リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章37

『紅瑠璃城の主』

偽の皇帝と同席したまま、魔都の主が現れる。狐の尾は、九本あった。

💎 青いはずの瑠璃

赤と青が交互に煌めく、混沌の城

『瑠璃』とは、本来は青。そこに紅を冠するのは矛盾だ。

――だが、一目見れば誰もが納得する。

土台と骨子に使われているのは、文字通りの瑠璃色の石。

深い青の光沢の内側で、水に落とした血の雫のように赤が渦巻く。

時折、青いはずの瑠璃が、血のように赤い光を纏う。

一定の色合いであろうとしない、移り気な混沌の城。

🤐 危ういところで

口を塞ぐのが、ぎりぎり間に合った

護衛と思しき三人を引き連れ、悠然と構える黒髪。

宿で待っているはずの顔が、そこにある。

スバル「――皇帝に変装した、偽物」

アベルと同じ姿形の者がいることは、前もって聞かされていた。

だから疑うまでもない。――ヴィンセント・ヴォラキア皇帝の影武者だ。

ミディアム

( ゚д゚ )

「あれ、アベルちん? なんでここに……もごっ」

アル

(;^ω^)

「おっと、大丈夫かよ、ミディアムちゃん。アルちんならここにいるぜ」

危ういところで、行動がキャンセルされる。

――が、そのやり取りは十分に不審だった。黄緑色の髪の護衛に睨まれる。

ナツミ

(;´Д`)

「アル、ナイスフォローでしたわ」

アル

(・∀・)

「しかし、こいつはちょっとサプライズが効きすぎてんじゃねぇの?」

――もしこの場にアベルがいたら、真のヴォラキア皇帝決定戦の開幕だった。

🎲 早まった真似

絶好の機会に見えるが、手は出さない

手勢はたったの三人。帝都では数万の兵に守られる偽皇帝が、今は目の前だ。

仮面を剥ぐなら、絶好の機会かもしれない。

スバル「――いえ、早計ですわね」

皇帝の立場は、安寧の揺り籠ではない。

だからアベルは人前で両目をつむらない。

その立場を装う者が、無防備な姿を晒すはずがない。

――護衛の三人がよほどの強者か、他に対策があるか、だ。

アル

「ちょっと一当たりして確かめてみるか?」

ナツミ

「……簡単にコンティニューできるなら、それもありかもしれませんわね」

ナツミ

(・_・)

「でも、取り返しのつかない展開の方が怖いですわ。早まった真似はしないように」

アル

(´ー`)

「へいへい」

アルの意見は、よく却下される。

だがそれは、彼が先に早まった案を出してくれるからだ。

おかげで思考の寄り道が減る。

ミディアム

「あのアベルちん、あたしたちの知ってるアベルちんとは別人ってこと?」

アル

「お、そうそう、それで間違いねぇ」

ミディアム

(・∀・)

「だったらマズくない? だって、ナツミちゃんがさ」

ナツミ

(゚д゚)

「わたくし? わたくしが何を……ぁ」

🦊 九本の尾

城主が、下座の皇帝を見下ろしながら現れる

「――ヨルナ・ミシグレ様、いらっしゃいます」

鹿人の少女に抱いた印象の正体が、ここで言語化される。

――『禿』だ。遊郭で遊女の身の回りを世話しながら、芸事を学ぶ少女。

ヨルナ

「――今日は、ずいぶんとお客人が多いでありんすなぁ」

・細身の長身を包む、花柄の鮮やかなキモノ

・毛先にゆくほど白から橙へ色濃くなる、結い上げた髪

・骨や角、牙や鱗を加工した簪と髪飾り

・ピンと持ち上がった獣耳

・細身に大きすぎる、豊かな毛並みの尾――それが九本

キモノを纏った、狐人の美女。

ヨルナ

「遠路はるばる、わっちの城にようこそおいでになりんした」

上座の座椅子に座り、長い足を投げ出し、肘置きに体重を預ける。

禿から受け取った金の煙管に火を落とし、紫煙を肺に入れて微笑む。

――下座のヴォラキア皇帝を、見下ろしながら。

🖼️ 絵画のような対面

二人が向かい合う姿は、絵画の一枚のよう

ヴィンセント

「――ヨルナ・ミシグレ」

当たり前だが、寸分違わずアベルと同じ声だ。

静かに互いを見据える二人は、絵画の一枚のよう。

この対面が帝国史に如何なる出来事として残るか。

親愛と流血、いずれの道を辿るかは、この先次第だ。

ヨルナ

「これはこれは閣下、お久しぶりでござりんす」

ヨルナ

「いくらお誘い差し上げても、魔都へきてくださらのうござりんしたのに」

ヴィンセント

(¬_¬)

