リゼロを読む WEB版・初見向け解説
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206話

第七章30

『自称英雄ナツキ・スバル』

族長の座が継がれる。そしてレムは、スバルに一番聞かせたくない言葉を告げる。

😔 拭い去れない喪失感

無念を宿しているのは、周りのほうだった

退く当人の覇気は、初めて会ったときと寸分変わらない。

どこまでも、強い女であるという印象そのままだ。

色濃く無念を宿しているのは、周囲にいるものたちの方だった。

クーナクーナは無愛想に拍車をかけた無表情。

ホーリィホーリィも沈んだ顔つき。

涙目のウタカタウタカタが唇を噛みしめて俯く。

タリッタ

(>﹏<)

「あ、姉上、無理でス。私に族長なんテ、務まるわけガ……」

タリッタ

(´;ω;`)

「姉上だから務まった役目でス! 私にそんな器はありませン……っ」

その動揺ぶりは、当事者以上にすら思えた。

🩸 血に塗れた衣類

唯一の治癒魔法の使い手として、重宝された

レム

(´・ω・`)

「……私の、力不足です」

この場で唯一、治癒魔法が使える存在として重宝された。

血に塗れた衣類。

乱れた髪。

疲労の窺える表情。

どれだけ過酷を極めたか、察するに余りある。

ミゼルダ

(´ー`)

「レム、お前が気に病む必要はなイ」

ミゼルダ

「帝国の『将』と戦イ、片足で済んだのは運が良かっタ。……いヤ、お前の助力あってのことダ」

ミゼルダ

「私はお前に感謝していル。それ以上の言葉はなイ」

😊 美形の務め

足をなくした直後とは、思えないほど

アベル

(・_・)

「ミゼルダ、考えを変える気はないな」

ミゼルダ

「あア、変える気はなイ。シュドラクとヴォラキア皇帝との盟約は守られル」

アベル

「――。わかった。ミゼルダ、大儀であった」

ミゼルダ

(・∀・)

「どうせなラ、微笑んでみせロ。それが美形の務めというものダ」

アベル

「――。ふん」

ミゼルダ

「それでいイ」

足をなくした直後にも拘らず、あまりにも強かった。

玉座を奪われた皇帝が、森で暮らす女戦士に敬意を示した何よりの証だった。

🗣️ 最後の命令

同胞の前で、最後の言葉を告げる

ミゼルダ

( •̀_•́ )

「――聞ケ、我が同胞たちヨ!」

ミゼルダ

「我が妹であるタリッタに族長の役目を譲り渡ス! 皆、タリッタに従エ!」

ミゼルダ

「これが私ノ、族長としての最後の命令ダ。――父祖の誓イ、祖霊の誇りに感謝ヲ」

🟪 シュドラクの民

「――感謝ヲ!」

門外漢にも、それが継承の儀式だったと感覚でわかった。

ここに族長は、ミゼルダからタリッタへ継承された。

ミゼルダ

「沈んだ顔をするナ、族長」

ミゼルダ

「お前の迷いは我らの迷イ。お前の躊躇いは我らの躊躇イ。お前の死ハ、我らの死となル」

その瞳を過った複雑な感情は、頭を下げた妹の見られなかったものだった。

⚖️ 信賞必罰

戦線離脱を、あっさり認めた理由

ナツミ

(・_・)

「意外だったんだよ。お前がミゼルダさんの戦線離脱をあっさりと認めたのが」

ナツミ

「てっきり、片足をなくしたぐらいでなんだ。俺のために死ぬまで働け、って言い出すんじゃないかと」

アベル

(¬_¬)

「たわけ。斯様に強いて、いったい何の意味がある」

アベル

「そも、俺は部下にできる以上のことを望まぬ」

アベル

「己が最善を尽くせと命じても、己の限界以上を吐き出せなどと妄言の類であろう」

アベル

「そして、ミゼルダは己が領分を果たした。ならば、俺が与えるのは褒賞だけだ」

権力者とは、発破と褒美で実力以上を引き出すものだと思っていた。

ある種、働きやすい環境であり、同時に寂しい環境でもある。

アベル

「貴様が俺の部下であれば、そうだろう。だが、貴様は俺の部下か?」

ナツミ

(´・ω・`)

「軍師って肩書きに惹かれないわけじゃないが、お前の部下なんて願い下げだ」

アベル

「であろうよ。貴様は俺の部下ではない。故に、信賞必罰の範疇に当たらん」

アベル

「俺はプリシラと話の続きがある。貴様は貴様の領分を果たせ」

🛏️ 部屋の隅で

声をかけると、静かにしろと返される

ナツミ

「――レム、今いいか?」

レム

(¬_¬)

「……あなたですか。いつになったら着替えるんです」

ナツミ

「着替えよりレムの方が優先だ。この話が終わったらすぐにでも着替えるよ」

レム

「そうですか。では、話は終わりです。着替えてきてください」

ナツミ

(>﹏<)

