第七章33
『いざ、魔都への旅路へ』
魔都カオスフレームへ発つ。レムはグァラルに残る。――そのはずだった。
🙋 隻腕で挙手
同行の許可を、あっさりもらう
「姫さん、ちょいと手綱を離れていいか? 兄弟についててやりたくてよ」
( ゚д゚ )
「うえ!?」
「なんでも何も言ったじゃねぇか。兄弟に協力するってな」
「お前、そんなに本気だったのか」
「別にアルが強いって話は聞いたことないし、俺とアベルと合わせて男女の戦力比がやべぇなって」
(・∀・)
「期待されてたら悪ぃが、そこのアマゾネってる姉ちゃんよりだいぶ弱いぜ!」
「城塞都市まで妾に同行すると、そう申し出たのは貴様であろうが」
「それとも、姫さんはオレがいないと寂しい? ハグして引き止めてくれるってんなら……」
「たわけ」
(´・ω・`)
「ですよねー」
⚖️ 決定権
軍師の意見が、どこまで通るのか
「意見が取り入れられないなら、何のための軍師なんだよ」
「思い上がるな。耳を傾ける価値ある意見なら耳も傾けよう」
「だが、物事の決定権を握るのは俺だ」
「何度も言わせるな。――成果は貴様のものだ。そうでなくてはならん」
玉座を追われた皇帝に、侮れない知恵者がついた。
そういう評判のついた自分が、欲しいのだ。
だが、それでは虚構を積み上げるのと何も違わない。
「――。ならば、俺も周囲も、他ならぬ貴様の手で納得させてみろ」
( •̀_•́ )
「クソったれが、やってやるよ。どんな不良債権も、うまく使ってやる」
(´・ω・`)
「……もしかして、不良債権ってオレのことかね、姫さん」
「たわけ」
🩹 血で汚れた包帯
失敗の実績を、別の角度から見せられる
「なに、『無血開城』と比べれば、何のことはない問題です」
掲げ、できると嘯き、まんまと失敗した実績だ。
「そう落胆されるな。あなたが『無血開城』を献策し、閣下が決行を裁可された」
「事実、私や参謀官たちは血を流さず、あなた方の軍門に加わったのです」
血で汚れた包帯を、無理やり剥ぐ。
(´ー`)
「この程度、軍人にとっては掠り傷」
「あなたは自分の務めを果たされることです。――ナツミ嬢」
👋 見送り
言いかけた言葉を、自分で引っ込める
「――本当に、いくんですか」
「いえ、おかしなことを言いました。忘れてください」
「俺にお前のことで何かを忘れろって言われるのはしんどいよ」
「首を絞められたのも指を折られたのも、お前にもらったものは全部、俺にとってはかけがえのない大事な思い出だから」
(¬_¬)
「は?」
「本当は、俺とお前をずっと切れない紐で結んでおきたいぐらいだ」
「本気で言ってるんですか……?」
「わりと」
いよいよ、「は?」とも言ってもらえなくなった。
😞 思ってしまった
思ってはいけないことを、思ってしまった
――思ってしまった。
足が不自由なおかげで、彼女が離れられない場所にいてくれたと。
逃げ切れない状態だったことが、関係を終わらせないでくれた要因だと。
彼女が万全でないことで、自分は幸運だったと思ってしまった。
(´・ω・`)
「こんなんだから、レムだって俺を信じられねぇよ」
もっと、優しくなりたかった。
優しくて賢くて、強い存在になりたかった。
――レムが信じた、ナツキ・スバルを取り戻せない。
👗 まだその格好のまま
なぜまだその格好なのか、と聞かれる
「……それなら、どうしてまだその格好のままなんですか?」
( ゚д゚ )
「え!?」
「城塞都市を離れるのに、まだその格好をしていることが一点。どう申し開きするんです」
――このヴォラキア帝国で、『ナツキ・スバル』の名を売ることはできない。
すでにその名は、王選候補者エミリアの騎士のものだ。
つまり、行っているのは隣国への立派な内政干渉である。
「ナツミの名前なら、どれだけ売れても問題ない」
「ナツミなら、ただヴォラキア帝国で突然現れた黒髪の美少女で済む」
(¬_¬)
「終わりましたか?」
「まだだ! ナツミ・シュバルツの名前なら、ルグニカにいる俺の身内が気付いてくれる可能性が残せる」
以前にも、必要に迫られて同じ名を名乗ったことがある。
その正体は、エミリア以外のみんなが知っている。
この名が帝国に広まれば、飛ばされていると気付いてもらえるかもしれない。
「――。――――。わかりました」
🍽️ 今さらですよ
目を離すな、と言おうとして止まる
「レム、あいつはどうした」
「ルイちゃんですか? 今頃、ウタカタちゃんと一緒だと思いますが……」
「……呼んできてほしい、わけじゃありませんよね」
「もう、グァラルを陥落させる作戦の間、ずっと目を離していたじゃありませんか」
「今さらですよ」
今なら、ルイの本性を話しても無下にはされないのではないか。
「……いや、馬鹿な真似はよせ」
信じてもらえたところで、どうにもならない。
ただ自分がすっきりする代わりに、彼女の不安を増大させるだけだ。
そんな真似、する必要はない。
「ああ、レムの人生に幸せなことだけ降り積もればいいなって」
(¬_¬)
「は?」
🐎 疾風馬の引く馬車
離れがたい足を、杖で押し出される
「靴裏が、お前の傍を離れ難いって地面から離れな……痛い痛い痛い!」
杖の先端で背中を抉られ、くっついたはずの靴裏が地面を離れた。
「注意します。警戒もします。困ったら誰かを頼ります。さようなら」
(´・ω・`)
「うう……」
「気を付けて、いってきてください。帰りを待っています」
「急にいなくなるようなことはしません。……あなた以外の方々は、信用しています」
(´;ω;`)
「――いってくる!」
🚪 見えなくなった軌跡
見送ったあとに、二人だけが残る
「奴らはいったか。持ち帰るのが朗報か、アベルの首かはわからぬがな」
「……ありがとうございました」
「妾に言わせれば、奴らが命を拾った功は貴様にあろう」
「妾にはその慈悲を示す意図はなかった。勝手に妾の行いを捻じ曲げるでない」
相手の意図を早合点し、自分の型に嵌めた判断をするのは悪い癖だ。
「……ごめんなさい。あなたの言う通りだと思いました」
「でも、私があなたに感謝している事実も、あなたには捻じ曲げられないのでは?」
(・∀・)
「ほう?」
「貴様は自分をなくしたと聞いていたが……なかなかどうして、妾に口答えするとはな」
「思い出せないだけで、消えてなくなったわけじゃ、ありません」
🪟 通路の窓辺で
見当たらない子の行方が、判明する
「タリッタさんは、きっと大丈夫です」
(・∀・)
「ン、わかっタ! レー、頼りになル」
ふと、違和感に気付く。
通路に佇むウタカタは一人きりで、周りに誰の姿もない。
「ウタカタちゃん、一人ですか? その、ルイちゃんは?」
「そウ! ルーなラ、ついていっタ」
( ゚д゚ )
「……え?」
「る、ルイちゃんは」
第七章33『いざ、魔都への旅路へ』終了。
アル
ナツミ
プリシラ
アベル
ズィクル
レム
ウタカタ