぜ!」
「待て、爺さん! ……クソ、もういねぇ!」
「悪い。パッとは出てこない。心を読んだとかじゃなく、展開を読んだだけだから」
「そっか~、ごめん! 頼りっ放しじゃダメだよね! 一緒に考えよう!」
「見晴らしがいいということハ、高所と考えられるのでハ?」
「でも、奈落って穴のことでしょ? 穴なら、地面にあるんじゃない?」
🔴 赤い光
人の多い場所を探して、外へ出た先で
「アベルちゃんの策は?」
「できるだけ人の多い……それも、外部の人間が出入りする場所が都合がいい」
「そう、酒場。そことか目指してみるのがいいと思う」
「全員で店にいくより、役割分担した方がいいかな?」
――不意に、赤い光が視界の端を散って、目が眩んだ。
「お、ええ名前じゃな。それ採用」
(゚д゚ ;)
「うえ?」
「お、オルバルトさん、見つけた」
「――? なんじゃ、それ。もう、勝負始めた気になっとんのかよぅ」
魔都の往来に出たはずが、いるのはどこかの部屋の中。
――否、どこかの部屋ではない。出てきたばかりの、宿泊室だ。
(×Д×)
「……嘘だろ」
死なないはずのルール下で、『死に戻り』したのだと認めるしかなかった。
第七章43『瞼の裏側』終了。
スバル
オルバルト
アベル
ミディアム
タリッタ
アル
ルイ