「そんな大雑把な!」

レム

「眠っているルイちゃんが起きてしまいます。気遣ってください」

レム

「それとも、そのぐらいの気遣いもこの子にはかけたくありませんか?」

ナツミ

「嫌な言い方するなよ。俺が悪かった」

✋ 白い指

礼を言われても、受け取ろうとしない

ナツミ

(´ー`)

「レム、よくやってくれた。お前のおかげでみんな助かったよ」

レム

「……力不足も痛感しました。本音を言えば、不甲斐ないです」

レム

「わかるんです。本当なら、この魔法はこんなものじゃなかったって」

レム

「今、私が使っている魔法は感覚的なもので、言い換えれば独学です」

レム

「ルイちゃんが補助してくれて、何とか形になっていますが……」

その先は、続かなかった。

弱音は、口にすれば自他を傷付ける。

代わりに、ほんの少しだけ胸のつかえが軽くなる。

そしてレムは、自分が軽くなるのを厭うている。

❓ 以前の私なら

記憶があったなら、と問いかけられる

レム

(´;ω;`)

「以前の……以前の私なら、どうだったでしょうか」

ナツミ

「……記憶があるときのレムなら?」

レム

「はい。そのときの私の治癒魔法なら、ミゼルダさんの足は……」

残せたのか、と続けられるはずの言葉。

門外漢に、その判断はつけられない。

目の前にあるのは二択。『できた』か『できない』か。

そのどちらが、彼女にとって救いになってくれるのか。

――否、どちらと答えれば、これ以上傷付かずに済むのか。

ナツミ

(・・・・・・)

「……記憶があっても、どうにもならなかったと思う」

ナツミ

「治癒魔法だって万能じゃない。その中で、レムは最善を尽くしたはずだ」

😖 咎はこちらに

責任の在り処を、自分に引き寄せる

ナツミ

(´;ω;`)

「俺の方が力不足だった」

ナツミ

「考えが足らなかった。もっと、色々と真剣に吟味すべきだったんだ」

スバル「全部、俺のせいだ」

偉そうに『無血開城』を謳っておきながら、現実は程遠い結果を招いた。

失敗した。

失敗に失敗を重ね、挽回する機会を逸して失敗を積み上げた。

求めたのは、最善のハッピーエンド。

目の前にあるのは、そこそこのハッピーエンドか。

あるいは、そこそこのバッドエンドと呼ぶべきものだ。

――最悪、『死に戻り』してでも。

そんな考えが脳裏を過るほどに。

戻る先はおそらく、あの血みどろの攻防戦の最中。

思い出せば、恐れで全身が総毛立つ。

💧 潤んだ瞳のまま

どうしてそうなるのか、と問い返される

レム

(>﹏<)

「……どうして?」

レム

「どうして、これがあなたのせいになるんですか」

レム

「ミゼルダさんの足も、ルイちゃんやウタカタちゃんのケガも、ミディアムさんやフロップさんの傷も、何もかもあなたのせい?」

ナツミ

「それは、そうだ。俺がもっと、入念に準備してたらこうはならなかった」

レム

「あなたは策を考えて、無謀に見える計画でちゃんと成果を出しました」

ナツミ

「でも、そのあとが……」

レム

(╬゚д゚)

「――そのあとのことなんて!」

レム

「そのあとのことなんて、誰にも見通せませんでした」

レム

「それなのに、どうしてあなたがその全部の責任を負うんですか」

🗣️ 言わせてはならない

明かせない真実が、言葉を止めてしまう

力を持ったモノの責任なのだと、そう思う。

力を行使すれば、未来はより良くも、悪くもなり得るからだ。

だが、それは伝えることのできない真実だ。

話せば、その相手を死に至らしめるかもしれない真実など、明かせるものか。

レム

「……どうして、あなたは私を庇ったんですか」

レム

「あの女性が向かってきたとき、あなたは私の前に立ちました」

レム

「その全部ができるほど、あなたは強い人間じゃない」

レム

「私も、ルイちゃんも、アベルさんやミゼルダさんたち、ミディアムさんやフロップさんもみんな、意思のある人間です」

レム

「あなたが守り抜こうと息巻く必要なんてありません」

レム

「そんな何もかも、一人でやり切ろうなんてしないでください」

これ以上は聞いてはならないと、正体不明の焦燥感が心を焼く。

レム

「あなたは特別な人間じゃ――」

言わせてはならないとわかっていたのに。

レム「――あなたは、英雄じゃないんですから」

🚶 ふらふらと

壁に額をぶつけたところで、視線が合う

目的地を定めていない。

いつから歩き出したのかさえ明瞭ではない。

気付いたら歩いていて、今も意識は曖昧模糊とした中にある。

壁に額をぶつける。

もう一度、ぶつける。

脳を外から揺すってやると、澱みが遠ざかっていく気がした。

打ち付け、打ち付け、打ち付け――

アル

(・・・・・・)

「――おいおい、やめとけよ、兄弟」

肩を掴まれ、振り向く。

鉄兜越しの視線と、ぶつかった。

アル「死にてぇ気持ちはわかるがよ。何べんやってもキリがねぇぜ、そんなもんはよ」

第七章30『自称英雄ナツキ・スバル』終了。