第七章25
『再会は燃える血潮の如く』
紅の少女が、あるはずのない場所に立っていた。彼女とアラキアの間には、余人の知らない過去がある。
🌞 何故、何故、何故
橙色の髪と、血の色のドレスが立っている
眩い橙色の髪。
血の色をした豪奢なドレス。
赤々と輝く、宝剣。
何故、ここに彼女がいるのか。
何故、助けてくれたのか。
何故、アラキアと平然と対峙できるのか。
疑問が、尽きない。
(¬_¬)
「間の抜けた顔じゃな。妾の高貴さに目を焼かれたか」
( ゚д゚ )
「――っ、頭の後ろに目でもついてんのかよ」
「たわけ。そのような奇形に妾が見えるか? 凡愚の面構えなど息遣いでわかる」
😢 世界の崩壊
二人には、以前からの関係があるらしい
紅の瞳を細め、プリシラが静かに相手を見据える。
確固たる自己の世界を維持していたアラキア。
その世界が、一拍を置いて崩壊した。
「ひめ、さま……」
「姫様、姫様、姫様ぁ……っ」
迷子の幼子が親と再会したような。
弱きが強きに縋り付こうとするような。
その過去の関係が、この場で最も危険な存在の戦意を挫いた。
🔥 黙れ
呼びかけは、最後まで言わせてもらえない
「ひめさ――」
「黙れ」
赤い輝きが薙ぎ払い、素足の爪先の数センチ先に炎が燃え上がる。
脛ほどまでの、焚火のような火力。
だが、越えられない壁が生まれたように動けなくなる。
(¬_¬)
「まさか、妾が再会に胸を弾ませ、貴様をこの腕に抱くとでも思ったのか?」
(´;ω;`)
「ぷ、プリスカ様……」
「プリスカは死んだ。――時が流れ、地位を得てなお、貴様は何も変わっておらぬのか」
「興醒めじゃな。久方ぶりの故郷の土も、こうも痩せ衰えては感慨もない」
🔴 赤い隻眼
蹲る代わりに、隻眼へ灯がともる
心無い言葉が、深く傷付けたことはわかった。
だが彼女は蹲る代わりに、隻眼に激情を宿す。
怒りとは違う、決意や覚悟というべき灯火を。
(´;ω;`)
「……姫様に、どう思われても、いい。つらいけど。でも、わたしは決めたから」
「――。ほう、決めたとはな。何を決めたか、申してみよ」
隻眼が正面を外れ、見当違いの方向へ向く。
なおもバルコニーで成り行きを見守る、あの男へ。
「嘘つき閣下を――ッ!!」
🪖 割り込む人影
漆黒の兜が、割り込んでくる
(・∀・)
「――やべぇな、兄弟。今、声聞くまでオレでも兄弟ってわかんなかったぜ」
漆黒のフルヘルム。
山賊のようなファッション。
肩口から失われた、左腕。
( ゚д゚ )
「――アル?」
(´ー`)
「よお、兄弟! まさか、国境飛び越えた先で出くわすたぁ思わなかった」
(×Д×)
「クソ、腕が痛ぇ! 人の渾身を軽々と打ち返すんじゃねぇよ、凹むぜ」
「よくもまぁ育ったもんだ。美人になるとは思ってたがよ」
「……誰?」
「その言われよう、地味にオレも傷付くぜ。お互いに命を預け合った仲なのに、よ!」
🗣️ 心無い声援
連れてこられた理由を、思い出させられる
(¬_¬)
「シュルトではなく、貴様を連れてきた妾の望みはわかるな。仕事をせよ」
(>﹏<)
「してるっつの! 気ぃ抜いたら十秒でボロカスにされるぜ、オレ!?」
「見てくれなら、今とさして変わらぬではないか」
「さすがにボロカスよりはマシだろ!? うおわぁ!?」
脚部を炎に変えたアラキアが、鳥よりも自在に空を旋回する。
「邪魔……っ」
「年頃の娘にそう言われっと、オッサンの心は本気で痛むぜ」
🙇 縋るような目
レムが代わりに、頭を下げる
「縋るような目を向けるな、凡愚。その作り物の美貌は褒めてやってもいいが、それで妾を動かすとするなら不敬もよいところであろう」
