リゼロを読む WEB版・初見向け解説
明るさ
字の大きさ
行間
地の文の書体

206話

第七章40

『ナチュキ・シュバル』

縮んだのは三人。昨日、紅瑠璃城へ上がった三人だった。――そして正午、出頭の呼び出し。

👶 仲間、仲間!

縮んだのは、一人だけではなかった

スバル

(゚Д゚)

「なんだこりゃぁ――っ!?」

これを『若返り』と呼ぶなら、夢見る人間もいるかもしれない。

――生憎と、花の十代のスバルはそうした願望と無縁だ。

スバル

「みんな、ヤバいことになった! いきなりで驚くと思うが……」

ミディアム

(ノ´▽`)ノ

「あ、やっぱり、スバルちんもちっちゃくなってる!」

スバル

(・_・)

「うえ?」

ミディアム

(≧▽≦)

「起きたらちっちゃくなってて、あたしもビックリさ!」

ミディアム

「でも、スバルちんもちっちゃくなってて安心したよー。仲間、仲間!」

ルイ

「うーっ!」

スバル

(×Д×)

「うおあ!? ぐええっ」

ミディアム

(>﹏<)

「きゃーっ! あたしもちっちゃいせいで、ルイちゃん持ち上げらんないよ~っ」

タリッタ

「ルイ、いけませン! スバルが潰れてしまいますかラ!」

😑 手を貸さない男

昨日と変わらない三人が、見物している

アベルもタリッタもルイも、昨日と変わらない。

一切、手を貸そうとしなかった姿勢に思うところはあるが。

アベル

(¬_¬)

「醜態だな」

スバル

(´・ω・`)

「……自分では、わりと可愛げと愛嬌があると思ってるんだけどな」

🩹 兜が入らない

傷が残っていることに、かえって安堵する

アル

「――お、気にかけてくれて嬉しいね、兄弟。忘れられちまってるかと思ったぜ」

十歳前後の少年が、適当に裂いた布を顔に巻いている。

まるで、映画に出てくる出来の悪い殺人鬼のようだ。

スバル

「アル、だよな? ……その覆面は?」

アル

(;´Д`)

「兜のサイズが合わなくなったもんでよ」

スバル

「無理して顔隠さなくてもよくないか?」

アル

(・∀・)

「兜は伊達や酔狂で被ってるわけじゃねぇ、コンプレックスの表れだ」

アル「――腕が生え直ったわけじゃない。ってことは、顔の傷だって消えてねぇ」

ダボダボのシャツをめくる。体中の古傷は、消えていない。

――この異世界で過ごした歳月は、巻き戻っていないのだ。

傷の存在に安堵する日がくるとは、思わなかった。

これはただ、手足が縮んだだけに等しい状況なのだと教えてくれる。

🗡️ 握れない刃

細い腕では、武器が振り回せない

スバル

「アル、兜のサイズが合わないって話してたが、武器は?」

アル

「ご明察。とてもじゃねぇけど、この可愛い細腕じゃあんなもん振り回せねぇよ」

ミディアム

「あたしも、二本とも持つのはしんどいかも。一本なら何とか……あうっ」

スバル

(゚д゚ ;)

「危なっ!」

刃が握りをすっぽ抜け、床に突き刺さる。

スバル

「これ、現状の真っ当な戦力がタリッタさん一人だけってことだよな?」

ミディアム

( •̀_•́ )

「ええ~っ! あたし、ちっちゃくても頑張るよ!?」

スバル

(;´Д`)

「気概は買うけど、労働基準法を満たしてないから……」

タリッタ

(´・ω・`)

「私だケ、ですカ……」

🥷 シノビ

城主の仕業か、と疑ってみるが

スバル

「監視の目はありそうだが、カオスフレームから逃げるか?」

アル

「……そりゃ、これやったのがあのエロい城主さんって考えか、兄弟?」

アベル

「貴様の述べたヨルナ・ミシグレへの疑念は捨てていい」

アベル

「貴様たちの異変は、あれの操る術理とは異なるものだ」

スバル

「……確実なのか?」

アベル

「俺の推し量る限りでは、だ。信に値するかは貴様が決めるがいい」

アベル「おそらく、原因を作ったのはオルバルト・ダンクルケンであろうよ」

アル

「皇帝だったアベルちゃんも、あの爺さんの戦い方は知らねぇってことになんだろ?」

アベル

「奴は『シノビ』と呼ばれる特殊な術技を習得する一党の頭目だ」

スバル

「シノビ……忍者?」

アベル

「――。なんだそれは」

スバル

「そのシノビって、忍術使ったり、闇夜に紛れて諜報活動とか暗殺とかする?」

アベル

「シノビの主な役目は貴様の理解に相違ない。……それも、容易くは表に出ない情報のはずだが?」

アル

(・∀・)