「誘いだと?」

ヴィンセント

「貴様の誘いとは、たびたび余に対して兵を挙げたことか?」

ヴィンセント

「だとしたら、余の返答は目に見える形で返したであろう」

ヨルナ

(*´ω`*)

「ええ、確かに。でありんすが、わっちの首はこうしてまだ胴と繋がっておりんす」

ヨルナ

(・∀・)

「それに今日は、あの厄介な小僧を連れてござりんせんようでありんすから」

ヨルナ「よもや、わっちの想いが届いたのではありんせんかと、胸を躍らせている次第でありんす」

アル

(・д・;)

「まさかあの姉ちゃん、アベルちゃんの気が引きたくて謀反してんじゃねぇよな?」

ナツミ

「……違っていてほしい、ですわね」

――こちらの口実は『アベルムカつく』だ。

アベルに好意的な相手に届くことなど、想定していない。

なのに、ヨルナはスバルたちを城へ上げた。この場に、同席させて。

🐝 針金のような男

敵のはずの男が、唯一の味方に見えてくる

カフマ

「ヨルナ一将、その姿勢はいくら何でも不敬ではないか。貴公は何を考えている」

ヨルナ

「閣下にお付きの主さんは……」

カフマ

「カフマ・イルルクスだ。このたび、閣下に随行を命じられた」

カフマ

(╬゚д゚)

「役割は護衛と弁えているつもりだったが……貴公の態度は目に余るぞ」

ヨルナ

「わっちの態度、でありんすか? それはどういう意味でござりんす?」

カフマ

(#`Д´)

「全てだ!」

カフマ

「そもそも、何故他のものをこの場に同席させる!」

ヨルナ

「そんなはずがありんせん。ちゃんと、わっちは閣下のものでありんす」

カフマ

(╬゚Д゚)

「そんな話はしていない! そこの、貴公らも貴公らであるぞ!」

ナツミ

(゚Д゚;)

「うえ!? わたくしたち!?」

ナツミ

(;´Д`)

「あの、わたくしたちはお邪魔ですかしら? でしたら、日を改めて……」

ヨルナ

「それは困りんす。わっちの一日の時間は限られておりんすから」

カフマ

「引き止めるな! 彼女たちも気まずい思いを味わっているだろう!」

ナツミ

(・・・・・・)

「ええ、ええ、まさにですわね」

立場的には敵同士のはずのカフマが、この場では唯一の味方に思える。

💨 紫煙の向こう

こちらの用件は、すでに伝わっていた

ヴィンセント

「ヨルナ・ミシグレ、貴様、何を考えている?」

その一言で、カフマが即座に引き下がる。

偽物とわかっていても、威圧感は本物だ。

ヨルナ

「もちろん、わっちは常に閣下を……ヴォラキア皇帝閣下を想っておりんす」

ヨルナ

「くふ。冷たい目をしなりんす」

ヨルナ

「でも、あちらのお客人方は下げない方が、きっと閣下もお喜びいただけるでありんすよ?」

そこで初めて、ヴィンセントの意識がこちらを向いた。

ナツミ

「わたくしたちは場違いなようですし、聞くべきでないお話もあるご様子」

ナツミ

「ここは一度、下がらせていただいて……」

ヨルナ

(¬_¬)

「それはそれは、何とも弱気なことでありんすなぁ」

紫煙の向こうの眼差しが、稚気の光を宿す。

――とんぼ返りするなら、先客の顔を見た時点で決断すべきだった。

ヨルナ

「タンザから聞いたでありんすよ」

ヨルナ「……主さんら、恐れ多くも皇帝閣下の敵になるために、わっちを誘いにきたんでありんしょう?」

第七章37『紅瑠璃城の主』終了。