代わりに動いたのは、レムだった。
( •̀_•́ )
「お願いします。どうか、お力をお貸しください」
「――。ふん、殊勝な物言いよな。凡愚と比べれば、まだ礼儀は弁えていると言えよう」
「逸るな。それに見ておれ。すでに状況の動く用意は整った」
🪢 手すりの下に命綱
アベルは、自らの意思で足場を崩した
半壊したバルコニーの床を、強く踏みしめる。
ひび割れが拡大し、足場が一挙に崩落した。
落下するはずだった体が、中空に吊り下げられる。
手すりに置いた手の下に、命綱を隠していた。
雑兵が相手なら、崩落に巻き込んで階下へ落とせた作戦だっただろう。
しかし相手は『九神将』の『弐』。
「お遊び……っ」
⚡ 不自然な揺れ
空を蹴ろうとした体が、不自然に揺れる
空を蹴ろうとしたアラキアの体が、不自然に揺れる。
驚きに見開かれる目と、押し殺した苦鳴。
常人にはわからない類の、変調だった。
まるで、この瞬間の訪れを確信していたかのように。
(>﹏<)
「種明かしはあとで頼まぁ!!」
青龍刀の一撃が放物線を描く。
だが、手首が返され、刃ではなく峰が向かった。
「馬鹿め」
掲げた左腕で真正面から受けられる。
肘が反対に折れ、折れた骨が肌を突き破った。
だが、致命打にはなり得ない。
(×Д×)
「ど、あぁぁぁ――っ!?」
🔥 黒く焼け焦げた長身
ミゼルダが、命を燃やして飛びかかる
瓦礫を吹き飛ばし、猛々しい雄叫びと共に急襲する影。
負傷し、黒く焼け焦げた鍛えられた長身。
赤く染められた黒髪と、白い紋様。
(>﹏<)
「ミゼルダさん!!」
アルと違い、獲物にかける慈悲や情けはない。
アベルが「仕掛けろ」と命じた対象は、彼女だった。
だが、あと一歩が足りない。
枝が腹を貫き、内臓を掻き回す。
「これで、やっと……」
(╬゚Д゚)
「――どこを見ていル?」
血の泡を口の端に浮かべながら、目が爛々と光り輝く。
両手で、枝を持つ右手を掴んで離さない。
🗡️ 一足で距離を詰めて
味方の誰も届かない一瞬に、一人だけ届く
生まれた一瞬の停滞は、最後の好機だった。
だが、味方の誰も届かない。
気配の正体を察して、迎撃できなくなる。
「ひめ――」
紅の剣閃が、一撃する。
(・・・・・・)
「言ったはずじゃ、アラキア。――次に妾と会うまでに、覚悟を決めておけと」
交わされた過去の約束。
その真意は、余人には立ち入る資格もない。
二人はもつれ合うように倒れ、糸の切れた人形のように手足を投げ出した。
✨ 淡い光
焼かれ、吹き飛ばされ、腹を貫かれた体へ
唐突な静寂に呑まれ、時が静止したような錯覚。
一息、あるいはほんの一歩で、全てが台無しになりそうな強迫観念。
(>﹏<)
「――ミゼルダさん!」
たどたどしい足取りで這うように床を進む。
全身を焼かれ、大風に吹き飛ばされ、腹を貫かれた体。
決死の表情で両手を当て、淡い治癒魔法の光で繋ぎ止めんとする。
🕳️ ぽっかりと空いた空洞
手を貸せ、と言われて立ち上がる
「呆けている場合か。手を貸せ」
「生き残ったか。悪運が強いものよな」
(´・ω・`)
「……お前も、憎まれ口の切れ味は十分残ってるみたいだな」
こちらもボロボロなら、引き上げられる方もボロボロだ。
今すぐにでも手足を投げ出して意識を手放したい。
そうも言っていられない。
「ミゼルダさん、だけじゃない……」
治癒魔法を使えるものが貴重な環境では、応急手当も必要になる。
ここで倒れるということは、失われることを許容するということだ。
そんなことは、あってはならない。
第七章25『再会は燃える血潮の如く』終了。
プリシラ
ナツミ
アラキア
アル