第七章40
『ナチュキ・シュバル』
縮んだのは三人。昨日、紅瑠璃城へ上がった三人だった。――そして正午、出頭の呼び出し。
👶 仲間、仲間!
縮んだのは、一人だけではなかった
(゚Д゚)
「なんだこりゃぁ――っ!?」
これを『若返り』と呼ぶなら、夢見る人間もいるかもしれない。
――生憎と、花の十代のスバルはそうした願望と無縁だ。
「みんな、ヤバいことになった! いきなりで驚くと思うが……」
(ノ´▽`)ノ
「あ、やっぱり、スバルちんもちっちゃくなってる!」
(・_・)
「うえ?」
(≧▽≦)
「起きたらちっちゃくなってて、あたしもビックリさ!」
「でも、スバルちんもちっちゃくなってて安心したよー。仲間、仲間!」
「うーっ!」
(×Д×)
「うおあ!? ぐええっ」
(>﹏<)
「きゃーっ! あたしもちっちゃいせいで、ルイちゃん持ち上げらんないよ~っ」
「ルイ、いけませン! スバルが潰れてしまいますかラ!」
😑 手を貸さない男
昨日と変わらない三人が、見物している
アベルもタリッタもルイも、昨日と変わらない。
一切、手を貸そうとしなかった姿勢に思うところはあるが。
(¬_¬)
「醜態だな」
(´・ω・`)
「……自分では、わりと可愛げと愛嬌があると思ってるんだけどな」
🩹 兜が入らない
傷が残っていることに、かえって安堵する
「――お、気にかけてくれて嬉しいね、兄弟。忘れられちまってるかと思ったぜ」
十歳前後の少年が、適当に裂いた布を顔に巻いている。
まるで、映画に出てくる出来の悪い殺人鬼のようだ。
「アル、だよな? ……その覆面は?」
(;´Д`)
「兜のサイズが合わなくなったもんでよ」
「無理して顔隠さなくてもよくないか?」
(・∀・)
「兜は伊達や酔狂で被ってるわけじゃねぇ、コンプレックスの表れだ」
ダボダボのシャツをめくる。体中の古傷は、消えていない。
――この異世界で過ごした歳月は、巻き戻っていないのだ。
傷の存在に安堵する日がくるとは、思わなかった。
これはただ、手足が縮んだだけに等しい状況なのだと教えてくれる。
🗡️ 握れない刃
細い腕では、武器が振り回せない
「アル、兜のサイズが合わないって話してたが、武器は?」
「ご明察。とてもじゃねぇけど、この可愛い細腕じゃあんなもん振り回せねぇよ」
「あたしも、二本とも持つのはしんどいかも。一本なら何とか……あうっ」
(゚д゚ ;)
「危なっ!」
刃が握りをすっぽ抜け、床に突き刺さる。
「これ、現状の真っ当な戦力がタリッタさん一人だけってことだよな?」
( •̀_•́ )
「ええ~っ! あたし、ちっちゃくても頑張るよ!?」
(;´Д`)
「気概は買うけど、労働基準法を満たしてないから……」
(´・ω・`)
「私だケ、ですカ……」
🥷 シノビ
城主の仕業か、と疑ってみるが
「監視の目はありそうだが、カオスフレームから逃げるか?」
「……そりゃ、これやったのがあのエロい城主さんって考えか、兄弟?」
「貴様の述べたヨルナ・ミシグレへの疑念は捨てていい」
「貴様たちの異変は、あれの操る術理とは異なるものだ」
「……確実なのか?」
「俺の推し量る限りでは、だ。信に値するかは貴様が決めるがいい」
「皇帝だったアベルちゃんも、あの爺さんの戦い方は知らねぇってことになんだろ?」
「奴は『シノビ』と呼ばれる特殊な術技を習得する一党の頭目だ」
「シノビ……忍者?」
「――。なんだそれは」
「そのシノビって、忍術使ったり、闇夜に紛れて諜報活動とか暗殺とかする?」
「シノビの主な役目は貴様の理解に相違ない。……それも、容易くは表に出ない情報のはずだが?」
(・∀・)
「ああ、そうそう。ユーモアたっぷりに喋る亀の四人組だ」
👉 貫手の一撃
あの逃走中に、心当たりがあった
「昨日のお爺ちゃんの仕業なら、あれかも! ほら、お城から逃げるとき……」
――あの場は、何ともないからよしとした。
何ともないはずが、なかったのだ。
「俺とミディアムさんはそれで説明ついても、アルは? なんで縮んでる?」
「オレも飛び出す前に何べんか爺さんとやり合ったからよ」
「死なねぇ傷ならノーカンだって思ってた」
アルが自分を責めるのは、お門違いだ。
彼は役割を全うし、二人を生還させた。
――気付くべきだったのは、スバルの方だ。
🪰 羽音の記憶
軽口を叩いていないと、叫び出しそうになる
「案外、皆さん冷静なのですネ……私ハ、戸惑い通しなのですガ……」
「正直、俺の方は軽口でも叩いてないと、叫び出しそうだよ」
「そウ、なのですカ?」
(・・・・・・)
「ああ。……そのぐらい、気持ち悪い」
幼い肉体が、ではない。
自分の肉体が、意図せず作り変えられる。
――その自己の定義の崩壊が、気持ち悪い。
脳裏に羽音が響く。
水門都市で、蠅に変えられた人々。
今も救いを待っている、犠牲者たちの記憶だ。
幼い姿に変えられるだけでこの違和感なら――
全く異なる生物に変えられた彼らの悲劇は、理解を易々と超えている。
「オルバルトめの異名は『悪辣翁』……その名に相応しく、悪辣百般、あらゆる特務を遂行する」
「それって、標的を赤ん坊にしてこいみたいな無茶振りもあんの?」
「斯様なたわけた指示があるものか」
「――もっとも、この惨状を見るに、それも不可能ではないのかもしれんがな」
🧪 盛られた毒
元に戻れるのか、と聞いてみる
(´・ω・`)
「これ、元に戻れる……よな?」
「確実なことは言えん。だが、戻す手段はあると考えるのが自然だ」
「そ、その根拠は?」
「でハ、相手から何らかの接触があるト……」
「重ねて言うぞ。確実なことは言えん、とな。だが――」
――外から、扉がノックされた。
🔔 火の刻の鐘
朝いちばんに、城からの使いが来る
「――朝から失礼いたします。ヨルナ・ミシグレ様の使いでございます」
扉を開けたのはタリッタだ。
縮んだスバルの警戒など、無防備と何ら変わらない。
少女の視線が一番長く止まったのは、鬼面を被った怪しい男だった。
「昨日の、使者の皆様はどうされましたでしょうか」
(・_・;)
「う……ちょっと所用で外してるけど、呼んできた方がいい?」
「――。いいえ、あとでお伝えいただけましたら」
「書状を読まれ、ヨルナ様が正式にお返事をなさいます」
「つきましては、皆様には紅瑠璃城へと出頭していただきたく存じます」
(・∀・)
「……読んでくれてたか」
「天守閣には、書状を書かれた主様と、昨日の使者の皆様においでいただけますよう」
(´д`;)
「――ぐえっ」
「火の刻の鐘が鳴る頃、紅瑠璃城にてお待ち申し上げております」
「諸事情で使者が参加しづらい場合は……」
「ヨルナ様は、使者の方々も招くよう仰せです」
第七章40『ナチュキ・シュバル』終了。
スバル
ミディアム
ルイ
タリッタ
アベル
アル
タンザ