「ああ、そうそう。ユーモアたっぷりに喋る亀の四人組だ」

👉 貫手の一撃

あの逃走中に、心当たりがあった

ミディアム

「昨日のお爺ちゃんの仕業なら、あれかも! ほら、お城から逃げるとき……」

ミディアム「あたしとスバルちん、二人揃って胸のとこ突っつかれたから!」

――あの場は、何ともないからよしとした。

何ともないはずが、なかったのだ。

スバル

「俺とミディアムさんはそれで説明ついても、アルは? なんで縮んでる?」

アル

「オレも飛び出す前に何べんか爺さんとやり合ったからよ」

アル

「死なねぇ傷ならノーカンだって思ってた」

アルが自分を責めるのは、お門違いだ。

彼は役割を全うし、二人を生還させた。

――気付くべきだったのは、スバルの方だ。

🪰 羽音の記憶

軽口を叩いていないと、叫び出しそうになる

タリッタ

「案外、皆さん冷静なのですネ……私ハ、戸惑い通しなのですガ……」

スバル

「正直、俺の方は軽口でも叩いてないと、叫び出しそうだよ」

タリッタ

「そウ、なのですカ?」

スバル

(・・・・・・)

「ああ。……そのぐらい、気持ち悪い」

幼い肉体が、ではない。

自分の肉体が、意図せず作り変えられる。

――その自己の定義の崩壊が、気持ち悪い。

脳裏に羽音が響く。

水門都市で、蠅に変えられた人々。

今も救いを待っている、犠牲者たちの記憶だ。

幼い姿に変えられるだけでこの違和感なら――

全く異なる生物に変えられた彼らの悲劇は、理解を易々と超えている。

アベル「――悪辣、と言えようよ」

アベル

「オルバルトめの異名は『悪辣翁』……その名に相応しく、悪辣百般、あらゆる特務を遂行する」

アル

「それって、標的を赤ん坊にしてこいみたいな無茶振りもあんの?」

アベル

「斯様なたわけた指示があるものか」

アベル

「――もっとも、この惨状を見るに、それも不可能ではないのかもしれんがな」

🧪 盛られた毒

元に戻れるのか、と聞いてみる

スバル

(´・ω・`)

「これ、元に戻れる……よな?」

アベル

「確実なことは言えん。だが、戻す手段はあると考えるのが自然だ」

スバル

「そ、その根拠は?」

アベル「すぐに死なぬ毒を盛る理由は、相手と交渉するために他なるまい」

タリッタ

「でハ、相手から何らかの接触があるト……」

アベル

「重ねて言うぞ。確実なことは言えん、とな。だが――」

――外から、扉がノックされた。

🔔 火の刻の鐘

朝いちばんに、城からの使いが来る

「――朝から失礼いたします。ヨルナ・ミシグレ様の使いでございます」

扉を開けたのはタリッタだ。

縮んだスバルの警戒など、無防備と何ら変わらない。

少女の視線が一番長く止まったのは、鬼面を被った怪しい男だった。

タンザ

「昨日の、使者の皆様はどうされましたでしょうか」

スバル

(・_・;)

「う……ちょっと所用で外してるけど、呼んできた方がいい?」

タンザ

「――。いいえ、あとでお伝えいただけましたら」

タンザ

「書状を読まれ、ヨルナ様が正式にお返事をなさいます」

タンザ

「つきましては、皆様には紅瑠璃城へと出頭していただきたく存じます」

スバル

(・∀・)

「……読んでくれてたか」

タンザ

「天守閣には、書状を書かれた主様と、昨日の使者の皆様においでいただけますよう」

スバル

(´д`;)

「――ぐえっ」

タンザ

「火の刻の鐘が鳴る頃、紅瑠璃城にてお待ち申し上げております」

スバル

「諸事情で使者が参加しづらい場合は……」

タンザ

「ヨルナ様は、使者の方々も招くよう仰せです」

タンザ「この魔都で、ヨルナ様のお言葉を違えることのありませんよう」

スバル「……この状態の俺たちって、さっきの条件満たしてると思う?」

第七章40『ナチュキ・シュバル』終了。